西村一朗の地域居住談義

住居・住環境の工夫や課題そして興味あることの談義

西山夘三先生の超克を目指して

2007-06-19 | 地域居住学
『西山夘三の住宅・都市論 その現代的検証』(日本経済評論社)の住田昌二論文(総論 西山住宅学論考)を一読した。西山先生が研究途次の「太平洋戦争中」の、住田先生が描く、言わば意気揚々と調査研究や提案に取り組む西山先生像は、私の若い頃に西山文献を読んだ印象と少し違った。住田さんは、広原盛明さんが、戦後、西山先生は戦争中の態度(客観的には戦争協力)について懺悔しているとしているが、そんなことはない、と言っておられる。私は今のところお二人の中間的意見である。もう一度、色々読んで考えてみたい。住田さんが、最後の「西山住宅学の超克を目指して」及び「結語」で述べているところにも注目する。住田さんに、もう少し詳しく展開して欲しいとも思うのだが、住田さんの「機能論から文化論へ」「マスハウジングからマルチハウジングへ」そして「階層から地域へ」の提案は受け止めていきたい。例えば「マルチハウジング(多様な住宅供給)」については、「西山研」同期生ではコーポラティブ住宅は延藤安弘君、マンションは梶浦恒男君、戸建て住宅・住宅地は不肖・私が取り組んでいると思っている。で、西山先生の供給論、フローの重視に対して住田さんは需要論、ストックの重視をも言っておられるが、私が住宅・居住地管理論テーマで「最初に」学位を京大で貰ったから言うわけでもないが、西山先生後の後継者の一人の巽 和夫先生が提唱された企画論にも関連し、いわば需要を前提し、企画から、生産、供給、造成、建設、管理(補修、改善含む)と続く一連の「プロセス論」への展開が重要と思っている。もう一つ、住田さんが「西山先生は、具体的にはコミュニティ論に殆ど突っ込んでいない」と言っておられるが、確かに住民運動や市民運動による都市計画について具体的に取り組んでおられなくて、広原さんや延藤安弘君などが具体的に取り組んできている。とにかく、西山先生の意気込み、方法をしっかり継承しつつ新たな状況に向き合って新たな問題意識、方法で、多様な協力で取り組んでいきたいものだ。今や、西山先生時代のように「巨人研究者の時代」ではない、ネットワークの時代なのである。
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