ロッキングチェアに揺られて

再発乳がんとともに、心穏やかに潔く、精一杯生きる

2011.4.22 「がんの練習帳」・・・・読後すぐに

2011-04-22 19:23:37 | 読書
 昨夜、放射線科医・中川恵一先生の「がんの練習帳」(新潮新書)を読んだ。
 もともと週刊新潮に連載されていたものに加筆してこのたび新書化されたものだ。夫がたまにこの雑誌を買ってくることがあり、ちょうど乳がんシリーズをやっていた頃には毎週買ってきてもらって読んでいたものだが、新書にまとまっていたのを見つけて手に取った。

 帯には、「2人に1人は、がんになる。だから……。予防策、告知の際の心構え、治療法選択のコツetc.すべて身につく練習帳。」とある。
 表紙を開くとカバーの内側に「『がんはとにかく怖い』そう思っているなら大間違い。今やがんは日本人の2人に1人は経験する病気。怖いのは、がんではなく、がんを知らないことなのです。予防策から告知の際の心構え、検診や治療法選択のコツ、痛みとの付き合い方、費用、最期の迎え方まで、すべて「練習」しておけば憂いなし。読み物仕立ての闘病記で様々なケースを追体験するうちに、誰もが平常心でがんと付き合えるようになるはずです。」とある。

 今や3人に1人が、がんで亡くなる時代でもある。前書きには、そういう時代だからこそ、がんになることはとても他人事でない。他のことは皆あらかじめ準備をしておくし、ハウツー本、マニュアル本などがあるから、がんについても予習しておくにこしたことはない、というニュアンスでわかりやすく書いてある。
 現代人は余りに死を遠ざけ、死を思うことをしないが、がんという病こそ、「メメント・モリ」(死を想え)を思い出させてくれる病だ、と。肺がん、乳がん、前立腺がん、直腸がん、すい臓がんの患者さんと主治医のやりとり等が物語調で進んでいく。実際の症例をいろいろ組み合わせて作ったフィクションだという。

 とても読みやすく物語として一気読みしたけれど、やはり一患者からすればがんは練習出来るものだとはどうしても思えない。
 実際、この乳がん患者のストーリーは、37歳のバリバリのキャリアウーマンが5センチの大きさになったがんを前に乳房切除を拒否、術前抗がん剤治療で1センチまで小さくした後、温存手術することから始まる。腋下リンパ節転移も見つかるが、その後は放射線治療、ホルモン治療で強い更年期症状等の出現により体調を崩し、恋人との関係もうまくいかなくなる。術後5年、42歳までホルモン治療を続けることから出産も諦めることになる。数年後、背中の痛みで骨転移がわかり、ゾメタ治療開始、そのすぐ後に右足に力が入らなくなったり言葉が出にくくなったりという症状から脳転移が判明する。
 ガンマナイフや放射線治療で乗り切り、痛みもがんもいったん消える。そして今、最初の告知から7年が経ち、43歳。友人と海外旅行も楽しんでいるが、骨転移の痛み止めにモルヒネを飲んでいる。症状は特にないが、残された命はあと1年と割り切っており、それまで美味しいものを飲んだり食べたりして過ごしたい、というエンディングだ。

 がん患者でない健康な人が読めば、そうか、がんになるのもそう悪いことではない、心臓発作や脳疾患等によるPPK(ぴんぴんころり)よりも死にゆくまでにある程度の時間もあるし、いろいろ準備もできてよさそうだ、と思うのかもしれない。
 けれど、実際に罹ってみれば、本当にその人その人で十人十色どころか百人百様だから、参考になる部分はあってもそのままぴったりあてはあまる、などというケースは決して、ない。
 そして、自分や愛する人が罹ってしまえば練習どころではなく一回ぽっきりの本番である。

 読み終わり、やっぱりちょっと複雑な気持ちになって、ネットのニュースを開いた途端、ショッキングな文言。
 元キャンディーズの田中好子さんが乳がんで急逝されたという。今月初めに55歳のお誕生日を迎えたばかり。
 今まで全く知らなかったが、白血病で早世された夏目雅子さんのお兄さんと結婚された翌年、1992年に人間ドックで乳がんが見つかったという。以降経過観察を続けていたが、幾度かがんが見つかりその都度切除手術をされてきたそうだ。昨年秋、急性胃腸炎や十二指腸潰瘍の治療のために絶食したことで体力と免疫力が下がり、がんが暴れ出すこととなり、最後は肝臓や肺等に多数転移した結果の多臓器不全。
 そんなこととはつゆ知らず、私には昨年秋、裁判員制度をテーマにしたNHKドラマ「手のひらのメモ」では思春期の息子を持つお母さん役をとても丁寧に演じていらしたのが記憶に新しい。

 それにしても乳がんとはなんとしつこい病気なのだろう。他の部位のがんと違って5年経過しても治癒とは言えない。10年経ったらようやく・・・、と思っても、こうして20年近く経っての再発転移も稀ではない。妹も妻もがんで失ったご主人の心はいかばかりか。

 練習どころではない、と強く思う。誰しも1回限りの人生、練習しておける病気なんて、ない。もちろん頭で流れが分かっていることであわてない、というメリットはあるかもしれないけれど、そうはいっても頭で想像したのと実際に自分で体験してみるのとでは全く違う。
 とにかく罹ったら初発では治癒を目指して、そして再発したら寛解を目指して、全力投球で治療を続けていかなければならないのだから。

 相変わらず気持ち悪さと火照りは継続中。昼でロキソニンも無事飲み終えた。今晩寝たら明日の朝は少し楽になっていることを祈って・・・。

コメント (2)
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