ロッキングチェアに揺られて

再発乳がんとともに、心穏やかに潔く、精一杯生きる

2021.3.31 採血・口腔外科経過観察後、腫瘍内科診察、エンハーツ13クール目 さらに6割に減量9回目

2021-03-31 23:37:16 | 治療日記

 昨日は年度最後の通常勤務。年度替わりの準備やら何やらで、朝から夕方まで大車輪。今日が治療日のため出勤出来ないので、退職者、転出者への挨拶を済ませる。
 力仕事をちょっぴりした以外はほぼ一日足を下げていたので、足が浮腫んで肩もコリコリ。

 仕事を終えてから、頑張ってK先生の骨盤コンディショニングのクラスに参加した。ヨガのポーズはお尻の筋肉をうまく使うと安定するということで、最初15分ほど身体を慣らした後は、筋トレよろしくかなりきつい動きが続いた。皆汗を滴らせ黙々と身体を動かしている。先生の動きを見ると、難なく出来そうに思えるが、自分でやってみるともう全然・・・。道は遠いのである。

 シャワーを浴びてもなかなか汗が退かない。夫と待ち合わせてファストフードで軽く夕食。夫にお泊りバッグを持ってきてもらってヨガウェアバッグ等と交換し、3週間前と同じ病院最寄り駅前のホテルに向かった。

 車内で天童荒太さんの「ペインレス上巻 私の痛みを抱いて」(新潮文庫)で読み始めた。天童さんの作品を読むのは「悼む人」以来で久しぶりだ。帯には「心に痛みを感じない、氷の女医と身体の痛みを失った男」とある。新聞広告で今月のイチオシになっており、「最もスリリングな医学エンターテイメント。天童荒太はやはり凄い。」と紹介されている。病院で読むには良いかも、と月初めにポチっとネットで買ったのだ。
 エピローグから「ん?」と引き込まれる。なるほど、そういうことか・・・という始まりである。

 今朝の朝食を駅ナカコンビニで調達してからホテルに到着。前々回はツインに、前回は広めのダブルルームにそれぞれグレードアップして頂いたが、今回は春休みでそこそこ部屋が埋まっているようで、セミダブルルームどまりだった。それでもテーブルが大きく部屋の使い勝手は良かった。

 フロントで頂いた夕刊片手にお茶とちょっぴりスイーツを頂きつつ、ベッドで足を伸ばしてリラックス。テレビでは、1年前にコロナで急逝した志村けんさんの番組が流れていた。もう1年・・・、早いことである。お風呂あがりにはすぐに眠くなって、本の続きを読み始めたらコテンと眠った。

 ちょっと室温が高くて寝苦しかったけれど、お手洗いにも起きず、アラームが鳴るまでグッスリ。
 窓を開けると、ちょうど正面のビルの看板等が邪魔をして景色は不粋。まあ病院とみなとみらいが何とか望めたけれど。
 浴槽足湯を済ませ、ひとくちサンドイッチと果物と野菜のミックスジュース、アロエの青いヨーグルトとミントティの朝食を部屋で摂る。

 BSで朝の連続テレビ小説を視、母とDuo通話をしてから、早めにチェックアウトして病院に向かった。今日は採血後、まずは口腔外科、そして腫瘍内科である。
 今日もかなり気温が上がるという。なるほど朝から暖かい。シンプルニットに薄手のジャケットを羽織り、ストールを軽く首に巻いた。タイツはもう大げさすぎたかもしれない。

 病院までの道すがら、歩道の花壇植え込みがとても美しくグレードアップされていた。ピンクノックアウトや王妃アントワネット等、薔薇のネーミングが華やかだ。
 病院前の桜並木も満開を過ぎ、青空の下、桜吹雪が美しい。朝から皆スマホを構えている。私も1枚カシャっと撮影。3週間に1度の通院、ちょうど満開に当たる確率は結構低い。今年はまずまずいいタイミングで通院出来た。

 病院に到着し、前回再発行して頂いた新しいIDカードを通す。031番。今日の日付と同じで覚えやすい。採血受付へ移動して、ここでもピンクの受付番号表を摂る。こちらも31番。こんなことは珍しい。幸先が良いかも、と電子掲示板を見ると、既に私の番号より後の番号が中に入れることになっている。急いで入室すると、すぐに呼ばれる。今日の担当は検査技師のYさん。ベテランだ。このところずっと当たらなかったので、「お久しぶりです」とご挨拶。

 今日はフルチェックなので5本。ちょっぴりチクリとしただけで痛みは殆どなし。刺すときが痛まないと、抜く時も殆ど痛まないので有難い。「やはりYさんはお上手です。全然痛みませんでした。最近ずっと当たらなかったので・・・」と言うと、「いくつになっても褒めて頂くのは嬉しいことです。光栄です。ありがとうございます。」と深々とお辞儀をされてしまった。2020年度最後の採血、良いスタートになった。

 止血をしながら、エスカレーターで2階へ上がる。口腔外科は泌尿器科と同じ窓口だが、そちらに1人並んでおり、問診票がなかなかうまく書けないようで時間がかかった。
 ようやく受付して頂ける。IDカードを通すと「あら、カード再発行されたのですか?」と訊かれ、「前々回腫瘍内科受付後に行方不明になってしまい、前回総合案内に届いていないということで再発行して頂きました。3週間前の3月10日です。」と言うと、「3月23日に見つかったようです。腫瘍内科で預かっているので受け取りをお願いします。」とのこと。

 まだ予約時間まで30分ほどある。朝刊を読みながら電子掲示板に番号が出るのを待つ。予約時間5分前に中待合いにどうぞ、となる。そして予約時間ピッタリに口腔外科の診察室へ。半年ぶりにW先生と再会である。
 前回9月は5月に転倒して歯が折れて・・・の話をご報告したが、今回はその後日談で、先週神経を取って治療を再開したことを報告する。口内チェックで「今は粘膜炎等も酷くないし、最寄りクリニックで治療が出来、定期検診もしているので次回は半年後にしましょう。その時には口内全体の写真を撮ります。レントゲンは年に1回でよいと思いますが、それまでに何かあったらいつでも大丈夫ですから連絡をしてください。」とのこと。
 お礼を言って、10月最初の腫瘍内科と同じタイミングで予約を入れて頂いた。

 再びエスカレーターに乗って1階に降り腫瘍内科へ。定位置が埋まっており、受付真正面の席を確保してから受付。問診票の追加を頂く。その場で全て「ない」に〇をして、息切れの前に“ほとんど”を追加した。「口腔外科でIDカードが見つかったと伺いましたが」と言うと出してくださった。
「ちなみにどこにあったのでしょう?」と訊くと、椅子の間に挟まっていたそうだ。お礼を言ってファイルを受け取り、今度は落とさないように気を付けて座る。

 読書をしていると時間が過ぎるのが早い。タイミングの良いところで血圧測定。94-62、脈拍が86。それから15分ほどで中待合いへどうぞ、に番号が出た。中待合いに移動し読書を続けていると、15分ほどして先生が診察室からお顔を出して、「○○さん。」と仰った。
 「おはようございます。」とご挨拶をしていつものように荷物をカゴに、自分の体調管理ノートやエンハーツダイアリー等を出して席に着いた。

 「さて、この3週間は・・・。」と訊かれ「はい、やはり1週間はかなりしんどいです。翌日はなんとか1日持ちますが、翌々日は午後早退、土日はほぼ寝た切りで、月曜も2時間早退しました。吐きはしないものの、気持ち悪さが酷く、底なし沼のような疲労がしんどいです。下痢はなく便秘で、今回はマグラックスを2回ほど飲んで、今は快調になっています。」とご報告する。診察室での検温は6度7分。

 そして口腔外科の受診報告も。あれこれかいつまんで話したところ、口腔外科の電子カルテにはそこまで書いていなかったようで、色々大変でしたね~と言われた。足の裏等の痺れについては相変わらずだが、ちょっといいかな、と思うと突然針で刺されたような痛みが走ることがあることも報告しておく。

 先生から「採血ではマーカーは上昇傾向ですが、まあ、下がり続けることはないので特に心配するレベルではないですね。」とのこと。白血球も3,900、好中球は1,100ある。あんなに飽食したのにアルブミンはL。最初の1週間がろくに食べられていないので、その所為ですね、と言われる。

 そして、疲労止めに飲んでいるエルカルチンについて「ついに保険の審査でなぜ?と質問が来ました」とのこと。エルカルチンはカルニチン欠乏症に使う薬であるが、「エンハーツの疲労が酷く、これ以上薬を減らせないので、ということで理由を書いて提出しましたが・・・(もし通らないと保険適用外になります)」だそうだ。
 「ということで、今日も予定通り治療続けましょう、ですね。次回は3週間後、月1度なので採血はフルで、レントゲンも撮りましょう。」とのこと。
 薬の処方はまだ使い切っていないヒルドイドローション以外、前回同様でお願いした。

 化学療法室の待合いには、珍しくどなたもいない。LINE受付は「調整中」になっており、すぐに看護助手さんがみえてファイルを手渡す。夫やお友達にLINE報告をしていると、ほどなくしてKrさんが「お薬飲みましょう。」とイメンド125mgを持ってきてくださる。

 看護助手さんから窓側一番奥のリクライニングチェアに案内された。態勢を整えてお手洗いを済ませると、ほどなくして薬剤師のTさんがみえる。前回コロナワクチンの先行接種1回目を済ませたと伺っていたので、2回目は接種されたのですか?と訊くと、月曜日に打ち、その後熱っぽくなったので早退されたとのこと。
 木曜日には元気になったが、接種後48時間はインフルエンザのように身体中痛く平熱より2度ほど上がり、食欲もなく大変だったらしい。人によって大分違うようだけれど・・・。うーん、やはり2度目は大変な模様。

 15分ほどして針刺しにKwさんが見える。ちょっとチクリとしただけで無事。前回新製品のワンタッチテープを剥がす時、粘着力が強く痛んだので、再び紙テープとガーゼに戻して頂いた。やはりこれが一番安全だ。
 そのKwさんは、金曜日にワクチン一回目を打ったところ、土曜日は肩が上がり辛く車の掃除がしんどかったという。忙しくて休んでいられなかったけれど・・・、とのこと。

 こう伺うと、薬の感受性が強い私の場合、接種日をよほどうまく調整しないと酷い目に遭うかもしれない。治療直前週の金曜日に打って土日具合が悪くなっても月曜、火曜に体調が戻ればそれが一番いいかも。
 とはいえ、そんなうまいタイミングに予約出来るかどうか。

 10分ほどしてMさんが薬を持ってみえて、吐き気止めからスタートした。続いてブドウ糖、エンハーツを終え、最後はブドウ糖15分、生食。途中気が遠くなるほど眠くなったが、読書は止められず。
 終了時の血圧測定もMさん。108-66、脈拍は75。抜針はOさん。抜針もかなり衝撃があった。最後だけちょっとブルー。
 
 管が外れて身軽になってお手洗いを済ませ、ご挨拶をして腫瘍内科受付へ移動。ファイルを提出してから処方箋のデータをFAXで薬局に送るテーブルまで移動。10分ちょっと待って支払窓口でお支払い。カードで11万強。

 外に出ると、予報通り汗ばむほどの暖かさ。ジャケットもストールも手提げに入れる。病院前の橋の上では花見をし、写真を撮っている人たちが結構いた。薬局へ到着すると、記憶にある限り初めてではないだろうか、待合い椅子にどなたもいない。「ファックス届いていました。」と、番号札を頂く。
 30分もしないで私の番号が呼ばれた。今日は久しぶりの女性薬剤師さん。10,000円弱をカード支払い。今日の病院と薬局の滞在時間は合計で5時間半弱。2科受診にしてはとても順調だった。

 空腹だったので、駅ビルでランチにした。お気に入りのイタリアンへ。初めて2階に案内された。大きな窓からは明るい陽射しが燦燦。窓側は暑いので、と内側の席に案内される。見晴らしがよく、吹き抜けの下の階のレストランが見渡せる。広々静かで読書にはバッチリ。

 前菜盛り合わせ、春らしいパスタにドルチェの盛り合わせ。今年初めてアイスコーヒーを頂きつつ、上巻を読み終えた。ウエイトレスさんから「何度かお目にかかりましたよね?」と問われ、「いつも下の階で、こちらは初めてです。気になっていましたが、こちら「いつも下の階で、こちらは初めてです。気になっていましたが静かでいいですね、本を読み終わりました。」と言うと、「階段を上がって頂くのがちょっと大変ですが。そして窓が大きいので今日のような日は暑いですね、冷房は入れているのですが、なかなか効かなくて・・・でもお一人で読書ならお薦めです。」とのこと。
 最後の晩餐ではないが、今晩からはまたろくに食べられなくなることが予想されるので、しっかり完食した。

 帰りは最後の快速電車に間に合って「あなたの愛を殺して ペインレス下巻」を読み始めたが、時間切れで途中で読書終了。最寄り駅からはタクシーに頼らずなんとか歩いて帰宅出来た。
 生協のお届け品を取り込む。今日も大量で、全て定位置に納めるのはそれなりに難儀だ。洗濯機を廻し、薬やら何やらの片付けを完了し、リビングに横になって新聞を開いたところで夫が帰宅した。

 夫は第二の職場のフルタイム勤務が今日で無事終了。明日からは週3回の非常勤になる。とても立派な花束を頂戴してきた。以前退職した時は、せっかく頂いた花束なのに持ち歩くのが嫌(年のいった男が花束を持って電車に乗る姿は、いかにも「退職しましたよ。」という人生の黄昏感を振りまくようで嫌だ、という夫なりの美学だそうだ。チッ、ええかっこしいな奴め。)で、どなたかに差し上げてしまったということで、私は残念ながら見ていない。
 皆様のご厚意に対してなんて失礼なの、と思っていたのだけれど、今回は観念して持ち帰ってきたらしい。
 さすがに都心一等地のお花屋さん、センスが良いことといったら。とてもシックな色合いでお洒落だ。早速身体に鞭打ちつつ玄関に活けた。有難いことである。

 食欲がなかったが、夫には生協宅配の桜エビ天ぷらうどんとサラダ寿司等を摂ってもらい、私もちょっぴりお相伴し、薬を飲んで終了。お昼の食欲はどこへやら、やはりお約束通りお腹ぐるんぐるん。どんどん気持ち悪くなるのである。

 明日は年度初めの出勤、顔合わせの会議もあり、明後日も出勤予定だ。なんとか乗り切らなくては。

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2021.3.28 満開の桜の樹の下で思うこと…旅の終わりに

2021-03-28 22:38:05 | 

 昨夜は、スマホの万歩計によると11,000歩を超えて歩いていたこともあり、入浴後は夫の鼾をものともせず、コロリと眠った。
 5時間ほど熟睡してお手洗いに目覚め、さらに二度寝して1時間ほど。「朝風呂に行くけど・・・(あなたは行かないわよね?)」と夫に言うと、珍しく「俺も行こうかな~」と言うので、一緒に最上階の温浴施設へ向かうことに。

 昨夜は洗い場も結構混雑していていたが、今朝は思いのほか空いており、露天風呂も内風呂もほぼ貸し切り状態だった。残念ながら灰色の雲が厚く垂れこめ、富士山の姿は見えない。裾野の部分がかろうじてわかる程度だった。さっぱりして部屋に戻り、ゆっくり着替えて新聞を読み、朝食を摂るためにレストランへ向かう。

 前回宿泊した時はコロナ禍のため、洋食か和食のセットメニューだったけれど、今回はビニール手袋を嵌めてブッフェに変わっていた。昨夜と同じ半個室のテーブルに案内される。正面には富士山が拝める筈だけれど、やはり雲に隠れている。朝から雨の予報だったけれど、まだ雨は降り出していない。
 夫は和食中心に、私は洋食中心に、それぞれちょっとずつ色々取ってゆっくり頂く。お茶まで頂いてレストランを後にしたのはほぼ最後の客となった。

 昨日のうちに観光は済ませていたので、特に予定はなかったし、雨なら正午のチェックアウトまで部屋でのんびりするつもりだった。嬉しい誤算で、曇りではあっても雨が落ちてこない。ならば、せっかくだし、とホテル真ん前の旧小松宮別邸・楽寿園を再訪することにした。

 入園してすぐの乗り物広場では、立派な桜の樹々が満開。風に花びらが舞い、花吹雪である。ちびっ子たちがそれを追いかけている姿が可愛い。動物ふれあい広場は、10月に訪れた時にはちらりと見ただけでスルーしてしまったが、今日は一周してみたところ、珍しい動物が沢山いてびっくり。そこから、郷土資料館の向かいに当時のままの姿で保存されている蒸気機関車C58を見、小さな池を過ぎながら散策を続ける。

 前回訪れた時はとてもお天気が良く暖かく、紅葉には少し早かったが、ラッキーなことに平成23年以来の小松池の満水期にあたり、湧き水を湛えた美しい姿を見ることが出来た。今回は冬季の渇水期で、池底の溶岩がむき出しになっており、全く印象が違った。約1万年前に三島溶岩が流れた様子が池全体で直接観察出来、当時にタイムスリップ。ジオ観察に最適な場所という。

 園には1時間半ほど滞在しただろうか。日曜日というのに来園者はまばらで、花びらが舞う桜の樹の下の椅子で、かなり長い間ぼーっと座っているという贅沢な時間を過ごした。
 思えば2005年の春、初発術後、放射線治療25回が終わって、病院の傍の川べりに咲く満開の桜を見て、涙が滲んで前が見えなくなって困ったことを思い出す。
 当時、あと何回桜の花を見ることが出来るのだろうと思ったけれど、毎年必死に治療を続けながらこうして17回目の春を迎えることになった。

 ホテルに戻り、荷物をまとめてチェックアウト。そのままキャリーケースを預けて駅前でお土産を物色してから、昨日からチェックしていたお寿司屋さんに入った。先日、お寿司がタイ料理に化けたので、やはりお寿司が食べたかったのである。
 久しぶりにちゃんとしたお寿司を頂き、大満足。好きなネタばかり頬張ってカニ汁も頂いて、幸せだった。

 再びホテルに戻って荷物をピックアップし、予定した普通電車に乗り込んだ。帰りは乗り継ぎが2時間ほどでJR乗換駅まで戻ってこられた。
 帰りの車内のお伴は岡崎琢磨さんの「春待ち雑貨店 ぷらんたん」(新潮文庫)。岡崎さんは初めましての方。帯には「”日常の謎“の名手が送る極上のミステリー。京都の小さな雑貨店で新たな幸せを見つける5人の物語」とある。後ろ表紙には「懸命に生きる人の心に春を呼び込む、癒しの連作ミステリー」とも。

 読み始めると、息子のおかげで何度も訪れた京都の土地勘がある場所が舞台になっており、グイグイと読み進められた。彩瀬まるさんが“暴いて、選り分けて、見つけるもの”という解説で「いっそ知らないままで居たかった苦い事実は、人生の其処此処に存在する。しかし岡崎さんの物語はそれを暴く。そしてひっくり返されたおもちゃ箱のような真相から、その人物にとって必要な物、意味のあるものを、非常に的確な手さばきで拾わせる。」とあったが、なるほど、と唸らされた。

 最寄り駅でもまだ雨は降っていなかった。アウトレットモールで夫の買い物を済ませてカフェで小休止。その後、私はアロマビューティヨガのクラスに参加し、夫は一足先に帰宅してクリーニング店に出かけた。
 45分のクラスを満喫後、シャワーを浴びて、外に出ると霧雨が降り出していた。ようやくお守り替わりに持ち歩いた折り畳み傘を使うことが出来た。帰宅後は洗濯機を廻し、簡単な夕食を済ませた。

 明日からまた新しい1週間が始まる。2日出勤したら、2020年度の最終日は通院治療日である。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2021.3.27 一富士 二桜(はな)三美食(ぐるめ)!

2021-03-27 22:43:17 | 

 治療直前最後の土曜日。10月に宿泊して夫が気に入ったという、富士山を望めるホテルに宿泊している。

 少しだけ寝坊をしていつも通りの朝食を済ませる。前回は昼食のサンドイッチを頬張る時間すらろくになかったので、あえて新幹線に乗るのは止め、在来線を乗り継ぎ2時間半をかけて、ちょうどお昼に目的駅に到着した。
 その間、車中のお伴は中山祐次郞さんの“泣くな研修医シリーズ”第3作「走れ外科医」。
 書き下ろしの文庫である。帯には「治したい。でも、治せない。どうすりゃいいんだ、俺」とある。先日「神様のカルテ 新章」でも若い転移性膵がん患者の話が出てきたけれど、今回は21歳のステージⅣ患者と主人公たちとの関わりが綴られる。あと少しで読み終わるというところで残念ながら時間切れ、到着となった。

 前回、高所恐怖症の夫に拒絶されたスカイウォークから富士山を拝むこと、三嶋大社の桜を愛でること、が今回の旅の目的である。もちろん治療前の貴重な休日、ホテルのメインダイニングで美味しい食事を頂くこと、大きなお風呂に入ることも楽しみである。

 駅に到着して13分後に発車するバスに乗車しないと、次のバスは1時間10分後だ。ダメなら近隣でランチをするしかないけれど、ひとまず急いでホテルのクロークに荷物を預け、お手洗いを済ませる。夫が先にお手洗いに行き、ロビーに姿が見えないのでそのままバス停に急いだが、姿が見えない。LINEも既読にならないし電話にも出ない。乗り遅れたら大変と、ドキドキして列に並んでいると夫がようやくやってきた。

 バスは長蛇の列、この人数、とても乗り切れないかもしれない。混んだバスでずっと立っていくのは30分超えの上り坂、ちょっと辛いかもしれない。と思ったら、運良く臨時運行の2台目バスに無事乗り込み、座ることが出来た。
 前回歩いた大通りから三嶋大社までの地理はほぼ頭に入っている。車窓から見ると、先日の静謐な雰囲気とは打って変わって屋台が沢山軒を連ねている。まさに桜は満開。前回は貸し切り状態だったのにかなりの人出である。車も結構渋滞しており、予定より大分時間がかかって第一の目的地、スカイウォークに到着した。

 三島スカイウォークは全長400m、高さ70m、歩道幅1.6m。日本一の長さを誇る歩行者専用吊り橋である。日本一高い富士山と、日本一深い駿河湾を日本最長の大吊橋から眺められるという贅沢な場所だ。まずはチケットを購入。渡る前にいきなり写真撮影スポットでひっかかる。小さな写真を無料でプレゼントして、大きな写真は買ってね、という観光地によくあるアレである。そのときだけマスクを外してカメラマン氏の「ニッコニコ!」というかけ声でハイ、チーズ。2人一緒の写真はなかなかないので、結局お買い上げである。

 橋の上は風が強く吹いていて、ここでかつらが飛んだら回収することは不可能だ。慎重に頭を触りつつ、写真撮影は夫に任せてゆっくり歩く。右側には勇者というか命知らずというか、ロングジップスライドに身体を吊って往復する人たちの姿。それをチラチラと横目に見ながら歩く。カップルや親子で3人一組同時に滑走可能というが、いやはや、大変なことである。橋の中央辺りに行くと、すれ違いのラッシュで足下がゆさゆさと揺れる。風も一層強くなる。

 それでも少し雲がかかってはいるが、まだ雪の残る富士山の美しいこと、そして遙か彼方の駿河湾の水面がキラキラと輝いて美しいこと。いや~やっぱり高いところが好きな(酉年ではないけれど馬鹿な)私。夫を引っ張ってきて良かった。無事北エリアといわれる向こう岸に渡ると、アドベンチャーランドと称したアクティビティが沢山。バギーやセグウエイにドッグラン等の動物と触れ合える広場や、ピクニック気分で食事を楽しめるカフェなど、家族連れやカップルたちで賑わっている。

 ここのカフェのメニューは、サンドイッチやホットドッグなど、齧り付くことが苦手になった折れた前歯の治療中の私にはちょっと辛いメニューばかりだったので、再び橋を渡って南エリアに戻る。こちらには地元の食材を味わえるレストランがあり、三島ブランドのカレーを頂く。遅いお昼になったけれど、なかなか美味である。

 ほぼ食べ終わる頃、お隣に3人の男の子とお母さんが座る。見ていると、とんでもなく大きな苺のパンケーキを美味そうに召し上がっている。苺ラブの夫の目がロックオンされる。「半分食べられる?」と訊かれ、「味見程度なら・・・」とご馳走になる。アイスクリーム、3枚のパンケーキの上にたっぷり散りばめられた苺とカスタードクリーム、生クリーム。ストロベリーソースの海。
 夫のお腹がまた一段と豊かになる。すっかり満ち足りた気分である。帰りのバスまで残すところ1時間弱。

 エスカレーターに乗って、天井を埋め尽くす圧巻の花のシャンデリアという、スカイガーデンでお土産を物色する。外は菜の花畑の黄色が美しい。さすがにお腹一杯で苦しくて、お菓子や食べ物を見ても全然触手が動かない。結局、冷やかした感じで、ちょっぴりだけ限定のお土産を買ったら5周年記念の限定クリアファイルを頂けた。クリアファイルの収集が趣味と化している私には嬉しいプレゼントだった。

 空間づくりにこだわり清潔感満載、日本庭園やパウダールームも充実した総工費2億円というラグジュアリートイレにもお世話になり、帰りのバスに並ぶ。往路1台で乗り切れなかったのに、復路もかなりの人たちが並んでいる。どうしたものか、と思いきや、やはり2台続けてバスが到着した。結局、私だけ最後の優先席に座らせて頂き、夫は立ちん坊だった。可哀想に。

 三嶋大社前で下車して、参拝へ。桜は満開、既に葉桜になりかけている木も見受けられる。枝垂れに八重にソメイヨシノと百花繚乱。ひとつひとつの花がとても大きい。まさに“この世の春”と咲き誇っている。お宮参りの赤ちゃん連れや、卒業式らしい袴姿の女性も見えた。昨年10月に訪れた時は月曜日でもあり、ほぼ貸し切りで優雅に参拝出来た(鳩の糞が落ちてきたというハプニングはあったが)ことを思うと、この賑わいは別世界である。神鹿も参拝して大社を後にし、ぶらぶらとせせらぎ通りを通って駅までお散歩。お腹ごなしに丁度良い時間となった。

 ホテルに戻ってチェックイン。10階の部屋からは真っ正面に富士山が見える。夕食の予約まで小一時間。荷物を出したら夫はベッドでお夕寝してしまった。チマチマとブログの下書きをしていると、母からビデオ通話があったので、富士山を見せてあげる。

 そして夕食。春の食材満載のディナーは蛍烏賊や白アスパラ、桜エビに筍、蕗味噌エトセトラエトセトラ。香り豊かで眼福、口福。デザートの桜のモンブランには蕗の薹のアイスクリーム。最初は味がわからなかったくらい新鮮だった。
 静岡レモンの酸っぱいオリジナルノンアルコールカクテルの「せせらぎ」ものんびり歩いた散歩道を彷彿とさせ、アミューズからお茶までたっぷり2時間半。これ以上一口も食べられません状態でレストランを後にした。

 ワインを飲んでいい気分の夫が、酔いを冷ましたいと言うのでちょっとホテルの外をお散歩。飲食店はまだ結構開いていて、21時まで短縮営業の都内とは違うのだと改めて思った。

 富士山の刺繍が施された部屋着に着替え、これからお楽しみの温泉タイムである。
 明日は残念ながらお天気が崩れるという予報。特に何も予定がないのでゆっくり朝食を頂き、のんびり帰京の予定である。



コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2021.3.25-26 ブレークスルーは突然に

2021-03-26 22:31:18 | 日記
 木曜日。
 桜は咲き始めたけれど、花曇りからちょっと雨がぱらつくぱっとしないお天気になった。肌寒い。
 学位記授与式が終わったと思ったら、新年度の準備でなかなか仕事が切れない。有難いことではあるけれど、ちょっと青息吐息である。一日中座ったままでPCを凝視して、メールや資料やらと睨めっこをしているといつの間にか眼、肩、腰がバキバキとしてくる。足も重い。
 夫も首が痛い、肩が痛いというので均整術師よろしく軽くマッサージをしてあげたら、岩のようだった背中が大分楽になったようだ。

 土日出勤で吹っ飛んだ月一回Wさんサロンお楽しみマッサージの予約を、仕事の後に入れさせて頂いた。前回から40日近く経ってしまった。
 終業後急いで2つ隣の駅までの移動。サロン前の川べりの桜はもう満開である。大学前の桜はまだ5分咲きにもなっていないのに、こちらは都心並みに早い。数人の人たちが橋の上で桜を愛でて写真を撮っている。

 普段は土日の朝一番に伺っているので、それほど足の浮腫みもないのだけれど、「夕方お仕事の後にはこんなになるのですね。」と言われるほど血管が見えない、象のような足首である。その場でオプションはフットアロママッサージに決定。施術が始まる前に温かいエディブルフラワーのハーブコーディアルを頂く。美味しい。施術スタート後には眠ってはもったいないと思いつつ、いつの間にかウトウト。至福の2時間近くを過ごした。

 夫は東京横断遠距離出張で早朝から出かけ、帰りも普段より遅くなるというので、施術後はそのままレストラン街で合流する約束をしていた。約束時間より時間が押してしまい、書店で合流することに。
 施術後はお腹の調子を整えるハーブティを頂き、7月までの予約を確認して駆けつけると、夫は思いのほか早く着いたとのこと。結構待たせてしまったことが分かる。お詫びに夫が買おうと手にしていた文庫本をプレゼントした。

 久しぶりに回るお寿司ではないちゃんとしたお寿司屋さんに行く予定だったのだけれど、なんと潰れていた。見れば、随分お店が入れ替わっており、空き店舗まである。そのくらい長いこと来ていなかったのだなあ、と思うと同時に改めてコロナ禍での飲食店の厳しさを想う。
 ウロウロした末、11月にオープンした(コロナ禍でのオープン、ブレイブである。)というタイ&インド料理店に入った。お約束のトムヤンスープから始まってガパオライス、パッタイ、グリーンカレー、生春巻きやらに舌鼓。夫はタージマハルの絵がついたビールを頂いていた。父が亡くなってすぐにインドを訪れた日のことを遠い目になって思い出す。次に海外に旅出来るのはいつのことになるだろう。

 ということで、チャイやラッシー、タピオカデザートまで頂いてすっかり満腹になり、帰宅は予定より大分遅くなった。レストラン街は21時閉店になったから間に合ったものの、20時閉店ではまた食事をし損なっていた。廻りでもそこそこの人たちが少人数で食事を楽しんでいた。

 金曜日。
 在宅勤務。起きてすぐ洗濯機を廻し、チャッチャとベランダ一杯に干しつつ夫を見送る。夕飯の下ごしらえも済ませてから勤務開始。いいお天気で、暖かい。これでまたぐっと桜が咲き誇るだろう。体調も良いので我ながら良く動けることに満足。
 昨日は席にいないと出来ない仕事をたんまり片付けたので、今日は自宅で出来る仕事をたんまり持って帰ってきている。

 昼前には避難梯子の点検の方が来た。再配達の郵便だと思ってかつらを被らず、細くドアを開けて判子片手に手を出したのが運の尽き。「洗濯物が邪魔になって上の階のベランダから降りられなかったので、点検にはリビングを通っていくしかない。」と言われ、慌てて最低限片付けてかつらを被って入って頂く。ものの2分で問題なく終わったけれど、在宅していると普段はスルー出来ることが出来ずにトホホなことである。

 お昼にはベランダでたっぷり春風を受けた洗濯物がカラリと乾き、取り入れて畳んで収納。パパッとお助けレンチンランチを済ませる。
 夫の帰宅後はすぐに夕食を済ませてから、最後の時間に行われる、やさしいフローヨガのクラスに初めて参加した。暖かいので、夕食後に出かけるのも苦にならなくなっている。帰りは夫が迎えに来てくれて、夜桜を愛でながら家路についた。

 さて、前の記事でダメダメと書いた母のこと。突然のブレークスルーがやってきた。
 Duo通話に出られなかった時にハートマークを送ってきたと思ったら、雑音だけだったけれど録音を送ってきたり。“とりあえず押してみる”ということが出来るようになったらしい。
 何らかの形でレスがあれば生存確認になる。
 息子のスマホにも電話をしてみたそうだ。その息子からは「お願いだから、おばあちゃんに6時に何度も電話を掛けるのはやめて、と言っておいて。」と泣きの連絡が来た。
 息子の起床時間は6時半である。母は遅くも9時半には寝てしまうので、一体何時に起きているやら・・・。年を取るとそう長くは眠れない筈だし、仮に7時間眠れたとしたら4時半、8時間なら5時半には起きているのかも・・・。

 私には、LINEビデオ電話をかけてきたり、メッセージが既読になったことに加えて、返事が来ている。しかも言葉や絵文字で。これはどうしたことか、ヘルパーさんにでも代わりに打ってもらったのか、驚いて訊いてみると、マイクに向かって話しかけ、それを文字に変換して返事が出来るようになったのだという。
 指で文字は打てなくても音声変換して応答出来れば十分だ。このやり方は教えていなかったのでこちらはびっくりである。一体どのくらい触って出来るようになったのか。驚きの87歳である。
 というわけで、「もう好きにすれば」とブログに愚痴の記事を書いた翌日、あまりにアップトゥデイトな、あたかも記事へのリベンジの如き、格段に進歩した母に驚かされたのである。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2021.3.23-24 緊急事態宣言解除後に思うこと

2021-03-24 21:22:00 | 日記

 火曜日。
 息子ラブの夫は、今日帰阪する息子に付き合って2日続けて休暇。まあ、この時期に及んでも休暇がたっぷり残っているというのだから、少しでも消化しておきたいことだろう。
 一方、私は通常通り出勤する。2人を追い立てつつ朝食を摂り、慌てて出かけたら、案の定お茶を入れたマグを忘れた。あれ、荷物が軽いなと気づいたけれど、後の祭り。自販機のお世話になる。

 前日休暇を頂いた分、溜まったメール処理やら何やらで大車輪。瞬く間にお昼になる。ここ数日の、公私ともにてんやわんやの状態ですっかり忘れていたのだけれど、お昼は3か月半ぶりにランチ会の予約が入っていた。スマホのOSが変わったことでLINEの会話履歴は引き継がれずほぼ全部消えてしまっており、連絡するのに苦戦する。

 いいお天気だ。大学前の遊歩道の桜並木は2分咲きといったところか。
 別の棟にいる2人と、3人でランチ。予めオーダーするメニューも連絡出来たので、待ち時間が節約出来て良かった。往復で30分近く取られてしまうので、食事とお喋りは正味30分もない短い時間だったけれど、マスクを取って黙々かつさっさと頂き、マスクをしてちょっと近況報告をしただけでも随分気分転換になった。

 一方、午前中家にいた2人は、掃除機かけとゴミ捨てをしてくれたようで、お互いが甲斐甲斐しく働く姿のアピール写真がLINEで送られてきた。帰宅してやらなくてはと思っていたことがやってもらえて有難いことである。
 その後、昨日裾上げをお願いしたズボンを受け取り、2人でJR乗換駅のラーメン屋さんでお昼を摂った模様。ちょうど仕事が終わるくらいの時間に、無事新幹線の駅(=息子のマンションの最寄り駅)に到着したという連絡があった。

 私は仕事を終えて、骨盤コンディショニングのクラスに向かった。★2つでかなり筋トレ的な要素が強くキツいクラスではあるのだけれど、K先生の教え方はとても上手でついつい頑張ってしまう。18人の参加で皆さん、かなりしっかり汗をかいていた。すっきりしてポカポカで帰宅。
 駅前のファストフードやら店舗がまだ煌々と明るい灯りを放ち、ああ、もう20時までの短縮営業は終わったのだ、緊急事態宣言は解除されたのだ、と今更のように思う。
 相変わらず感染者数は下げ止まり。2週間後の感染者数がちょっと怖い気もする。

 帰宅後は夫が用意してくれた夕食を有難く頂く。

 水曜日。
体調が良くなってきたと思ったら、早くも来週の今日は治療日である。年度末の最終日という特殊な日に病欠を取り、翌日、年度初めからいきなり体調不良が見込まれる、というちょっとトホホな状況である。

 先週末、既に人事異動の内示が出て、年度末特有の落ち着かないソワソワフワフワした空気が事務室を満たしている。さすがにあと1年で卒業する私は、異動名簿には載らず今のポストに留任になったので、淡々と仕事を進めるのみだ。けれど、なんとなく周りの雰囲気を感じているだけで、落ち着かない気分だ。
 夫も息子も年度末、5日ぶりの出勤だからなかなか大変なことだろう。

 それにしても、母のスマホ扱いは依然として進歩しない。それどころか気づけば退化、全くもってダメダメである。何度連絡しても出ない。
 ずっと(家に)いたけれどテレビの音で聞こえなかったとか、お手洗いに行っていたとか、雨戸を閉めていたとか、お風呂だとか、あらゆる言い訳を言う。
 こちらとは生活のリズムが違うので、仕事の合間に連絡してもなかなか捉まらない。まあ着信履歴に気づかないから折り返してくることも殆どないのだけれど、たまたま折り返してきても今度はタイミング悪くこちらが取れない。

 スマホでビデオ通話が出来れば音声だけより格段に便利だろうし、顔を見て話をすることが出来たら母も安心するのでは、と思ってお子様携帯から思い切ってスマホに機種変更をした。
けれど、なんだかこれでは、お互いにストレス以外の何物でもない感じ。かといって連絡手段は家電のみ、と“振り込め詐欺防止のコメント”が延々と流れる家電に電話をするのでは元の木阿弥であるので、それだけはしたくない。

 かつては瞬間湯沸かし器の異名を取ったが、息子の子育てを経てかなり気長になった夫だが「もうおばあちゃんには無理。何度やってもダメだし、貴女とおばあちゃんのやり取りが不愉快だ。もう止めたら。」と言い出す始末。「バカで甲斐のない親ですみません・・・」と思わず下を向く。

 あれだけ何度もLINEの読み方を教えて、繰り返して私、夫、息子が代わる代わる付きっ切りで練習して、「朝は必ず確認して、既読になるように」とお願いしても、ここ数日は全く既読マークがつかなくなった。甲斐がないということはこういうことをいうのだと思う。

 まあ、母としては、自分は全然困っていないのに、娘の一方的な都合で欲しくもないスマホを持たされ、あれこれ不慣れなことを押し付けられ、出来ないと叱咤されてノイローゼになりそうだ、というのが正直なところなのだろう。全て受動態である。
 「やらされている」感を持ち続ける限り、もはや進歩は望めないとも思う。嗚呼。
コメント (2)
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする