ロッキングチェアに揺られて

再発乳がんとともに、心穏やかに潔く、精一杯生きる

2014.5.31 危うきに近寄らず、の姿勢でいこう

2014-05-31 22:00:53 | 日記
 以前もご紹介させて頂いた読売新聞の医療サイト・yomiDr.の大津秀一先生の連載の最新号にまた深く頷かされた。
 以下、転載させて頂く。

※  ※  ※(転載開始)

 専門家に聞きたい!終末期と緩和ケアの本当の話 大津秀一(2014年5月29日)
 残り少ない時間を奪う免疫・食事療法の一例

 インターネットを検索していると、自身の検索傾向に合わせて広告が表示されることが一般化しています。これを行動ターゲティング広告と呼ぶそうです。
 実際に私がインターネット検索をしていると、右上端の方に「ステージⅣのがんが治った」という免疫治療の広告がかなりの頻度で表示されます。
 私はがんの患者さんではありませんし、これらの治療が効かないことを知っている専門家なので、「困ったもんだなあ」と思うだけですが、本当にステージⅣで悩んでいる患者さんやご家族にとってはどうでしょうか?
 この検索傾向や訪れたページに合わせての広告や、あふれる情報に、危険が潜んでおり、私たちはこれまで以上に情報をしっかり吟味することが求められています。

「良くなっている」と医師は言うが…
 Aさん(45歳女性)は高度に進行した婦人科系のがんでした。
 ネットを検索していて見つけたのは、「この治療でがんが治る!」とうたっている免疫治療のクリニックでした。
 Aさんは親切な免疫クリニックの医師の対応に感動しました。それも後押しして、1回20万円程度する免疫治療を6回受けることにしました。
 免疫クリニックに行くと、「良くなっているね」と医師はにこにこして言います。一方で抗がん剤治療でかかっている医師には「残念ですが、悪くなっている徴候があります」と言われます。
 Aさんは「患者に元気を出させるのも医師の仕事なのではないか。それなのにいつも厳しいことばかり言うのは良くない」と、かかりつけの抗がん剤治療をしている医師に不信感を抱き、一方で免疫治療の先生の言うことをますます信じたのでした。
 Aさんは急激に体力が衰え、歩きにくくなりました。免疫クリニックの先生に相談すると、こう言われました。
 「がんは良くなっているけれども、食べられないから体力が落ちていますね。かかりつけの先生に栄養点滴をしてもらってください」
 これまでの連載に述べて来たことから皆さんもおわかりのように、Aさんの悪液質はかなり進行し、栄養療法が効くような状況ではありません。追い打ちをかけるように、こんなアドバイスももらったのです。
「体力を上げるために、食事は玄米中心にしましょう。血液をきれいにするために、肉も食べてはいけません」
 高度進行がんを抱えているような消化吸収能力が通常よりも低下している場合は、むしろ玄米は体に負担をかける可能性があります。実際に体力低下によってかむ力も落ちている中を一生懸命かんで食べていたようですが、便にはそのまま玄米が交じって出て来てしまいました。
 「先生、下痢になってしまって…」
 Aさんが免疫治療の先生に言うと、「毒素が一緒に出ているんですね。良いことです」とやはり笑顔だったそうです。
 その後Aさんはかかりつけの病院に入院しました。
 「クリニックの先生は良くなっていると言っているのに! おかしいんです」
 Aさんもご主人も口々に言いました。本当に残念なことなのですが、Aさんがご主人と過ごせる時間は長くありませんでした。
 この場合の効かない免疫・食事療法のデメリットは2つあったと思います。
 体に合っていない食事療法で消耗を早めた可能性があること。これが1つ。
 もう1つは、治ると信じたため、免疫治療に時間と労力、お金を費やして、限られた時間を「よく生きる」というためには何もできなかったことです。ご主人は、釈然としない表情を浮かべていらっしゃいました。もっと2人で残された時間に「治す以外のことも考えよう」と歩んでいてくれたらと残念に思います。

おいしい話に騙されるより…おいしい食事を
 こんな話、本当か? と皆さんはお思いになるかもしれません。
 私だったら騙されるはずはない、そうおっしゃる方もいるかもしれません。
 しかし弱っている人やその周囲は追い詰められているがゆえに判断力も鈍ってしまうことがあり、藁どころか毒をつかんでしまうこともあります。
 先日も「食事療法でがんが治った」というネットのページをたまたま閲覧すると、「抗がん剤をしていたのですが治らず、食事療法で治った」というものを見つけました。「抗がん剤が効いたのではないか?」「おのずと治ったのではないか」などという疑問に答えることができないのが、このような報告です。
 「おいしい話に騙されるよりも、おいしい食事を取ってほしい」。そのようなほうがよほど長生きする、現場で見ているとそう思うのですが、現場と乖離した嘘ばかり拡散されてしまうのは悲しいことです。

(転載終了)※  ※  ※

 先生も書いておられる通り、私のブログにもよくこうしたがん関係の広告が見え隠れする。ハンドル名からなのか、椅子関係の広告が貼り付けられていることも多い(笑)。ヨガスタジオや泊まろうかと検索したホテルの広告などなど、本当にもう結構ですから、放っておいてください、と辟易する。こうして行動をチェックして広告を打ってくるのはなんと鬱陶しいことだろう。正直、勘弁してほしいと思う。

 さて、本日のお題“免疫療法”について私のことを言えば、これまで、“免疫療法”や“民間療法”のお世話になろうと思ったことはないし、この先も多分ないだろう。

 こうした免疫療法は自由診療だから全額自己負担。最低でも1クール(6回)の治療を受ければ200万を下らない、という破格な治療である。確定申告をすれば医療費控除にはなるとは書いてあるが定かではない。高額医療費の対象にはならないことは明示されている。
 あなたにはまだ、標準治療である保険が効く治療薬が残っているから、そんな強気で流暢なことを言っているのだろう、と言われるかもしれない。けれど、逆にこの免疫療法が十分な奏功のエビデンスがあれば、保険診療になる筈なのだけれど・・・。
 実は、かつて夫から、お金のことはどうにでもするから、こういうのもやってみたらどうか、と持ちかけられたことがある。どんなものか、とパンフレットを取り寄せてみたこともあるけれど、どうにも触手が動かず、それっきりだ。

 不思議なことに、何故こんなに冷静沈着な方が・・・と思うような方が、この免疫療法にかかっておられたり、薦めておられたりしていることを知って驚くことがある。かつて実際に免疫療法を経験された方の中には、それでは何の効果も得られないどころか、更に転移病巣が増えたため、観念してそれ迄嫌だと逃げ回っていた抗がん剤治療を受けたところ、奏功して何年も普通の生活が出来たという方もいる。結局、その方は数百万円をドブに捨てる羽目になったと伺った。
 人は追い詰められるとそれほど弱いものなのだろうな、とも思う。けれど、そういう弱さにつけ込む様々なビジネス(あえて医療ではなく、ビジネスと言いたい。)が後を絶たないことについて、患者としてやりきれないとともに、哀しく思う。

 もちろん、全てが出鱈目であるとは思わないし、中には効いた方もいるのかもしれない。けれど、「化学療法と併用する方がより効果が高いから、かかりつけの病院での治療は止めないでください」とも謳っているから、実は効果がないことがわかっていて、それを隠ぺいするために“効果が期待できる病院での治療”を継続させようとしている、とも勘ぐることが出来る。そして当然のことながら効いた症例しか取り上げておらず、その後ろに隠れている筈の数え切れないほどの効かなかった症例についてはノーコメントだ。もちろん、今後研究が進んで、標準治療に格上げされる日がくるのかもしれないけれど、現段階であまりにエビデンスが少ないように感じるのは私だけだろうか。

 免疫療法で有名なあるクリニックのHPを見ると、それはそれは見事に美しくレイアウトされ、治療費用等もきちんと明示されている。これだけ至れり尽くせりの個別化治療を施すこの医療(ビジネス)の一体どこが信用できないのか、という感じを受ける。
 けれど、少し冷静に考えてみれば15年間で16,000人の患者のうち、例えば乳がんの症例が1,000ちょっとであり、奏功した例としてたった1例しか掲載されていない、さらにその症例は10年以上前のものだ、ということをどう捉えたらよいのか。
 この療法がどれほどのものか、というのは一目瞭然のように思うのだが、いかがなものだろうか。

 辛く苦しい時に、事実に触れずに口当たりの良いことだけを言ってくれる人が果たしていい人なのだろうか。決してそんなことはないだろう。
 それよりも、厳しい事実をきちんと伝えてもらい、それを受け容れながら、日々を大切に精一杯過ごし、美味しい食事を少しでも長く摂る方がずっと幸せなことではないか。
 結果として、Aさんのように最期の時間を早め、取り返しのないことになった時に、一体このクリニックの医師はなんとおっしゃるのだろう。

 後味の悪いことにならないように、私は危うきに近寄らず・・・の姿勢でこれからも標準治療を続けていきたい、と思う。
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2014.5.30 リビング・ウィルを書きながら

2014-05-30 20:04:32 | 日記
 昨日に続き、たぁさんの住む街の訪問看護師Oさんたちとお話をした時の話題から、2つ目。
 それは今日の標題である“リビング・ウィル(終末期の医療・ケアについての意志表明書)”の内容だ。

 再発が分かった時、そして最初の抗がん剤治療・大量タキソテールで心身ともに落ちるところまで落ちた時、夫や小さかった息子に宛てて遺書めいたものを書いたことがある。
 が、様々な治療やその時々々の体調に、それなりにうまく付き合えるようになってからは、お目出度いことにずっと放りっぱなしで、更新することなく、これまで過ごしてきた。

 ここ数年、義母や複数の患者仲間を続けて見送り、今後どういう経過を辿るにせよ、リビング・ウィルを書面の形で残しておくことは絶対に必要だ、と思っていた。
 リビング・ウィルは年月日を記載して署名捺印するものだから、その時点での意思表示であり、変更も撤回も可能だ。そして家族の了解(署名捺印)もあわせて取っておかないと、最終的に家族がゴーサインを出さず、本人の意向が尊重されないこともあるという。
 あくまで私が書いたリビング・ウィルは、今患っている多発転移性乳がんが終末期になった場合で、それ以外の病気の場合には該当しない。

 たまたま先日読んだ柳田邦夫さんの著書で、柳田さんご自身のリビング・ウィルを拝読しながら背中を押されたこと、また、朝日新聞の医療サイト・アピタルで長尾和宏先生が連載中の「町医者だから言いたい!」で、ごくごくシンプルかつ必要十分なものが紹介されていたことから、それらを参考に書き始めたところだった。

 具体的には「私のがん終末期医療に対し希望すること」という題名だ。

 1 心臓マッサージなどの心肺蘇生:して欲しくない
 2 延命のための人口呼吸器:つけて欲しくない
 3 人工透析の開始:希望しない
 4 胃ろうによる栄養補給:して欲しくない
 5 鼻チューブによる栄養補給:して欲しくない
 6 点滴による水分の補給:して欲しくない
 7 その他の希望

 7の“その他の希望”のところで、痛みについては最大限緩和して頂きたいこと、そしていわゆる“せん妄状態”になった時に、セデーション(鎮静)してほしい、私が私であるうちにお別れをさせて、眠らせてほしい、としたのだ。
 これまでの人生、一応理性を持ってコントロールしてきた(つもり)にもかかわらず、その最終段階で、自分が判らないまま信じられないこと(何を言い出すのか私自身皆目わからないことが怖い。夫が言うには、私はよく寝言をいい、それがいかにもありそうな話なので、つい「それでどうしたの?」と聞いてみると、なんと私はそれに答えるというのだから、これでは最終段階での振る舞いもどうなるか分かったものではない。)を言い出すのは、とても耐えられない。そうした最期の私を家族が目の当たりにして、それが私という人間の印象として残っていくのであれば、それは耐えられない、というつもりだったのだ。

 が、そう言ったところ、Oさんがおっしゃったことは、とても慈愛に満ちていた。「それもこれもひっくるめて、家族や大切な人たちに受け容れてもらうのです。」と。「(お母さんは)大切な皆さんとうまくやっていくために、理性的にいろいろ我慢していたのですよ。思っていることもぐっと我慢して口に出さずにいたのですよ。それが、もしその場で出てくるのだとしたら、(そこまで我慢し続けたお母さんに)感謝しなければならないですよね。」と。
 思わず、唸った。

 それと、これ迄、なんとなく最期は病院(もしくはホスピス)で迎えるしかないのだろうな、と思い込んでいたのだが、いろいろなお話を伺ううちに、もしかしたら在宅を諦めることもないかも・・・と思うようになってきた。

 もし病室ではなく、自宅で逝ければどんなに幸せだろう、と思う。介護保険も駆使して、夫がOKしてくれて、近くに信頼出来るかかりつけ医(たとえば家族ぐるみでお世話になってきたクリニックの院長先生)と、訪問看護師さん(現在確認中)を見つけることが出来れば、それも不可能なことではないかもしれない。

 もう少し、いや考える時間はそれなりに十分ある筈だ。
 その都度、更新しながら、私にとっても、家族にとっても一番いい形でリビング・ウィルを書いておければ、と思う。

 ようやく週末。長い1週間だったけれど、なんとか途中ダウンすることなくやり過ごすことが出来た。今日もいきなり夏のような暑さ。水分をたっぷり摂って、夜更かしは避けて、消耗しないようにしなければ。

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2014.5.29 積極的治療の止めどき

2014-05-29 20:09:23 | 日記
 先日、たぁさんの住む街の訪問看護師Oさんとお話をした時、私が今、一番訊きたかったことを話していただいた。
 このことについて2日に分けて、書いておきたいと思う。

 1つ目は、今日の標題の「積極的治療の止めどき」だ。いわゆる抗がん剤治療から、いつ、身を引くのがベストか、ということだ。もちろん“いいとこどり”が出来るタイミングのことを言っている。出来るだけ長く薬が奏功して、しかもその後の身体を出来るだけ長持ちさせるための、引き際である。

 初発患者は完治のためにきつい抗がん剤治療を行う。期間限定、回数限定であり、再発しなければそれで目出度く終了、のものだ。
 一方、再発患者は、文字通り延命のため、少しでも長く命を繋ぐためにきつい抗がん剤治療を続ける。けれど、長く治療を続けても、がん細胞はだんだん形を変えながら生き延び、ぶり返してくるものだ。いずれ徐々に進行して身体を蝕んでいく。そうなれば、遅かれ早かれ、毒である抗がん剤が弱った身体を打ち負かす日がやってくる。骨髄機能や肝機能、腎機能がダメになれば、その時いくらまだ使っていない薬が残ってはいても、治療を続けることは出来なくなる。
 そして、そうなった時、身体の中にあるがん細胞はラストスパートの増殖を続けて、宿主を食いつくし、挙句、自らも死滅していくというシナリオが出来上がっているわけだ。

 出来るだけ長く自分の中のがん細胞と共存-がん細胞が体内にあっても生命を脅かさない状態でコントロールしていく-しながら、もはや・・・となった時、どのタイミングで抗がん剤を止めるのがベストなのだろう、とずっと考えてきた。

 がんを原因とする辛い症状が出て、それを緩和してくれる(結果的に延命出来る)抗がん剤治療が出来るなら、それは迷わずやるしかないだろう。
 けれど、自分の身体の状態も考えずに、やみくもに効くかどうかわからない新しい薬を使い続けることは、決して賢いことではないとも思う。奏功するかどうかは人体実験のごとく、自分の体で試してみないことにはわからない。たとえ辛い副作用があっても、本来の作用がきちんと出てくれればよいけれど、作用は殆どなく、副作用にだけ身体を痛めつけられるだけになるとしたら・・・これまでせっかく抗がん剤で命を繋いできたのに、最期にその抗がん剤に命を持っていかれるとしたら、やるせない。

 あまりにギリギリまで抗がん剤治療を続けると、そのゆるゆるとした最期の時期はあっという間に終わってしまう、と聞いていた。
 だから、“いいとこどり”をするためには、自分の身体の声を聴きながら治療を進めていくのが一番だろう、と思ってきた。
 ここで止めなければ、薬が効いてくれるより前に自分の身体がやられてしまう、だからもう積極的治療は止めて、緩和治療に移行しよう、と。もう十分頑張ってきた、だから今後、痛みや不快な症状を抗がん剤でない方法で取り除いてもらうことが出来るならば、ゆるゆると最期の時期を迎えよう、という思いに至ることが出来るのではないか、と。

 が、いわゆる末期のがん患者さんたちを沢山在宅で看取ってこられたOさんによれば、止めるタイミングは、患者自身が聴く自分自身の声というよりも、闘病をずっと傍で見てきてくれた家族が一番判るのだという。
 土壇場の段階になった時、これまで頑張ったのだから・・・、と頑張った患者さんほど、“止める”という決断がしにくくなるようだ。もちろん積極的治療を止めるということは、自分で迫りくる死を黙って待つということに他ならないから。

 結局、自分のことは最終的に客観的に見ることは出来ないのだろうか。
 自分のこと、自分の闘病を一番よく判ってくれている筈の夫を大事にしなければな、と改めて思わされた瞬間だった。



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2014.5.28 入学と卒業―記念アルバムは注文済み!

2014-05-28 21:15:45 | 日記
 息子の大学入学から2カ月近くが経過した。
 今や本人から連絡があることは殆どなく、用事があって「Skypeに出て」と連絡しても「まだ外出中」とか「帰宅途中」とか、つれない返事が多くなってきた。
 LINEしても既読スルーが専らで(電池切れで既読にならないことすらあり)、答えがあってもせいぜい一言。何か欲しいものがあるときだけは喰いついてくるけれど。
 とにかく、忙しくも楽しい大学生活(部活生活?)を送っているようで、何よりだ。いつまで新入生歓迎シーズンのVIP扱いが続くものやら、である。
 一方、彼が声も高らかに始めたブログ「みやこ暮らし」の更新はすっかり滞っている。更新のないのは良い知らせ、ならば良いのだけれど。なんとも竜頭蛇尾なことである。

 さて、先日、大学生協から入学記念アルバムの予約購入案内がきた。そういえば、入学式当日、広報の腕章をした方に3人揃って写真を撮って頂いた。「何かに載るのですか?」と訊いたら、「必ず載りますから」とのお答え。何に載るのかまで訊かなかったが、HPにアップされた入学式の様子等では見当たらずじまいだったので、没かなあと思っていた。

 当然のことながら、普段の息子の大学生活の全貌はなかなか知りようもない。となれば、こういうものでもあれば少しは息子のキャンパスライフを垣間見ることができるかも、という気にもなる。全クラス集合写真が掲載されるのは4年間でこの一度だけです、等という気になる謳い文句も満載だ。
 そもそも大学には、入学式10日前に一度雰囲気を見に行っただけで、あとは入学式当日に行っただけ。息子が部活の練習で毎週のように通っているという琵琶湖に近いキャンパスは行ったことも見たこともない。
 まあ、これは一生に一度の(筈)記念だし、そもそも写真が大好きな私が記念アルバムを逃すわけがない、ということで早速予約購入することにした。6月末迄の予約販売特別価格で税・送料込1万円也、発送は8月上旬とのことである。

 アルバム騒ぎはまだ続く。この振り込みを終えて、1週間もしないうちに、今度は「大切なお知らせです。必ずご開封ください!!」という封書が届いた。
 封を開ければ今度は卒業アルバム(!)の早期割引最終ご案内である。入学して2カ月で、もう卒業!? そもそも大きな声では言えないけれど(本人には、もしそうなったら強制送還と言い渡してある。)4年で卒業出来るのかどうか・・・という一抹の不安もある。が、大学側では4年後の卒業に備えて早くも準備は始まっているようだ。驚いたことに、今後何らかのご事情で卒業年が変更になる場合も、ご連絡頂ければご卒業年度のアルバムに振り替える等の対応をさせて頂きます、とのこと。
 いやはや、なんとも心憎いというか至れり尽くせり、というか、痒いところに手が届くというか、過保護というか・・・。結局、4年後に無事卒業出来ることを望んで、駆け込みでこちらも振り込みをした。今月末迄2,000円の予約割引が効いて2万円也。これを「お忘れではございませんか?」とのこと。
 「お忘れではございませんか?」も何も、こんなお知らせがあったのかどうかすら私は全く記憶になかった(とにかくいろいろな書類やDMが入り乱れて、もうオーバーフロー状態だった)のだが、夫は「そういえば、入学式の時に生協に貼ってあったような気がする」とのこと。そうでしたか・・・。

 4年後、2018年8月頃に出来上がってくるという卒業アルバム、果たして目にすることが出来るだろうか。生かして頂いていれば57歳になったばかり、再発治療開始から10年半超えの快挙である。
 再発当初、高校の卒業式にも出られないかもと言いながらも、気付けばこうして大学生の母になり、入学式に列席することが出来た。さらに味を占めて、今度は大学卒業まで・・・などと思っている欲深な私である。

 いずれにせよ、もしその時私がいなくなっていても、卒業アルバムはもう注文済みだから、2重に申し込まないでね、と言っておくために記事にしておきたいと思う。

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2014.5.27 大きいことはいいことだ!とは言わないけれど・・・

2014-05-27 20:21:27 | 日記
 再発進行乳がんという病を抱えて6年半の間、治療を続けながら変わらない身分(処遇)で仕事をさせて頂いている。
 そんな中、気になる記事を見つけたので、以下、転載させて頂く。

※  ※  ※(転載開始)

企業におけるがん検診 大企業ほど発覚後就労継続率高い(2014.5.17:財経新聞)

 愛知県は、5日までに780社を対象に従業員の健康管理に関する調査を行った。調査期間は平成25年12月13日から平成26年1月13日。回答数は178社。
 「貴社では平成24年度中に、検診後がんと診断された従業員はいましたか」との問いに対して、「はい」と答えた企業は82社で46.1%、「いいえ」が75社で42.1%、「わからない」が18社で10.1%、無記入が3社で1.7%。
 上記のうち「はい」と答えた企業を対象に、「がんと診断された従業者の中で、就労継続している従業者はいますか」の問いに対して、「はい」と答えた企業は73社で89%となった。一方、「いいえ」と答えた企業は9社であり全体の11%にとどまった。
 企業規模別に見ると、1000名以上の規模の企業では、「はい」が97%、300から999名規模の企業では、92.6%、100から299名の規模では84.6%、さらに50名から99名の規模ではぐっと減少し33.3%。企業の規模と、従業員のがん発覚後の就労継続率は比例の関係にあることが分かった。
 従業者の健康管理等体制に関して、従業員の健康管理を行う産業医・産業保健師・産業看護師等のいわゆる産業保健専門職の配置について尋ねたところ、「すべての事業所にいる」と答えた企業が、11社で6.3%、「一部の事業所のみいる」が36社で20.1%、「いない」が131社で73.6%となった。企業規模別では、「いない」と答えた企業は、1000名以上で33.3%、300~999名で80%、100名から299名で83.3%、50~99名で95.5%、49名以下で93.8%となった。企業規模が大きくなるほど、産業保健専門職常駐の割合もまた増すことが分かった。
 企業規模が大きくなるほどがん等の発覚後も働きやすく、産業保健専門職等のサポートも受けやすいことが伺える結果となった。今回の調査では、がん発覚後の退職事由については明らかになっていないが、産業保健専門職在中等の企業側の従業員に対する就業環境の整備にも一因があるのではないかと思われる。一概に働きやすさと企業規模が比例するとは言えないが、健康管理体制に関しては、大企業のほうが整備が進んでいると言えそうだ。(編集担当:堺不二子)

(転載終了)※  ※  ※

 なるほど、さもありなん、と思う。今、こうして働かせて頂けている私はとても恵まれた環境にあることも十分理解しているつもりだ。
 さすが大企業ほど職場環境が良い、やはり大企業に就職すべきだ、等と安直なことを言うつもりは毛頭ない。けれど、実際、小さな会社で一人一人の負う所が大きければ大きいほど、雇用主として、長期の休みもどうぞご自由に、通院の度にゆっくりお休みください、等という綺麗事はそうそう言っていられないのだろう。

 もちろん、働く側もしかり、である。自分が不在になることで周りにどれだけの影響が出るか、迷惑をかけるか、本人が一番良く分かっているから、とても切り出せない。長期に休まなければならない、仕事に穴を開けることになる、となればやんわりと、ではどうぞ退職してください、と言われるか、それとも、職場には黙ったまま休日に開いている病院を探して、綱渡りの通院治療を続けながら何もなかったように働く、しかないわけだ。

 が、これからの社会が、それであり続けていい筈はないだろうと思う。
 今やがんは2人に1人がかかる病気である。知識も経験もある働き盛りの人材が、がんという病気になれば退職を余儀なくされる、職場という生活上大切な柱を外され、安心して病と闘うことさえ出来ず、声を上げることさえ出来ず職場を去っていくとしたら・・・その社会的な損失はどれだけ大きなことだろう。
 ただでさえ少子高齢化の世の中である。高齢者を支える側の人間はますます少なくなっているのに、である。

 がんという病気は一度切ったらそれで終わり、ではない。経過観察をして一定期間再発しなければ目出度く完治ではあるけれど、他の病気と違って完治となるまでの期間が長いのも事実だ。卒業まで一般的には5年、乳がんに至っては10年単位である。そして、一旦再発してしまえば、完治は望めず、治療はエンドレスになる。そうなったらもう綺麗サッパリお辞めになって治療専念すればよいではないですか、とは言わせまい。その後延命治療をするために、一体どれだけ高額の治療費がかかることか。金の切れ目が治療の切れ目、この薬を使えば間違いなく効くと判っていても、その高額な治療費が払えなくて、命を繋げない、という哀しい現実をみすみす見ないふりして放置していいのだろうか。
 
 自分には無関係、自分はがん家系ではないからがんにはならない、という時代ではない。
 明日は我が身、と自分に引き寄せて考えることが出来るならば、がんになっても安心して働き続けられる社会を皆で創っていくことが出来るのではないか。そしてそうあってほしい、と心から思う。

 そうあるためには、患者自身も必要以上にがんという病を隠して働くことは止めた方が良いのではないか、と思う。もちろん不摂生を重ねて発症するがんもないわけではないけれど、がんになったのは、決して自分が悪かったから、ではない。 誰でも罹患する可能性のある病なのだ。そして、がんになったら即、翌日から死の床に就くわけでも、働けなくなるわけでも、ない。確かに外科手術後はある程度の期間休まなければならない。けれど、一旦初期治療が終わって経過観察になれば、今まで通り普通に働くことが出来る。抗がん剤治療中は体調が優れない期間はあるけれど、四六時中具合が悪いわけでもずっと寝たきりであるわけでもない。
 それに、この辛い時期を経験することによって、むしろ、人の痛みが分かる人材として、生まれ変わっているのだと思う。そこには、健康であり続ける者の到達できない景色があって、それが活かされないのは、それこそが大きな社会的損失なのではないだろうか。

 このまま、がんと言えば辞めるか、黙って働き続けるか、の二者択一であってはならない、と強く思う。
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