ロッキングチェアに揺られて

再発乳がんとともに、心穏やかに潔く、精一杯生きる

2017.1.30 27年経っても妻に恋してる!~恋妻家宮本~

2017-01-30 22:43:10 | 映画
 以前読んだ重松清さんの「ファミレス」が「恋妻家(こいさいか)宮本」として映画化されたので、夫を誘って観てきた。
 まあ、私の贔屓の俳優である阿部ちゃんが主演だから、夫に断られたとしても一人でも絶対観に行くつもりではいたけれど。

 珍しく黙って付き合ってくれて、ここはツボか、と思う場面ではそのとおりに素直にぼろ泣きしていた。大丈夫?と何度か顔を覗き込んだほど。かたや私はコミカルなシーンで実によく笑って、免疫力アップになった。

 大学時代にファミレスの合コンをきっかけに付き合い始め、授かり婚。新郎は大学院進学を諦め教職に就き、新婦は目指していた教職を諦め専業主婦に。結婚生活27年を経て、一人息子の自立を機に50歳にして初めて2人の生活が始まった宮本夫妻が主人公だ。

 我が家も先日結婚27年を迎えたところ。とはいえ、息子を授かるまでに6年近くかかったし、大学進学を機に3年前に家を出たので、3人で暮らしたのは息子が高校を卒業するまでの18年、それ以外の9年は夫と2人暮らしだから、ちょっと状況は違うのだけれど。

 阿部ちゃんは、ファミレスのメニューも決められない優柔不断な中学教師・宮本陽平を実に愛すべきキャラクターとして演じているし、こんなに綺麗で背筋のシャンとした50歳の専業主婦はそうはいないだろうな、という天海祐希さんも顔にパックしたままの姿で登場したり、うたた寝しながらお尻を掻いたり・・・えっ、そんなことまでしていいんですか、と思うほど体当たりの演技だった。

 原作は結構アレンジされてぎゅっと濃縮されていたけれど、複雑な家庭の事情を抱える教え子のドン君の思春期男子の演技も、しっかり者のクラスメイト・メイミーちゃんも良かったし、この作品のテーマである「正しさより、優しさ」に気づかされるおばあちゃん役の富司純子さんの、最初に出てくる般若のような顔(脚本にはそう書かれていたそうだ)というのもなかなか凄かったし、若い男と不倫の末に事故にあって入院中のドン君のお母さんは、一言もセリフがない中、その存在感は大したものだった。

 他にも、宮本が通うお料理教室の仲間の2人の女性たちがこれまた魅力的。いってみれば脇を固める人たちもまた皆が愛すべき人たち。エンディングでは、人は悩みながら色々な選択を重ねて生きてきて、これからも人は悩み、色々な選択をしながら生きていく、という吉田拓郎さんの「今日までそして明日から」の唄に載せられたメッセージ。観終わってとても暖かく幸せな気分になった。

 別に阿部ちゃんファンだから甘い採点というのではなく、50歳以上の歳を重ねたご夫婦に限らず、どなたもご覧になって損はないと思うのだが、どうだろう。

 今日は息子の21歳の誕生日。結婚27年を過ぎた我が家で、夫から、27年経っても妻に恋をしている、と言ってもらえてニヤニヤしている私からのお勧めである(蛇足)。
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2017.1.28-29 ジェムザール投与後初の週末、体調のこと

2017-01-29 20:52:21 | 日記
 土曜日。
 朝、ベッドの中で朝の連続テレビ小説を視る。その後は二度寝。小一時間のつもりが全然起きられなかった。気づけば予定より2時間半ほど寝坊。のろのろ起き出すと、予約していた洗濯物がベランダに干し終わり、ダイニングテーブルには朝食の準備も出来ていて、夫は月1のクリニック受診に出向いていて不在だった。

 やや気持ち悪さが軽減している。ドンペリドンを飲んで、夫が戻ってきてから一緒にブランチとして頂く。食べられたのはいつもの半分程度か。
 気持ち悪さが軽減しているといっても、倦怠感、身体の重さは相変わらず。何もする気が起きない。結局、リビングで横になってビデオを視たりしてダラダラ過ごす。不思議と本を読む元気も起きない。

 それでも薄紙を剥ぐように少しずつ体調が戻ってきている感じ。午後、1日半ぶりに外に出た。割と暖かい。洗濯物を畳んで、追加で2回洗濯機を廻した。
 夕飯も夫が準備してくれた。お腹が空いて、3日ぶりに夕食らしき夕食を頂いた。食欲はないけれど、味覚異常というわけではないので、いつぞやのように酸っぱい味しかわからないから、何に対してもポン酢をかけて食べるしかなかったという状況ではない。出汁の利いたお雑煮は胃の腑にしみて美味しかった。

 沢山寝ている筈なのに、眠くてだるくて入浴後は早めの就寝。
 昨年秋に急逝された高校時代の恩師を偲ぶ会のお知らせや、ヨガの指導者養成コースの自主おさらい会のお誘いが入ったり、大学時代に所属していた合唱団の同期が一時帰国する度に開かれる同窓会の連絡が来たり。残念ながら治療後の体調がこれでは、とてもではないが予定が立たない。

 日曜日。
 少しだけ寝坊。元気が復活していたらリラックスヨガに参加して、気持ち悪さに凝り固まった身体をほぐしておきたいと予約をしていた。
 なんとか気持ち悪さは収まって、今朝は4日ぶりにほぼ普通の朝食を頂いた(それでもまだ青汁はパス)。ドンペリドンの助けを借りることなく食事を摂れたが、体重計に乗ってみたら、今回の食欲不振であれよあれよと2キロの減。

 これまでも、3週間に1度カドサイラ(T-DM1)投与後2,3日の気持ち悪さのせいで1キロ減り、次の投与まででもとに戻していたと書いたけれど、さすがに毎週2キロ落ちていてはリカバリーが間に合わない。明日明後日でしっかり食べてせめて半分でも戻しておかなければ、と思うが、どうも胃が小さくなっている感じ。朝、元気のあるうちに夕飯の下ごしらえを済ませる。

 熱を測ってみても平熱だが、とにかくだるくて熱っぽい。力が入らずフラフラする。ホットの環境で汗をかいて脱水でひっくり返っては大変なので、大事をとってヨガはキャンセル。あ~あ。

 気を取り直して、さぼっていた掃除をのんびり済ませ、午後からは月1回のお楽しみマッサージと美容院のカットの予約を入れていたので、こちらだけ出向くことにした。
 サロンのWさんからは「顔色が悪いですね」と。確かに目の下はクマでくすみまくっているし、目チカラはないし、なんとも冴えない顔をしている。

 金曜日の午後以来家でダラダラしていたのを、電車に乗るからと奮起してお化粧して出かけたのだけれど、やっぱり隠せないようだ。最初は体調のことをあれこれお話していたけれど、あっという間に爆睡。目覚めて鏡に映る顔を見たら、大分元気な感じになっていた。

 その後、美容院へ移動。イマイチ体調不良なので、ヘッドスパは諦めてシャンプーカットブローだけに。ラッキーなことに空いていて、殆ど待ち時間なくスムーズに終わった。スッキリとカットして頂いて、随分顔つきが元通りになったみたい。

 そして夕食。朝準備をしておいたポトフで4日ぶりに4日分の野菜を摂った感じ。やはりお腹に入れないことには元気は出ないのだ。
 今日もゆっくり湯船につかって、早めに休んで明日からに備えよう。
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2017.1.27 ジェムザール投与2日後の体調雑感

2017-01-27 21:54:33 | 日記
 新しく始めたジェムザールのせいなのか、吐き気止めとして事前に投与されたデキサート(ステロイド・デカドロンのジェネリック薬)のせいなのか、気持ち悪さと顔のほてり、熱っぽいのだけれど寒気がする、そんな嫌な気分が今日も続いている。

 吐き気とだるさは相変わらず。昨夜は煮炊きをするのが嫌で、夫には申し訳なかったがほぼ冷凍食品オンパレードの食卓になった。食べられた量は普段の3分の1程度。今朝はいつも頂く青汁がどうにも飲めない。パンも果物も申し訳程度。ドンペリドンの助けを借りてなんとか流し込む感じ。

 今日も仕事が山積だったので、絶不調のまま出かけた。なんとか午前中に大車輪で片付け、午後は強引に休みを頂くことにした。外に出てやけに暖かい風が吹いていたと思ったら4月上旬の陽気だったそうだ。

 来週水曜日は再びジェムザール。この土日でなんとか復調して、週明けの月曜・火曜はしっかり前倒しに仕事を片付けて稼いでおきたい。わかってはいたけれど、やはり2投1休のスケジュールは忙しい。木曜日は恐らく絶不調のまま締め切り仕事を片付けてから、東京横断の臨時会議に出向くことになっている。来週金曜日には1クールの投与が終わったところでどのくらい復活しているものやら。

 考えても仕方ないとはいえ、もろもろ考えるとあ~ァ、である。とはいえ、具合が悪い悪いといって一日どこにも行かず家に篭ったら、あっという間に引き篭もりになりそうである。出かけて行くところが病院だけ、というのではいかにも病人ではないか。

 病気になったけれど頭のてっぺんからつま先まで病人になりきらない、家以外のもうひとつの居場所―職場―があること、それがここまで頑張ってこられたつっかい棒のように思っている。

 さて、ここでずっとご無沙汰していた点滴制吐剤デキサートの副作用を復習しておきたい。
 ①満月様顔貌・肥満(ステロイドによる脂肪細胞の増殖および水分を体内に取り込む作用で起きます)
 ②細菌やカビなどの感染症に弱くなる(免疫を抑えるため防御が下がります。普段なら感染しないような特殊な菌にも感染しやすくなります)
 ③糖尿病(ステロイドが筋肉や脂肪を燃やし血糖値を上昇させます)
 ④胃潰瘍・十二指腸潰瘍(ステロイドが胃腸に働くことでストレスがかかります)
 ⑤高血圧・浮腫(ステロイドで血管が収縮します。さらに水分やNaを貯留するため血管内の水分が増えます)
 ⑥肝機能障害(ステロイドが肝臓を通して炎症を抑えるため負担がかかります)
 ⑦緑内障・白内障(ステロイドで眼圧が上がったり、目のレンズが濁ったります)
 ⑧精神障害(ステロイドでイライラしたり眠れなくなります)
 ⑨骨粗鬆症(ステロイドは骨にも作用し、骨密度が低下します)
 ⑩筋力低下(ステロイドによる筋肉を分解する作用で筋力が低下します)
 ⑪月経異常(ステロイドホルモンは性ホルモンと似ている部分があるため、生理不順が起きます)
 ⑫ニキビ・皮下出血(皮膚の代謝異常でおきます。ステロイドで皮膚や筋力が衰え出血しているように見えます)

 ①のムーンフェイスはもうしっかり始まっている気がする。夫に言わせれば(もともと丸顔なんだし)自分が思っているほど酷くないというのだけれど、とにかく顔が赤くほてって熱く浮腫んだ感じ。熱っぽいというか、熱が出ている時のぼーっとした顔をしている。ステロイドによる脂肪細胞の増殖及び水分を、体内に取り込む作用で起きるという。ステロイドにより血管が収縮して浮腫が起こる、となると5ともセットである。

 ⑧の、イライラして眠れなくなるは、今のところ割と大丈夫。吐き気と疲れが勝っているせいか、とにかく眠くてだるくてたまらない。今日の午後は殆どリビングに横になったきりで、撮り溜めたビデオをかけながらウトウトウトウトのしっぱなし。

 そして、⑫。皮膚の代謝異常により普段できない吹き出物がぽつんと出た。やっぱり嬉しくない副作用である。

 こう書くといかにもステロイドが悪者のようだけれど、そうではないことは重々承知している。これで制吐剤がなければ、もっと苦しいのは想像に難くない。天秤にかけてどちらの副作用を我慢するか、ががん治療というものなのだろう。

 何はともあれ、ようやく土日。先週リトリートに参加して家事も御留守だったので、リハビリ方々少しずつ動き出したいものである。
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2017.1.26 昨日通院日に読んだ2冊とジェムザール投与翌日の体調のこと

2017-01-26 21:36:45 | 読書
 昨日は2冊目が途中までで、今日もまだ読みきっていないのだけれど、記録のために。
 1冊目はさだまさしさんの「ラストレター」(朝日文庫)。
 帯には「真夜中に1枚のはがきが奇跡を呼び起こす。抱腹絶倒&感涙ポロポロの長編小説」とある。裏表紙には「聴取率0%台。人気ゼロの深夜ラジオ番組を改革しようと、入社4年目の新米アナウンサーが名乗りを上げる。何という無謀!しかしファクスやメールでなく、リスナーからの「葉書」に頼るという方法が、小さな奇跡を起こし続けて・・・」とある。

 深夜のラジオというと、私は大学受験時になんとなく聞いたラジオ講座等を思い出すけれど、今の若い人たちはラジオなど聴くのだろうか。昭和は遠くなりにけり、なのだけれど何分懐かしい。オヤジギャグにダジャレに、シモネタ満載。放送禁止用語が炸裂しながら、気づけば最後はウルウルさせられてしまった。さださんも実に筆が達者である。解説は劇団ひとりさん。

 6月から葉書は62円に値上げだという。ただでさえ年賀状さえ書く人も減っている中、また葉書が売れなくなるのかもしれないという記事をどこかで読んだ。それでも私は葉書が好きだ。封書で手紙を書くよりもずっとハードルが低く、自筆をしたためることが出来る。

 今はSNSが全盛で、その場で即反応する世の中だけれど、ツイッターなどでの投書(いわゆる呟き)はここでも言われているとおり、その場での率直な思いを短く表すことは出来るだろうけれど、当然揉んだ感じ、推敲された感じはしないし、自分なりに受け止めて消化して、それを言葉にして、という一連の“間”のようなものがない。だからなんだかどんどん流れていくように思う。

 その点、葉書に書く、文章にする、という作業はその人の中で整理され、こなれてくることではないだろうか。だからあまり生々しすぎず、奥行きのある投書が生まれるのでは、と思うのだがどうだろう。

 2冊目は加藤陽子さんの「それでも、日本人は『戦争』を選んだ」(新潮文庫)。
 帯には「日清日露から、敗戦までー。なぜ、人々は繰り返し戦争に熱狂したのか?近現代史講義の決定版、第九回小林秀雄賞受賞作」とある。裏表紙には「膨大な犠牲と反省を重ねながら、明治以来、4つの対外戦争を戦った日本。指導者、軍人、官僚、そして一般市民はそれぞれに国家の未来を思い、なお参戦やむなしの判断を下した。その論理を支えたものは何だったのか。鋭い質疑応答と縦横無尽に繰り出す史料が行き交う中高生への5日間の集中講義を通して、過去の戦争を現実の緊張感の中で生き、考える日本近現代史」とある。

 読みながら、ああ、中学高校時代にきちんと日本近現代史をやっていればなあ、と思った。結局、昨日は(点滴中にあれこれあって集中できず)読み終わらずじまいだったが、2007年当時の中高一貫男子校の中1から高2の歴史研究会メンバーの質問は鋭く、面白く、それに答えながら話を膨らませる加藤先生の知識の豊富さと話術にもワクワクして読み進めた。

 こうして通院日が倍になってしまったことは決して嬉しいわけではないが、一つだけプラス思考で考えれば、こうして読書の時間が倍になったことだろうか。

 そして、ジェムザール投与翌日である今日の体調のこと。
 昨夜はステロイドの副作用である不眠よりもジェムザールの副作用である気持ち悪さが勝って、4時間くらい連続して眠ることが出来た。だるくて気持ち悪くて、冴えない朝だ。それにしても、デキサート既定量6.6mgでここまで吐き気がするのだから、減量はとても無理そうだ。食前にはドンペリドンを飲まなくてはとても口に入れられない。

 昨夜は薬を飲むためにインスタントのカップスープだけ飲んで眠った。今朝も紅茶とインスタントスープと果物を一切れ、ロールパンを一口とバナナとブルーベリーのスムージー。殆ど水分のみ。いつもの朝食の3分の一程度か。これで吐き気度が軽い抗がん剤といわれると本当にあ~あ、と言う感じだ。とにかく水分補給だけはしなくては。
元気な細胞まで絨毯攻撃されるというのはこういうことだなあ、と今更のように思い出す。

 夫が、何してあげればいい?と訊くので、「①そっとしておいてほしい、②食べろ食べろといわないで欲しい」と答えた。そう、食べなければダメというのは生物として生きている以上良く判るけれど、無理して食べて嘔吐して、それが記憶に残ってしまうと、ますます気持ち悪さが酷くなりそうだ。だから抗がん剤治療中は食べられるときに食べられるものを少しずつ、が鉄則だ。

 だんだん収まってくれば当然お腹は空いているのだから、食べられるようになる。ここに至るまでに水分もたっぷり摂らないと便秘が酷くなる。そうなるとますます食べられなくなるから悪循環。何度にわたる経験で少しは賢くなったような気がする。

 とはいえ、一旦出勤してしまえば、そうそう気持ち悪いとも言っていられない。年度末の繁忙期に入るし、メールも書類も1日休めばそれなりに溜まっている。そして今日の分が加わるのだから、大車輪である。
 お腹がグウグウ鳴っているのに食べられない。気持ち悪いけれど、出汁の利いた醤油の汁物が飲みたい、とうどん屋さんに行って、一番小さいうどんを注文し、うどんは一口、スープだけ飲み干した。お腹は十分空いているのに・・・。

 夕方までの講習が終わった後は、窓口であれやこれや。なんだかだんだん熱っぽくなってきた。ジェムザールを使用する方へ、というパンフレットどおり、気持ち悪さは投与後数時間後から始まり、発熱する方もいます、というお題目どおり。本当にわかりやすい身体である。
 ロキソニンを飲んで凌いだ。明日は仕事が片付けば午後はお休みしたいのだけれど。
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2017.1.25 採血後ハーセプチン175回目(3倍量36回目)、ジェムザール1クール1回目

2017-01-25 22:57:00 | 治療日記
 昨夜は仕事から戻って夫と夕食を摂り、洗濯物やら何やらもろもろ片づけてから病院最寄り駅に移動、前泊した。いつのまにか通院前泊がデフォルトになった。私の中では、これは体力温存のための必要経費ということになっている。

 今日から治療変更である。昨日が寒さの底だったというが、今朝も寒い。夫にモーニングコールをしてから、熱めの浴槽足湯を済ませる。焼きたてクロワッサンの朝食を摂り、少しだけマインドフルネスの鐘の音の瞑想をしてから病院へ向かった。

 今月3回目の病院だ。月初めと同じ時間に到着したのだが、今朝は自動再来受付機が列をなしている。採血受付でも若干並び、電光掲示板を見ると、25人ほど待っていて13分待ちと出ている。荷物を整理して態勢を整えて待つ。ようやく番号が出て採血室へ入る。寒さで皆血管が出ないと見えて、ホットパックで温めたりしながら1人1人に時間がかかっている模様。今日は腫瘍マーカー測定もあるので4本の採取。

 初めての女性看護師さんだったが、殆ど痛まずラッキーだった。やはりこう寒いと普段から細い人はより血管が細くなり、患者さんのルート確保に時間がかかるらしい。夏と違って冬はどうしても水分を摂るのを控えるので、ますます取りにくいと仰っていた。
 冬はあっという間に脱水になるという。心して水分補給に努めなければと思った。私は足湯効果もあり、右腕の正中血管が元気だったのですんなり。

 止血しながら腫瘍内科受付に。定位置の待合椅子が空いていたので、読書を開始。
 今日は文庫本を2冊持って行ったが、2冊目は読み切れなかった。治療本文と合わせるとかなり長くなりそうなので読書記事は明日に回したい。

 1時間ほど待って、“中待合へどうぞ”の番号が電子掲示板に出た。本に夢中だったので慌てて血圧測定。100-66、脈拍は77。
 中待合に入って、30分ほどして先生がお顔を出された。
「さて、ご様子は?」と問われ、概ね元気でした、とお答えする。「胸痛でロキソニンを飲んだのは1日、頭痛で飲んだ方が多かったこと、痺れも悪化していないし、鼻血も頻繁に出ないし、空咳も気になりません。ただ、やはり投与後3日間は気持ち悪くドンペリドンを飲みました。」とお話する。

 採血の結果は、白血球が3400で低めだが、好中球がいつもより多めで1500あるので問題ないでしょうとのこと。そして、ずっと上がり続けていたCA15-3は上げ止まってほんの4%だが減少していた。「うーん、よくわかりませんね、悩ましい。」と先生が首を傾げられる。そして、先週撮影した造影CTは相変わらずとのこと。先生が両肺の画像をスクロールしながら説明される。

 左のここはあまり変わっていない、こちらも同じように見える、右のこれは、こっちはあっちは、と(いったい幾つあるのか、だんだんわからなくなってくる)、そして唯一、一番大きい右の影がやはりまた大きくなっています、とのこと。うーん、これは大きいと測ってみたら3か月前から比べて2,3ミリ程度の増大なのだそうだ。つまり急に増大している、というわけではなさそう。

 確かに2年前T-DM1(カドサイラ)開始直前に比べれば、今一番大きなものは相当大きくなっている(2つあったものがおそらく繋がってくっついたものと思われる)ものの、他の複数のものを殆ど押さえていたということは、進行がとてもゆっくりのペースだとのこと。この2年間、T-DM1(カドサイラ)は実に素晴らしい働きをしてくれた、とのことだ。本当に有難いことだ。新しい臓器転移もなく、ほっとした。骨も不変ですか、と訊いたところ、鎖骨の転移部が少し濃くなっているとの読影コメントがあったとのこと。

 いずれにしても今日から治療変更である。今後のことも含めていくつか質問をする。「ネラチニブはどうですか。」と問うと、タイケルブの改良型なのでいずれ使うこともあるかもしれないとのこと。「パージェタもまだ使っていないではないですか」と仰るので、「先生がパージェタは最後の手段で、と仰いましたが、タキサン(タキソテールかタキソール)と組むと間違いなく痺れも悪化するし、何より棺桶に入る時に禿げ頭は辛いので、出来ればパージェタとハーセプチンだけでやって頂きたいと思っているのですが、無理でしょうか」と訊いてみる。

 すると「2回脱毛経験があり、また脱毛するなら生きている意味がないので、どうしてもやりたくないという患者さんがいて、ではパージェタとハーセプチンで、とそれでやっているケースはあります。」との答えをゲットした。「同じです。わかります。私も3度目の脱毛イコール生涯脱毛ということなので、正直、戦意喪失です。とはいえ、本当に土壇場になってその状況になったら延命を選ぶのかもしれませんが、今のところは出来れば避けたいです。」と甘えたことを言いまくってしまった。

 ジェムザールの次の手と言われているハラヴェンも脱毛は避けられない。「好中球減少症も辛いし、治療がスケジュール通りに出来ないのは」と言うと、「確かにタキソテールのように、3週に1度ドカンと投与する薬だと後からどうしようもないですが、ハラヴェンは2週目に減量調整することも出来るので、そう酷いことにはなりません。今はグラン(白血球を上げる注射)の代わりのいい薬もありますから」とのこと。

 とりあえず気持ちを伝えることが出来たので、薬を処方して頂く。これまでどおりランマーク治療は続行なので、前回同様デノタスチュアブルを3週間分、ロキソニンも通常通り。T-DM1(カドサイラ)による痺れ対策の2種類の漢方は、現在痺れが残っていると、ジェムザールに変えても出る方が多いようなので、そのまま飲んだ方が良いとのこと。内服薬のみ3種類の処方となった。ご挨拶をして診察室を後にした。診察室での検温は6度7分。
 
 化学療法室へ移動。待ち時間はいつものように夫やお友達に報告LINEやメールを打つ。入院中のお友達は今日が手術の日。どうか上手くいきますようにと願う。
 混んでいるとみえて、なかなか声がかからない。30分ほど待って、今や私にとって第二の針刺し名人になったSさんから内側のリクライニング椅子に案内される。10分ほどして針刺しに来てくださったのは、そのSさん。思わず「Sさんで良かったです」と呟いてしまった。「よく眠れましたか。」と気を遣ってくださる。有難い。初回治療ゆえ心臓モニターの装着もあり、なんだか物々しい雰囲気。

 座ったものの、なかなか薬が届かない。30分近く待ってようやく今やベテランの仲間入りをしたKrさんが「薬が届きました。」と見える。水曜日は最近特に混んでいて皆さんをお待たせして、とのこと。今日はハーセプチン、デキサート(吐き気止めのステロイド)、ジェムザール、生理食塩水の4本。久しぶりに点滴台にこんなに複数の点滴パックが吊り下げられた。ハーセプチン単独は3年ぶりだ。1時間かけて問題なく投与。続いてデキサートは15分、ジェムザールは30分、最後の生理食塩水は15分でスムーズにチェンジが行われれば2時間コースという説明があった。

 途中、主任薬剤師のTさんが様子見に来てくださる。あれこれ10分くらい、質問やらなにやら時間を取って頂いた。有難い。ジェムザールは吐き気等の自覚症状はマイルドだが、好中球と血小板が下がる方が多いという。2回目以降に特に下がるようだ。この血小板の低下は、投与後1か月ほどして出現する人とそうでない人がいるとのこと、これも人体実験よろしくやってみないとわからないそう。

 もともとジェムザールは膵臓等消化器系の薬で、3投1休で1000ミリだが、再発乳がんは2投1休で1250ミリなので、一般的には血小板低下のために投与中止するほどではないらしい。が、私のように前治療がもろもろあると、その組み合わせの影響も受けることがあるようだ。痺れが出るかどうかもやってみないとわからないという。また、多くは血管痛が出るが、ポートなので問題もなし。

 吐き気止めはデキサートが規定量入っているそうなので、「今晩は恐らくステロイドハイで目がギンギンにさえて不眠だろうと思う。」と言うと、「吐き気がそれほどでなければ次回から減らしましょう。」とのこと。ステロイドが切れた時にどのくらい吐き気が出るかわからないが、ドンペリドンをお守り替わりに出してもらうようにお願いした。まあ9年も治療をしていれば、いろいろあらあな、ということだ。

 初回ということで、ジェムザールが始まって15分で検温、血圧測定、終了時にもう一度検温、血圧測定、となかなか落ち着かなかった。体温はもろもろ点滴薬を入れたからかどうか、当初診察室で測ったよりも少しずつ下がって最終的には6度3分。血圧は朝より若干上がったが正常。2時間半弱で無事終了した。抜針はMさん。衝撃はあったが、まだ経験が浅いのでやむなしだろう。

 看護師さんたちにご挨拶して化学療法室を後にする。計算時間を見計らって自動支払機へ移動。採血と点滴、3割負担5万円強をカード支払い。これまでずっと10万円を優に超える支払が続いていたので、思わず、安い!と思ってしまう。金銭感覚がマヒしているな、と苦笑い。がん治療には1万円イコール1000円の雰囲気がある。病院は会計待ちの人たちで溢れている。

 外に出ると、朝より気温が上がっており、風がなく暖かい感じ。空が済み切って青く、気持ちが良い。前泊して早い到着だったけれど、今日はあれこれ待ったし、点滴も長かったのでここまでで既に5時間半以上。家から出かけていたら、夕方になっただろうな、と思う。
 薬局に入ると、そこそこの混雑。やはり順番を抜かされて小一時間待った。

 病院の薬剤師のTさんがくださった点滴薬のシールをお薬手帳に貼ったところ、手帳が満杯になった。薬局では何種類か新しいものを見せてくださったが、気に入っていたパステルカラーの動物シリーズはもうない、とのこと。それではと、地味な幾何学模様を選んだところ、薬剤師さんは「大人の方でもせめて楽しいものを、と可愛いものを選ばれるのですよ」と仰る。だが、さすがにアラカン女性が、りらっくまはどうもと躊躇してお断りした。「化学療法後、食事の支度は大丈夫ですか。宅配を利用したり、何度かに分けて食べられるものを・・・」と気遣ってくださった。前回同様2,000円弱の現金払い。

 病院と薬局の滞在時間は合わせて6時間半。ランチタイムぎりぎりに駅ビルに滑り込んだ。あまりお腹が空いていなかったが、夜は夫が不要だし、多分いい加減になってしまうだろうということで、頑張ってゆっくり和風のパスタを頂いてきた。

 冬至から1か月余り。以前は夕方5時と言えば真っ暗だったが、随分日が長くなった。マジックアワーの空がとても美しい。気持ち悪いというよりもだるい。
 帰宅後は最低限の片づけ。夫が帰ってきたが、何もしてあげられない。食欲がなくお茶を飲んでアイスクリームを食べただけ。夫から「何か作ろうか」と言われたけれど、ノーサンキュー。うーん、忘れていたこの感じ。今日は眠れるだろうか。

 明日は午後講習会もある。眠れるかどうかは別にして、早めにお風呂に入ってベッドにゴーの予定である。

 昨日届いた今月2回目のお花は、ピンク、オレンジ、黄色のガーベラが合わせて8本、カスミソウが1本、菜の花が2本、アカメヤナギが1本。花言葉は「神秘」、「清い心」、「快活」だそうだ。ガラスの花瓶に投げ入れたら、ここだけぽっと春が来た。
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