おはようございます。 生き生き箕面通信1641(130620)をお届けします。
・原子力規制委の新安全基準は再稼働のためのアリバイ作り――人間の安全保障はどこへ?
「原発12基再稼働申請へ」と朝日新聞。「原発審査 立地安全を優先」は読売新聞。いずれも本日6月20日の朝刊一面の見出しです。
原発取材担当記者は、「次はどの原発がいつ再稼働を認められるか」をめぐって取材競争を繰り広げています。再稼働が前提になっているのです。電力業界をはじめ原発推進勢力側は、なんとか早く、それもできるだけ抵抗の少ない形で再稼働させたいとの強い思いがあります。
そこで利用するのがマスメディアで、情報をリークして再稼働のための世論作りをすることになります。結果的に取材記者は原子力ムラの広報役に利用されることになります。
そして、筋書きはこうです。原子力規制委が安全新基準なるものを施行するのが7月8日。目の前です。では、どこがこの新基準に従って、再稼働を申請すのか。
そこで情報を流します。再稼働を申請するのは、12~14基。このうち最優先されそうだと朝日、読売とも一致して書いているのは、四国電力の伊方原発3号基(愛媛県)です。活断層を抱えていないからだそうです。いったん苛酷事故が起きると、半島の住民は逃げ場が内にもかかわらず、安全だとみなすといい、メディアも批判することなく情報を垂れ流す。
続いて九州電力の川内(せんだい)原発1、2号基など。
これらとは別に現在稼働中の関電大飯原発は引き続き運転継続を認められる見通しと伝えています。
先日も書きましたように、大飯原発は苛酷事故が起きた場合の作業拠点となる免震作業棟がありません。しかも活断層も近くを走っています。それでも「安全だ」と認定するというのです。
朝日新聞は本日、「核といのちを考える」という大型企画(15面)で、環境経済学者と核軍縮専門家の対談を掲載しました。この中で、「原発を潜在的核保有の観点から抑止力としてとらえる考え方があるが、核がありながら、中東戦争やベトナム戦争、朝鮮戦争も抑止できなかった。核抑止は役に立たないと非正当化すべきだ」と指摘しています。
さらに、「原発はエネルギー需給だけでなく、国際的な問題だ。米国との関係で何を議論して納得してもらわねばならないか、脱原発側も国際的な戦略がいる」とも語られています。
決め手の考え方は、「国家、軍事的な安全保障観を超え、核なき世界が環境にもいいと打ち出す。CO2 でも放射性廃棄物でも大量に出す発電はもう限界だ。リスクの計算も制御も難しい原発は、放射性廃棄物も大量にたまり、軍事的にも環境的にも危ない」という総括的なとらえ方です。
なによりも、「人間の安全保障」という哲学の重要性です。人間が犠牲になるのでは、どんな国家がどんな理屈を並べて正当化しても、無意味ですよね。
しかし、日本では着々と原発再稼働への動きが既成事実化しつつあります。そして、マスメディアがその空気づくりに利用されています。私たちは、マスメディアも民間企業であり、最終的には利益追求組織であるという限界を承知して接することが必要です。