おはようございます。 生き生き箕面通信1622(130602)をお届けします。
・「親米」か、「離米」か――自民党内の二つの流れは、「親米」に軍配?
朝日新聞の本日6月2日付け朝刊に、「『9条と96条』自民の深い溝」というコラム(2面)が掲載されました。「実際の改憲か」、あるいは「解釈改憲か」という二つの溝があったが、「安倍首相はジワリと集団的自衛権派(親米派)に軸足を移してきたようにみえる」と、指摘しています。
これは、朝日新聞の特別編集委員、星浩氏の見立てです。安倍首相は、最初は憲法96条の改定を優先的に考えてきたが、どうやら分が悪そうなので方針転換し、当面は解釈のし直しで行く方向だ、いうわけです。
時の宰相が動かそうとする政治の方向をウォッチすることは大切です。しかし、特別編集委員という肩書を冠するコラムなら、「では、私たちはどう考えるか」、少なくとも特別編集委員自身の考えも明らかにしてこそのコラム、ジャーナリズムというものではないでしょうか。単なる事実の分析だけなら、「特別」などと大仰な肩書きは振り回さないことです。
それはともかく、「解釈改憲」は、元外務次官の谷内正太郎・内閣官房参与らが進めようとしているものです。「他国が受ける攻撃を自国への攻撃と見なして応戦する権利」である集団的自衛権は、現行憲法上でも存在するものの、現在は「行使は出来ない」と禁じる解釈です。しかし、これを改め、集団的自衛権を行使できるように使用する流れに変えようという”謀略”です。
参院選後は、北岡伸一・国際大学長ら有識者が意見をまとめ、それを受けて、一気に解釈変更に踏み出そうという計画が練られている。石破茂・幹事長ら防衛相経験者らが旗振り役だそうです。
北岡氏は、東大出身の政治・歴史学者で、政府諮問委員会の委員を務めてきたほか、日本政府の国連次席大使も歴任するなど、政府の意向を巧妙に忖度(そんたく)して都合のいい結論を出してみせる、要するに御用学者です。今回は、9条の精神をひっくり返し、「ノー」から「イエス」に解釈を変更する結論を出す役割です。
東大はもともと官僚を養成する機関として設立されただけに、当然と言えば当然ですが、それにしても学問を時の権力の御用にだけ役立てるのはいかがなものか。学問は、人々のために役立ててこそのはずです。
しかし、北岡氏らは、安倍首相ら権力者が進みやすいように解釈改憲路線という道を掃いたうえ赤カーペットまで敷いて見せようという意気込みです。この路線は、アメリカとの軍事的な協力をいっそう強めるべきだと主張し、アメリカさまの指図に従う「安保重視の親米保守」と名付けられています。
安倍首相は、政権の座に就いて以来、一貫して「96条改憲」を唱えてきました。「アメリカから押し付けられた憲法体制から脱却し、自主憲法の制定を」という考えでした。「米国から距離を置く(離米)自主憲法路線」ともいうべき立場でした。
しかし、どうやらアメリカさまが御不快の様子なので、しばらく鳴りをひそめ、アメリカさまお好みの「解釈改憲」による集団的自衛権の行使に踏み切ろうということにしたようです。
この解釈改憲自体が、とんでもない日本の国柄の変更です。周辺諸国からは一層警戒され摩擦も増えるのではないでしょうか。落ち目のアメリカと一蓮托生の道など、ご免こうむりたい。
どちらにしても、大きな流れの変更です。それだけに、ジャーナリズムとしての見解を示さなければならない局面です。しかし、特別編集委員さんは、自分の意見や見解は「黙して語らず」。いわば卑怯な態度で押し通しました。このコラムには、特別編集委員さんの笑顔があしらってありました。「笑うな。真面目にやれ!」といいたくなります。