カルテ番号 ぬ・2(17)
沼田桃子は思い出そうとした。
何かで読んだ気がした。
そういう話の本は買わないから、どこかで読んだのだろう。
太陽は二つある。
「何かで読んだ記憶がありますが、もちろん信じてはいません」
院長は、うんうん、というように頷いた。
「それでいいのです。
無暗に怪しげな話は信じないのが普通です。
でも、無暗に疑うのも同じことです。
信じない、疑わない、興味があれば確かめる。
それでも、本当の事は解らない。
少なくても、自分は見たことがない。
私も同じでした」
院長は沼田桃子の頭側に座って、頭に指を触れたまま話している。
「そもそも、信じるとか疑うとかは事実や真実とは別な世界ですよね。
事実と真実もそれぞれ別の世界ですが、それらは客観的な世界。
信じる、疑うは自分の中の心の世界。
心の世界は大きいのですが、認識できる心はとても狭いのです。
まぁ、人はとても狭い、浅い、偏った心で動いているようなものです。
だから、信じても疑っても、そんなことはどうでもいいのです」
(登場する人物・組織・その他はフィックションです)
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