アバウトなつぶやき

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生誕110年 田中一村展

2018年09月07日 | かんしょう
 先週、シロウタと佐川美術館で開催中の田中一村展を観てきました。

 もうすぐ会期終了を迎えるためか、開館時刻からそんなに経っていないのに入口には結構な数の人が並んでいました。
 私はテレビでの紹介とポスターの美しさに惹かれて見に来たクチなのですが、皆さんはどうなんでしょう。

 彫刻家の父を持ち、幼い頃から南画でその才能を発揮していたという一村(本名は孝)。
 まずは7才の時に描いた絵から展覧会が始まるのですが、これがまたものすごく上手い。父親が手を入れたことが気に入らずにその箇所を破ってしまったというエピソードまで付いていて神童と呼ばれていたというのも頷けます。
 若い頃に描いていた南画から始まり日本画に移行していくのですが、私の抱いた印象は「どれもダイナミック」。
 一村は「日本のゴーギャン」と称され、奄美大島へ渡ってからの明暗のはっきりした色遣いと南国の動植物がモチーフの絵が有名なので、移住したことで画風が変化したのかと思っていましたが、展覧会を見てもともと大胆なものを好む気質があったんだな、と思いました。

 南画って筆使いが荒々しい傾向があるので作風というのももちろんですが、南画以外のスケッチや初期に日本画を描いている際に選んでいるモチーフに力強いものが多いのです。
 例えば夏の花。日本画で好まれそうな花というと百合や紫陽花、桔梗といったはんなりした花だと思うのですが、一村は(もちろんそれらも描くけれど)鶏頭、鳳仙花、オクラなどの中心から外へ向かう感じの力強い植物を好んで描いているように見受けられます。本人の自信作だった〈秋晴〉にも棕櫚やカロライナポプラかな?ヤナギ科?と思うような、やはり放射状に枝葉が伸びる植物を描いています。
 鳥にしても圧倒的に軍鶏が多いし、日本画として受賞した〈白い花〉でさえ普通のツグミではなくトラツグミという柄がはっきり出る種類のツグミを描いています。
 構図も縦長の作品だとかなりの確率で上に重心があったりして、迫ってくる感じの重量感がすごいんですよね。
 それが個性であり、だからこそ奄美に惹かれたのだと思いますが、逆にそういう感じだったからこそ当時の日本の画壇に認められなかったんでしょうね。
 
 今回の展覧会は画業を振り返るという趣旨のためか、出展数は180点という膨大な量なんだけれど、色紙に描いたものや知人や親類のために描いた小品が占める割合が非常に高い。そのため、リーフレットに載っているような色使いの鮮やかな大作がメインかと思って行くとちょっともの足らない感じがしてしまいます。
 有名な〈アダンの海辺〉も岡田美術館へ行っちゃってパネルだけだし(展示中に行かなかった自分が悪いんだけど)、点数多いのにダイナミックな画風ってことで見終えたらすっごく疲れてました。
 あ、もちろん作品は素晴らしく美しいと思ったし、好きな作品もたくさんありましたのでマイナスの感想ではないです、念のため。


 佐川美術館を飾る彫刻として、佐藤忠良もコレクション展として紹介されていました。
 顔の表情ももちろんですが、体の表情が良くてとても良い彫刻家だなって思いました。外の〈蝦夷鹿〉ももちろんだけど、〈帽子・夏〉は好きだなぁ。

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