語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【震災】原発>「やらせメール」知事指示のメモ、九電の証拠隠滅

2011年08月12日 | 震災・原発事故
 7月30日の会見で、古川康・佐賀県知事は、知事公舎で密会した際【注1】、九州電力の原発担当副社長【注2】、原子力発電本部長(常務)、佐賀支店長(いずれも肩書きは当時)の3幹部に対してやらせメールを誘発する発言をしたことを認めた。
 「自分の所に来るのは反対ばかりだが、電力の安定供給の面から再開を容認する意見を出すことも必要だと話した」「当事者である九電に『声を出すべきだ』と発言したのは軽率だった」【注3】
 九電側も、郷原信郎・第三者委員会委員長が会見で明言した。「九電が賛成意見の投稿を社員に要請したメールには添付されたメモに、知事が九電にネットを通じて賛成意見を出すよう要請したと受け取られる文面があった」【注4】

 九電は、メモを添付したメールをいったん100人程度の社員に一斉に送信しながら、あわてて、その日のうちに削除するよう要請している。隠すよりあらわるるはなし。その「削除指示」がかえって疑問を呼び、九電社内には、関係者を超えてこのメモの噂話が一気に広がった【注5】。
 メモには、6月21日の日付があり、密会直後に作成されたものらしい。
 古川の発言のうち、「指示」を明らかに示す箇所を抜粋すれば、次のとおりだ【注6】。

----------------(引用開始)----------------
●今後の動きに関連して、以下の2点を九電にお願いしたい。
 ①自民党系の県議会議員さんはおおかた再稼働の必要性についてわかっているが、選挙を通じて寄せられた不安の声に乗っかって発言している。議員に対しては、支持者からの声が最も影響が大きいと思うので、いろいろなルートで議員への働きかけをするよう支持者にお願いしていただきたい。
 ②「国主催の県民向け説明会」の際に、発電再開容認の立場からも、ネットを通じて意見や質問を出してほしい。
----------------(引用終了)----------------

 古川による指示のメモが添付されたメールは、26日の県民向け説明会で「賛成意見の投稿」を「要請」し、次のように書かれている。
 「我々自身、極めて重大な関心事であることに加え、添付メモがあることから万難を排してその対応に当たることが重要と考えます。各位及び配下のメンバーに対して、説明会開催についてご周知いただくとともに、都合のつく限り、当日ネット参加へのご協力をご依頼いただきますようお願いいたします」云々。
 そして、6月24日締め切りで、協力できるメンバーの人数について返信を求めていた。

 【注1】「【震災】原発>九電の「やらせ」の背後に佐賀県知事、副社長と密会」参照。
 【注2】段上守・副社長(当時)の指示により、古川の発言メモが添付されたメールが社内に送信された。【記事「九電:副社長が知事の意向くむ 佐賀支社長「配信に驚愕」、2011年8月7日12時33分 毎日jp】
 【注3】ところが、8月9日の佐賀県議会原子力安全対策等特別委員会では、古川は、「公舎を使ったことに『密談だったのでは』と批判が集中した。『あくまで退任あいさつ。ただ再稼働が議論されたあの時期に九電と公舎で会ったのは甘い判断だった』と陳謝したが、『一般論として話したとしても相手がどう受け取るか考えなかったか』と“結果責任”を問われても、『話すべきではなかったが、要請はない』と強弁を繰り返した」【記事「「九電側の問題」 古川知事、やらせメールの責任否定」、2011年8月9日 佐賀新聞情報コミュニティ)】
 【注4】しかし、「ただメモには古川知事による九電への様々な働きかけが詳細に記されていたのも事実。九電は知事との面会後、社内外にやらせメールの投稿を依頼しており、同社が要請と受け取った可能性は否定できない」。【記事「「佐賀知事「発言の内容や真意違う」 やらせメール問題 県議会の参考人招致」、2011年8月9日22:43 日本経済新聞】
 【注5】渡辺武達・同志社大社会学部教授(メディア学)はいう。(a)事実を効果的に伝える「演出」と、虚偽を事実であるように伝える「やらせ」を九州電力は混同した。九電関係者であることを隠し、一般人の意見としてメールを送信したことはまさに「やらせ」で、許されない行為だ。(b)経営陣がやらせメール送信を協力会社の社員にまで要請していたのは、下請けはなんでも言うことを聞く、という時代錯誤な「おごり」だ。こんな連中に原発を管理運営させていいのか、という怖さを国民に抱かせてしまった。【記事「九電やらせメール、原発論議の足かせに 社長辞任先送り「延命…首相と一緒」、2011年7月31日21:29 産経ニュース】
 【注6】メモ全文は、ネットで入手できる。【記事「九電やらせ問題:古川知事発言 佐賀支社長メモ全文」、2011年8月9日20時3分 毎日jp】

 以上、本紙取材班「九電原発再開『やらせメール』 『知事が指示』のメモ入手」(「AERA」2011年8月15日号)に拠る。

   *

 8月9日夜、郷原信郎・第三者委員会委員長は、記者会見で、提出を求めた資料の一部を九電側が破棄していたことを明らかにした。
 7月下旬、中村明・原子力発電本部副本部長が部下に指示し、原発本部で保管していたプルサーマルのシンポジウム開催に関する2~3冊のファイルの中の何枚かの資料が破棄された【注7】。
 中村副本部長はまた、7月27日に発足した第三者委が、経営管理本部を通じて佐賀支社に提供を求めたファイル15冊についても破棄するよう、8月5日に指示した。この資料は、破棄前に回収された【注8】。
 これまでに関わった第三者委員会で、これほど悪質かつ露骨な証拠隠しは経験したことがない。深刻な事態だ。公益を担う企業がどういう理由で隠蔽したか、今後徹底的に調査する必要がある。【郷原委員長】

 【注7】破棄された資料には、佐賀県の県議や自治体関係者がプルサーマル推進の見返りに突きつけた要求、要望の記録が含まれていた。【記事「九州電力:原発やらせメール 幹部が廃棄指示の資料、地元の要望記録も」、2011年8月12日 毎日jp】
 【注8】中村、そして古川発言メモを作成した大坪潔晴・佐賀支社長は、8月中に解任される見こみ。【記事「九電、役員2人を解任へ 資料破棄指示とメモ作成」、2011年8月11日7時38分 asahi.com】

 以上、記事「九州電力が“証拠隠滅” 第三者委調査」(2011年8月9日 ライブニュース)、記事「九州電力 調査過程で証拠隠滅」(2011年8月9日 NHK NEWSWEB)に拠る。
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン



コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 【震災】原発>自民党・公明... | トップ | 【震災】原発>小売店や茶・... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

震災・原発事故」カテゴリの最新記事