11月16日、福島県は発表した。福島市大波地区で生産された玄米から630Bq/kgの放射性セシウムが検出された、と【注1】。食品衛生法の暫定規制値500Bq/kg超のコメは、今回が初めてだ。
国の検査だけでは心配だ、と生産者が地元のJA新ふくしまで自発的に簡易検査した結果明らかになった。
福島県産のコメに対する放射性セシウム検査は、10月12日にすべて終了し、翌13日に佐藤雄平・福島県知事が「安全宣言」を行ったばかりだった。
国が定めた検査体制では「安全」、自発的な検査では「安全でない」・・・・国の検査体制の有効性が揺らぎかねない事態となった。
政府は、コメについては「作付け制限」「予備調査」「本調査」と、他の農産物よりも厳格な三重の検査体制を敷いていた・・・・はずだった。
(1)4月、田に水を入れる前に 土壌からセシウムが5000Bq/kg以上検出された地域でコメ作付の制限を行った。この結果、福島第一原発から半径30km圏内の約9000ha、農家戸数7000戸で今年はコメは作られていない。
(2)9月から予備調査が行われた。土壌中のセシウム値か、空間放射線量が一定値以上となった自治体を対象に、収穫前の稲を抜き取りサンプル調査を行うものだ。
(3)(2)で200Bq/kgを超えた自治体(「重点調査地域」)は、抽出数を増やし、収穫後に出荷を待つコメを対象に本調査を行う。ここで暫定規制値の500Bq/kgを超えたものが出ると、自治体単位で出荷停止となる。
福島県でも、(2)予備調査が9月中に449地点で、(3)本調査が10月12日までに1,174地点で行われた。その結果、県内の48の市町村のうち、重点調査地域となったのは二本松市1市だけだった。二本松市でも、288地点で調査した結果、規制を超えるセシウムは検出されず、コメの出荷が開始された。
だが、この検査体制には「穴」が多い、という指摘が当初から多かった【注2】。
(a)具体的にどこを調査するかは、最終的には市町村や現地農協関係者が決めていた。より低い点での計測をしようとすれば、それができる体制だった。
(b)調査ポイントが少ない。重点調査地域ですら、検査地点の数は15haに2地点だった。甲子園球場5個分に相当する広さの中から1点は、少なすぎるのではないか、という学識経験者の声は強かった。
(c)厄介なことに、当初の想定以外の汚染経路の可能性がでてきた。これまで前提とされていたのは、原発事故直後に田に落ちた放射性物質による土壌からの汚染が主だった。
今回、基準越えセシウムが検出された農家の畑は、山から水が流れ込む位置にある。山の木の葉に付着したセシウムが落葉とともに水田に流れ込んだ可能性が強いのではないか。【宮崎毅・東京大学教授】
田には収穫前に水を抜かれるまで、水が張られている。山の湧き水や上流の用水路から水が流入するなど、ホットスポット)が発生する可能性は他の作物より高い。
こうした可能性を考慮に入れ、専門家の知見を入れて検査地点の決定や、ホットスポット化する危険性のある箇所の重点調査などを行うべきだった。
福島県は、大波地区の収穫米について全袋調査を行うほか、伊達市など4市12地区で一戸一袋を調べるなど追加調査を行うことを決めた。
他方、鹿野道彦・農林水産大臣は、検査体制の見直しについて「厚生労働省や福島県と協議する」と表明するにとどめた。
コメ検査体制への信頼が根本から崩れようとしている中、国として抜本的な体制の見直しは必要不可欠なのではないか。
【注1】福島市大波地区の農家全154戸が生産した4,752袋の全袋検査を実施している福島県は、11月25日、34戸が生産した864袋を調べた結果、うち6戸の131袋が基準値を超えた、と発表した。最高で同1,270Bq/kgで、2戸の27袋が1,000Bq/kgを超えた。【記事「福島市大波地区のコメ、6戸で基準値超えセシウム」(2011年11月25日22時24分 asahi.com)】
【注2】「【震災】原発>福島のコメが全国の消費者の胃袋に入るまで」
以上、鈴木洋子(「週刊ダイヤモンド」編集部)「福島県産米から基準越えセシウムが検出 コメ検査体制に突きつけられた疑問符」(2011年11月25日 DIAMOND online)に拠る。
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国の検査だけでは心配だ、と生産者が地元のJA新ふくしまで自発的に簡易検査した結果明らかになった。
福島県産のコメに対する放射性セシウム検査は、10月12日にすべて終了し、翌13日に佐藤雄平・福島県知事が「安全宣言」を行ったばかりだった。
国が定めた検査体制では「安全」、自発的な検査では「安全でない」・・・・国の検査体制の有効性が揺らぎかねない事態となった。
政府は、コメについては「作付け制限」「予備調査」「本調査」と、他の農産物よりも厳格な三重の検査体制を敷いていた・・・・はずだった。
(1)4月、田に水を入れる前に 土壌からセシウムが5000Bq/kg以上検出された地域でコメ作付の制限を行った。この結果、福島第一原発から半径30km圏内の約9000ha、農家戸数7000戸で今年はコメは作られていない。
(2)9月から予備調査が行われた。土壌中のセシウム値か、空間放射線量が一定値以上となった自治体を対象に、収穫前の稲を抜き取りサンプル調査を行うものだ。
(3)(2)で200Bq/kgを超えた自治体(「重点調査地域」)は、抽出数を増やし、収穫後に出荷を待つコメを対象に本調査を行う。ここで暫定規制値の500Bq/kgを超えたものが出ると、自治体単位で出荷停止となる。
福島県でも、(2)予備調査が9月中に449地点で、(3)本調査が10月12日までに1,174地点で行われた。その結果、県内の48の市町村のうち、重点調査地域となったのは二本松市1市だけだった。二本松市でも、288地点で調査した結果、規制を超えるセシウムは検出されず、コメの出荷が開始された。
だが、この検査体制には「穴」が多い、という指摘が当初から多かった【注2】。
(a)具体的にどこを調査するかは、最終的には市町村や現地農協関係者が決めていた。より低い点での計測をしようとすれば、それができる体制だった。
(b)調査ポイントが少ない。重点調査地域ですら、検査地点の数は15haに2地点だった。甲子園球場5個分に相当する広さの中から1点は、少なすぎるのではないか、という学識経験者の声は強かった。
(c)厄介なことに、当初の想定以外の汚染経路の可能性がでてきた。これまで前提とされていたのは、原発事故直後に田に落ちた放射性物質による土壌からの汚染が主だった。
今回、基準越えセシウムが検出された農家の畑は、山から水が流れ込む位置にある。山の木の葉に付着したセシウムが落葉とともに水田に流れ込んだ可能性が強いのではないか。【宮崎毅・東京大学教授】
田には収穫前に水を抜かれるまで、水が張られている。山の湧き水や上流の用水路から水が流入するなど、ホットスポット)が発生する可能性は他の作物より高い。
こうした可能性を考慮に入れ、専門家の知見を入れて検査地点の決定や、ホットスポット化する危険性のある箇所の重点調査などを行うべきだった。
福島県は、大波地区の収穫米について全袋調査を行うほか、伊達市など4市12地区で一戸一袋を調べるなど追加調査を行うことを決めた。
他方、鹿野道彦・農林水産大臣は、検査体制の見直しについて「厚生労働省や福島県と協議する」と表明するにとどめた。
コメ検査体制への信頼が根本から崩れようとしている中、国として抜本的な体制の見直しは必要不可欠なのではないか。
【注1】福島市大波地区の農家全154戸が生産した4,752袋の全袋検査を実施している福島県は、11月25日、34戸が生産した864袋を調べた結果、うち6戸の131袋が基準値を超えた、と発表した。最高で同1,270Bq/kgで、2戸の27袋が1,000Bq/kgを超えた。【記事「福島市大波地区のコメ、6戸で基準値超えセシウム」(2011年11月25日22時24分 asahi.com)】
【注2】「【震災】原発>福島のコメが全国の消費者の胃袋に入るまで」
以上、鈴木洋子(「週刊ダイヤモンド」編集部)「福島県産米から基準越えセシウムが検出 コメ検査体制に突きつけられた疑問符」(2011年11月25日 DIAMOND online)に拠る。
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