語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【震災】原発>放射性廃棄物最終処理の不可能性 ~米国も日本も~

2011年11月03日 | 震災・原発事故


 米国においては、1978年現在、<過去30年間、何億ドルという巨額の研究費が使われたにもかかわらず、恒久的で安全な廃棄物処理と保管の方法はまだ発見されていない【注1】>。
 そして、2006年現在、<米国連邦政府は、危険な廃棄物をネバダ州のユッカ山の下に貯蔵することを最終的に決定した。政府はその場所が安全であることを証明するためのコンピュータ・シミュレーションに膨大な金額を費やした。しかしこれらのシミュレーションは入力したデータについてのみ有効で、地下の深いところの岩石に割れ目が発生する可能性についての十分なデータを得ることは容易ではない。また実際にはアクセスできない複雑な岩盤の挙動についての正確なモデルを作成するのも容易ではない。/この貯蔵サイトの反対者にとって、政府のコンピュータ・モデルの全体的な不確実性を暴露することは容易なことであった。そして、民間の原子炉からの廃棄物は、米国中の発電所の冷却池中にぎゅうぎゅうに詰め込むという、もっとも危険な形で集積されている。・・・・これらの根絶できない脅威に直面しても、科学は--いまだに--無知で無力である。【注2】>

 ブッシュが決定したユッカ山を、オバマは撤回せざるを得なかった。
 <はっきり言ってお手上げなのである。日本と異なり、人口密度のきわめて低い砂漠地帯や、あるいは地震のない安定で広大な地域を有している米国においてもこうである。>

 日本では、完全に行き詰まっている。
 東大工学部を出て、東京電力の副社長と原子力本部長を勤めた御仁は書く。
 <高レベル放射性廃棄物の地層処分は、地点選定に数十年、さらに処分場の建設から閉鎖まで数十年とかなりの長期間を要する事業であるとともに、処分場閉鎖後、数万年以上というこれまでに経験のない超長期の安全性の確保が求められます。したがって、地層処分事業を円滑に実施するためには、事業の意義やそのしくみについて、各地方自治体や国民に広く理解、協力を得る必要があり、理解活動がよりいっそう重要となります。【注3】>

 <正気で書いているのかどうか疑わしい。>と山本義隆は評する。
 「数万年以上」にわたる「超長期の安全性」をいったい誰がどのように「確保」しうるのだろう?
 世界屈指の地震大国にして有数の火山地帯で、国土には多くの活断層が縦横に走り、豊富な地下水系を有する日本国内に、数万年も安全に保管できる場所がどこにあるのか?
 数万年後には、日本列島の形すら変わっているだろう。そもそも、ホモ・サピエンスが誕生したのは、いまから3~4万年前のことだ。
 「理解活動」? <これまでのように、札束の力で「理解」させる「活動」のことなのだろうか。>   

 【注1】Caldicott ,H.(高木仁三郎/阿木幸男・訳)『核文明の恐怖--原発と核兵器』(岩波書店、1979)
 【注2】Ravetz, J.(御代川貴久・訳)『ラベッツ博士の科学論 科学神話の終焉とポスト・ノーマル・サイエンス』(こぶし書房、2010)
 【注3】榎本聰明『原子力発電がよくわかる本』(オーム社、2009)

 以上、山本義隆『福島の原発事故をめぐって -いくつか学び考えたこと-』(みすず書房、2011)の「2・2 原子力発電の隘路」に拠る。

 【所見】
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