語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【経済】ギリシアはなぜデフォルトに陥ったのか

2011年11月05日 | 社会
【A】ギリシアがこんなことになったのも、元はといえば、(1)独仏英米などの銀行が放漫な貸出をしたからだ。ギリシアがどうであろうと、ユーロの価値は17ヵ国によって支えられていると思われたからだ。(2)借金が膨らみ、返却に苦しみ、国債の乱発でEUの財政規律が守れなくなると、ギリシア政府がゴールドマン・サックスなどの投資銀行に智慧をつけられ、金融工学による粉飾=「飛ばし」、またインフラなどの国家の将来の収入源を抵当に入れての融資などで問題を先送りにし、解決を困難にしてきたからだ。(3)もちろんギリシア政府は、EUに対して財政規律に違反する粉飾を隠していた。
【B】始まりも終わりも金融機関の仕業だ。問題をこじらせるのにも、金融工学が応用された。

【A】しかし、そんな小手先では解決できない。そして急に全体の状況が思わしくなくなってきた。そこで、ギリシアの国債を含め、負債の一部減額が取り沙汰されるようになった。最近ではその額も50%と噂される。発行した債券の額面を半分にするとなれば、まぎれもないデフォルトだ。
【B】それがいわゆる「部分的デフォルト」、「選択的デフォルト」、「秩序あるデフォルト」だ。独国のメルケル首相が、ラジオのインタビューで「無秩序なデフォルト」は避けねばならない、と語った。それは「秩序あるデフォルト」の否定ではない、と受け取られた。

【A】なぜギリシアのデフォルトが晩秋から新年に迫ってきたのか。早めにギリシアを他の欧州から切り離さねば、欧州全体が危なくなってきたからだ。ギリシアのデフォルトと仏国や独国の銀行【注1】のデフォルトでは、前者による損失のほうがはるかに安くて済む。当然、そうした計算が働く。
【B】2年で償却のギリシア国債には、最近69.7%【注2】という信じられない利率がつけられた。これはすでに市場がギリシアにデフォルトの烙印を押したことを意味する。

 【注1】9月14日、ムーディーズが仏国の2つの大銀行の格付けを下げた。これらの銀行は、ギリシアがらみの債権が大きい。クレディ・アグリコールは259億ユーロ相当を、ソシエテ・ジェネラールは58億ユーロ相当を抱えていた。フランスの対ギリシア債権の合計は650億ユーロにのぼり、その21%に相当する準備金しか持っていない。ギリシア債権がデフォルトで焦げつくだけで、仏国の大銀行は倒れる。
 【注2】100%を超えた。【記事「欧州不安拭えず、アクセルとブレーキ同時に踏んだドラギ新総裁」(「ロイター」2011年 11月 4日 13:28 )】

 以上、赤木昭夫「失われるか世界の10年 ④ユーロの破綻を防ぐ --大停滞の深化3」(「世界」2011年11月号)に拠る。
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