語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【震災】原発>賠償を拒否する東電側の理屈 ~裁判~

2011年11月24日 | 震災・原発事故
 東京電力福島第一原発から放出されたセシウムは、福島のゴルフ場も汚染した【注1】。
 例えば、同原発から西方45kmの「サンフィールド二本松ゴルフ倶楽部」を汚染した。二本松市は、3回にわたって同ゴルフ場の線量を測定。8月10日には、6番ホールのティーグラウンド地上10cmで2.91μSv/h。カート置き場の雨樋の排水口付近にいたっては51.1μSv/h、線量だけなら原発から2.4kmの大熊町夫沢とほぼ同じ高線量だった。
 「サンフィールド」は、3月12日から営業を休止した。

 8月上旬、「サンフィールド」は資産保有会社とともに、東電に原発事故による放射性物質の除染と損害賠償を求める仮処分を申し立てた。
 すると、東電は、まず測定値に難癖をつけた。<二本松市が測定に使った機材の能力や結果の記録の正確性に疑義がある。>・・・・①
 しかも、原発事故のことは何処吹く風で、<海外では、年間10mSvの自然放射線が観測される場所もある>。
 さらに、平然と責任転嫁した。<東京電力福島第一原発から飛散し、落下した放射性物質(セシウムなど)は東京電力ではなく、土地所有者のものである。【注2】>・・・・②
 この主張には驚く。放射性物質のような反価値物は所有者のものにはならないのは常識だ。【ゴルフ場側弁護団】

 10月31日、東京地裁は聞く人を唖然とさせる決定を下した。
 ①と②の2点は否定し、東電に対して除染を求める権利は認めた。ただし、実際の作業の効率などを考えると「除染は国や自治体」が行うべきもの、として、「除染」に係る東電への請求を退けた。
 しかも、休業中の維持管理費など8,700万円の損害賠償請求も、文部科学省が4月に出した学校の校庭使用基準3.8μSv/hを下回っているため「ゴルフ場の営業再開は可能」だ、と請求を却下した。

 営業再開は可能?
 キャディーなどパート15人は、震災翌日から来てもらっていない。従業員17人も、1人を除き、9月に自主退職を依頼した。【山根勉・代表取締役COO】
 7月上旬に予定されていた「福島オープンゴルフ」予選会は、県ゴルフ連盟から、高線量を理由にキャンセルされた。
 11月13日、検査機関が芝を検査したところ、235,00Bq/kgのセシウムが検出された。チェルノブイリにあてはめるなら、直ちに強制避難となる値だ。
 11月17日には、芝や土から、98Bq/kgの放射性ストロンチウムも検出された。

 除染に係る請求権まで認めていながら、除染の実行は「国や自治体」とする論理はまったく理解できない。これが判例となって、除染は東電ではなく自治体の責任となれば、地方財政を圧迫する。営業休止も、従業員や利用者の健康を考えたためだ。【ゴルフ場側弁護団】
 弁護団は、即時抗告した。

 【注1】「【震災】原発>福島のレジャー施設の損害 ~「ムシムシランド」とゴルフ場~
 【注2】<答弁書で東電は放射性物質を「もともと無主物であったと考えるのが実態に即している」としている。 /無主物とは、ただよう霧や、海で泳ぐ魚のように、だれのものでもない、という意味だ。つまり、東電としては、飛び散った放射性物質を所有しているとは考えていない。したがって検出された放射性物質は責任者がいない、と主張する。/さらに答弁書は続ける。/「所有権を観念し得るとしても、既にその放射性物質はゴルフ場の土地に附合(ふごう)しているはずである。つまり、債務者(東電)が放射性物質を所有しているわけではない」/飛び散ってしまった放射性物質は、もう他人の土地にくっついたのだから、自分たちのものではない。そんな主張だ。>【2011年11月24日付け朝日新聞「プロメテウスの罠」欄】

 以上、岩田智博(編集部)「セシウムは誰のものか ~東京地裁の決定でわかった東電のトンデモ主張~」(「AERA」2011年11月28日号)に拠る。
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