事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

明細書を見ろ!2022年10月号 人事委員会勧告2022

2022-10-20 | 明細書を見ろ!(事務だより)

Joker's Social Experiment

2022年9月号「懲戒処分」はこちら

今回は校内倫理委員会ネタをお休みします。というのも、長いつきあいの現役学校事務職員が、ある事件のために逮捕されてしまい、とても犯罪を特集する気持ちになれないからです。

ということで、人事委員会勧告を解説。

今年度の人事委員会勧告の内容は、10月6日の午後3時に公表されました。まあ、それ以前に内容は知っていても紹介するのは仁義に反するというわけ。

もちろん、労使交渉や県議会の意向などによってこの勧告の内容がすべてそのとおりになるかは微妙ですが、基本線は示されました。今年度のポイントは

〇月例給、ボーナスともに引上げ

〇職員の定年を65才に引上げ

〇60才を超える職員の給料は、当分のあいだ、60才前の7割を支給

この三つです。まず給料。どれくらい引き上げるかというと

・初任給を3~4千円

・若年層を2000円

・その他は100円~200円(管理職をのぞく)

つまり若い職員に手厚い形になっています。「それっぽっちですか」と思うかもしれませんが、若い時点で上がれば、生涯賃金に大きく影響しますし、公務員志願者の減少に危機感を抱いて若手を厚遇するのは理解できます。ただし、物価高のために首相自身が賃上げを要請している状況なので、なんらかの上乗せが要求されるのは目に見えています。どうなるものだか。

つづいてボーナス。

・支給月数(つきすう)を0.10月分引上げ

・引き上げるのは期末手当ではなくて勤勉手当

勤務成績によって額が左右され、取得した特別休暇などによって影響を受けやすい勤勉手当ではなく、期末手当に加えてほしかったところですが、まず、増えることは増えます。

給料とボーナスの引上げ分がいつ支給になるのかはまだ不明。しかし県議会の日程によってある程度予想できることになるでしょう。
 
さて、定年引上げについては、あまりにも大きな話なので別に特集します。ひとつだけ予告しておくと、今年度に60才になる(なった)人たちが、最後の60才定年退職者になるだろうということ。

さて人事委員会勧告において、他にどんなことが語られているかというと……

・教育職員の多忙化の解消は喫緊の課題

・男性職員の育児休業取得は順調に増えているものの、教育職員はまだまだ

・職員採用試験において、山形県の最終合格者の4割は女性

・民間企業との人材獲得競争がし烈になるなか、採用試験実施時期の前倒し、合格有効期間の延長など見直しが必要

・テレワークに伴う光熱費などの負担軽減のために、新たな手当について検討を進める

・ストレスチェック(やってくれましたよね)の更なる活用を推進する

……などなど、読み物としても人事委員会勧告はなかなか面白いのでした。

本日の1冊は「爆発物処理班の遭遇したスピン」佐藤究著 講談社

あの「テスカトリポカ」の佐藤究の新作。量子力学を利用した爆弾という、どうにも理解しにくい存在が日米政府を翻弄する。

思いきり簡略化して説明すると、あのシュレディンガーの猫(死亡する確率が1時間で50%の猫が箱に入っている。その猫が生きているか死んでいるかはふたを開けてみるまで確定していない)の設定に、映画「ダークナイト」でジョーカーが仕掛けたふたつの船の命題(善良な市民が乗る船と、囚人たちが乗る船があり、一定時間内にどちらかが爆弾のスイッチを起動して相手を沈めなければ、どちらも沈められてしまう)をシェイクして……すいません全然説明になってませんね。にしても、ああ映画館に行きたい。

2022年11月号「定年引き上げ最新情報」につづく

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「ナイル殺人事件」Death on the Nile(1978 東宝東和)

2022-10-19 | 洋画

ケネス・ブラナー版を観たばかりなので、ストーリーも犯人も承知している。っていうかそれ以前にこの作品を四十年以上前にわたしは名画座で観ているし(でもそっちの記憶はみごとに欠落しています)、クリスティの原作ももちろん読んでいます(そっちの記憶もあいまい)。それでも、なかなか楽しめる映画でした。

エルキュール・ポワロ役はピーター・ユスティノフ。あの「オリエント急行殺人事件」のアルバート・フィニーと路線はいっしょだけれども、なにしろあの巨体なのでイメージが違っている。およそ名探偵っぽくないというか。ポワロというより、レックス・スタウトが創造した巨漢探偵ネロ・ウルフに近い。

粋な脇役をそろえているのも強みで、ベティ・デイヴィス、マギー・スミス、デヴィッド・ニーヴンの三人がいるだけで画面が豊穣に見える。

客船の乗客のほとんどが殺される富豪の女性を憎んでいるという設定は、詳しくは言えないけれどもオリエント急行殺人事件より強引(笑)。

客がすべて白人で、川岸のエジプト人を蛮族的に描いているのも、時代的に仕方のないことだろうか。クリスティが原作を書いたころならともかく、70年代に至ってもまだまだ現代から見れば政治的に正しくなかったのかな。

監督はジョン・ギラーミン。「タワーリング・インフェルノ」や「キングコング」など、このころの彼は大作請負監督だった。

キャストは他にミア・ファロー、アンジェラ・ランズベリー、ジョージ・ケネディ、ジェーン・バーキン(シャルロット・ゲンズブールのお母さんです)、ジョン・フィンチ、ジャック・ウォーデン、ロイス・チャイルズなど。このころのオリビア・ハッセーは匂うように美しい。

リチャード・アムゼルのポスターも最高。

まあ、最後に言っておきますけど、犯人役だけはミスキャストではなかったかと……。

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「幸村を討て」今村翔吾著 中央公論新社

2022-10-18 | 本と雑誌

もちろん見ていなくても充実した小説。でもあの大河「真田丸」に耽溺した人なら、もっともっと楽しめるはず。

真田幸村は謎の多い人物だが、彼が大坂城に入るときに、なぜ信繁の名を捨てて幸村となったか、そのあたりをうまく使った設定になっている。

その、謎の多い人物と関わる敵も味方もすべて「幸村を討て」と一度は口にする今村翔吾のアクロバットぶりが光る。

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「ジョジョ・ラビット」Jojo Rabbit(2019 フォックス・サーチライト)

2022-10-17 | 洋画

ヒトラーユーゲント(ヒトラー青少年団)に属し、総統をアイドル視する孤独な少年ジョジョ。あこがれが乗じて、彼には本当にヒトラーが視え、いつも励ましてくれるヒトラーにジョジョはますます傾倒する。

ユーゲントのキャンプに勇んで参加したジョジョだったが、うさぎを殺すことを強いられた彼は、どうしても殺すことができない。そのために彼は「ジョジョ・ラビット(おくびょうなうさぎ)」と呼ばれることになる。

一度も画面に登場しない父親。その役割を果たしているヒトラー。苦しめられる存在としてのうさぎは、ユダヤ人の象徴だろうか。

ジョジョの母親(スカーレット・ヨハンソン!)は、実は反ナチの人で、ジョジョにも内緒で家にユダヤ人の少女(トーマシン・マッケンジー)をかくまっている。そんな悲劇のアンネの日記パターンが、ジョジョを演じたローマン・グリフィン・デイヴィスの愛らしさで中和されてすばらしい。

アンネの日記とまるかぶりの設定を用意したのは正解だったと思う。アンネが気の強い女性だったとしたら?というあたりがうまい。

監督はコメディアンでもあり、この作品でヒトラーを演じたタイカ・ワイティティ。アカデミー賞の作品賞部門にノミネートされ、実際には「パラサイト」が受賞したがわたしは大穴だと予想していた。それだけの価値はある映画でした。

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鎌倉殿の13人 第39回「穏やかな一日」

2022-10-16 | 大河ドラマ

裏話トークSPはこちら

「穏やかな一日」と題されているのだからきっと穏やかではないんだろうと予想。ある意味、それは正しかった。

冒頭からついに長澤まさみ登場!名もなき役での起用は三谷幸喜の計算だろう。名もなき人が陰惨な話を静かに語っているという形式。視聴者にウインクをするような義時との出会いは、まるで往時のハリウッド映画のよう。

思えばこの大河のタイトルバックの造形は、およそ日本人とは思えないじゃないですか。明らかにハリウッドを意識していて、エバン・コールの音楽もローマ史劇みたい。あ、これはわたしが「ローマ帝国の滅亡」を見たばかりだからそう思うのかしら(笑)。

ただし往時のハリウッド映画で、そしてこれまでの大河ドラマでは描けなかった部分を三谷幸喜は(三回目の大河だからこそ)強気で描いてみせる。

同性愛のお話。

穏やかじゃないのはこのことだけで十分。かつてハリウッドにはヘイズ・コードなるものがあり、同性愛や白人と黒人のセックスを描くことはタブーだった。

ちょうど町山智浩の「映画と本の意外な関係!」(インターナショナル新書)を読み終えたところで、映画「キャロル」が、レズビアンだったパトリシア・ハイスミス(「太陽がいっぱい」の原作者ですよ)をモデルにしていたと知って驚愕。

スピルバーグの「リンカーン」については、彼がバイセクシュアルであるとの言及もあり(奥さんがとてつもなくひどい人だったこともあったらしい)あれまぁ、と思う。

でも、現代では「ブロークバック・マウンテン」も評価されているし、ついに大河でも想われ人の困惑を和歌に仮託して描かれることになった。いつかそのことが、穏やかに語られる日もくるだろう。

第40回「罠と罠」につづく

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史劇を愉しむ 第30章「ローマ帝国の滅亡」The Fall of the Roman Empire(1964 パラマウント)

2022-10-15 | 洋画

第29章「王妃マルゴ 無修正版」はこちら

まだローマ帝国が元気だった(問題はいろいろあるにせよ)五賢帝の時代。五人の最後であるマルクス・アウレリウス(アレック・ギネス)は戦いの日々を終わらせずにいた。

五賢帝、と言われているわけだから、その次の皇帝は賢くなかったというお話。アウレリウスは後継者に軍の指揮官であるリヴィウス(スティーヴン・ボイド)を選ぼうとするが、指名する前に暗殺されてしまう。暗殺者は、アウレリウスの長男であるコンモドゥス(クリストファー・プラマー)に次期皇帝になってもらわなくてはならない人物だった。

あれ?このお話はどこかで……そうです、リドリー・スコットの「グラディエーター」ですね。あちらはアウレリウスにリチャード・ハリス、長男がホアキン・フェニックス、剣闘士にラッセル・クロウという布陣だった。何度も言っていますが、わたしあの映画が大好きなんですよ。

この「ローマ帝国の滅亡」は、CGなどなかった時代にひたすら物量で勝負している。特に馬の数にはため息が出る。黒澤明は切歯扼腕しただろう。

ただ、監督のアンソニー・マンは、その馬の数を誇りたいのか、行列のシーンがいつもやたらに長すぎる(笑)。

堂々たる史劇であることはうれしい。こういうお話は絶世の美女が出てこないと成立しないわけだが(偏見)、そこはソフィア・ローレンがどーんと引き受けています。にしても若きソフィアの、ゆったりしたローブをまとってもすぐわかる巨乳ぶりにクラっとくる。

いやそれはともかく、マルクス・アウレリウスは異民族にローマ市民権をあたえて帝国を安定させたのに、コンモドゥスと元老院はその反対の政策をとり、帝国を滅亡に向かわせてしまう。その意味で、不寛容な独裁者が目立つ現代だからこそ観る価値はあったかも。

第31章「さすらいの航海」につづく

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「爆発物処理班の遭遇したスピン」佐藤究著 講談社

2022-10-14 | 本と雑誌

テスカトリポカ」で度肝を抜かれた佐藤究の新刊。それぞれ違った味わいの八つの短篇。オープニングがこのわけのわからないタイトルの、なんとSF的警察小説。量子力学を利用した爆弾という、どうにも理解しにくい存在が日米政府を翻弄する。

思いきり簡略化して説明すると、あのシュレディンガーの猫(死亡する確率が1時間で50%の猫が箱に入っている。その猫が生きているか死んでいるかはふたを開けてみるまで確定していない)の設定に、映画「ダークナイト」でジョーカーが仕掛けたふたつの船の命題(善良な市民が乗る船と、囚人たちが乗る船があり、一定時間内にどちらかが爆弾のスイッチを起動して相手を沈めなければ、どちらも沈められてしまう)をシェイクして……すいません全然説明になってませんね。

「ジェリー・ウォーカー」はCGアーティストのお話。深緑野分の「スタッフロール」を読んだばかりなので味わい深い……と思わせてこれは一種の芸術論ですかね。

他にも、夢野久作を角川文庫(表紙絵は米倉斉加年でした)で読み倒した人間にはたまらない「猿人マグラ」、シリアルキラーの作品に執着する画商を描いた「スマイル・ヘッズ」など、高レベルの作品ばかり。さすがだ。

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明細書を見ろ!2022年財形貯蓄号

2022-10-13 | 明細書を見ろ!(事務だより)

年に一度の財産形成貯蓄預金、いわゆる財形の募集がスタートしました。1年間のなかで、新規加入や積立額の変更ができるのは基本的にこの時期だけです。

「財形ってやってるか?」

事務室にやってきたとっぽい業者にきいてみた。

「やってますよー」

そういうタイプじゃないと思っていたのに、意外だ。

「まあ、このご時世に利息とかは期待できないけどな。」

「ですよねー」

「でも給与天引きってのがミソだな。定年になったときにしみじみやっててよかったと思った。天引きじゃなかったらこんなに貯まってなかったって確実に言えるもん」

「自慢げに言うことですか」

「まあ、節税とかも考えるとiDeCo(個人型確定拠出年金)とかNISA(少額投資非課税制度)の方が今は圧倒的に有利だけど」

「あ、おれどっちもやってます。」

意外だ……。

財形関係の用紙は常備しています。意欲のあるかたは10月25日(火)まで、事務室へ。

画像は「むしろ、考える家事」山崎ナオコーラ著 KADOKAWA

意図的に角川の本をチョイス。家事をめぐるエッセイ集。あっという間に読み終える算段でしたが、あまりの内容の濃さ、名言てんこ盛りなので読み終えるのに一週間もかかってしまいました。たとえばこんなフレーズ。

「私は、損を気にしない。極力ポイントカードを作らないことにする。ポイントの考えごとも面白いし、ポイントを貯めるのが好きな人もいるのだろうが、私は好きじゃない。私は好きじゃなかった。他の考えごとをしたい。」

ごもっともですっ!こんな金言が全ページにわたって繰り広げられるのだ。おみそれしました。さーすが山崎ナオコーラ

ってことを近ごろPayPayがどうしたのdポイントがいくら貯まったのかを気にしている男に言われたくはないですわね。

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あきづき。

2022-10-12 | 日記・エッセイ・コラム

「猫型ロボットのネクタイ」篇はこちら

「色々あったけど妻と週末に刈屋へ。10時ぐらいだとまだ買えるかな。あきづき。でけー」

「伍長、隣にセブンスターを置いてくれないと」

「お前マジでいつの生まれなんだ。にしても……」

「うまかったっすねー!!!!」

……酒田の北部にある刈屋(かりや)の梨は既にブランド化。週末は大挙して客がやってきて、メジャーどころはすぐに売り切れる。でも小さなところはまだやっていて

「まだ買えますか?」

「大丈夫ですよ。ご家庭用のとか贈答用とかあるんですけど……」

「じゃあ、家庭用で」

「ごめんなさいもう予約で満杯で」

うちの奥さんがよけいなことを。

「スーパーで刈屋の梨を買っても、おいしくないときもありますよね」

お店のおばさんは

「まあ、人によって育て方も違うし、スーパーに回るときは3日ぐらいたってるときも。ここにあるのはほら、今朝穫ったのばっかりだから。あきづきはね、甘みが少ない品種だったんだけど……」

「そうですかあ」

うちに帰ってとりあえず食べる。衝撃のおいしさ

てな話を職場でしていたら、上司は

「あきづきが一番うまいよね!」

なるほど。納得。来週末でおしまいみたいなので急げ!

「庄内柿ですけどなにか。」篇につづく

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ヘアーの不毛 その13「ヒッチハイク」Autostop rosso sangue(1977 伊)

2022-10-11 | 洋画

「王妃マルゴ 無修正版」はこちら

倦怠期の夫婦が、帰宅する途中でヒッチハイクの若い男を乗せる。善良そうな彼は、しかし邪悪な事件の当事者だった……ありがちな設定。

途中からスピルバーグの「激突!」をそのままいただくなど、礼儀としてどうなのかなと。でもわたしはこの映画を大好きになりました。公開当時、「エマニエル夫人」で大儲けしたヘラルドに対抗し、東和が用意したのが「O嬢の物語」。主演はこの映画のコリンヌ・クレリー。ドメスティック系の配給会社が、知恵を絞っていた時代。

さて、そのクレリーの夫の役がフランコ・ネロ。いくら邪悪な犯罪者とはいえ、あのネロが相手なんだよと心配するのは年寄りの客だけなんだろうか。

ヘア無修正版とかいうけど、全篇にわたってヘア出まくり。だからむしろ修正されたバージョンを見たくなりました。すいません、嘘です。

その14「プライベートな3本」につづく

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