「人間の証明」篇はこちら。
住民が50名にみたない八重山諸島の鳩海島(はとみじま)の島民たちは追いつめられていた。中学校はすでに閉校。ただひとりの小学生も島を離れることになったからだ。勇造(緒形拳)は東京にいる孫を連れ戻そうとするが娘に拒否される。そこへ現れたのが瑠璃という、母親のネグレクトによって心に傷を負い、養護施設に入っている少女・瑠璃(成海璃子)だった。勇造は、大人に対して決して心を開こうとしない彼女を里子にすることで小学校の存続を図る。瑠璃とふたりで鳩海島に渡る船には、川島という謎の男(竹野内豊)が乗っていた……
わたしは映画やテレビを観てよく泣く。だから泣きそうな作品はなるべく敬して遠ざけるようにしているのだ。重松清の著作や、山本周五郎の「ながい坂」を読まないのはそのため。でも泣きそうな話ならなんでも泣くわけじゃない。そこにあざとさがあったり、ドラマとして不出来だったりすると、へそを曲げて思いきり罵倒したりしている。思えばいやな客。
そんなわたしが「瑠璃の島」(日本テレビ)にはやられた。いっきにDVD5枚(全10回+スペシャル)を観た週末は、目がずーっと真っ赤。泣きすぎるとまぶたが腫れるってのはホントですな。いきなり部屋に入ってきた娘は、なにごとが起こったのかと目を白黒させていた。コブクロをロケ現場まで連れて行って主題曲を書かせたことでわかるように、日テレの本気ぶりが伝わる傑作だ。
ストーリーはベタなかぎり。たとえば、こんな場面がある。
島を脱走するためにボートに勝手に乗りこんだ瑠璃は、そのボートを損傷させてしまう(彼女の命を助けたのが竹野内だったというお約束の展開あり)。修理代を稼ぐために勇造は石垣島の工事現場に通う。反抗的な態度をとり続ける瑠璃だったが、「老いぼれ!」と罵倒されながら働く勇造にかけより「バカじゃないの!」と泣きながら抱きつく……
ベタでしょう?でも緒形拳の背中がすっかり小さくなっていたり、瑠璃役の成海璃子(この子は天才だ)の演技がうまいのでひたすら泣かされてしまう。
くわえてこのドラマが周到なのは、そんなベタな場面の前にクールなやりとりをちゃんと仕込んであるところだ。それは……あ、全然竹野内豊の話になっていないのに次号につづく。