事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「あやかし草紙」 宮部みゆき著 角川書店

2018-09-11 | 本と雑誌

宮部みゆきの現在もつづいているシリーズには特徴がある。わたしの大好きなお婿さん(ではなくなったけれども)探偵、杉村三郎の物語にしても、この三島屋変調百物語にしても、単行本で出たときには出版社がバラバラなのである(文庫はそれぞれ文春文庫、角川文庫に統一)。

旺盛な執筆欲によるものか、出版社の争奪戦のためか、あるいは単に初出の連載の影響か、ひょっとしたら所属事務所「大極宮」(大沢在昌、京極夏彦、宮部みゆきが所属する、作家の事務所として最強のとこ)が商売上手なのか(笑)。

ふりかえれば、こんな具合です。

おそろし」(角川書店)

あんじゅう」(中央公論新社)

泣き童子」(文藝春秋)

三鬼」(日本経済新聞出版社)

そしてこの「あやかし草紙」は角川に帰ってきた。

第一期完結だとか。百物語のうち、二十数篇を消化した段階で、はたしてどう完結させるのだろう……そう来たか。そんな手があったのか。

このシリーズは、あるつらい思い出のために沈んでいるおちかという娘を聞き手に、数多の不思議が客によって語られ、客だけでなく、聞き手のおちかのカウンセリングにもなっていく……これが基本線。

読者はおちかのことが大好きだし、彼女にしあわせになってもらいたいとみんなが考えながら読んでいる。その願いは叶えられるのだが……

第二部がどのような展開になるのか、楽しみに待つことにしよう。なんか宮部みゆきは、「この世の春」といい、もう一段階うまくなっている気がする。同世代として、まことに頼もしい。老後のお楽しみに不自由しない感じ。ありがたいありがたい。

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