心に傷を負った娘のもとへ、不可思議なできごとを客たちが“ただ語る”ためだけに訪れる……三島屋のおちかが、逆カウンセリングのように物語を聴く「三島屋変調百物語」シリーズの「おそろし」「あんじゅう」「泣き童子(わらし)」につづく最新作。
容れ物として、この百物語という設定が宮部みゆきにとってとても便利なものなのだと知れる。人情噺、武家もの、怪異譚、ホラーとなんでもあり。小説家としてオールラウンドプレイヤーである彼女でなければできない設定でもある。
今回の四篇もとてもレベルが高く、特にタイトル作「三鬼」は絶妙。
ある事情で人を斬った武士が、辺境の地の勤務を命ぜられる。その村は、上(かみ)と下(しも)に分かれており、互いの行き来があまりない。ひとつにまとまった方がなにかと便利であろうに、なぜ分かれているのか。
前任者の不可思議な死に方、謎の“人物”の登場、そして……
息苦しい展開を、しかしここから強引にハッピーエンドにもっていく手腕に脱帽。やっぱり、宮部みゆきはうまい。
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