事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「黒井戸殺し」(2018 フジテレビ)

2020-07-09 | ミステリ

もしもあなたがミステリファンではなく、だからアガサ・クリスティの高名な原作「アクロイド殺し」を読んだこともなく、豪華なキャストと、野村萬斎がエルキュール・ポワロを演じた前作「オリエント急行殺人事件」が面白かったという理由でこのドラマを見たのだとすれば、はたして作り手たちの企みをどう受け取ったのだろう。

ひょっとして怒りましたか?

わたしが原作を読んだのは高校生のころだったと思う。そりゃあびっくりしましたよ。何にも知らなかったので。で、思った。これを途中でトリックに気づく人っているのかなと。それくらい、きわどいつくりになっている。

三谷幸喜が「オリエント~」に続いてこの原作を選択したのは、よほど自信があったのだろう。本来であれば映像化不可能といってもいいトリックだし。

その結果、どうだったか。

楽しめましたー。みごとな脚本、演出もていねい。役者のアンサンブルもいい。

大泉洋浅野和之秋元才加(どうしておれにだまって結婚しちゃったんだー)、今井朋彦といったいつものメンバーに、向井理遠藤憲一松岡茉優草刈民代余貴美子が加わる。まあ吉田羊が脅迫に屈して自殺するようには全然見えないというご愛敬もありましたが(笑)。

野村萬斎と大泉洋に斉藤由貴がからむ、それはそれは豪華なコント芝居が随所に挿入してあり、陰惨な事件を中和してくれる。

もちろん、秘書が9時半に……うううあぶない、ネタバレになってしまいそう……はちょっとミステリとしてしんどいし、“なぜ世界的に有名な名探偵がこんなひなびた村に住んでいるのか”は、なるほど犯人にそう述懐させるしかなかったわけだ。

終わり方は、刑事コロンボの「忘れられたスター」をいただいて(実は犯人の動機もツイスト入りで引用されていて)、静かな余韻を残す。大芝居の連続だった野村萬斎が、最後に見せたキメの表情もすばらしい。

キャッチコピーは「私たちだけが、真犯人を知っている。」うまい。

コメント (4)
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