第46回「炎のランナー」はこちら。
ああ、ついに終わってしまった。一視聴者として、伴走者のような気持ちでゴールインできたことが素直にうれしいです。
伏線を刈り込むことが得意技の宮藤官九郎。冷水浴、カラーテレビ、ストップウォッチ(だから「時間よ止まれ」なんだ!)などを最終回にもってきて面目躍如。
しかもなんとなんと本人登場(笑)。しかも現代の車引きであるタクシードライバーとして。大河ドラマに、書いている脚本家が登場したことってあったのかな。ジェームス三木さんあたりはやってましたっけ?いちばんやりそうな三谷幸喜を市川崑役で起用していたのがここで効いている。
この大河は、金栗四三と田畑政治の物語であることはもちろんだけれど、意外なほど落語のお話だったことは記憶されて然るべきだ。
オリンピックの聖火台への点火と、富久の火事をシンクロさせるなんて大技は、作り手たちだって最初は想定もしていなかったはず。もしも実在の人物をあつかうことが多い大河でなかったら、このドラマの主役はどうしようもなく五りん(神木隆之介)だったわけであり、彼の娘が1964年10月10日に生まれたあたり、架空の人物を描くことに宮藤官九郎がうれしがっていたことがうかがえる。
さて、なによりも低視聴率で有名になってしまった「いだてん」だけれど、ちゃんと見ている人は評価していたわけじゃないですか。途中から、低視聴率をバッシングすることを喜んでいるような報道が増えて、わたしはとても残念に思っていた。
だって近ごろの世間は、高視聴率が喧伝されれば一斉に見ることになり、低視聴率なら見向きもされない傾向があるから。結果的に最後までつきあったのは、宮藤官九郎のルールを理解できた層だけ、というのはあまりにさみしい。主役たちの死をいっさい描かないというあたりもすばらしい。ラストがビートたけしのあの表情なのは最高。
何度でも言います。極私的大河ドラマ史をやっているわたしにとっても、あの「太平記」を凌駕して「いだてん」は最高の大河でした。今日は妻が実家にいたからひとりで見ていたんだけど、ずーっと涙が流れてました。テレビドラマって、実はすごいんだなとつくづく。
日本人は、まだまだ面白いことがやれるんじゃんねえ。
総集篇特集につづく。