その74「造花の蜜」はこちら。
登場する刑事たちの性向や考えはすべて地の文で解説され、読者が忖度する必要はない。複雑なトリックや叙述のひっかけもないのですらすら読んでもOK。
いや別に皮肉ではなくて、ほんとうに読んでいて楽。ミステリだと期待するから肩すかしを食らうのであって、これは人情噺なんですよ。
・自分は徹底して平凡な人間だと規定し、その能力をなにもそこまで過小評価しなくても、と言いたくなる主人公安積班長。
・ぼんやりしたルックスと行動で他者から侮られがちだが、実は名探偵である須田。
・安積は煙たがっているので、きっと向こうも嫌いだと思っているに違いないけれど、実は安積を助ける自負ではだれにも負けない村雨。
・もっとも警察官らしい行動様式を保っているが、須田とコンビを組むことでほどけていく黒木。
・村雨と組んだことの意義に次第に目覚めていく桜井。
・激しく安積を嫉妬するけれど、彼のせいで組織や上司とはなにかを考えるようになる相楽。
……わかりやすっ!それでもまだわかりにくい読者のために、速水という“解説者”まで用意しております。周到。
長いシリーズなので、ステロタイプの登場人物を利用して、むしろお台場の変遷を描くことに作者の意図は向かっているような気がする。いつも署で海の匂いを感じてしまう安積は、街の定点観測者ということで。
その76「機龍警察 完全版」につづく。