外務官僚が任地で失踪する。背後にはODAがからんだ汚職が存在するが、一人の少年の逃亡劇が事件を複雑なものにしていく……おなじみ未解決事件を担当するコペンハーゲン警察署特捜部Qシリーズ。もう五作目か。
監禁した女性を閉じ込めた“檻”を一年に一気圧上昇させたり、
人間狩りがあったり、
安全で確実な誘拐を生業にする男が登場したり、
知的障碍者を孤島に隔離して不妊……
うわああどうなってんだ北欧!という絶望的なシリーズを中和するのが、特捜部の面々のコミカルな日常だ。
今回は少年少女を使った犯罪集団から逃亡したマルコという小僧がいい味。とにかく頭がいいので汚職に関係する大人たちを翻弄する。
オールスンが意図したのは、ロマ族などへの人種的偏見の形を借りて、デンマーク人が、特に都会人がいかに冷たい存在なのかの告発だろう。助手のアサドのミステリアスな部分が前面に出てきました。全10作の予定なので、これからもっと面白くなりそうだ。
第6作「吊された少女」につづく。