事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「償いの報酬」 ローレンス・ブロック著 二見文庫

2013-10-02 | ミステリ

51vyvnk16yl_sl500_aa300_ まだ終わってなかったんだマット・スカダーのシリーズ!うれしい。すっかり渋い老境の男となったスカダーが、「八百万の死にざま」のころを思い出して……いくらでも書けるんじゃんこの手を使ったら(笑)

“神よ願わくば、自分で変えていけるものを変える勇気と、変えられないものを受け入れる落ち着きと、そのふたつを見きわめる知恵を与えたまえ”

アル中治療の前段にあるフレーズだというが、スカダーの禁酒がまだ危うかったころのお話。疎遠になっていた幼なじみが、やはりアル中として現れる。彼は断酒において『埋め合わせ』と呼ばれる段階にいて、かつて行った悪行を(相手がそれで喜ぶかはともかく)埋め合わせているところだった。そんな彼が殺される……

スカダーがほぼ全編で行うのは「この人間は犯人ではない」ことの確認。だから快刀乱麻の名推理を期待すると肩すかしをくう。でも、地方選挙にからんだ妙に明晰な男など、やけに魅力的な人物が登場して飽きさせない。

特に「死者との誓い」で泣かせた元恋人ジャン・キーンとのからみは、若いころから読んでいたからこそ味わい深い。スカダーと同じく74才になったローレンス・ブロックだけれど、多作が身上の人なのだから、もっともっとこのシリーズを続けてほしい。悪友ミック・バルー(肉屋にして実はギャング)との会話だけでも読む価値はある。また6年も待つのはつらいなあ。

償いの報酬 (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション) 償いの報酬 (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)
価格:¥ 980(税込)
発売日:2012-09-21
コメント
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