事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

続・意外なふたり~作家が死ぬと時代が変わる。

2013-04-17 | うんちく・小ネタ

Oooka_syouhei_and_wife 「その高校に行ってみたい」はこちら

粕谷一希という人の「作家が死ぬと時代が変わる」は、ネタ的には非常においしい書なのだけれど、読んでいてどうにもその保守臭が息苦しい。

中央公論の編集者として、数多くの作家、思想家を世に送り出したのはけっこうだが、それが永井陽之助だったり高坂正尭だったりすることでもわかるように、反体制寄りだった中央公論を右傾化させた人物でもある。

そんな粕谷のことだから、業界の裏の裏まで通じているわけで、行間から作家への好悪が透けて見えるあたり(むしろあからさまにしたい欲が見え見え)、さすが、怖いもののない人は違う。知られざる(わたしだけが知らなかったのかもしれないが)文壇裏事情をこの書からいくつか。

♯125 大岡昇平 & 小林秀雄

大岡昇平が成城高校の学生の頃、小林秀雄が東大の学生で、大岡のフランス語の家庭教師だった。

♯126 坂本睦子 & 作家たち

その大岡が勘当されて小林家に出入り禁止になったことがある。その理由は、久世光彦が「女神」という小説にした女性編集者坂本睦子との関係をめぐって。坂本は直木三十五、青山二郎、小林秀雄とも関係があった。大岡は彼女が亡くなる直前まで同棲していた。

※坂本睦子……直木三十五に処女を奪われ、それ以降、美術評論家の青山二郎、菊池寛、坂口安吾、中原中也、河上徹太郎、大岡昇平らと関係。小林秀雄は彼女に求婚し、しかし結婚を目前に婚約は破棄されている。1958年睡眠薬を飲んで自殺。こんな人がいたんですねえ。

♯127 塩野七生 & 庄司薫

塩野七生と庄司薫(日比谷高校でこのふたりは同級生)と京都に旅行したとき、東大阪まで司馬遼太郎に会いに行くことを提案したら、庄司は「男が男に会いに行くのには場所とタイミングがある」と拒否。塩野だけを連れて「こういう新人が出ていますからよろしく」と紹介した。司馬はきょとんとしていた。

十年ぶりの「新・意外なふたりPART1 追悼ジェーン・バーキン」につづく

作家が死ぬと時代が変わる―戦後日本と雑誌ジャーナリズム 作家が死ぬと時代が変わる―戦後日本と雑誌ジャーナリズム
価格:¥ 2,310(税込)
発売日:2006-07
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