事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

三國連太郎のこと最終回~追悼

2013-04-15 | 芸能ネタ

Mikunirentaroimg08 PART7「告白的女優論」はこちら

予期されていたこととはいえ、ついにこの日がやってきた。90才の大往生。三國連太郎に似合わないようでいて、そして彼らしいとも。

彼の死に、多くの人が「名優の退場」と評価することと思う。でも、その“名優”におさまりきらないあたりがこの人の真骨頂だった。よく考えてみよう。どんな穏やかな作品も三國の出演によって穏やかならざる背景を観客は感じ取ったし、とんがった作品においては、なおいっそうの裏があるのではないかといつも考えさせる存在だった。

「犬・猫・三國、入るべからず」

撮影所の正面にこう掲げられた過去こそ、彼に対するまっとうな評価かもしれない。憎んでいる人はいまでもいるだろう。でも、日本映画は結果的にそんな彼を激しく必要とした。佐野眞一のインタビューのつづきはこうだ。

-三國さん、農業の経験は?

三國:ないんです。農民の手はサラリーマンとは全然違うと思うんです。以前、農民の役をやったとき、砂袋を突いて突き指をさせ、指の節を高くしたことがありますが、『息子』のときも、同じことをやった記憶があります。

……メソッド演技などということばが軽く思えるほど役に淫している。逆に、三國個人が噴出するエピソードもある。

沢庵和尚役で出演した『宮本武蔵』の、武蔵の恋人であるお通と焚き火にあたって一夜を過ごすシーンの撮影では、お通を演じた入江若葉の色香に欲情し、このままでは強姦してしまうからカットを割ってくれと監督に頼んだ。

……いったい何だろうこの正直さは。そして、この不世出の(まさしく、そう思う)役者のいない時代をわたしたちはこれから過ごさなければならない。あの大柄な身体と、シニカルな笑顔を抜きに。しんどい。

【三國連太郎のこと・おしまい】

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