事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「リンカーン」 (2012 ドリームワークス=FOX)

2013-04-23 | 洋画

Lincolnmovieposter1e1347317263244 雨の日曜日。

「映画でも見に行こうか」

「そうね」

子どもがみんな家を出てしまった夫婦なので、こんなことが増えていくのかな。映画館は鶴岡まちキネ。映画は「リンカーン」。スピルバーグ好きのわたしとはいえ、いかにも名作、いかにも偉人伝、って感じなのでちょっと気が重くもある。主演がダニエル・デイ=ルイス(え。お父さんが「野獣死すべし」のニコラス・ブレイクだったなんて初耳)なので、いかにも入魂の演技だろうしなあ……

見終わって呆然。まさかこんなにすばらしいとは。途中からわたしは涙ボロボロ。なめてて悪かったスピルバーグ。おそれいりましたダニエル。

歴史に暗いわたしとて、ゲティスバーグの演説、劇場での暗殺ぐらいはなんとか知っている。でも、なんとこの映画では演説は伝聞でしか語られないし、暗殺シーンはひとひねり加えられている(だからこそむしろ哀しい)。スピルバーグの節度と気合い、そして自信が感じられる。誰よりもうまく(そして実はお安く)映画を仕上げる達人であるスピルバーグは、今回はその、いかにもなうまさを封じているのだ。

描かれるエピソードも渋い。映画的に盛り上がるであろう奴隷解放宣言ではなく、その宣言を実効させるための憲法修正が下院で勝つかの駆け引き。

清廉潔白なだけでなく、ロビイストを使って裏工作をすすめる政治的腹芸がいいし、常に最適なたとえ話をもちだして(それはリンカーンの前半生が波乱と苦渋にみちていたことの証左でもある)、敵である民主党と、共和党内急進派を切り崩していく過程がぞくぞくするほど面白い。

もちろんその切り崩しはすべて成功するわけではないし、「たとえ話はうんざりです」と拒否される場面もちゃんと用意してある。そしてだからこそ、長身をもてあまし、苦難をすべて自分で抱えこんでやつれていくリンカーンが魅力的に見える。傑作

鶴岡から帰る車中で、この映画がいかにすばらしいかを妻は力説。あのー、おれもいっしょに観てたってことを忘れてない?

コメント (2)
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