事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「キツツキと雨」(2011 角川)

2012-04-12 | 邦画

Kitsutsukiimg01_2 鶴岡まちなかキネマは文字どおり街にすっかり定着したようで、平日の一回目、しかもメジャーとは言い難い作品なのに、二十名ほどの、えーと妙齢とは言い難い女性たちがつめかけている。入学式の振替休日にボーッとあらわれる中年は目立ってしかたがない。

女性たちに人気な秘密はなんだろう。

いまやもっとも精力的な俳優である役所広司主演だから?

山田優と結婚なんかして一人の女性のものになっていいのか小栗旬も出ているから?

それもあるだろうけれど、やはり「南極料理人」の沖田修一監督の新作だという方が大きいのではないでしょうか。まちキネでも人気だったようだし。

前作で、ベーキングパウダーを使ったラーメンや、伊勢エビのフライなどで笑わせてくれたように、今度も食べ物が魅力的。二年前に妻を亡くした木こり(役所広司)が、自分と息子(高良健吾)のためにつくる料理の“キメ”は、なんと味付け海苔。

相方を会議室に追いやり、事務室でひとり給食を食べるわたしの“キメ”も、机の引き出しからとりだした味付け海苔だったりするので共感大。

しかし役所の食べ方はわたしの想像をはるかに超えていて、ご飯にウィンナーをのせ、お箸を使って味付け海苔で巻き、ご飯ごと口に放りこむというもの。

その手があったかっ!わたしだけが知らなかったんだろうか。ちょっと不安。まあ、お行儀がよくないことは確かなので、事務室だけの楽しみにとっておこう。

そんな木こりの仕事場である山に、ゾンビ映画の撮影隊がやってくる。監督しているのは25才の新人(小栗旬)。自信がないものだからスタッフにもなめられ、逃亡を図ったりしている。そんな彼の心のささえになるのが木こり。ふたりのやりとり(特に温泉での)は笑える。

木こりは息子と心が通わず、監督(山形の旅館の長男という設定)は家業を継がずにいることに屈託が。そんなふたりが撮影しているうちに少しずつ救われていく展開はとてもいい感じ。

およそ皮肉なゾンビ映画のタイトル「ユートピア」とは、撮影という祝祭を終え、静かにすごすふたりの生活なのではと思えてくる。ぎこちない疑似親子が、味付け海苔をつまみながら将棋をするシーンは必見ですよ。日本版「アメリカの夜」!

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コメント (5)
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