デビッド・ボウイの息子が監督しているという情報を抜きにしても、なんか面白そうという匂いプンプン。
キャストも、とにかくわたし好みなのだ。「遠い空の向こうに」「デイ・アフター・トゥモロー」などで弟キャラ全開だったジェイク・ギレンホール(ブロークバック・マウンテンでは別のキャラ炸裂でしたが)が主演。
共演は「M:i:Ⅲ」「イーグルアイ」のクールビューティ、ミシェル・モナハン(顔のゆがみは治っています。残念)、ある重要な行動をとることになる軍人に「マイレージ、マイライフ」で“国内線のトイレのなかでセックスできる女”を絶妙に演じたヴェラ・ファーミガ。いいですなー。
ストーリーは思い切りひねくれている。シカゴで起きた列車爆破テロ被害者の『死者の記憶』にジェイクが同期し、連続テロを予告している犯人を列車内で捜しだそうというもの。
記憶が残像として残るのが8分間。もちろん一度ではうまくいかないので、何度も事故直前にジェイクはダイブすることになる。つまり一種のタイム・トラベルものであり、やり直せるのになかなかうまくいかない、という設定はケン・グリムウッドの傑作小説「リプレイ」に通じる。
作品内のルールに目くじらを立てるのは無粋というものだろう。ジェイクが最後のダイブで、あることを“成し遂げてしまう”あたり、無茶もいいところ。
しかし面白い。とにかく面白い。
ある条件下にいる登場人物がつぶやく
Everything is going to be alright.(すべて、うまくいく)
は、結果として皮肉な意味にもとれるが、間違いなく心に響く。
おそらく作り手たちは、エンディングをふたつ用意したはず。ちょっとネタバレになるけれど、
「あと1分間しか生きられないとしたら何をする?」
というジェイクの問いに、ミシェル・モナハンが最高の答を用意してストップ・モーション。これで実は終わってもよかった。これはこれで叙情あふれるすばらしいラストだし。
しかしこの作品ではそのあとにもうひとひねり入れる。確かに、すべてうまくいったわけだ。どちらが優れたラストと判断するかはお好み次第。デビッド・ボウイはいい息子をもったなあ。