田中敦子篇はこちら。
下品なくらいにハンサム、という印象。訃報ではどんなメディアも「太陽がいっぱい」を代表作に挙げている。しかしわたしはリアルタイムでは見ていないし(わたしが生まれた年の作品だ)、「サムライ」「冒険者たち」「ボルサリーノ」「さらば友よ」にも間に合っていない。
封切りで観たのは「暗黒街のふたり」あたりからだろうか。ドロンの映画はほとんど東和(いまの東宝東和)が配給していて、だから「ル・ジタン」の配給を東映洋画部にドロンが勝手に契約したことに東和の川喜多社長夫妻が激怒したエピソードは前にも紹介しましたね?
いずれにしろ、ハリウッドメジャーではない作品で勝負せざるをえなかったインディペンデント系配給会社である東和やヘラルドにとって、ドロンはまことにありがたい存在だったはずだ。
しかしこの頃にはドロンの人気は下降線をたどっていて、興行成績もふるわなくなっていた。でも、それでもダーバンのCMなどで培われた美男のイメージは長く彼を“代表的なフランス男”にしていた。もっとも、フランス人はドロンよりもジャン=ポール・ベルモンドの方を愛していたようだが。
にしてもね、ドロンの恋愛遍歴にはびっくり。ロミー・シュナイダー(大好きでした)、ニコ、ナタリー・ドロン(大好きでした)、ミレーヌ・ダルク(大好きでしたぁ)……で、この人は年をとってからも美男だったの。すごい。
ジーナ・ローランズ篇につづく。
中村靖日篇はこちら。
誰も彼もがキューブリックの「シャイニング」での絶叫芝居のことで彼女を語っているのがよくわからない。彼女のキャリアで言えば、とにかくロバート・アルトマン作品が重要なのだ。
「BIRD★SHT」「ボウイ&キーチ」「三人の女」「ナッシュビル」そして「ポパイ」におけるオリーブ……アルトマン好きのわたしであることを差し引いても、アルトマン作品における彼女は文句なくアイコンだった。
にしたって原作のキングが思いきりキューブリックの映画に怒っていたのは有名な話。だけど、「シャイニング」はやっぱりすごい。確かに怖くないですけど(笑)
小原乃梨子さん篇につづく。
2024年6月号PART3 佐々木昭一郎篇はこちら。
なんといっても、「チャイナタウン」の脚本家である。大好きなこの映画を、わたしは「チャイナタウンがわからない」として連載した。名作です。
この、当初のタウンの脚本はわけがわからず、監督のロマン・ポランスキーがいじり倒してタウンは激高。しかしこの作品でオスカーをとったのは脚本賞だけだったというオチがついている。
でもポランスキーは懲りずにタウンと(これもわたしが大好きな)「フランティック」でふたたび組んでいる。
Wikipediaによれば、彼はクレジットなしで「ゴッドファーザー」「パララックスビュー」「天国から来たチャンピオン」などの作品に参加している。けっこう、たよりになる脚本家だったか、誇り高いが故に自分の名を守るために名をはずさせたのか……
浜畑賢吉篇につづく。
唐十郎篇はこちら。
この役者の作品を観たことがない人はいない。断言。
長いキャリアで、数多くの映画に出演。しかも一度見たら忘れられないそのルックス。大好きでした。
彼の代表作はもちろんロバート・アルトマン監督の「M★A★S★H」(マッシュ)だろう。サザーランドとエリオット・グールドの共演というのも笑わせるが、そこにロバート・デュバルやサリー・ケラーマンがからむのだからたまらない。
他にも「SF/ボディ・スナッチャー」(眼をクルクルまわすブルック・アダムスがかわいかった)、ケン・フォレットの傑作小説を映画化した「針の眼」なども忘れられない。ただこの人の真骨頂は、くせ者的な脇役のポジションだろうか。だからケネディ暗殺を描いた「JFK」におけるX役などはぴったりだった。
お若い方々にはキーファー・サザーランド(「24」のジャック・バウアーね)の父親としての方がなじみ深いだろう。いやそれにしたってこの二人は似ている親子ですよね。
梁石日篇につづく。
PAR1「経済的動物」はこちら。
「沙莉ちゃん、申し訳ないんだけど私の年齢を大々的に公表してほしい」
彼女はいま35才で、いつまでも年齢不詳のかわいいキャラでいることに不満をもっている様子。うん、確かにわたしも多部未華子ファンだけど、そういうイメージをもっている。年齢をちゃんと意識してほしいという女優がここに現れた。いいなあやっぱり多部ちゃんは……ああこういう扱いがいやなんだねきっと彼女は。
つくづく思うのは、「これは経費で落ちません!」のシーズン2を多部未華子が拒否しているのは、あのメンバーたち、特に伊藤沙莉がいなかったらやりたくないということだろう。
で、いまの朝ドラ(どうしてもタイトルをおぼえられないんだよな。「寅とさくら」でしたっけ?「虎の穴」でしたっけ?)は圧倒的な好評で世間に受け入れられている。しばらく伊藤沙莉のスケジュールが空くことはあるまい。シーズン2待ってるけどなあ、
イメージから言って貴族的な人かと思ったら、労働者階級出身で、コックニー訛りにコンプレックスを抱いていた人なのだった。意外だ。
90年代に引退まで覚悟したのに、良質なオファーがとぎれず、特にクリストファー・ノーランとの出会いは大きかったと語っている。
しかも人生指南書というサブタイトルを裏切らず、まことにありがたいお言葉の数々。しかも、ウィットに富んでいるのだ。どうかもっともっと働いてくださいマイケル。
山本陽子篇はこちら。
寺田農が出てくると、場がこの人でいっぱいになる。すごい存在感。その存在感があるからこそ、宮崎駿は「天空の城ラピュタ」でムスカに起用したのだろう。
「どこへ行こうというのかね?」
「見ろ、人がゴミのようだ」
「目がぁぁぁぁあっ」
ラピュタの素晴らしさに、彼の貢献がどれだけ大きかったことか。
わたしは去年、いろんな事情があってサングラスを新調した。サリバン先生のようなグラサンにしようと企図したのだ。イメチェン。実際にかけてみたら大満足。
でも職場にかけていったら同僚に即座に言われた。
「あ、ムスカ」
寺田農は、わたしの世代にとっては相米慎二作品のイメージが強い。日活ロマンポルノの傑作「ラブホテル」はすばらしかった。地元の港座という映画館で見たんだけど、後ろで見ていたじいさんが
「うまい。」
とラストの桜吹雪のシーンに感じ入っていたことを思い出します。
舞ちゃん篇につづく。