「氷の微笑」がわからない、はこちら。
「ゼロの焦点」がわからない、はこちら。
今回はむせかえるような西海岸の耽美ミステリ映画を。わたし、大好きなんです。
かつて映画会社パラマウント(通称“山”……ロゴを見ればわかりますね)をとりしきったロバート・エヴァンスが独立第一作に選んだのは、ロバート・タウンという脚本家が夕食のときに話したオリジナル作品だった。
「ロサンジェルスがいかにして急成長したかというテーマでね……近親相姦と水の話なんだ。設定は30年代。二流の私立探偵が謎の女にふられる。女の事件を解決してやるつもりがカモになってしまうんだ。(ジャック)ニコルソンを念頭に置いて書いている」
「アイリッシュにはぴったりだな。何ていう題なんだ?」
「チャイナタウン。」
「どういう関係がある?チャイナタウンが舞台なのか?」
「いや、『チャイナタウン』というのは精神状態のことさ……ジェイク・ギティスという主人公の混乱しきった精神状態だ」
「くたばれ!ハリウッド」ロバート・エヴァンス自伝より
わたしは3回この作品を観ているけれど、そのたびに発見がある。大ファンであるフェイ・ダナウェイの美しさは変わらないが。あ、エヴァンスの自伝にはヒロイン選択のエピソードがあって、これも爆笑なので紹介しよう。
だれもがジャックの相手役として最初にあげたのはジェーン・フォンダだった。一つ問題があった。フォンダはこの役をやりたいのかどうか確信がもてず、はっきりしない態度をとっていた。もう一人、わたしに胸焼けを起こさせていたのがスー・メンガーズ。フェイ・ダナウェイのエージェントだ。スーは脅迫ともとれるほどに自分のクライアントを押しつけてきた。
「ボビー、金曜までに出演を依頼してほしいの。でないと、フェイが『ナイトムーブス』に主演するって契約、アーサー・ペンと結んじゃうわよ。憶えてるでしょ『俺たちに明日はない』にしても『華麗なる賭け』にしても」
「憶えてるだろ。『ドク・ホリディ』『パリは霧にぬれて』『オクラホマ巨人』……三作続けてだぜ。だれであれ、ご婦人にとっちゃ三球連続ストライクならアウトだ」
ようやく契約成立。
「ボビィィィ、ちょっと嘘ついちゃった。フェイに『ナイトムーブス』の話なんかきてなかったのよ」
「…………実は、フォンダはおりたんだ」
ああ話がすすまない(笑)。以下次号。
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