陰陽師的日常

読みながら歩き、歩きながら読む

英語の詩を読む その3.歩いていくリズムで

2005-02-21 21:32:07 | 翻訳
The Road and the End
 道とその終わり
By Carl Sandburg
 ――カール・サンドバーグ

I shall foot it
 ぼくは歩いていく
Down the roadway in the dusk,
 たそがれの道を、
Where shapes of hunger wander
 餓えた亡霊たちがさまよい
And the fugitives of pain go by.
苦痛にひしがれた逃亡者たちが行き交うところを。

I shall foot it
 ぼくは歩いていく
In the silence of the morning,
 朝の静寂(しじま)を、
See the night slur into dawn,
 闇が夜明けへと移りゆくのを見、
Hear the slow great winds arise
 風が立ちのぼる穏やかで崇高な音を聞く
Where tall trees flank the way
 道に沿ってつづく高い木々が
And shoulder toward the sky.
空に向かって胸を張るところを。

The broken boulders by the road
 道端の砕けた岩が
Shall not commemorate my ruin.
 うちひしがれたぼくの碑になることはない。
Regret shall be the gravel under foot.
 悔恨は踏みしだかれる砂利となるのだ。
I shall watch for
 ぼくは待つ。
Slim birds swift of wing
 かろやかな羽根をもつ華奢な鳥たちが
That go where wind and ranks of thunder
 風吹き雷鳴轟く空を飛び
Dive the wild processionals of rain.
 激しい雨の隊列めがけて急降下してゆくのを。

The dust of the travelled road
 歩んできた道の砂塵は
Shall touch my hands and face.
 ぼくの手と顔を染めるだろう。  
   
        (訳は陰陽師)
***

カール・サンドバーグは二十世紀前半のアメリカの詩人である。スウェーデン移民の子として生まれ、13歳で中学を中退し、日雇い労働者となった。三十八歳のときに出した詩集『シカゴ』で一躍名を馳せる。
『シカゴ詩集』には全部で百四十六篇の詩が収録されており、「シカゴ詩篇」「少しばかり」「戦争詩篇」「道とその終わり」「霧と火」など七つのグループに分けられている。
ここで採った詩は、「道とその終わり」の表題作である。 

「シカゴ詩篇」では、シカゴで魚を売ったり、土方をしたりして生きるひとびとや、地下鉄や公演の風景が歌われているし、また「霧と火」のなかには、"At a Window"のように、「わたしに餓えを与えてください」と言いつつ「しかし、小さな愛だけは残しておいてください」とそっと祈る、チャーミングな詩もある。

平明でわかりやすく、韻も凝ったものではない。それでも"Slim birds swift of wing"と口にしてみると、ほんとうにしなやかな鳥が羽ばたいていくのが見えるような気がする。
なんともいえず健康で、若くて、力にみなぎる詩だ。

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