陰陽師的日常

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陰陽師的2009年占い

2008-12-31 23:26:40 | weblog
今年もやります。
「陰陽道に基づかない陰陽師的占い」の発表です。


陰陽師的2009年占い


【牡羊座】2009年のキーワード:「往生際」の達人を目指す

身の回りのささやかな物事の寿命を決めるのは、意外にむずかしいものです。噛んでいるガムはかなり前から味がなくなっているし、プリンタは赤いランプを点滅させてインクがなくなっていることを教えています。歯ブラシの先は明らかに反ってきたし、パソコンのマウスも、電池残量10%以下の表示が三日前から続いています。いつ諦めて、新しいものに切り替えるか。あなたの身の回りの物たちは、あなたの決断を待っています。
ものを大切にするあなたがそういうものをなかなか換えられないのは、「本当にそれでいいのか、まだ使えるのではないのか」という疑念がいつまでもあなたを苦しめるから。
まだ早いかな、と思いながら使っていると、あと半分、というところでプリンタが止まってしまったり、暗い部屋に帰ってきて、明かりをつけた瞬間に蛍光灯が切れたりする羽目になります。
そうなるまえに、さっさと引導を渡して新しいものに交換してしまいましょう。日常至るところにある「往生際」を見きわめて、ひとつずつ片づけていくたびに、あなたの「往生際」の達人度合いはあがっていくはず。

【牡牛座】2009年のキーワード:週に一度「心ゆくまで」を楽しむ

その昔、わたしの知人にひとつのティーバッグを三度に分けて使っていた人がいました。一度目、二度目のティーバッグがソーサーに載って保存してあるのを見るたびに、ひからびた三度目のティーバッグで入れた「紅茶」が、どれほど紅茶の味がするものか、いつも疑問に思っていたのですが、見方を変えればその人は「心ゆくまで」ひとつのティーバッグを味わっていた幸せな人ともいえます。
あわただしい日々を送るあなたは、朝は朝で「心ゆくまで」寝ていたい、夜になると「心ゆくまで」お風呂に浸かっていたい、ダイエットなど気にせず「心ゆくまで」ケーキを食べたい、翌日の仕事など気にせず「心ゆくまで」お酒を楽しみたい、と思っています。このように、あなたの「心ゆくまで」を妨げるのは、外的な制約です。だから「心ゆくまで」は外的な制約に対する反抗ともいえる。
ときに、あなたの好きなことを「心ゆくまで」やってみましょう。いや、まだまだ、「心ゆくまで」には至らない、と往生際悪く思い続けるのもまたよし。心ゆくまで往生際の悪さを楽しんでみましょう。

【双子座】2009年のキーワード:雨の日だって晴れ(ばれ)男(女)

その昔、マイクロバスに乗ってサファリパークを一周したことがあります。後ろになぜかおばちゃんのふたり連れがすわっていたのですが、
ライオンのエリアに来ると
「あー、ライオンがいるわ」
「ライオンねえ」
クマのエリアに来ると
「あー、クマがいるわ」
「クマねえ」
シマウマのエリアに来ると
「あー、シマウマがいるわ」
「シマウマねえ」(以下際限がないので略)
という会話を繰りかえしていました。前にすわっていたわたしは、ひそかにキリンのコーナーにワニがいたりしないかな、と期待していたのですが、当たり前のことを繰りかえして言われると、人というのはいらいらするものです。
雨が降っているときにうっとうしい気分になるのは、誰でも同じこと。
「雨が降ってるわ」
「あー、雨ねえ」
そんなうっとうしいときに、こんな会話を聞かされて、はり倒したい気持ちになっている人だっているかもしれません。
雨が降っていることをぶつぶつ言っても始まりません。雨が降っているときこそ晴ればれと。そんなあなたは、周りのみんなの「太陽」になれるはず。

【蟹座】2009年のキーワード:一度にふたつのことをしようとしない

忙しくなってくると、多重債務を負ったような気分になって、たったひとつのことしかしていないと損をしたような気分になってしまうものです。料理をしながら本を読み、プリントアウトし、i-Tuneで音楽をダウンロードしながらアイロンが温まるのを待っていると、実に多くの仕事をこなしているような気がするものですが、うっかりするとプリントアウトした紙を鍋で煮込みながら本を切り刻み、i-Podにアイロンをかけてしまうかもしれません。
咳が出るあいだは水を飲むのを待たなくてはならないし、じっと待たなければならないときに、こちらから迎えに行くようなことをすると、相手と会えなくなるかもしれません。
一度にふたつのことはできないのです。息を吸いながら吐いている人の姿が想像できないのと同じことです。

【獅子座】2009年のキーワード:聞いているより歌う方が楽しい

カラオケに行くと、歌というのは自分で歌うから楽しいのだということがよくわかります。おつきあいで手を叩いていたとしても、誰もが夢中になっているのは「自分がつぎに何を歌うか」ということ。何ごとも自分でやってみなくてはほんとうの楽しさはわかりません。
自分にはできない、と始める前から尻込みし、カラオケに誘われても決して行かない人は、自分をわきまえている慎み深い人ではなく、下手な自分が受け入れられないだけでしょう。
一生懸命やる、失敗しても、何度でもやってみる。
このことには思いもかけないもうひとつの余録があります。自分がやる側に回ってみると、周囲の人が一緒に楽しめる人か、あらさがしばかりしている人か、よくわかってくるのです。

【乙女座】2009年のキーワード:その場にふさわしい行動をする

おもしろくない人の話を聞いてしまったあなたは、おもしろくなさそうな顔をしてしまうかもしれません。自分ならもっとおもしろい話ができるのに。「いいこと」が言えるのに。
すると相手はがっかりしたり不愉快に思ったりして、おもしろくない話はいよいよおもしろくなくなってしまうのです。その結果、いいことなどひとつもない、ということになってしまいます。
聞かなければならない話なら、それがおもしろそうな態度を取ることです。興味を持てるところを探す。「要するに」と、要しているわけでもないのに何度繰りかえすか、正の字を書いて数えてもいいし、相手の口ひげが、鼻息でふるえる様を観察するのでもいい。
寝つけない夜に横になって眠いふりをしていれば、いつしか眠っているように、聞くべきときに聞く態度を取っていれば、きっと得るものはあるはず。それが四十三回の「要するに」であったとしても、そのあいだ不愉快でいたことを思えばずっとマシではありませんか。

【天秤座】2009年のキーワード:トラブルを受け入れる

パソコンを使うということは、いくつかのトラブルを抱えながら、それをなだめなだめ、もしくはヒヤヒヤしながら使い続けるということを意味するもののようです。わたしのいま使っているパソコンも、どういうわけか再起動したときでないと無線LANが使えなくなってしまいました。そこで昔のLANカードを差しこんで使っているのですが、これがいったいどういうトラブルなのか、わたしにはよくわからず、使えればまあいいか、という状態が続いています。知人のなかにはTVの画面が乱れるたびに叩いて直していましたが、どうして叩くと直るのか、説明できる人がいるでしょうか。
トラブル・シューターでもあるあなたは「根本的な解決」に心引かれますが、いつもそれが可能とは限りません。それが不可能なときは、とりあえずさまざまに試してみながら、次善の策、次々善の策を試してみることです。「旧型というだけですでにトラブル」などという、ある意味とんでもない電化製品であるパソコンを使いこなしているあなたは、トラブル・シューティングの達人の道を歩んでいるのかもしれません。

【蠍座】2009年のキーワード:役に立つことができる自分を喜ぶ

有能なあなたのところには、いろんな仕事の依頼が舞い込みます。ときにそれに対する報酬が、あんぱん半分だったり(実話)、木で鼻をくくったような「ありがとうございます」のひとことだったりすることもあるのだけれど、別の見方をすれば、あなたはすでに大きな報酬を得ているともいえます。自分に何かができた、人の役に立つことができた、という実感は、何にも代え難い喜びのはず。きっとあなたが求めているのは、やったことから得られる利益ではなく、評価なのでしょう。ただ、人は自分にないものを評価はできないもの。あなたの仕事の価値を誰もがわかってくれなくても、自分ができたという実感は、何にも優る喜びでしょう。


【射手座】2009年のキーワード:体を動かす楽しみを持つ

あれやこれや考え始めると、感情が頭のなかで渦巻いてしまうことがあります。一粒の種があっというまにジャングルになり、ターザンがぶらさがっているところまでいってしまいます。そこまでいくと自分の感情を自分でコントロールなんてできません。
頭の中が考えでいっぱいになってしまったら、バットの素振りでもレース編みでもピアノを弾くことでもいいから動く。日頃からそんなときの楽しみを持っているあなたはとてもステキです。それが草引きなら、ウチに招待したいほどです。


【山羊座】2009年のキーワード:自分に騙されない

騙して壺を売りつけようとする人は、「別に信じなくていいんですよ」と言うのだそうです。こんなインチキの壺に大枚をはたくほど、あなたが息子の引きこもりや娘の非行に心を痛めているということがわかってもらえれば、それでいい、と。そういう人は自分を騙せ、とそそのかしているのです。
騙される人の話を聞いたとき、わたしたちは不思議に思いますが、ほんとうは騙そうとする人に騙されているわけではなく、自分が自分を騙している。だからこそ、だれだって騙される可能性はあるのです。
不幸にして騙された人をバカにするようなことをしていると、つぎの被害者は、あなたかも。

【水瓶座】2009年のキーワード:不幸自慢は毒の味

あなたの周りにいろんな人が集まってくるのは、あなたといると楽しいから。
もちろんあなたにだって暗い話はありますが、いまのことであれ、過去のことであれ、そんな話を聞かせて周りの人をいやな気持ちにさせる必要はありません。
自分の不幸な記憶は自家中毒のようなもの。切り抜けたあとは忘れてしまえばよいのです。忘れようとして忘れられるものなら苦労はいらないのですが。

【魚座】2009年のキーワード:悪い運命などない

運命という言葉がありますが、たとえそんなものがあったとしても、誰もあらかじめ知ることができず、コントロールも手出しさえもできないのだとしたら、あろうがなかろうが関係ありません。だれでも振り返って、自分がやったことやらなかったことに運命のしるしを見いだそうとしますが、そんなものは星と星をつないで勝手に星座をでっちあげるようなもの。わたしたちは目の前のことを毎日やるだけです。悪い運命なんてない。一年に一度だけ無資格占い師となるわたしが断言してあげます。

* * *


H.G.ウェルズが「タイムマシン」という乗り物を発明して以来、わたしたちはどこかで「未来に行ける」ということを空想するようになりました。

けれども、起こっていない未来にどうやったら行けることができるのでしょう。
もし行けるような未来がどこかにあるとしたら、すべてはすでに起こってしまって、わたしたちがそこへいくのを待っている、ということになるではありませんか。

未来なんてどこにもない。

それでも、わたしがいま食べるのは、これから行動するためです。明日も生き続けられるように、食物を摂取し、新陳代謝を行う。たとえ心臓が鼓動を停めても、しばらくは爪も伸び、髪の毛も伸びるのだとか。つまり、身体はつねに未来を指向している。けれど、意識の側は知らないものを想定し得ない。だから身体としてある意識にとって、〈不安〉というのは、本来的なことなのかもしれません。

むしろ〈不安〉が当たり前のことなら、意識して希望を持とうではありませんか。
この「陰陽師的占い」の意図は、そこにあります。
ささやかな笑いと希望を感じていただければ、これほどうれしいことはありません。


2008年もブログ「陰陽師的日常」とghostbuster's book web.をご愛顧くださってどうもありがとうございました。
新年は一月二日までおやすみして、三日から始めます。
本年もどうぞよろしく。