Porcupine Tree #The Start of Something Beautiful
~めぐりくる季節とともに
「何か美しいものの始まり」
心のなかにあるのはいつも君のこと
夢に見るのはいつも君のこと
君の声をテープにとっておいた
君のまぼろしは写真に
だけど君にはいつも手が届かない
ぼくの腕のなかで冷たいのは君
子供みたいに無邪気なのも君
前に君はぼくの手を取って、雨のなかに連れて行ってくれたよね
心の奥深くにいるのは君
ぼくが道を示そうとすればするほど、
君はどうでもよくなるみたいだ
知れば知るほどわからなくなる
無垢だったのはぼくたちが一緒に過ごした時間、ぼくたちがいい友だちだったって言うのを忘れたこと
君はここからなにか美しいものが始まると思った?
まあもういちど考えてみたほうがいい
母親は君のために容姿が衰えてしまった
父親は君のことなんて求めちゃいなかった
ぼくは愛に身を委ねていいと思ってるけど、君がほんとは同じように感じてはいないことを知ってるよ
君の心にはなんだか残酷なところがあるからね
Porcupine Tree はわたしにとって「夏のバンド」だ。
ビーチボーイズみたいに夏っぽい音がするのでは全然なくて、とても湿度の高い、ほんとうにイギリスの夏みたいな(行ったことはないけれど、昔、イギリス人の知り合いが言っていた。「イギリスは夏は暑くて雨が降る。冬は寒くて雨が降る」)湿度の高い感じがするのももちろんなのだけれど、なんといっても、Porcupine Tree を初めて聞いたのが夏だったからだ。
そのときわたしは車のなかにいて、いろんなところをうろうろしていたから、場所の記憶というのはあまりはっきりしていない。ただ、車の外を白い日差しに照らされた街の風景が流れていたのを覚えているだけだ。
その年はいろんな曲をずいぶん聴いた年だったけれど、ほかのどのアルバムより"In Absentia" はよく聴いた。たぶん第二位はDream Theater の"Metropolis Part.2" で、三位は、なんてまあそんなことはどうでもいい。その年の後半は、毎日のようにPorcupine Tree を聴いていたのだ。
それから去年のちょうどいまごろ、"The Start of Something Beautiful" を聞いて、魂を抜かれたときのことはよく覚えている。
それから、暑くなってきて、ふと思いだしてひさしぶりに聞いてみて、また改めて惚れ直してしまった。
魂を抜かれる、みたいに書いちゃいけないのかもしれない。
その言い方はあまりに大仰だから。
おおげさなところのちっともない曲なのだ。
9/8拍子と5/8(3/8+2/8)拍子の組みあわせなのだけれど、あまり変拍子ということも表に出てこない。
細かな要素がいくつもあるのだけれど、そのどの要素も自己主張することはない。
スティーヴン・ウィルソンもつぶやくように、「まぁどうでもいいんだけどさ」というのがときどきに差し挟まれるかのように歌う。
歌詞を見ても、ラブソングにはちがいないのだけれど、そうしてこの歌詞の主人公は、相手のことが震えるほど好きなんだけれど、それをはっきりとは口にしない。たとえば「すぐにぼくを抱きしめて、ぼくしかいない、と言ってくれ」(これはビートルズの"Hold Me Tight" だ)なんてことはまちがっても言えないのだ。
だって、そんなふうに言ってしまうのは、気持ちのなかのさまざまな要素を、目をつぶってえいやっと飛び越えてしまうようなもので、そういうことに気がつかないナイーヴな人ならともかく、いったん気がついてしまったら、もうそんなことは言えなくなってしまう。
スティーヴン・ウィルソンの歌い方は、どうでもよさそうなのだけれど、ほんとうはもっとほかに言いたいことがあるんだ、というニュアンスを伝えてもいる。それがメロディにのせられていくうちに、次第に透明になって、ニュアンスだけが残っていく。
なんというか、この歌はわたしのことを理解してくれているんだ、みたいに思えてくる。
このおおげさとは無縁の曲をわたしは去年、何度も何度も繰りかえし聴いて、また季節が戻ってきたように同じ曲を聴いている。
~めぐりくる季節とともに
「何か美しいものの始まり」
心のなかにあるのはいつも君のこと
夢に見るのはいつも君のこと
君の声をテープにとっておいた
君のまぼろしは写真に
だけど君にはいつも手が届かない
ぼくの腕のなかで冷たいのは君
子供みたいに無邪気なのも君
前に君はぼくの手を取って、雨のなかに連れて行ってくれたよね
心の奥深くにいるのは君
ぼくが道を示そうとすればするほど、
君はどうでもよくなるみたいだ
知れば知るほどわからなくなる
無垢だったのはぼくたちが一緒に過ごした時間、ぼくたちがいい友だちだったって言うのを忘れたこと
君はここからなにか美しいものが始まると思った?
まあもういちど考えてみたほうがいい
母親は君のために容姿が衰えてしまった
父親は君のことなんて求めちゃいなかった
ぼくは愛に身を委ねていいと思ってるけど、君がほんとは同じように感じてはいないことを知ってるよ
君の心にはなんだか残酷なところがあるからね
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Porcupine Tree はわたしにとって「夏のバンド」だ。
ビーチボーイズみたいに夏っぽい音がするのでは全然なくて、とても湿度の高い、ほんとうにイギリスの夏みたいな(行ったことはないけれど、昔、イギリス人の知り合いが言っていた。「イギリスは夏は暑くて雨が降る。冬は寒くて雨が降る」)湿度の高い感じがするのももちろんなのだけれど、なんといっても、Porcupine Tree を初めて聞いたのが夏だったからだ。
そのときわたしは車のなかにいて、いろんなところをうろうろしていたから、場所の記憶というのはあまりはっきりしていない。ただ、車の外を白い日差しに照らされた街の風景が流れていたのを覚えているだけだ。
その年はいろんな曲をずいぶん聴いた年だったけれど、ほかのどのアルバムより"In Absentia" はよく聴いた。たぶん第二位はDream Theater の"Metropolis Part.2" で、三位は、なんてまあそんなことはどうでもいい。その年の後半は、毎日のようにPorcupine Tree を聴いていたのだ。
それから去年のちょうどいまごろ、"The Start of Something Beautiful" を聞いて、魂を抜かれたときのことはよく覚えている。
それから、暑くなってきて、ふと思いだしてひさしぶりに聞いてみて、また改めて惚れ直してしまった。
魂を抜かれる、みたいに書いちゃいけないのかもしれない。
その言い方はあまりに大仰だから。
おおげさなところのちっともない曲なのだ。
9/8拍子と5/8(3/8+2/8)拍子の組みあわせなのだけれど、あまり変拍子ということも表に出てこない。
細かな要素がいくつもあるのだけれど、そのどの要素も自己主張することはない。
スティーヴン・ウィルソンもつぶやくように、「まぁどうでもいいんだけどさ」というのがときどきに差し挟まれるかのように歌う。
歌詞を見ても、ラブソングにはちがいないのだけれど、そうしてこの歌詞の主人公は、相手のことが震えるほど好きなんだけれど、それをはっきりとは口にしない。たとえば「すぐにぼくを抱きしめて、ぼくしかいない、と言ってくれ」(これはビートルズの"Hold Me Tight" だ)なんてことはまちがっても言えないのだ。
だって、そんなふうに言ってしまうのは、気持ちのなかのさまざまな要素を、目をつぶってえいやっと飛び越えてしまうようなもので、そういうことに気がつかないナイーヴな人ならともかく、いったん気がついてしまったら、もうそんなことは言えなくなってしまう。
スティーヴン・ウィルソンの歌い方は、どうでもよさそうなのだけれど、ほんとうはもっとほかに言いたいことがあるんだ、というニュアンスを伝えてもいる。それがメロディにのせられていくうちに、次第に透明になって、ニュアンスだけが残っていく。
なんというか、この歌はわたしのことを理解してくれているんだ、みたいに思えてくる。
このおおげさとは無縁の曲をわたしは去年、何度も何度も繰りかえし聴いて、また季節が戻ってきたように同じ曲を聴いている。