ひつじ草の挑戦状

色んな思いを綴ってます。

散華の如く~マリア観音~

2013-06-26 | 散華の如く~天下出世の蝶~
殿に沢彦様や方丈様といった賢い僧が付く一方で、
御仏の黒い袈裟の影で行を怠る腐った坊主もいる。
禁欲も行もなく、中身のない説教を続ける坊主の、
温く腐ったその体質が、殿の気質に合わなかった。
“報恩忘れた坊主の、因果応報”
押切長谷部…あの事件は坊主への宣戦布告とでも、
見せしめとでも言おうか、寺との決別を意味した。
パードレと坊主、殿と寺の和を何とかせねば…と、
懐から像を出し、観音像に意味無く、祈ってみた。
藤吉郎「奥方様…それは?」
帰蝶「先ほど、方丈様が下さった観音様」
“旅の御無事を…”
手を合わせ祈る、上半身のみの像で、
掌に乗る程の小さな観音様であった。
それはどことなく…
藤吉郎「おぉ美しや。奥方様によう似ておられますなぁ」
こんオベンチャラがッ。
帰蝶「…」しかし、どことなく…マリアに似ている。
この頃、南蛮寺に寄進する像を仏師に作らせていた。
それはマリアと観音を融合させたような像であった。
後にこう呼ばれるもの、
「マリア観音じゃ」
それを聞き、そっぽ向いていた五兵衛が、
チラッ、私とマリアの観音像を盗み見た。
すると、
五兵衛「あッ、と。イゃぁンでもネェッ」
帰蝶「そなた…」声が裏返った。
明らかに動揺し、それを隠した。
「嘘が、下手じゃな」
五兵衛「…」