與四郎「…濃姫様と器、引き立たせる盆になりとうございます」
帰蝶「…」
私は、盆に乗せられた茶器に目を移した。
その視線に気付いたか、彼はこう言った。
與四郎「…これでは、足りませぬ」
帰蝶「器と盆が喧嘩」
借り物の盆では折角の器が浮いてしまい、
全く調和が取れない。これでは盆の中で、
「それぞれが戦する(競う)ようである」
與四郎「茶は和の道。和の器を揃えるは必至」
物静か、なれど、一つ口を開けば、
湯の如く、篤く、強く、力がある。
帰蝶「私に、後ろ盾となれ、と?」
與四郎「御心休み頂くに必要な盆、どうか、その手に」
帰蝶「利はあるか?」
與四郎「利…」
帰蝶「花は桜木、人は武士、柱は檜、魚は鯛、小袖は椛…花はみよしの(一休さんの言葉)」
人、モノ、その命にそれぞれに最大の利、美徳あり。
「そなたの利は茶、美は道。極めた先に器。そなたを擁護し、私に利はあるかと聞いている」
與四郎「その利、私が、お作り致します」
帰蝶「面白い」
この出会いから二年後の春18の與四郎は侘茶を大成。
禅宗坊主の一休宗純の名を捩り、晩年千利休と名乗る。
與四郎「まずは利、濃姫様の器、お作り致します」
帰蝶「赤に黒、夫婦茶碗か。それは楽しみである」
與四郎「…」ほっと小さく息を漏らし、安堵した。
策士から青年に戻ったこの一瞬が印象的であった。
この後、殿が茶頭に登用、その才を発揮。
美濃平定後、瓦職の息子長次郎と出会い、
火色赤楽焼と黒土楽焼の碗を完成させる。
帰蝶「…」
私は、盆に乗せられた茶器に目を移した。
その視線に気付いたか、彼はこう言った。
與四郎「…これでは、足りませぬ」
帰蝶「器と盆が喧嘩」
借り物の盆では折角の器が浮いてしまい、
全く調和が取れない。これでは盆の中で、
「それぞれが戦する(競う)ようである」
與四郎「茶は和の道。和の器を揃えるは必至」
物静か、なれど、一つ口を開けば、
湯の如く、篤く、強く、力がある。
帰蝶「私に、後ろ盾となれ、と?」
與四郎「御心休み頂くに必要な盆、どうか、その手に」
帰蝶「利はあるか?」
與四郎「利…」
帰蝶「花は桜木、人は武士、柱は檜、魚は鯛、小袖は椛…花はみよしの(一休さんの言葉)」
人、モノ、その命にそれぞれに最大の利、美徳あり。
「そなたの利は茶、美は道。極めた先に器。そなたを擁護し、私に利はあるかと聞いている」
與四郎「その利、私が、お作り致します」
帰蝶「面白い」
この出会いから二年後の春18の與四郎は侘茶を大成。
禅宗坊主の一休宗純の名を捩り、晩年千利休と名乗る。
與四郎「まずは利、濃姫様の器、お作り致します」
帰蝶「赤に黒、夫婦茶碗か。それは楽しみである」
與四郎「…」ほっと小さく息を漏らし、安堵した。
策士から青年に戻ったこの一瞬が印象的であった。
この後、殿が茶頭に登用、その才を発揮。
美濃平定後、瓦職の息子長次郎と出会い、
火色赤楽焼と黒土楽焼の碗を完成させる。