ひつじ草の挑戦状

色んな思いを綴ってます。

散華の如く~赤楽、黒楽~

2013-04-30 | 散華の如く~天下出世の蝶~
與四郎「…濃姫様と器、引き立たせる盆になりとうございます」
帰蝶「…」
私は、盆に乗せられた茶器に目を移した。
その視線に気付いたか、彼はこう言った。
與四郎「…これでは、足りませぬ」
帰蝶「器と盆が喧嘩」
借り物の盆では折角の器が浮いてしまい、
全く調和が取れない。これでは盆の中で、
「それぞれが戦する(競う)ようである」
與四郎「茶は和の道。和の器を揃えるは必至」
物静か、なれど、一つ口を開けば、
湯の如く、篤く、強く、力がある。
帰蝶「私に、後ろ盾となれ、と?」
與四郎「御心休み頂くに必要な盆、どうか、その手に」
帰蝶「利はあるか?」
與四郎「利…」
帰蝶「花は桜木、人は武士、柱は檜、魚は鯛、小袖は椛…花はみよしの(一休さんの言葉)」
人、モノ、その命にそれぞれに最大の利、美徳あり。
「そなたの利は茶、美は道。極めた先に器。そなたを擁護し、私に利はあるかと聞いている」
與四郎「その利、私が、お作り致します」
帰蝶「面白い」
この出会いから二年後の春18の與四郎は侘茶を大成。
禅宗坊主の一休宗純の名を捩り、晩年千利休と名乗る。
與四郎「まずは利、濃姫様の器、お作り致します」
帰蝶「赤に黒、夫婦茶碗か。それは楽しみである」
與四郎「…」ほっと小さく息を漏らし、安堵した。
策士から青年に戻ったこの一瞬が印象的であった。
この後、殿が茶頭に登用、その才を発揮。
美濃平定後、瓦職の息子長次郎と出会い、
火色赤楽焼と黒土楽焼の碗を完成させる。

散華の如く~禅の一休、頓智問答~

2013-04-29 | 散華の如く~天下出世の蝶~
“しかし、私は…”
與四郎殿はまるで、鏡…、
鏡台を覗くようであった。
禅で向き合うは、己の心。
ならば、
帰蝶「與四郎殿は…」
器を下げる彼に、
私はこう尋ねた。
「男の器を、何と心得る?」
與四郎「黒、にございます」
一瞬、キッと私を睨み、
再び器に視線を戻した。
湯で私の閼伽を灌いで、
「これは、男の器」
袱紗で器を清めていた。
「…では、女子の器は、何としましょう?」
これには驚いた。
私に挑んで来た。
帰蝶「女子は、緋。日ノ本照らす火色の緋」
彼が器を清めた袱紗を指示し、
「私は男ら清める、それになる」
さて、どう出る、與四郎。
私は、次の頓智を待った。
與四郎「懐深い…しかし、清めるその御身が、憑かれましょう」
帰蝶「疲れる?」
彼は袱紗を広げ、
半返し折り直し、
お盆に寝かせた。
與四郎「私、濃姫様の盆にございます」
帰蝶「私の、この身、心休ませると?」

ただいま、です。

2013-04-28 | 日記
長野乗鞍岳からご来光ッ。
ペカッと、アマテラスッ。

パンパン拝んで、

日帰り温泉ザッポリ。
おっ、スキーヤーが、

見えますか?

さて、帰りに飛騨高山で匠の技、家具を見てと、
富山に戻って、入院中のパソコンを引き取って、
無事帰宅しました。

五日ぶりに遷宮新生復活パソコンで更新中です。
蘇って良い調子です。私も頑張って更新します。

さ、頑張ろうッ。

散華の如く~男の器と、たわけ者~

2013-04-27 | 散華の如く~天下出世の蝶~
足りん。持て成すには、相応の器を持て
與四郎「信長様の言葉の意味が、ようやく分かりました」
黒い茶碗を下げて、
湯で黒茶碗を濯ぎ、
「もう一服、差し上げます」
帰蝶「ありがとう存じます」
狭き空間の中の、凛とした静寂、
その中で少し、時を昔に戻した。
「父は茶が好きでな、器にも煩かった」
私は父との思い出をぽつりと話した。
與四郎は自分で立てた茶を口にして、
視線は茶、耳はこちらに傾けていた。
「金華の山を喰ろうて美味いと言うて」
瓦職を呼び付け、椀を作れと命じた。
くるくると、黒茶碗を回してみせた。
「これが、男の器じゃと私に自慢した」
男はこうでなくてはいかんと。
しかし、碗の見てくれは悪く、
ぼこぼこした形状、黒い色で、
「私、父に反論した。…私、美しき男が好きにございます…と」
與四郎「…」
帰蝶「父は、私をたわけと叱つけてな」
男の器、中をよう見よ、と。
私は茶碗の中を覗き込んだ。
與四郎「はい」
帰蝶「そなた、良い目をしておる」
父の器を一目見て、
殿の意味を悟った。
與四郎「…しかし、私は…、」
芽の出ない己に苛立ち、焦りが見て取れた。

散華の如く~父の器と、弔いと~

2013-04-26 | 散華の如く~天下出世の蝶~
床の間に、杜若。
亭主はというと、
帰蝶「與四郎殿…」
水車小屋のとっとであった。
與四郎「…」
ゆっくりと頭を下げ、
掌で座るように促し、
茶の湯に向き直った。
四畳半という空間の、
禅という世界の沈黙。
茶を立てる、その間、
一言も発しなかった。
我らが声を上げれば、
自然界が奏でる音の、
風や水、鳥たちの歌、
それらの妨げとなる。
ただ、耳を澄まし、心研ぎ澄まし、
全神経を茶の湯、抹茶濃緑に注ぐ。
ちょろろ…
注がれた湯に、茶が融合し、撹拌。
超世界、調和という禅が完成する。
やはり、無言。與四郎は茶を出す。
私の膝元、手前に置かれた茶碗は、
父の形見、瓦職に作らせた黒茶碗。
帰蝶「御点前…、頂戴致します」
私は手を付き、亡き父に、その形見に頭を下げた。
そ…っと優しく口付けた器の口は私の唇に優しく、
ようやく日の目を見た茶碗は持ち易く黒く美しく、
「結構な…、御点前で…」御抹茶が濃く苦く甘く、
懐かしや、父の味に、つつと涙が流れてしもうた。

散華の如く~密会~

2013-04-25 | 散華の如く~天下出世の蝶~
斬新な戦略戦術、新規用鉄砲隊の活躍で、
今川戦を境に殿の御名が一気に広まった。
血気盛んな若武者が殿の許に集い屈した。
私もその若武者と謁見する機会が増えた。
一人、また一人。しかし、下克上戦乱で、
腹に一物あり、あわよくばと考える者も、
キキキキッ
当然おって如かず。その見極めは難しい。
“逢うてみよ”
「嫌にございます」と断っても、
“茶室を使うよう…”
「私、若衆との蜜をお許しになる、と仰せで?」
そう浮心をほのめかすと、
“鬼が妻、喰われる身を案ずる”
私、是非が非でも逢いたいと申した姫の謁見は、
“ならん”
許されず。
あの五兵衛の一件から、出奔者、若者ら、
新参者の謁見を推し進めるようになった。
“そなた、よう心を引き出す”
腹の底にある白も黒も、
私の前では露わとなる。
“血は争えぬな、濃よ”
父道三は、先見の明があった。
「しかし、私は…」
ふく「お傍仕えておりましょうか?」
帰蝶「いや、それでは、亭主の妨げ」
ふくと離れ茶室に向かい、
「ここで待つように」
私一人で、茶室に入った。

大地の神に祈る

2013-04-24 | 日記
今年も三月下旬、ツバメが飛来してきました。
去年のリベンジに今年も崩落した巣を増築しております。
泥を運び、何度も運び、形が整ってきたと思ったら、
また崩落。現在、我が家の車庫は糞と泥だらけです。

いくら泥を運んでも、巣は崩落。
何が悪いのか?
去年も急いで巣を完成させたため、
浅く…子供たちが落ちてしまった。

この原因は何か?
それを探るため、
落ちている巣の残骸を見ます。
すると、
泥の性質が変化しているように感じました。
乾いて、さら…として、
泥と泥、それをつなげるツバメのつばが、
結びつかない。

これはツバメたちの環境だけに留まる話ではなく、
大地の上に建つ私たち住まいも同じ恐れがあると、
私は、懸念します。

大地の変化に困惑するツバメたち、
チュチュチュギャーギャーギャー、
言葉を持たないツバメたちの悲鳴のように聞こえます。

やっぱ、泥も美味くないとね…。










散華の如く~姫と義母と、その嫁と~

2013-04-24 | 散華の如く~天下出世の蝶~
私は殿のお蔭で侍女らにも恵まれ、
義母様との確執は皆無に等しいが、
瀬名様は…言えば、嫁げば義母と、
嫁を貰えばその嫁(殿の娘徳姫)と、
家臣ら巻き込んで戦をなさる方で、
実の所、養女が家康様に嫁いでも、
私義母として謁見許されなかった。
帰蝶「若い姫君に何か、御慰めを…」
姫がお気に召すような品、着物でも設え、
送って差し上げれば…と、と提案したが、
朝日「それこそ高き誇りに傷が付きましょう、成りません」
うるさい局に好意を却下されてしもうた。
帰蝶「そう…かぁ。う…ん、では、」
ふく「御方様、そろそろお約束の刻限かと」
朝日「約束…?」
妹を問い質し、
ふく「茶会に招かれてございます」
朝日「茶会…?」
私を睨んだ。
帰蝶「そうおとろしい顔、するな」
朝日「祖より造りは変わりませぬ」
帰蝶「その、ちと…若いのと、茶を飲むだけじゃ」
朝日「御屋形様はご存じにございますか?また勝手を…」
帰蝶「その、殿からの命である」
朝日「私、お供致しまする」
帰蝶「殿が、わざわざ茶室を使えと申しておるのだ。配慮せよ」
朝日「…」無言であったが、了承したようで、
帰蝶「…にしても気に掛かる、葵。そなた持ち場に戻り、引き続き頼むぞ」
朝日「畏まってございます」これはしっかり返事して、
尾張の忍前田らを使って、松平を偵察することにした。

散華の如く~将の妻、その光と影~

2013-04-23 | 散華の如く~天下出世の蝶~
帰蝶「私はただ、故郷美濃を父にお返し頂きたい、その一念である」
朝日「御屋形様とて大恩ある義父上様…同じ思いにございましょう」
ぽそと、
ふく「瀬名様…」
呟いた。
「さぞ、お辛かろう…と存じます」
帰蝶「…ん」
御爺様と決別、元の名を改め、
織田家に屈し、同盟を結んだ。
「御家の為とはいえ、その御恨みは計り知れまい」
同じ天下人の娘でありながら、
瀬名様と私は、光と影の存在。
山育ち、マムシの私とは違い、
朝日「瀬名様…若く美しく、華やかな方と聞いておりまする」
贅を尽くした生活から一転、
駿府の古城に移られた聞く。
姫様姫様と持て囃された天下の美人が、
みすぼらしくなられるは屈辱であろう。
帰蝶「姫の誇りと、妻の尊厳…失わずにおってくれれば良いのだが」
朝日「何分、お若き方にて…」
私たちが危惧した通り、
瀬名様は、その御身を、
その道を危めてしまう。
織田家と同盟関係、婚儀を結んだ結果、
家康殿は妻と嫡男信康を失う事になる。
(築山事件より)
事件その後、
“許せ、瀬名よ、信康よ。余はいずれ必ず、そなたらの恨み晴らさずにおこうか”
帰蝶「家康殿…われ等と志同じくして戴けるのであろうか」
朝日「御方様、葵に気を許してはなりません」