ひつじ草の挑戦状

色んな思いを綴ってます。

散華の如く~竈地獄と、水の潤い~

2013-06-08 | 散華の如く~天下出世の蝶~
帰蝶「信吾…、信吾ッ」
捕えられた所で、
侍女「御方様、御方様」
帰蝶「はッ」
悪夢が、消えた。
喉が、カラカラ。
「水を…」
侍女「はい、只今」
ゴクゴク、悪夢を流し込み、
帰蝶「ふぅ」息を吹き掛け、
憤怒と、姉婿の残像を消す。
キッと睨み、気を立て直し、
「ここは?今、何時か?」
日はまだまだ高く、
夕暮れ前の羊の刻。
侍女「猿の刻となれば熊が出まする。今日は、ここで泊りにございます」
私がこんなで、国境は越えられなかった…。
帰蝶「そう…か」
ツン、鼻を突く、物を焼いたような匂いと、
その隙間を縫って香る極楽が交錯している。
侍女「ここは瀬戸、向こう猿投(さなげ)さんにございます」
瀬戸焼の産地、まだ尾張瀬戸。
可愛がっていた猿が悪さして、
天の怒りを買い、封じたとか。
石神、巨石信仰の聖地である。
帰蝶「これも瀬戸か?」
喉を潤すに使った器は瀬戸焼。
良質粘土、花崗岩で作られる。
黄瀬戸、瀬戸黒、志野、織部、
多く茶人がここの土を使った。