ひつじ草の挑戦状

色んな思いを綴ってます。

散華の如く~仁から生まれる、お徳な話~

2013-06-14 | 散華の如く~天下出世の蝶~
方丈「姫様よ、そなた最期、何を食いたい?」
そう尋ねられて、ふっと浮かんだ、
帰蝶「丸ボウロ…」
嫁いで、初めて食べた御菓子。
方丈「丸?」饅頭か何かの類か?と、
首を傾げていた。それは、そのはず、
だって…、
帰蝶「南蛮の御菓子にございます。こんな真ん丸の、」
胸の辺りで指を輪っかに、
それを御菓子に見立てて、
「甘い甘い思い出の、南蛮菓子…お召し上がりになれますか?」
架空の御菓子を供物に、釈迦様に差し出した。すると、
方丈「ほぉお、こりゃ珍しい南蛮菓子とは」
ムシャムシャとお釈迦様の代わりに、
空虚の、私の供物を食べて下さった。
「南蛮にこんな美味きモノがあるとは、知らなんだ」
帰蝶「こちらの仏様は、南蛮の品を嫌いには成らないのですか?」
方丈「美味きモノは美味い。腹に入れば、何ら変わらず糧となる」
と、お釈迦様の悟り拓く前の苦行中、その法話を聞かせて下さった。
「村娘スジャータの差し出した乳粥を飲んで、釈迦の苦行断食は終わった」
やせ細った釈迦に御慈悲を与えたスジャータに、苦行を止めたとバチがあったか?
娘の慈悲なる心、御粥を受け入れ、心と腹を満たし…それが逆鱗に触れることか?
「娘の善意に、ようやく悟った。頂けるモノ全て、有難く頂戴しようとな」
帰蝶「牡丹も、その善意にございますか?」
方丈「おぉ。説教すると、有難い有難いと、米だの野菜だの牡丹だの恵んでくれる」
ほぉれ見てみよ、一人と仏では食い切れぬほどの供物が並ぶ。
それに、この古いお寺には幾つもの修繕箇所が見受けられた。
帰蝶「これら全て、御坊様の仁の徳にございます」
おそらくは村人が総出で、寺を盛り立てているのであろう。
方丈「一人と仏だけでは生きてゆけまい。全て恵み、民の恵みで生かされておるんよ」