五月晴れ、酒田の料亭から少し離れた赤川 河川敷で、さわさわ流れる風の中、
ちゃっかり、能子の膝を枕にして、気持ち良さそうに、池田「すやすや…」と熟睡中。
能子「(もぅ~)」眉間にシワを寄せ、私は枕じゃないのよ!と赤川鱒遡上現場を眺めていた。
そこには、継「ぅおぉものぉお!」、忠「召し捕ったぁあッ!」と大物を釣り上げる兄弟と、
初音「あ…」、楓「そ…」と素っ気無く、笹の葉を洗う姉妹がいた。
相変わらず、佐藤兄弟夫婦の間には、川の水温と同じ位冷めたい空気が流れていて…、
能子「ふぅ…ん(倦怠期?)」と、静かに身を潜め、夫婦の分析をしていた。
倦怠期を何とか打破しようと意気込む継“この桜吹雪に見覚えがねぇとは言わせねえッ!”
と、遠山の金さんの決め台詞で、ヌギッ、着物を脱いだ。すると、
能子「あッ!」顕わになった右肩に、深い矢傷が見えた。
その声で目を覚まし、ゴロンと向きを変えた池田「あの傷は…?」と、能子の視線を追った。
能子「ムッ」私の膝を相も変わらず枕にして、話の続きを伺う池田に「ちょっとぉ!」腹が立ち「いい加減、私の膝から退きなさいよ」と小声で、御小言、言ったら
池田「こちらの質問の方が先でしょう」と、視線を合わせず…注意された。
能子「もぉ…」と牛みたいに怒っても…「あれは、屋島の合戦の、傷跡よ」…効果はない。
池田「ふぅ…ん」視線は、継に注いだまま続きを聞かせろと、耳をこちらに向けていた。
能子「あの時、継さん…死んでしまったと思ったわ。兄の盾になって背中で矢を受けたの。その後、海に落ちて…。戦の最中、彼を助けられず。でも、生きていて…本当に、良かった」
池田「それは、俺も、思いましたよ」
能子「え?」
池田「いえ…」と言葉を切って「彼ら、藤原大臣の佐(たすく 補佐)、でしたね」
能子「えぇ。秀衡様(義経のパトロン)が兄の身を案じて付けた従者よ。三人でよく悪さしたって聞いたわ。まるで、あなた達みたい、ねっ」と、悪戯っぽく笑ったら、
池田「ふん」と鼻で笑って、“平和だった”あの頃を思い出した。
能子「あの能装束、継さんが用意してくれたの…」鮮やかな紅白の能装束と…、
池田「…」蝶の魂が浮かんで…フッと消えた、清経の最後のシーンを思い浮かべた。
能子「継さんが“蝶の魂を癒してくれって”…衣装を探し回ってくれたんだって、聞いたわ」
池田「…。ワキを癒せても、シテ(自分)が癒されないんじゃ…ダメでしょ」と注意され、
能子「昔から…」痛い所突くなぁ…と思って「能が、“好きだった”もんね」と言ったら、
池田「今でも、能は好きですよ」相変わらず、その視線は継さんの傷跡を追っていた。
ちゃっかり、能子の膝を枕にして、気持ち良さそうに、池田「すやすや…」と熟睡中。
能子「(もぅ~)」眉間にシワを寄せ、私は枕じゃないのよ!と赤川鱒遡上現場を眺めていた。
そこには、継「ぅおぉものぉお!」、忠「召し捕ったぁあッ!」と大物を釣り上げる兄弟と、
初音「あ…」、楓「そ…」と素っ気無く、笹の葉を洗う姉妹がいた。
相変わらず、佐藤兄弟夫婦の間には、川の水温と同じ位冷めたい空気が流れていて…、
能子「ふぅ…ん(倦怠期?)」と、静かに身を潜め、夫婦の分析をしていた。
倦怠期を何とか打破しようと意気込む継“この桜吹雪に見覚えがねぇとは言わせねえッ!”
と、遠山の金さんの決め台詞で、ヌギッ、着物を脱いだ。すると、
能子「あッ!」顕わになった右肩に、深い矢傷が見えた。
その声で目を覚まし、ゴロンと向きを変えた池田「あの傷は…?」と、能子の視線を追った。
能子「ムッ」私の膝を相も変わらず枕にして、話の続きを伺う池田に「ちょっとぉ!」腹が立ち「いい加減、私の膝から退きなさいよ」と小声で、御小言、言ったら
池田「こちらの質問の方が先でしょう」と、視線を合わせず…注意された。
能子「もぉ…」と牛みたいに怒っても…「あれは、屋島の合戦の、傷跡よ」…効果はない。
池田「ふぅ…ん」視線は、継に注いだまま続きを聞かせろと、耳をこちらに向けていた。
能子「あの時、継さん…死んでしまったと思ったわ。兄の盾になって背中で矢を受けたの。その後、海に落ちて…。戦の最中、彼を助けられず。でも、生きていて…本当に、良かった」
池田「それは、俺も、思いましたよ」
能子「え?」
池田「いえ…」と言葉を切って「彼ら、藤原大臣の佐(たすく 補佐)、でしたね」
能子「えぇ。秀衡様(義経のパトロン)が兄の身を案じて付けた従者よ。三人でよく悪さしたって聞いたわ。まるで、あなた達みたい、ねっ」と、悪戯っぽく笑ったら、
池田「ふん」と鼻で笑って、“平和だった”あの頃を思い出した。
能子「あの能装束、継さんが用意してくれたの…」鮮やかな紅白の能装束と…、
池田「…」蝶の魂が浮かんで…フッと消えた、清経の最後のシーンを思い浮かべた。
能子「継さんが“蝶の魂を癒してくれって”…衣装を探し回ってくれたんだって、聞いたわ」
池田「…。ワキを癒せても、シテ(自分)が癒されないんじゃ…ダメでしょ」と注意され、
能子「昔から…」痛い所突くなぁ…と思って「能が、“好きだった”もんね」と言ったら、
池田「今でも、能は好きですよ」相変わらず、その視線は継さんの傷跡を追っていた。