ひつじ草の挑戦状

色んな思いを綴ってます。

目を瞑ってくれよな

2011-06-30 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
義隆「あ…」
義経「目には見えない繋がりで、感じるもんだ」
義隆「さくらんぼ、みたいだ」と笑った。
義経「そうだな」二つのハートのさくらんぼが、蔓で「繋がってると思うもんで、そう信じるもんだ。それを絆って、いう」
義隆「き づ な…?」
義経「鹿角君に乗る時、お前が持ってる綱…手綱(たづな)だ。繋がってるだろう、お前ら」
ここにいなくても、繋がっている、見えないけど、分かっている、そんな関係に、
義隆「うん」自信たっぷりに、答えた。
義経「繋がりって、心なんだ。血の繋がりがあっても、戦では、敵味方に分かれる」
義隆「…与一兄ちゃん、言ってた。兄弟で戦ってたって」
義経「あぁ。あいつも、兄弟 従兄弟と別れて戦っていた。義仲との戦いも、そうだった」
義隆「え…」
義経「義仲は、俺たちと戦って…死んだ」
義隆「…」ハートから目を逸らし、すぅ…と薄くなった、今にも消えそうな虹の橋をただ呆然と見つめていた。
“与一…好きか?”
「それって、与一兄ちゃん…も?」
義経「あぁ…。戦って、そういうもんなんだ。刀持つ、って、」最後まで言えなくなった。
義隆「ッ」スクッと立って、男の約束の、拳をぎゅっと握ってた。
義経「…」拳が、震えてる。
義隆「泣かない」クッと遠くの、遠くの、自分でモザイクかけてしまった虹を、睨んでた。零れそうな、溢れそうな涙をいっぱい目に溜めて、歯を食いしばっていたから、
義経「今だけ泣いて、よし」義隆を引き寄せ、抱き締めた。
俺には、こんな事くらいしか出来ないんだ。何もしてやれないんだ…すまん。
義隆「うあぁあぁ…、父上ぇえ…え」腹の底から声を上げて、泣いてた。どっちの父上を呼んだんだろう…俺の着物をぎゅっと握り、力いっぱい、小さい体で泣き叫んでた。
俺の着物で拭い切れなかった涙が雨上がり大地に落ちた。でも、これが降った雨か、涙か、鼻水か、神さんだって分かりゃしない。
もし、分かっちまっても、目を瞑ってくれよな。義仲…と空を見た。

お付き合い下さいませ

2011-06-29 | 日記
来月から、ヨーガプログラムが変わります。
テーマは、大工(カーペンター'S)
心の再建を目指します。

と言っても、
トラウマに、
命や心に、付ける薬なんて、ないんですよ。
って、池田に痛い所、突かれそうですね。

それでも、何かせずにはいられない。
そぉっと、見えない絆創膏を貼る。
それが、人間ってモンじゃないかなと思います。

今回の震災で、皆様の心には深い傷が付いた。
そして、それは残った。
しかし、それは見えない。
だから、相手と思い合わせる事は難い。
「自分は傷付いている」
「俺の方が、傷付いた」
そう言っても、見えない傷の深さなんて、
測りようが、ない。
それに、皆さんは、その傷を心に仕舞って生きている。
隠された傷の痛みを、感じることは難しい。
元気そうに見える方でも、悲しみがあふれている。
何も背負っていない背中には、恐怖心や孤独感、焦燥感を背負っている。
そう感じる、ただ、感じるだけで…。
見えないモノって厄介ですね。

でも、その反面、見えないモノがそういう傷を癒す、そう信じています。

私の出来る事と言ったら、物語に己の心をぶつけ、己を問い質す事くらいです。
人様の命、心に、何も出来ない自分が、本当に申し訳なく思います。
能子が鹿嶋の神に謝ったシーンがありますが、あれが、私の真意です。

だから、あの世で申し開きが出来るよう、今をしっかり務めたいと思います。

その己の道として、ヨーガを選びました。
本編でも、ヨーガ(繋がり、絆)のテーマに近づいています。
皆さんも本編を読んで、
主従関係、親子関係、夫婦関係等、登場人物の立場、心の対比に気付かれていると思います。それら、ヨーガという心の手綱を掴むためです。
(もちろん、史実を通して、こじ付けしている場面もありますが…。
なんせ、800年も前の話です。
真相を確かめるスベは、ドラえもんに委ねるしかないでしょう。タイムマシーンで)

実を言うと、来年の大河ドラマ「清盛」様に繋げたいなぁ…と思って、
義経記を書いていました。しかし、腰を据えて書いてみたくなりました。
しばらく、私と、お付き合い下さいませ。

7月からの3ヶ月の予定表はこちらです。
一週間の予定表などは、こちらからアクセスして下さい。

蒸し暑い日が続きます。
湿度の高さから息苦しさを感じる方、また、関節に痛みを訴える方が多いようです。
水分補給と、湿度管理(風の通りを作る)で、体調を整えて下さい。
お風呂上りの、ほんの少しのストレッチで、むくみを解消します。

見える所は、自分で管理出来るといいですね。

風と、水の神

2011-06-29 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
義隆「わぁ…」と感嘆の声を上げて「どうして、虹が出来たの?」と聞いた。だから…、
義経「夫婦が、渡って出来るんだ」と答えた。
なんとなく、義仲と山吹が、あの橋から俺たちを見ているような、そんな気持ちになった。
義隆「え?」
義経「日本の神話だ。水と風の神が、仲良く空を渡る。そうすると、虹が出来る」
義隆「水と、風の神様?」
義経「そう。水の源 義仲…お前の父上と、山の息吹…お前の母上が渡っているんだ」
義隆「息吹(いぶき)…?」
フゥッと息を空に吹きかけ、義経「風で、息だ」と教えた。
本当に、山吹が義仲の所に行ったんじゃないかと、そう思った。昨夜の、生霊の術…アイツからの最期のメッセージだったんじゃないかと思えてならなかった。
山吹は産後状態が悪く、動けなかった。そのために、葵が義隆を連れて奥州に来たんだ。
もしかしたら…俺たちは山吹と、もう会うことはない…かも知れない。そう、思ったんだ。
虹を見ながら、懐から[山吹柄の手鏡]を取り出し、義隆に渡した。
義経「父上と、母上に会いたかったら…これを見ろ」
義隆「…」意味が分からなかったのか…ただ黙って、鏡の柄の方を見つめていた。
義経「見せたい自分を、そこに写せ。決して、泣きっ面、見んな」
義隆「分かった」クルッと鏡を反転させて、自分の姿を映した。
映し出された顔は五歳…イッチョ男前になっていた。
義経「よし」
義隆「じゃ、もう一人の母上には?」
義経「葵、か…」今どこにいるんだろうな「アイツとは、大丈夫。繋がってる」
義隆「え?」分からない、という目を向けてきたから、
義経「義隆…」と目線を合わせるようにしゃがんで「葵の葉っぱって、見たことあるか?」
義隆「ない」と答えた。だから、濡れて柔らかくなった地面に指でなぞって描いてやった。
義経「心臓(ハート)だ。アイツ…双葉葵※は、二つのハートを繋いでる」

※賀茂神社の神紋
義隆「ハート…?」俺の真似して地面をなぞって、でこぼこした下手なハートを描いた。
義経「ここだッ」心の位置を教えるのに、拳で義隆の心臓を突いてやった。
義隆「ィテッ」
義経「あいつは、二つの心臓を繋いでる」と俺のハートと義隆のハートを蔓(つる)で繋げた。

男の、拳と拳

2011-06-28 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
そういう婚姻がヤなんだと、単純にそう思っていたが、違っていた。
姉 山吹は、義仲の側室に入っていた。つまり、妹の自分が正妻となる事、二人の仲に割って入る事が嫌だったんだなと思う。だが、女が一人涙を流したって、政略結婚が流れる事はない。当時、男たちは政(まつりごと)に躍起になっていた。政の裏で多くの女が涙に濡れても、男は背を向けていた。ただ己の権力を保持、もしくは、それを奪還しようとして…。
そんな時代に生まれた女の、そういう姿を見て、
義隆「その時、母上を好きになったの?」
義経「うぅ…ん」子供に、この手の話は…「好きというか…」弱るな。
義隆「んー」好きじゃないの?ねぇねぇと答えを急かすように俺の背中を揺らして来た。
追い討ちをかけるように、ザァア…と激しい雨も、俺の心を急かしていた。
義経「泣いてたから…」俺も若く、言葉が未熟だった。慰めの言葉が見つからず、ただ抱いた…なんて言えず「幸せになって欲しいと思ったんだ」と曖昧に答えた。
義隆「幸せ…」という言葉に反応した。幸せという言葉の意味が分からないのかと思ったら、
続けて「与一兄ちゃん、幸せにしてもらうって」
義経「あん?」
義隆「だから、そういう女(こ)、見つけろって」
義経「あぁ」分かった…「男はな、女が笑えば、それで十分なんだ」って、いつだったか、与一に余計な事を教えてやったな、と苦笑した。
義隆「じゃ…」クルッと俺の背中に向かって「母上を、笑わせてよ」
義経「…」ゆっくり、義隆の方に向いて目線を同じにした。そして、泣かす事の方が多かったな…と反省した。
“義隆と、妹を、お願いね…”そう言った山吹にもここで「約束しよう」と拳を突き出した。
義隆「うん」キュッと唇を結び、一瞬俺を睨んだ。約束だからね、という意味を含んだ目だった。そして、ゴッと俺の拳を突いた。その目の奥に一筋の閃光が見えた。
いい目をしている。こんな風に男になっていくんだな…子供って。
向き合った男の、拳と拳がゆっくり離れ、それを見計らったように雨音も遠退き、雨が、
義経「上がったな」と窮屈な社から外に出た。空では雲の切れ間から、パァ…と線状の光が差し込み、まるで、金色の野を駆ける稲荷の「女神…」が見えた、そんな気がした。
義隆「あ!」と指差した方向を見ると、
義経「虹…」が架かっていた。

政略結婚

2011-06-27 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
義経「痛くても、泣くなよ」
つい5日前、義隆はじいの形見として刀を譲り受けた。今日は肝試しと称する根性試しが、ここ月山で行われた。男子は五歳になると木刀から真剣に持ち替え、様々な試練が与えられるというが、義隆の素質や資質が神を満足させるものなんだろう…着実に武士家系に生まれた男子の道を歩んでる。こいつの血か、宿命か、確実にそっちの段階を踏ませている。
義仲か、山吹か、あるいは、二人の血か。
大層なもんを遺して逝きやがって…と晴れない気持ちで空に睨みを利かせた。
だが、俺の睨みなんて天には利かない。ふふんと素知らぬ顔で、雨を降らせてやがった。
ザァ…と、降り続く雨に負けない声で、義隆「でも、弓矢は兄ちゃんに教えてもらう」
義経「あぁ。朝練、な」
義隆「三倍ッ」…しばらくの間が空き…「与一兄ちゃんみたいな兄ちゃんが、いい」と言った。
それで分かった。隠し子の事が聞きたいんだ、と。
とは言っても、どんな子に育っているのか…俺も知らない。だから、
義経「今、寺にいる。会った事はない」
義隆「どうして、お寺にいるの?」
義経「俺と葵の子…だから、な」
義隆「?」
義経「お前が、義仲と山吹の子だっていうのと、同じ理由だ」
義隆「あ…」元服前、訳も分からず女の子の格好させられていた事を思い出したんだろう。
俺たち親は子供の事を考えているようで子供の自由を奪っていた。言い訳かもしれないが、生まれた命を守るだけで精一杯だったんだ。それは俺の子でも、従兄弟の子でも同じだった。
義経「…葵と初めて会ったのは、山吹と会う前だ」
長男の事を話せない代わりに育ての親となってくれた彼女の事を話すことにした。
出会いは、7年前の三河 賀茂の葵祭(5月15日)。三河賀茂は賀茂神を信仰する氏族が多い。
その信者たちは“われに会いたくば、葵を掲げよ”と軒先玄関先に掲げ、神の御幸を待つ。
その日、俺は義仲の所へ輿入れする姫の護衛を松殿から仰せつかっていた。その姫は松殿の娘で年の頃16、7の松殿伊子(いし)だった。
しかし、実は、彼女が山吹の双子の妹で、松平家の養女に出された葵だと随分後から知った。
伊子「結婚したくない…」と、泣いていた。当時、平家と完全に手を切った松殿は義仲と手を組み、政権奪回を目論んでいた。つまり、彼女を使った政略結婚だった。

我慢しなきゃダメだぞ

2011-06-26 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
ピカッ…バリッ、ガッ、雷が近くに落ちた。
義経「え…?」大きな雷鳴で聞き取れなかったわけじゃなかった。が…「今、何て?」
義隆「だから、匠兄ちゃん、好きなんだって」
義経「どういう…」意味か分からない。それを聞き返そうとしたら、再び、ゴロゴロ…と雷が嘶いた。こりゃ「やべッ」と義隆の手を引き、急いで登頂した。
そこには、小さな社がポツンとあるだけで、中の広さは子供が二人入れる程度だった。義隆を社の中に濡れないように押し込め、俺は体半分はみ出した状態で、
義経「はい…」と、ます寿司をお供えするよう促した。その間に、剣に稲荷の真言を記した紙を巻いて、クルッとこちらに向いたと同時にそれを渡し、お供え物の隣に置かせた。
ポツ、ポツ、と屋根と背中に雨が落ち、ザァア…雨が降ってきた。
義隆「…」剣をじぃーっと見つめて「何も聞こえない…」んんー?と耳に手を当てていた。
義経「この手の奴らは、テレ屋なんだ」
義隆「テレ屋?」
義経「あぁ。見つめられたり、耳澄まされると、逆に隠れる」
義隆「ふぅ…ん」つまらないな、という顔で、いじけるように小さく太鼓座りをした。
義経「なぁ。義隆」俺も、腰を下ろして「母上の事、話そうか…」背中を合わせて座った。
はみ出した足だけ、雨に濡れていた。それを眺めながら、義隆の反応を待った。
義隆「どっち…の?ほんとの?それとも、今の?」
義経「どっちも、ほんとの母上だろ。お前を生んだ山吹も、お前を育てる葵も、同じ母上だ」
義隆「じゃ…父上も?」
義経「同じだ」雨音の速度につられて、早口になった。
義隆「じゃ…」合わせた背中が一層丸くなるのを感じた「どうして、教えてくれない?」
義経「だから、今、こうして話を…」
義隆「違うッ!」鋭く、俺に言葉をぶつけて、そして、声を小さくして「刀…」と、いじける様に、言葉を放り投げた。ぽーんと、向こうに行っちまった言葉を拾おうか、迷った。
義隆の言いたい事は、分かっていた。刀の稽古つけて欲しんだって、知っていた。でも、俺は気付かないフリをしていた。クッと頭を持ち上げ、分厚い雨雲を眺めようとして、
ゴッ、義隆「テェッ」頭がぶつかった。
義経「分かった。教える…ただし、イテェ事、我慢しなきゃダメだぞ」
義隆「うん」

だから、好きなんだ

2011-06-25 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
強引に腕を引っ張り、小屋を出た。
義隆「痛いってばッ!」ブン、と振り解き、
義経「あ…」匠の件で、気が立っていた…「すまん」と小さく謝って、まだ細い腕を放した。
ゴロゴロ…ゴロゴロ…、と轟く雷鳴に、不機嫌なツラを持ち上げ、空を見た。気まずくて「荒れてくるな」と、雷鳴の位置を確認するフリして、話を逸らした。
山の天気は変わりやすい。それに、登山中の雷は放電量が増え、危険だった。だから、
「危ねぇから…」と一言添えて、手を差し出した。
義隆「うん…」今度は、強く引っ張らないでよッと俺を一睨みして、手を繋いでくれた。
義経「…」こうして手を握ってるだけで、心まで繋がってくれたらいいのに…と思った。
義隆に、どこまで話そうか。夜泣き防止の子守班と朝練をかって出た与一の顔を思い浮かべ
「与一…好きか?」
義隆「うん」迷いがない、いい返事だ。
義経「よし、好きなら、最後まで通せよ」念押すような…祈るような、俺の願いだった。
義隆「うん」チラッと小指を見て、しっかり、頷いた。
義経「…(小指?)」に、何かあるのか…?と聞きはしない。聞いても黙秘権を行使する。
さて、どこから話そう…と考えあぐねていたら、クイッと、握られた俺の手を引っ張り、
義隆「匠兄ちゃん、能子ねぇちゃんと同じ…」足りない言葉を目で補うように俺を見て「与一兄ちゃん…連れ戻す、って言ってくれた」何かを、強く訴えてきた。
義経「…」
義隆「だから、匠兄ちゃんも、連れ戻して」
義経「当たり前だ」グッと義隆の手を握り返した。
義隆「うん」
ピカッ、ゴロゴロ……
すぐそこまで迫る稲妻を見て、義経「賀茂の神さんが、怒ってら…」と呟いたら、
義隆「賀茂…?」
義経「雷様だ。怒らすと怖ぇタイプの神さんで、この手のタイプはな…」義隆を見て「ピリピリして、怒りっぽいんだぞ」誰かさんみたいに、心で付け加えて、ニッと笑ったら、
義隆「母上みたい…」
義経「あぁ。母上、だな」
義隆「だから、好きなんだ」

拒まれた竜胆

2011-06-24 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
ワキ「仕切り直し、なさい」と天女の手を取り、
能子「仕切り直し…?」
ワキ「互い呼吸を合わせ、心を向き直す」そっと私の手を、池田の心の臓に優しく押し当て「疑わしきは人の心…天に偽り無し。己の宿命(さだめ)を信じなさい」
能子「私には、その宿命が…重い」
ワキ「一人で背負うものではない。その宿命を共に背負う者が、ここに…」と池田を見た。
池田「いえ」目を逸らし「私は、ただの従者です」
ワキ「いえ、ただならぬ従者と、お見受け致します」スッと立ち上がった。
池田「すみません、申し遅れました。私、池田 輝と、申します」と深く頭を下げた。
すると、細く優しい目を池田に向け、
ワキ「ようやく、あなたの名を知る事が出来ました」と微笑んで「私、鹿嶋 伊之助と、申します」と、ゆっくり、深く、礼をした。
能子「…鹿嶋様…」
鹿嶋「これで…」袖から布を取り出し「彼の胸を冷やして差し上げなさい」と差し出した。
差し出された藍染布は、兄の…清和源氏の家紋、

能子「笹竜胆…」があしらわれて…「え…」ドキッ、一瞬だけ、池田さんの心臓に押し当てた私の手が、強い鼓動を感じた。池田さんが…強張った。それで分かった。源氏を受け入れられない平家が、ここにいる。戦で、主君 資盛(すけもり)を亡くした彼の傷は、深い。
おず…と、池田さんの心臓から手を離し、私は、藍染の笹竜胆を受け取った。ごめん…。
池田「…」目を伏せ、頭を下げた。
鹿嶋「…。今の白龍では、天女が帰って仕舞われます」と、池田に小さく注意し「失礼…」と立ち去った。
その背に深く礼をして、姿が見えなくなってから、
能子「胸…」って?と、池田さんの胸を手で探っていたら、
池田「…」私の手を除けて、グイッと襟を開き、胸を見せた。
能子「!?」驚いた。心臓辺りに、大きな掌大のアザが付いた。
池田「ふぅ…」と、木にもたれかかり、腰を下ろし「痛い説教ですね…」と息を付いた。
能子「ちょっと待っててッ!」と、藍染を川の水で濡らそうと、立ったら、
ガシッ、私の手を握って…。ただ、黙って、放さなかった。
その姿は、笹竜胆の拒む蝶のように、私の心には映ってしまった。

要の意思

2011-06-23 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
ワキ「老いると…」白い髭を撫でつけ「説教が好きになりまして…」と近付き「あなた…」スッと座り、立て膝つき「池田さん、といいましたね」と、スッと掌で指し示した。
池田「…」
ワキ「私では、あのような白龍は舞えません」
池田「舞は心、己の心を舞ったまで」
ワキ「それが、人に感動を与える」
池田「能の講釈に来られたのですか?」一瞬目を細めた。
ワキ「いい目をしていらっしゃる。澄んだ目の奥に、野心が光っている」
池田「白龍にも、そういう野心があっていい、そう思ったまでです」
ワキ「若い感性が羨ましい。久しぶりに、この老いぼれ…震えました。歳を取ると保守的になり、型を破るのが怖くなる。我が身可愛さに伸ばせる手も…」己の手のシワを繁々と見つめ、ふぅと笑い「シワも、伸びなくなります」と、手をゆっくり握って、開いた。
池田「…」そのシワだらけの手をチラッと見て、次の言葉を待っていたら、
トン…ッ「!?」不意に、掌で胸を突かれ、
能子「あ…」その“衝撃”に驚き、ソッと顔を横に向け、その手を見た。
ワキ「ようやく、天女の顔を拝む事が出来ました」と微笑み「辛い思いをさせて、申し訳ありませんでした」と天女に頭を下げた。
能子「いえ…悪いのは、私です。春日の神様に、申し訳が立ちません」
ワキ「神は、天女の舞に、大層お喜び遊ばしました。ただ…」
能子「ただ…」
ワキ「舞に、迷いがある」初老の細い目が、天女の心を見透かした。
能子「…」ドキッと心臓が強く脈打って、心を裸にされたようで…恥ずかしくなった。
ワキ「今のあなたには、要石が定まってない」
能子「要石(かなめいし)…?」
ワキ「目には見えない石で、心には映ってしまう意思。揺らげば弱く、定めれば強くなる」
能子「…」その時、義隆の目には、その要石が映るんだ、と思った。
“能子ねぇちゃんって…時々、遠くへ行っちゃうね”
地に足が付かず、すぐ浮いてしまう私の心が見えてる…と分かって、また…涙が溢れてきた。
池田さんの胸に置かれた掌に、そっと手を添えて「どうすれば、定まりましょうか?」と、すがるようにワキを見つめた。

紅白料理、イッチョ作ってみっか

2011-06-22 | 日記
合併記念で、こんなハートの紅白うどん、

戴きました。

こういう紅白を、見つめて…
ポン!と手を打ち、
池田と継がエプロンつけて、
能子のために、
「紅白料理、イッチョ作ってみっか」
と、そんな妄想が広がるんです。
※これは、まだまだ先の話(おそらく3ヵ月後)です。

そういう幼い頃から続く私の妄想に、
おかん「あんたの頭、どうなってんの?」と辟易します。

どうもなっちょらんわい!
脳スキャンしても、異常なし!スッきゃらカンの脳みそがお目見えでした。

さて、そんなことより、
歴女、読者の方に言っておきます。
私の物語…歴史の試験には、出ませんッ!
ただ、試験に出ない大切なエピソードって、そのいっぱーいあるんです。
私は、歴史上の人物が何年に何やったという事実ではなく、
武将たちの家臣が綴る日記や、武将たちの手紙から読み取れる人物像で、
どうして、こういう行動を取ったかと、推測する方が好きなのですね。

明智光秀さんの謀反の裏の顔は、
“たとえ、天下を取ったとしても、妾は持たぬ”という愛妻家。
どうしてか…?は、私の物語の中に盛り込もうと思います。
また、
織田信長様のお話ですが、愛する側室 吉乃(きつの)が29という若さで病で亡くなった時、「一緒の墓に入りたい」と泣いた…と、そんなエピソードがあります。
そういう時“来世でも、夫婦だ”と、堅く誓う二人の様子が浮ぶんです。

皆さんにも、あるでしょう?
そういう心の経験が…。

グッと来た心が、イメージを作るですね。
そして、脳で疑似体験するんです。
ほら、泣くでしょ?
人の心を想像し、自分の心が「痛い」と感じる時、
慈悲なる心は育つと思うのです。
そうでしょう、鹿嶋様?

それにしても…
脳内のイメージが広がり過ぎて、時間と手が追い着かない…。
言語能力の貧困とキーボード入力の向上を図りたいと思います。
最終的には、技術訓練ですね。

さて、ヨーガ、しま~す。