ひつじ草の挑戦状

色んな思いを綴ってます。

菓子の思い出、福の味

2012-05-31 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
むかーしむかし、ある村に悪っるい鬼さんがいて、赤ちゃんをさらって食べちゃいます。
赤ちゃんがさらわれないようにと村人たちは、赤ちゃんの身代りをこさえました。
「ジャーンッ。それがこれ、お饅頭よ」
おまんじゅう?真ん丸、白くて柔らか、ずっしり重くて、
「赤ちゃん、みたいでしょ?」
赤くねぇよ。全然。
「ふふ…じゃ、食べてみて」
ふぅ…ん?一口かじって、あ…!?
「赤いでしょ」
何だこれ?うめぇ…。
「赤ちゃんの代り。中には餡子がぎっしり。この美味しさにまんまと引っ掛かった鬼さんは、それからというもの、赤ちゃんを連れて行かなくなりました。チャンチャン」
これなら騙せる。だって、うめぇもん。残りを、一口で、パクッ、平らげた。
口の中の饅頭が、あぁあ…跡形もなく無くなって、後味だけが残った。
こんなうまいモン、食べれるなら、鬼になりてぇ。
「さて、ここで問題です。その後、鬼さんはどこへ行っちゃったでしょう?」
どこって…?
「お饅頭を食べられる場所といえば?」
菓子屋だ。菓子屋に忍び込んだ。
「でも、それじゃ、私…困っちゃうよ」
そうか…お福さん、困るよな。
「正解は、ここッ」ガバッと祐君に抱き付いて、
ッ!? 驚いた…。
「祐君の中に忍び込んだのでしたぁ」ギュッと強く、おばさんに抱き締められて…
お、お福さん…?
「祐君の鬼さん、捕まえたっと」抱き付いて来たお福さんを見て、
雪が、お兄ちゃんばっかり、じゅるいッ、抱っこ抱っことせがんだ。
「はいはい、今度は、雪ちゃんの魂ね」雪を抱っこして、
たましい?
「むしゃむしゃむしゃ…食べちゃった」

男のサガだな

2012-05-30 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
あやめ「え?ちょっと、待って下さい」斎藤さんに詰め寄って、
「次の講義、いつですか?」彼の腕を掴んだ。
斎藤「お…と?」男の腕掴めるようになってんじゃん、と。
チラッ、彼女の腕を見たら、火傷の痕が見えた。
「…機会があったらな」
あやめ「機会が…って、そんな…まだ、心理の読み方、教えてもらってないです」
斎藤「はい、それミス。人に頼って解せる脳じゃネェ。それに、」
あやめ「それに?」首を右に傾げて、斎藤さんの目を見た。
その仕草が菖蒲っぽくて…、
斎藤「もう見れるようなったじゃねぇか」
見つめられた目は、菖蒲に似て、
妙に艶っぽく、儚げで、
露の様に、また、消えちまいそうで、
放したら、どっか逝っちまいそうで、
あやめ「え?」抱き締めてしまった。
斎藤「…」やべぇと思った。
これ以上ここにいたら、情が移る。
“アンタが、菖蒲じゃなかったら、間違いなく、”
あやめ「あの、」斎藤…さ…んから、香が…。
懐かしい香りがした。
何?この香り…。
はるか遠く、脳の片隅で記憶している香を、思い出したくて、
その香りを思いっきり吸い込…ん…で、
かくんッ…「くぁ…」と、
斎藤「お、おいッ」口を開けて眠っちまいやがった!?なんでだ?
と思ったら、胸に朝鮮朝顔(曼陀羅華・麻酔)の実、仕込んでたんだっけか。
実を包んだ葉っぱを一枚取って、彼女の火傷に押し付けた。
菓子持ってっと「ヨッと」彼女をおんぶして、
「これじゃ…菖蒲ン時の二の舞だぁ」タイプでもねぇのに、世話焼いて。
この手の美人には弱いんだよなぁ、俺って。面倒クセェ…。

第三の目

2012-05-29 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
ぽんぽん、減点されて赤点だけど、会話が楽し…と思えた。とても不思議…感覚だった。
斎藤「人なんて信じてっから、痛い目見るんだ」
あやめ「…じゃ、どうして、お福さんからお菓子貰っていたんですか?」
斎藤「ガキが菓子にツラれただけだ」
あやめ「お菓子のため、だけですか?」
斎藤「それ以上でもそれ以下でもなく、欲しいモンは欲しい」
あやめ「男らしいんですね」
斎藤「ガキっぽいの間違いだろ」
あやめ「子供っぽい…?そんな事、無い。私…そんな事無かった…」
斎藤「普通、欲しいモンあったら、あれ欲しいこれ食わせろぉって、強請るだろ?」
あやめ「無い…そんな記憶、無い…周りに色々なモノがあったから…」
斎藤「はい、ミス。それじゃ、肝心な時に、肝心なモノもヤツ、手に入らねぇよ」
あやめ「肝心な人…」
斎藤「必要と思うヤツ」
あやめ「私、必要じゃなかったから…」
斎藤「はい、それミス。アンタが本当に必要としてねぇだけだ」
あやめ「じゃ…斎藤さんには、お福さんが必要だったのですね」
斎藤「…」
あやめ「ビンゴ、しちゃいました?」ピンッと人差し指を突き立てて、
顔を少し右に傾けて、ニッと笑ったら、
ツン…
「え?」斎藤さんに、おでこを突かれた。
斎藤「ビンゴ(人の心理を突く)出来るようになったじゃねぇか」
あやめ「ビンゴ…」
斎藤「いいか、敵か味方か、その真意(深層心理)を読め」
あやめ「おでこで…」
斎藤「ここで、見えねぇはずの脳が見えるはず」
あやめ「脳が…見える?」
ボーン、ボーン…、近くの寺の鐘が鳴った。
斎藤「はい、今日はここまで。時間だ」

誰を信じれば良いですか?

2012-05-28 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
斎藤「はい、それもミス。田舎に帰って、よう出戻ったって歓迎するヤツいるか」
あやめ「…ですよね…」
斎藤「お福分けだとか何とか言って、人に親切したばっかりに、こんな目に遭ってなぁ」
あやめ「どうして、親切な方が…お福さんが、そんな目に遭うんでしょう…」
斎藤「はい、それもミス。良い子ちゃんを基準に他人を量るなって、野郎は何も考えちゃ…」
あやめ「…彼、とても…優しかったんです」
斎藤「あん?」
あやめ「ただ…、私だけじゃなく、誰にでも優しかった…」
斎藤「…誰にでも、他の女にも手広~く優しいぃ良い~ぃ男だったじゃねぇ?」
あやめ「私じゃなくても、良い~ぃって事に気付くの…少し、遅かったようです」
斎藤「ズルズル引きずられる女より、気付いて別れたアンタの方が賢良~ぃ女じゃねぇ?」
あやめ「賢良いぃ~ですか」い~ぃと笑って、
斎藤「そうそう…その調子、その調子」
頭を軽くポンポン叩いて、
「気付けねぇヤツは一生気付けねぇ。賢い、賢い」
あやめ「…」
優しさって、何だろう?
言葉のキツイ~ぃ人。
だけど、
善~ぃ…と思った。
斎藤「別れて、正解、正解」
あやめ「やっと、○、貰えましたね」
斎藤「まだ赤点だ」
あやめ「…私…幼い頃、両親に困った方が居られたら、助けなさい、と教わりました」
斎藤「はい、ミス。困ったフリした罪悪人を手助けしたら、共犯。ほう助罪適用な」
あやめ「道を教えて欲しいと言われたら、案内しませんか?」
斎藤「×。アブねぇとこまで案内出来っかよ」
あやめ「私、誰を信じれば良いですか?」
斎藤「はい、それもミスな」
あやめ「また、ミスちゃいましたかぁ」楽しい方…で、笑ってしまった。

なんで、謝んだよ

2012-05-27 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
「ううぅん、違うの、違うの」
初めて見た。おたべさんの首が横に揺れんの。
子供、産めねぇから?
俺らに菓子やったから?
どっちだよッ!
それって、お福さんが悪いのかよ?
「ごめんね…祐君」
なんで、謝んだよ。
お福さん、何も悪くねぇだろッ。
斎藤「で…、お福さん、田舎に帰っちまった」
あやめ「…」
斎藤「それからが傑作でよぉ。ふ…笑っちまったよ」
あやめ「お福さん、戻って来られたのですね」
斎藤「バカか。そんな野郎ンとこ、戻ってどうする?」
あやめ「は…」
“子もこさえらんねぇ、汚ねぇガキに菓子食わす、近所の笑いモンだ。出てけッ”
斎藤「お福さん、帰ってすぐだ。腹のでけぇ女が来た」
あやめ「不倫…していた…」
斎藤「ビンゴ。結局、近所の笑いモンになったのは、お福さん追い出したあの夫婦だ」
近所で噂していた奴らも、ガキも駄菓子屋に寄り付かなくなって「その後、ドロンッ」
パッ、手を広げて、消えるジェスチャーした。
あやめ「ドロン…て、」
斎藤「一家総出で夜逃げだ」
あやめ「あ…赤ちゃんは?」
斎藤「知るかよ」
あやめ「…お福さんは?」
斎藤「こっちが知りてぇよ」
あやめ「…」
斎藤「あん時、お福さん…今の俺と同じくらいだから、もう五十くらいか…」
あやめ「幸せなら良いですね」

俺たちのせいだろ?

2012-05-26 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
アメが甘くなくなって、割り箸の木の味だけが残ってから、
おばさんは、俺たちを神社に連れて行った。
「ここで、お手手洗いましょうね」手水に水を汲んで、妹の手を丁寧に洗ってくれた。
汚れてない、きれいな手拭いを取り出して、妹の手を、
「キレイキレイしましょうね」拭いて、
なぁ。なんで、他人の俺らなんかに、こんな…、
「おばさん、子供、いないの」
え…?
「子供が出来なくて、君たち見ていたら…」
…。
「お菓子、あげたくなっちゃたの」
だって、おばさんとこ、いつも子供いっぱい来んだろ。
「いつも来る子たちには、お母さんがいる」
…うん。
「お母さんが、買ってあげるし、」
うん。
「おばさんも、あげたいの…」
なら、いつでも頂戴よ。
「うん…、うん…」おばさんは何度も頷いて、泣いて、笑ってた。
斎藤「その後、おたべさん…どうしたと思う?」
あやめ「え?」
斎藤「離婚」
ガッシャーン、
“子もこさえらんねぇ、汚ねぇガキに菓子食わす、近所の笑いモンだ。出てけッ”
「ごめんね。お菓子…あげられなくなっちゃった…」
最後のお菓子を俺たちに差し出して、
いらねぇ。
「どうして?」
俺たちのせいだろ?
近所の奴ら、言ってた…。

おたべのお福のお多福さん

2012-05-25 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
ねりアメ?
どろぉとして、どうやって、アイツみたいにペロペロ舐めんのか分かんねぇし…。
「これね、二本のお箸を使って…パッキンと割ります。そして、くるくるぅと巻いて、ほら、ここからお兄ちゃんの出番ね」
くるくる…くるくる…、
それを見て、妹の雪が、お兄ちゃん、しゅごぉい、しゅごぉい、手を叩いて喜んだ。
別に俺がすごいんじゃねぇし、この飴がすげぇ…
「白くなったら、ナメナメしていいわよ」
雪、舐めろ。まず妹にやったら、
「優しいお兄ちゃんね」箸にアメをどろっと付けて、俺にくれた。
別に…普通だろ。今度は、最初から一人でくるくる回した。
「普通かぁ。かっこいいな」
かっこいい?その言葉で得意になって、さっきより回転速度を上げて、すぐ白くした。
ペロ…と舐めた飴は、
「甘い?」
うん。と頷いたら、
「うん」おばさんも頷いた。
俺は、ペロペロ、頭を上下させて舐めた。
おばさんは、
「うん、うん」と何度も、何度も、頭揺らして頷いた。
別に、アメ舐めてるわけじゃねぇのに、
なんで、頭、揺れてんの?
「だって、美味しそうに舐めて…」
うめぇよ、これ。
「良かったぁ」
ニッと笑ったら、おばさんの頬がぷっくり膨らんで、
お福さんが、お多福さんになった。
妹は、
「あぁあ。アメちゃんを手でつかんじゃったの。お手手ベトベトになっちゃってぇ」
雪がアメを舐めずに、手の平をべろべろ舐めてた。その姿に、おばさんと二人で笑った。

ここで待ってるから…

2012-05-24 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
性分(サガ)ってものを理解させるため、
斎藤「ガキの頃…」昔話をしてやった。
わざわざ、俺の目の前に来て、汚ねぇベロ出して、
ペロペロ、ペロペロ、
「お前ら貧乏人には買えねぇだろ」
美味そうに飴舐めるヤツがいて、腹立った。だが、ヤツの言う通り買えねぇ。負け惜しみに、
いらねぇよ、そんなモンって言ったら
ぐぅ…、
腹は裏切りやがった。そんな俺を見てたんだろうな、
「ねぇ、僕…これ」
何だよ、それ?
「飴ちゃん」
アメ…アイツが美味そうに舐めてヤツか?
「いらない?」
いらねぇよ。世間じゃ、知らねぇ人から、モノ貰っちゃダメなんだろ。
「じゃ、自己紹介しよっか。おばさんはね、そこの駄菓子屋のお福…」
知ってるよ。だって、
「いつも覗いてたもんね…僕」
金…持ってねぇよ。
「いいの、これ商品じゃないの。お福分け」
おふくわけ?
「そ。おばさんからの、幸せのお裾分け」
…ならさ、…妹、いんだけど、
「知ってる。呼んでおいで。おばさん、ここで待ってるから」
うん。
妹を連れ来て、
「座って食べよっか」おばさんは頭巾を外して、それを地面に敷いた。妹を座らせて、
「お兄ちゃん、隣ね」妹の前では、“僕…”が、いきなり“お兄ちゃん”にレベルUpした。
うん…。俺も座って、おばさんは、俺らの前で「よいっしょっと」しゃがんだ。
「はい。練飴」

サガ

2012-05-23 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
斎藤「いいか?俺は、アンタをいい女だと思った。品定めした結果、簡単に落とせるとも分かった。こうして、人気のない場所を選んで、連れ込み…」彼女の肩に手を置いた。
あやめ「え?」
斎藤「アンタは疑う事無く、親切なフリした俺に自分の悩みを打ち明け、気を許した」
あやめ「ちょ…」
斎藤「周りには誰もいない」彼女を押し倒して「さて、どうする?」
あやめ「待…って…」
斎藤「これが、先入観が下した結果だ。悔やむなら、自分の愚かさを悔やめ」
あやめ「だ…、だれ…か…」
斎藤「はい、それもミス。誰もいないから、ここに連れて来た。それに、声が出てねぇ。押し倒されて、すみかちゃんの二の舞 De The End…」彼女の腰を掴んで、
あやめ「あ…」
斎藤「遊ぶヤツは、相手の気持ちだの何だのって考えねぇよ。…だが、アンタは運良い」
あやめ「運?」
斎藤「言ったろ?俺は、あやめ団子不振症だって、はいッ」と、
彼女を起こして、
「アンタが、菖蒲じゃなかったら、間違いなく、遊んで捨てた」
あやめ「私…じゃなかったら?」
斎藤「さて、次のレクチャーだ。男性恐怖症患者は“男女問わず”優しくて良ぃ~子が多い」
あやめ「男女問わず?良い子?」
斎藤「ガキ頃から、良い子善い子に育った、育ちの良い子ちゃんね。特に、感情移入型の」
あやめ「移入型…」
斎藤「要因その一」人差し指を突き出して、
「その、すみかちゃんだっけか?彼女に入り込み過ぎ」
突き出す指を二本増やして、
「要因その二、アンタの容姿…」
あやめ「顔…」
斎藤「あぁ、鬼を引き出しそうな、甘いツラ」
あやめ「鬼…?」
斎藤「アンタの、サガだな」

はい、それ。間違いね。

2012-05-22 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
あやめ「あなた、お医者様…なのですか?治せるんですか?」
斎藤「健全な心の医者が、心的外傷を患う者の全てを理解し、治せるとは限らない」
あやめ「…」
斎藤「病名は分かっても、病を理解するか否かは、人格による。You know?」
あやめ「私…」じくじくした火傷の痕が痒くなってきた…「このままなのでしょうか?」
斎藤「いいか?治すのは、アンタだ」彼女の前に座って「治りてぇんだろ?」
あやめ「はい…」深く、頷いた。
斎藤「よし、次の質問だ。男が怖いと意識し始めたのはいつだ?」
あやめ「…。二…三年前…」
“ねぇ、どう?ここのアヤメ団子、美味しいでしょう”
えぇ、あやンとこの団子、絶品だわ。美味しッ、ねぇ、斯波。
「友人が、亡くなってから…です」
斎藤「友人?」
あやめ「お店の、お客様でした」
斎藤「客…」
あやめ「誰にでも気さくに話し掛けられ、とても優しい方でした」
斎藤「誰にでも?」
あやめ「はい。道に迷われた方を、案内して…その、」次の言葉は、私の口から言い難かった。
斎藤「襲われた?」
あやめ「よく…分かりましたね」
斎藤「普通に考えて、友人が病気で死んで、男が嫌いになるかよ」
あやめ「…。末摘花は…その後、入水しました」
斎藤「すみかちゃん…」遊ばれちゃったのねっと…「大体、分かった。じゃ、次…」
あやめ「私には分かりません。どの方が善い方で、どの人が悪い人なのか、分かりません」
斎藤「分かんねぇのに、俺に、その事実を打ち明けたのは、なんでだ?」
あやめ「え…?今、治りたいかって、おっしゃったじゃないですか…」
斎藤「はい、それ。ミス(間違い)ね。俺が善いヤツだって、誰が言ったよ?」
あやめ「…」
斎藤「先入観で突っ走った、アンタの痛恨のミスだ」
あやめ「先入観(思い込み)…」