ひつじ草の挑戦状

色んな思いを綴ってます。

深層心理の根底

2012-05-20 | 八岐大蛇伝説 ~治世の象徴 天叢雲剣~
あやめ「う…うぅ…」
ぽろぽろ…涙を出して、
斎藤「お、おい…いきなり、泣くなよぉ」
しかも、道のど真ん中。公衆の面前で…「違う、違うって。俺がいじめてるみてぇじゃねぇか。ジロジロ見んなッ」野次馬を追っ払って「ちょ、ちょっと来いッ」と、
グイッ、あやめ姉さんの腕を引っ張ったら、
あやめ「あ…」
体が硬い。
斎藤「とにかく…」腕を放して「こっちに来いよ」
どうも、この姉さん、様子が変だ。
怯えてる?
人気のない川っ縁に連れて行って「ほら、顔、洗えよ。店に戻れねぇぞ」
あやめ「も…戻りたくありません」
斎藤「あん?」この時期特有の五月病か?と思ったが、“何か”違う。
あやめ「辞表…の書き方、教えて下さいませんか?」
“茶菓子と職場をマズくするようなら、接客業、辞めちまえよ”
斎藤「そんな事も知らねぇの?」
あやめ「何を、理由に辞めれば良いのでしょうか?」
斎藤「紙…持ってるか?」
あやめ「懐紙なら…」お茶菓子を乗せる和紙をお渡しして、
斎藤「結婚は?」矢立(やたて・携帯筆記用具)を、姉さんから引っ手繰って、
あやめ「まだ…、ですけど…」
斎藤「なら、してから辞めな。周りが詮索してくっからな、こういうのが一番だ」
『寿退社』…結婚を期に退職します
「早いとこ、家庭に納まっちまいな」
あやめ「…」“寿”の文字を食い入るように見て、
「私には、縁遠い話です…」ポツリと呟いた。
斎藤「縁…?」ねぇ訳、ねぇだろ。
こんだけの美人、ほっとく男、いんのか?
“何か”ある、と直観的に思った。

癒しの手立て

2012-05-15 | 八岐大蛇伝説 ~治世の象徴 天叢雲剣~
池田「はい…」
照「斯波様も、心痛めておいでです。それと同じように、友人である姉も、苦しんでいます。
男性のお客様が来られる度に、女性にあんな目を遭わす人ではないか、女性を弄ぶ人じゃないかと疑ってしまって…優しかった恋人とも別れました」
池田「そこまで波及しているなんて…」
照「あの事件以来、姉は表情(カオ)を失くしました」
義経「顔…?」
照「私の前でも、お客様の前でも顔を作れない。表情を失くしてしまったのです。まるで、蝋人形のような、感情の無い顔。昔は、満面の笑顔を作って接客していたのに…もう、見る事は出来ないのです」
池田「その…笑顔を取り戻すために、斎藤を…」
照「末摘花様を襲った犯人が憎いです。でも、いくら憎んでも、姉に笑顔は戻って来ません」
“ねぇ、どう?ここのアヤメ団子、美味しいでしょう”
「昔のようにお団子を美味しそうに頬張って欲しいのです。過去を乗り越えて欲しいのです」
池田「…そうですね」
照「神は、なぜ、末摘花様を選んだのしょう?あんなお優しい方を…どうして…」
義経「…」
照「その優しさが裏目に出て、あのような酷い事件が起こってしまった…」
“ねぇ、聞いてよ。最上様がね、ここのお茶菓子は格別美味しいって、言って下さったのよ”
「もはや、優しいだけの言葉など、姉の心には響かないのです」
義経「で、ビンゴに賭けた」
照「斎藤様は、率直なご意見をお聞かせ下さいます」
義経「確かに、ポンポン、痛い事を言って来るし、」
池田「先見の明もありますね」
照「えぇ、案の定…」
“茶菓子と職場をマズくするようなら、接客業、辞めちまえよ”
「言い難い事を、正直に言って下さいます」
池田「しかし…逆に、傷付かないですか?」
照「もう傷付いているのです、私どもは。欲しいのは、深い傷痕を癒す手立てだけです」
池田「闇雲に優しい言葉を掛けるのは逆効果…という訳ですね」

八岐大蛇伝説~国造りと国譲り~

2012-02-20 | 八岐大蛇伝説 ~治世の象徴 天叢雲剣~

五つになったばかりのおてんば娘 須佐之娘(すせり)「ふぅ…ん」と白い雲を眺めていた。
真っ直ぐ、大きな瞳の奥で見た事のない異国の地 高天原を空想しているのだろう、
こんな事言い出した。小さいお手手をうんと大きく広げて、
白い雲の上に、うぅ~んと大きな白いお城があって、異国の人たちがいっぱいで、
須佐之男「…で?」
すせり「そこで、結婚するッ」なぬ?高天原に嫁ぐ!?そんな事してみろッ!
須佐之男「ダメだッ」俺が娘と会えなくなるッ!
すせり「えぇーっ!?じゃッ、ここで結婚するぅ~…」
須佐之男「それなら良しッ」婿なら、まぁ…許す…と思っていたが、娘が年頃になり、
すせり「私、結婚致します」と連れて来たヤツを見て、
須佐之男「ダメだッ」絶対ッ「認めんッ」
すせり「えぇ!どうしてですかッ!?」
須佐之男「ダメなモンはダメだッ」どうしてもこうしてもあるか。もっと、こう優しそうな、
すせり「もぉッ、父上様なんて大嫌いッ」ぷんッと顔を横に向け、話をしてくれなくなった。
娘の機嫌最ッ悪ッ。メシが不味くなるほど険悪なムード…で仕方なく、結婚に条件を出した。
須佐之男「見事、試練にクリア出来たら、結婚を許す」試練は、並大抵の智慧ではクリア出来るものでは…「な!?い!!」その男、見事すせりの智慧を借り、全ての試練をクリアした。ちッ、約束は約束だ。娘との結婚を許した。婚儀は完成した神殿で行い、その後、
須佐之男「俺はそろそろ隠居だ。見えぬ国を統治する。お前はこの国を統治しろ。で…これ、」
国家権力、治世の象徴“天叢雲剣(あまのむらくものつるぎ)”を戴冠した。

娘婿「はッ、しかと承りました」剣を受け取り、
須佐之男「抜いてみろ」
娘婿「ハッ!?」鞘から抜いた剣の型を見て、驚いた様子だった。それは、
須佐之男「諸刃の剣だ。いいか、剣力は悪しきに傾けは禍を、善に向かえば徳となって返る」
国の権力を間違った方向に使えば、自国に禍が降り掛かり、国を滅ぼす。戒めの剣だった。
娘婿「良き国を造りたいと存じます」諸刃の剣を神妙な顔で眺めていた。こやつが、出雲の新しき神 大国主命(おおくにぬしのみこと)。今後、こやつが中心となり、新しい国造りが始まる。しかし、苦心したようで、異国より援者を呼んだ。海を渡って来た異国の男は、小さき体に多くの智慧を持っていた。その事から、この異人を皆は、こう呼ぶようになった。少彦名(すくなひこな)命と。彼の助言を受け、出雲は長く繁栄した。
八岐大蛇伝説 - 完 -

八岐大蛇伝説~出雲之国と鉄の神~

2012-02-19 | 八岐大蛇伝説 ~治世の象徴 天叢雲剣~
巫女「まず、国に名を付けましょう。出雲(いずも)は、如何でしょう?」と微笑んだ。
あぁ…この巫女の笑顔にやられちまったよ…たくッ、
青年「…出雲だな、そう致そう。だが…、」やられたら、やり返すッ。
「俺は少々乱暴でな、何を仕出かすか分からん。そこで、相談役を、そなたに命ずる」
巫女「私で良ければ、何なり…、と?」グイッと、強引に彼女を引き寄せて、
青年「(なら、まず、子をどうする?)」小声で誘ったら、
巫女「かぁ…」と見る見る顔が赤くなって、
青年「(孫の顔が見たいんだと。今夜辺りどうだ、ん?)」
巫女「その前に子たちと暮らせる大きな社をお作り下さいませ」するっと腕からすり抜けた。
この巫女…なかなかのモンだな。
…さてと、こうして俺は現実的で堅実な相談役を傍に置き、出雲の国の神となった。
高天原の一件では天の厄介者、乱暴を働く 嵐神と恐れられ…追放。その後、住む場所を与えられ、罪滅ぼしの国造り…。
捨てる神あれば、拾う神あり、だな。
姉も粋な計らいをするもんだ。
“地に落ちよ”
落ちてみて分かった。人間たちは、生きるに必死なのだという事を…。
俺は、この国のためにタタラ製鉄の智慧を広めた。針など漁具、鍬などの農具を作らせ、異国の剣を模して、錆びない道具も作らせた。これが合金、鋼の技術だ。その技術により、格段に収穫・漁獲量は増え、荒廃していた土地は見る見る蘇った。
月日が経ち、実りの秋…大地は金色の稲穂が頭を垂れ、空では白い雲がゆらゆらと浮かんでいた。時おり、思い出す。嵐神と言われていた頃の荒々しくも荒(すさ)んだ自分を…。

(演目 大蛇の須佐之男さんです)
それが今では鉄の神といわれ、皆が慕ってようになった。それに、
ちらりと、妻と娘を見た。こんな俺でも一家の大黒柱となれた。
須佐之男「おい、出掛けるぞ」妻子を連れ出し「見ろ」建築中の、神殿に案内した。
天の浮島 高天原に届くよう、大きな柱を立て、その頂きに、
「もうすぐ、完成だ」
出雲之神殿を作らせている。
妻「御父上様はね、この空の向こうの白い雲から降り来られて、私を助けて下さったのよ」
そう口癖のように、娘に教えている。その妻の名は、櫛稲田(くしなだ)姫。あの時の巫女だ。


(櫛田神社・射水)

八岐大蛇伝説~巫女の髪と櫛~

2012-02-18 | 八岐大蛇伝説 ~治世の象徴 天叢雲剣~
さらには、生贄だった娘までやって来て、杯を持たせて、酒を注ぎ…、
巫女「祈りが通じました。ありがとうございます」
“鎮まりますように、どうか、どうか…私たちを、お救い下さい”
青年「祈りぃ?それに礼を言うのは、こちらの方だ、櫛…」を返そうと、
巫女「よく御無事で…」ホロホロ、ホロホロと大粒の涙をいっぱい流して「本当に良かった」
青年「あぁ…」参ったな、女の涙ってのは苦手で…「あのさ、」泣き止んでくれないか?
巫女「怖かった、ずっと、ずっと…助けて…と、心の中で叫んでおりました」
巫女とはいえ普通の女なんだと分かった。
生贄か…。死…怖くないはずがないよな。
青年「なぁ、ちょっと来い」彼女を傍に寄せて「梳いても良いか?」
巫女「はい」笑って頷いた。よし、笑った。彼女の頭を引き寄せ、梳いた。
櫛を持つ手に、する…と黒髪が絡まり、しゅる…と解けた。
青年「見事な髪だ」髪を何度も梳いて、ふ…と、娘が顔を近づけて来た「…あん?」
巫女「(神を、貴方様に預けとうございます)」突然、娘が巫女の顔になり、小声で言った。
青年「な…何?」ピタッ…と頭を撫でる手が止まった。
巫女「(見てお分かりのように国は未だ定まっておらず。他の意見や事象に左右され易く不安定にございます。どうか、貴方様の、その御力で国を一つに…)」俺の耳元で、巫女は囁いた。
青年「(…俺は悪事を働き、追放されてここに来た。そんな罪人が国をまとめるなど…)」
巫女「(貴方様の、その罪をここで洗い流す事は出来ませんか?)」
青年「あん?」
巫女「(ここに留まって頂き、国を造る。それで、貴方様の罪は清められましょう)」
傍らにおいてあった大蛇の体から出た剣に触れ「美しい剣にございます」スッと手に持ち、
俺の前に座した。そして、
「異国より出(いずる)神の子、天之剣を掲げ、国を守らん。その手で国をお造り下さい」
剣を差し出した。
青年「国…造りぃ?」訳も分からず、差し出された剣を受け取っちまっ…「て?」
巫女「我々の神に、御成り遊ばしました」
そう言うと、わぁ…と村人達は歓声を上げた。
青年「おいおい?」
老夫婦「伝説の通りじゃ。異国の、雲の上より参った男が、この国の神じゃッ」

八岐大蛇伝説~約束~

2012-02-17 | 八岐大蛇伝説 ~治世の象徴 天叢雲剣~
チラッと大蛇を見た。こいつを体内に宿しながら、生きていた!?
鉄は時間の経過により水分で酸化して錆びる。
鉄を超える金属…それが、異国には存在する。
「これを使えば…」
剣を、天に突き刺し、大きく振り下ろした。
ピカッ、稲妻が走り、ゴロゴロ…、雷鳴が轟いた。
天は雨雲に包まれ、その直後、ポツ…ポツ…雨が降った。
「剣が、龍神を呼んだ…?」
実に不思議な剣だった。
雨は大蛇の血を洗い流し、その亡骸は水溜りに沈んで逝った。池が生まれ、そこから九つ目の首が生まれた。首は山を下り、滝となり、
巫女「大蛇様が、九頭龍(くずりゅう)となって蘇った…」
巫女は雨の中、龍神に祈りを捧げていた。濡れた髪は光沢を帯び、艶やかで美しかった。
俺は、この美しい髪の娘を守れて…それだけで、良かったと思った。
青年「さ…帰ろう」剣を鞘に戻し、娘を連れて、老夫婦の許に戻った。すると、
大蛇から娘たちが生還したと、村人たちが沸き上がり、
青年「なんだ、こりゃ?」宴の準備が始まっていた。
村人「ありがたや、ありがたや、大蛇様が鎮まった。これで村も安泰…、」
青年「…悪いが、」元はと言えば、俺の蒔いた種。八人の娘は助け出したが、多くの犠牲者を出した。それに、ここでは人身御供が行われ、川の神 大蛇が死んだってのに…
「失礼…」宴なんて、気分じゃない。村を立ち去ろうとしたら「あ?」ガシッ、腕を掴まれ、
老夫婦「約束はどうするんじゃッ」
青年「約束…?」
老夫婦「孫を、抱かせてくれると…言うたじゃろッ」
“わかった。すぐに、孫…抱かせてやるよ”
青年「ちょ、ちょっと待て。あれは…」
老夫婦「礼も言わせんでッ、どこ逃げるつもりかッ!今の若いモンはせっかちで困るッ」
青年「おいおい…」泣いたり、怒ったり、忙しいじぃさんとばぁさんだな。ったくッ。
老夫婦「よく、あの大蛇様から…、もう放さんッ。孫の顔拝むまで死なんぞッ」
青年「弱ったな…」村人に囲まれ、英雄に担ぎ上げられ、盛大な宴まで始まっちまって、

八岐大蛇伝説~異国の剣~

2012-02-16 | 八岐大蛇伝説 ~治世の象徴 天叢雲剣~
青年「…とッ」
老夫婦「わ…わしらが、行こう」青年の腕を掴んで止めた。
「…イヤなんじゃ、もう耐えられん。この老いぼれが逝く…わしらに逝かせてくれッ」
青年「おいおい、俺は死に行くんじゃない。ここで、無事を祈っててくれ」
老夫婦「う…うぅ、孫を、この手に抱けるよう祈っとる…どうか、どうか、無事で…」
青年「わかった。すぐに、孫…抱かせてやるよ」
俺は一人、大蛇の許へと走った。
酔い潰れて眠った一匹目の大蛇の腹を蹴り、ゴボッ、口から酒と共に一人目の娘が流れ出た。
二匹目、三匹目、四匹目…七匹目から娘たちを救い出した。
青年「皆、無事だな。先に村に戻ってろ」この場から逃げるよう促した。さて、最後の…
八匹目の大蛇「何をするかッ!」酔いから醒め、反撃して出た。
生贄の巫女「あ…危ないッ!」とっさに、持っていた櫛を大蛇様目掛けて、櫛を投げた。
大蛇「小娘がぁッ」目に当たって、片目だけでこちらを睨み、襲って来た。
巫女「わ、私…」死…
“こ…怖い。助けて…助けて、神様…”
飲み込まれるッと思って、目を瞑った。その瞬間、
ザッ、
青年は剣を抜き、ザザァーと大蛇の腹から尾にかけて掻っ捌いた。
ガッキ…ッ、
青年「け、剣が!?」俺の、鉄製の十拳剣(とつかのけん)が折れた「やばッ」と思ったら、
大蛇はドド…ッと地鳴りと共に、
ドシ…ン、地に崩れ落ちた。
大蛇の腹から、ドクドクと禍々しい濁流のうねりのような血が流れた。横たわる大蛇の傍らに娘が投げた櫛があった。サッと、命を救ってくれたそれを拾い…「ん、なんだ?」
キラ…と光る物が大蛇の体から見えた。抜き取ってみると、剣だった。血に染まった剣を、フンッと一振りすると血が吹き飛び、しゅる…と白く、美しい光沢の剣が姿を現した。
「異国の剣…か」
“諸刃型の剣”で、錆び一つ付いてない、螺鈿装飾を施した剣に目を奪われた。
十拳剣を折ったのは、この剣か。
鉄よりも強靭な金属とは、一体…?しかも、

八岐大蛇伝説~神の思し召し~

2012-02-15 | 八岐大蛇伝説 ~治世の象徴 天叢雲剣~
八人の娘に白羽の矢が立ち、娘たちは人身御供となった。
八岐大蛇の、八尾それぞれに巫女を差し出し、
一人目の生贄…二人目の生贄…、三人、四人…そして、最後の生贄 八人目となり、
巫女「…これも、神の思し召し。お父上様、お母上様…私の分まで長く生きして下さい」
笑って、大蛇の住む川に向かった。
老夫婦「うあぁ…神は、なんと酷い事をなさるかぁ…」泣き崩れた。
なぜ、この老いぼれを使って下さらん?
なぜ、年若い娘が身を捧げねばならん?
わしら老いぼれの夢、この手に孫を抱く夢が、
わしら老いぼれから奪ってしまわれるのかぁ。
長く生きる?
娘たちを失って、長く生きる…とは、
無理じゃ…わしらには、出来ん。
娘たちを追って身を投げようと、
通りかかった青年「おいッ。危ねぇぞ」老夫婦の身投げを止めた。
老夫婦「止めんで下され…わしら、もう…」ずるずる…と力なく崩れて、
青年「何があった?」事情を聞くと、
川の氾濫、大蛇の怒り?
神を鎮めるために生贄?
神は、俺は…、そんな事望んでないッ。
「神が余計…悲しむだろッ!」
何とかしなければ…、このままでは、娘の命が、
老夫婦「どうすればいいんじゃ…。娘がぁ…」
青年「俺が行って話して来よう」
老夫婦「無理じゃ…、大蛇様に近付いたら、飲まれる」
青年「飲む…?そうだ。酒…ってのは、どうだ?」
老夫婦「おぉ、大蛇様の好物じゃ」
大蛇にしこたま酒を飲ませて酔わせる。酔った隙に先に食われた七人の娘たちを吐き出させ、まだ食われていない八人目の生贄を連れ戻す。老夫婦に酒樽を八つ用意させ、見つからないように、そっと置いて、娘たちを助けに…、

八岐大蛇伝説~生贄~

2012-02-14 | 八岐大蛇伝説 ~治世の象徴 天叢雲剣~
遥か昔、混沌とした暗闇から一筋の閃光が走り、天と地が分かれた。天地の境に雲を引き、雲の上に国を造り、浮島に高天原(たかまがはら)という神の都を作った。
地には天を映す海と島を作り、水と風を通して生命を息づかせ、神の形代 人間を根付かせた。
人間は島で農作物を作り、海で漁し暮らした。
日の下で働き、日が暮れて一日終える。助け合う人間が群れを成し、村を造り、平穏無事な日々を送っていた。しかし、事件は、突然起きた。天地を照らす神が御隠れになった。
『天岩戸の神隠し』
日の女神 天照大神が岩戸に籠もり、天は闇に包まれ、世は混沌の渦に呑み込まれた。
天のみに限らず、地においても混沌が生まれ、地では長雨が続き、川は氾濫を繰り返した。
“こ…怖い。助けて…助けて、神様…”
多くの村人が水に呑まれ、実った農作物も押し流された。人々は住む土地を追われ、村は崩壊した。神の業に、人間は成す術なく、
“鎮まりますように、どうか、どうか…私たちを、お救い下さい”
再び、世が明るく照らされん事を祈るしかなかった。天の神々はこの祈りを受け、何とかして天照大神を岩戸から出て頂き、再び、天に光が戻るよう計らった。笑い絶えず、鈴が鳴り響く賑やかな宴を開き、天照様を御招きした。天に再び、天照様がお戻りに成り、
天照「地に落ちよ」と、事の発端である弟神 須佐之男(スサノオ)を高天原から追放した。
須佐之男は高天原から雲伝いに地に降り、異国の山の頂に着いた。そこで目にした光景は、実に恐ろしい地獄絵図だった。己の諸事が天に留まらず、地に大きな爪痕を残していたのだ。
須佐之男「ん…?どこからか、声が聞こえる…」
“お鎮まり下さい、大蛇(オロチ)様”
暴れ狂った川の神を鎮めるために、村人達は祈っていた。しかし、祈り空しく、川は濁流となり人を呑み込み、地を割き、山を切り崩し、暴れ続けた。
大蛇「は、腹がぁ…」
神の怒りを鎮めるには、
お前ぇンとこの娘っこ…水の巫女だったな。
え?
そうだ、巫女なら大蛇様の怒り、鎮められるはずだ。
み、巫女とは言え…普通の娘で、
生贄だ。生贄にして、鎮めよ。