ひつじ草の挑戦状

色んな思いを綴ってます。

藤原一門 花山院

2011-09-30 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
龍神舞…刀が龍の如く高らかに舞い、うねり、嘶き、息吹を上げる姿を舞って見せた。
義隆「はぁ…」ぽ…かん、と口開けて「すげぇ」
チン、刀を収めて、能子「ねっ、見えた?」クルッとこっち向いて「ッ!?」
義隆「うん、銀色のりゅう…」
パチパチパチッ「っと…」拍手している人を見て「誰?」
「さすがは、舞の達人ですね」と現われた男に、
能子「さ、先に」サッと刀を鞘に仕舞って、義隆に刀を返して「戻っていなさい」
義隆「ヤッ」何か感じたのか、私にしがみついて離れない。どうしよ、ここにいてはダメ。
能子「義隆、言う事聞きなさい」義隆の方を向いてしゃがんだら、
スッと肩に手を置かれ、恐る恐る振り返ったら…紛れもなく「花山院様…」
兼雅「久しぶり」と微笑んだ。そのお顔が、
能子「どうして、こちらに?」怖い。
兼雅「どうして、とは、また可笑しな事を…随分と探しました」グイッ、手に力を入れて、
能子「あ…」肩を強引に引き寄せられ、
兼雅「さ、」腕を掴まれて「行きますよ」
義隆「どこ行くの?」
兼雅「…この子は?」
能子「…私、結婚致しましたの」
兼雅「子か?なら、話は早い」
能子「え…」ずり、と引きずられ「あ…」足に踏ん張りが、利かない。
ずる、ずるずる…「違いますッ、この子は…」義隆を、守らないと…、だけど、
義隆「ねぇちゃん、どこに連れてくんだッ!」
兼雅「ねぇ…ちゃん?」
そこへ、義隆の声を聞きつけ「何やってんだ?おめぇら」と顔を出した、
義隆「斯波さんッ、ねぇちゃん、連れてかれるッ!」
兼雅「君か?彼女と結婚したというのは」
斯波「あん?残念だが、相手は、アンタより“ずっと、うんと”若くて、いい男だ」
兼雅「…」←40前後です「君は、目上に対する言葉遣いを知らないのか?」
斯波「田舎源氏ってのは、そういう教育、受けてネェんだ。覚えとけ」
能子「し、ば…さん」首を横に振って、逆らっちゃ…だめ。その人は「だい…」

Before→After

2011-09-30 | 日記
日記を挟みます。
月日が経つのは早いものですね。あっという間にプログラム更新です。日程はこちらへ
どうです?今回のカーペンターズ。カレンの歌声が心に響いて、雑巾絞りポーズ?がウェストに利いたでしょ?
利いたぁ!と思った方はウェストサイズ測ってみましょう!
「あ゛!Before測り忘れた…」
ま、人生、そんなもんです。あまり細かい数値は気にせず、レッスンに来て下さい。
お待ちしております。

さて、明日からのプログラムは細川 ガラシャ様をテーマにした足腰の鍛錬プログラムです。
三ヶ月、彼女と生きる意味と生きた意味を考えて、足腰鍛えましょう。
ところで、先日の小姓日記で書きましたが細川ガラシャ、明智 珠は明智光秀様の三番目の娘様です。(ちなみに、明智様には四人の娘様と三人の息子様がおられます)
彼の愛妻家は有名で…それ相応の理由があるのですが、そのエピソードは本編でご紹介しようと思います→おそらく、三ヶ月先になるかな。
だから…なのか?
私、織田様同様、明智さんが結構…コソォと耳元で囁く悪魔みたいなスパイが傍に居ても、
…憎めないんだよなぁ「ッ、仕方ないっか…」みたいな。
この時代以前の、義経が生きていた平安鎌倉時代にも忍(スパイ)ってのが、ウヨウヨ~といました。折角隠れているのに、わざッわざッ隠れ家を密告する奴だっていました。
それじゃ、隠れ家の意味を成さないじゃないですかッ!
そんな味方のフリした、本当は敵ッ!?という人がたくさんいて、だから、こっちは影武者をいっぱい用意するんです。もちろん、義経も使っていました。影忍法なんてね。
その同様の作戦を使ったのは徳川様ですね。
まったく、知略家です。ほけ~っと、松平時代の幼少期、駿河 今川氏に囚われていたわけではないんですね。聡き方です。
だから…なのか?
今川軍師 雪斎も「こいつは使える」と手塩にかけたのしょう。
しかし、結果として、それが天下人を作ってしまったと言わざるを得ませんね。
さらに、徳川と名を改めてからは将軍(指導者)としての才、軍師(統率)の才を遺憾なく発揮、
「はて?」ポポポポン?みたいな化けの皮をお持ちで、そういう狸が可愛い♪と人望を集めたのでしょう…か???
ま、とにかく、この時代って大どんでん返しッ!が多い。
確かに、大将武将№2軍師皆々様、命懸けて頭捻るわけですから、それ相当の戦略が思い付きます。パッと閃いたのは寝る作戦。これを立てたのが、織田様です。
徳川さん(当時 松平 元康)が今川さん家で人質だった頃のお話ですが、今川さんは三河 遠江 駿河を牛耳ってました。さらに、今川義元氏は隣国 甲斐武田と、相模北条との甲相駿三国同盟関係を結んでいました。なんと!プロデューサーが僧侶…って、それもすごい。
僧侶という身分を使って外交に出向いて三国同盟作ったそうです。
※当時の軍師は、僧侶神官山伏、忍者らがやっていたんですよ。
さて、話を戻して、この今川氏の名軍師 雪斎様が居られるので、今川攻めはなかなか困難。
「ただ…ちょっと待てよ。もうそろそろ…」はい、そうです。雪斎様が高齢で亡くなります。これは、絶好の機会だ!と織田様が言ったかどうかは知りません、その5年後です。
桶狭間の戦い。
「今川を討つべし!」と旗揚げする織田様。でも、さすがの三国同盟は、キツッ。
いかがなさいますか!?と詰め寄る家臣重臣を前に、
織田様「…寝るわ」
え゛…と、家臣たち唖然とします。だって、軍議も開かず、床に入ったぁ!?
ちょっ、ちょっと待って下さいよッ!
パタ…ンッ
小姓たちが気を利かせて、戸を閉めます。
俺たち…明日、どうなるんだ?と焦る家臣たち、しかし、大将が寝ちゃったから、
「ま、寝よ」と寝たら、
パチッと目が覚めた、早朝4時。
心と落ち着かせんと 幸若舞の『平 敦盛』を舞うんです。
※舞は装い、演技するだけでなく、心を落ち着かせるという意味でも武家たちは習いました。女子たちも殿方の御心を癒し慰めんと舞を習ったといわれます。
舞って満足したのか?具足を着けて、
織田様「いざ行かんッ!」もちろん、付いて走るのは小姓たち。思いっきり走ります。
だって、織田様の名馬…はぇッ。
それを見て、家臣たちはびっくりです。寝ぼけ眼で、なぬ?って。
「遅れを取ってはならぬぅ」本陣へ突入ッ!
戦が終わって、ホッと一息、勝ったから良かったものの…
うちらの大将って何考えとるか分からんッ!と当然そうなるでしょう。
そうです。分からないようにしているのです。
この時代、敵にも誰にも悟られてはならないのです、己の考えを。
だって、味方の中に、スパイ(内通者)がいたもん。
軍議の決定事項がツーツー抜け抜け、こちらの機密があちらに全部通達されるわけです。
何のための機密よッ!機密だってんだから、秘密にしろッ!って、思います。
昔の密告者はよくもまぁベラベラとしゃべって、文字を暗号にして情報漏洩するわけです。今世がそんな時代の人じゃなくて良かったと思います。
この時代の織田様って…少しお淋しそうに映りました。
腹割って(本音で)話したいよなって。
誰でも、そうかと思います。
本音を吐き出せる人と場所って、必要です。

ま、そんなこんなで、本編に戻ります。

源は、水神

2011-09-29 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
その頃、能舞台で、キュッと髪を一つに結い上げ、兄上と服を取り替え男装してっと、
義隆に礼儀作法や所作、舞を教えていた。けど、そろそろ…、
能子「この辺にしよっか?」義隆の足が付いて来なくなった。
義隆「う…ん」と、ずーんと沈んで「どうして?」ポーン、と不貞腐れた態度で、疑問を投げ掛けて「父上が…やれって」ぷくぅと頬を膨らませ、ご立腹。
強くなりたい、稽古つけて欲しい…なのに、舞…?なんで?そんな感じで、
能子「義隆…」困ったわ「あのね、今日のお稽古はね、太刀、振る、舞、っていって、」
義隆「たち ふる まい?」
能子「太刀構え、手の振り、足運び…太刀(たち)を振る形なの。兄に教わる前に準備をしていたのよ。いきなり、重たい刀を持っても刀に振り回させるだけでしょ」と言い聞かせたら、
義隆「ふぅ…ん」しゅ…んと一気に膨らんだ頬がしぼんだ。どうやら分かってくれたみたい。
「で、強いの?それ、」私の両脇にいつも差している刀を指示して「二本もある」
能子「これ…は見せかけだけで、模造刀…儀礼刀ともいうけど、刃がないの」ス…ッ、
義隆「あッ」
能子「ねっ」パッと、腕を見せた。
義隆「切れてない」
能子「本物の刀は、刃がある生き物なの。切る切られるに意味を持ち、持つ者の心結び、共にあらんとす…」刀を鞘に仕舞って、二本の模造刀を脇から抜いて、コトッ、床に置いた。
義隆「生き物…」じいの形見の刀を見つめて「これ、動くの?」
能子「心と共に動くわ」ふぅと刀の鍔(つば)を見たら「それ、久我竜胆ね」
義隆「こが…りんどう」

能子「村上源氏久我家の家紋よ。義隆は笹竜胆…源氏は代々水神、龍の神様を奉っているの」
義隆「りゅう…花が?」
能子「竜胆の花は、龍の爪って言われているのよ」
義隆「爪…」
能子「刀を、私に貸して」義隆から、刀を預かって「地上に降り立つ龍は心震えさせ、火となり水となり風となりし、その魂を試し育てん」シャッ、刀で横一線引いた。
ヒュ…ン、余韻が響き、止んだ「これが、龍の息吹よ」
義隆「息吹…」
能子「生きてるという証拠」ヒュ…と刀を振って「見てて。これが、龍の姿」

天の落とし子

2011-09-28 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
松殿「読み違いついでに…、義経、覚えてないか?三河で、私と会った事を…」
義経「三河…」には二回、7年前の三河 賀茂の葵祭(5月15日)と、瑠璃姫と出逢った…、
松殿「15年前、三河矢作の夏祭り、お前の隣に座っていた」
義経「源 兼高…」
松殿「祭りの日に、こんな…」袖から鼻高天狗のお面を出して「お面付けてなかったか?」
義経「ッ!?」
松殿「娘を義仲に輿入れさせ、生まれた子がお前の子とは驚いた」ザッと座り直し、
お猪口を「まぁ、父子水入らず、飲まんか?」差し出したが、
義経「断る。義父…瑠璃の父をどうした?」
松殿「どう…と言われても、成れの果ての行く末が天やら地やら…皆目見当が付かないな」
池田「まさか…」
松殿「人は、いつ病に伏すか…分からないものだ」ふぅ…と酒を飲んだ。
義経「義父に成り代わり、三河松平を落とした…?」って事は、
松平の伊賀忍(スパイ)…松尾さんと河合さんは、こいつの差し金…
与一が新田家の息女を嫁にもらったって小耳に挟んでなぁ
「あ…」アイツら、俺を煽(あお)ってやがった。
松殿「娘は、葵はどこだ?孫を返せ」
義経「返せってッ」
松殿「追われる身で、妻子を養えるか?」
義経「くッ」悔しいが、何も言い返せない…「だが、能子…妹は」
松殿「幼馴染の彼女は、」池田を見て「我らの手中にある」笑ってやった。
池田「え…」
松殿「…」九郎の喉元を撫でた。そうしたら、
“ロウノオンカタ、サカタ”しゃべった。
池田「この伝令、一体、誰に?」
松殿「私の娘婿で…」くいっと顎を上げて「彼女の許婚…」酒を飲み干し、
池田「ッ」藤原の手に落ちた「後、お願いします」急いで、彼女がいる能舞台に走った。
松殿「お前が…」池田の背を見て、すぅとお猪口を下げた「囮なんだよ」次は、お前の姉。
義経「囮…」狸に一杯食わされた。狙いは、初めから、能子だ。こいつら、清盛の血…白河法皇の御落胤(ごらくいん・落とし子)…“天帝の血”が欲しいんだ。

子は…まだか?

2011-09-27 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
松殿「驚く事もあるまい、もう62。これで、天皇は後ろ盾を失ったな」
池田「後鳥羽天皇(上皇の孫)はまだ幼い。それに、天叢雲剣も見つからないのまま…」
能子「…」確か、天皇は八つになったばかり。
平 時子様(清盛の正妻)が胸に抱いて、壇ノ浦に沈めた政権の象徴 三種の神器の一つ『天叢雲剣(あまのむらくものつるぎ)』が不在のまま治世を執られていた。これは、朝廷始まって以来の異例の事態で、密かに“藤原一門”が壇ノ浦の捜索に乗り出したと聞いたが…、
松殿「朝廷もお仕舞いだ。鎌倉(頼朝)殿に政権は移る※」
※これより、三年後1192年に後白河上皇は崩御され、鎌倉幕府が開かれます。
池田「しかし、源氏は“天皇家の血筋”…朝廷権力が衰退するとは思えません」
松殿「鎌倉殿のバックに北条(頼朝の正妻)と、比企(義経の義母で、頼朝の乳母)がいる」
能子「…」鎌倉殿に政権交代しても、世継ぎ問題、
松殿「後継争いで内乱が起きる」ふぅ…と能子殿を見て「ところで、子は…まだか?」
能子「…」子…?そういえば、2年半…それ以上、与一と一緒にいて出来て…ない?
池田「…」
“…養子を貰うの”
松殿「政権は交代する。どうだ、宮中に戻っては?藤原一門に嫁げば、安泰だ、ん?」顔を覗き込んで、答えを…、
バサッ、
能子「っとッ!?」突然、鳥が飛んで来て、そいつを避けたら被衣がズルと落ちて、
松殿「やはり、偽者…か」
“クーチャン、エサ、ヨシ、クエ、クーチャン”飛んで来たのはエサをねだる九官鳥の、
義経「やっぱり、アンタの伝令鳥…か」
松殿「九郎は人懐っこく、誰にでも懐く。困ったもんだ、なぁ」なでなでと九郎を撫でた。
義経「妙な名前付けやがってッ」←本名 源 九郎 義経です。
松殿「まさか、お前たちが手を組むとはな…服部」を見て「いや、重盛の重臣 池田…」
池田「ご存知でしたか…」目で、継さんを制した。彼が突っ込もうとしたから、
松殿「資盛(すけもり)の従者だという事も、調査済みだ」スッと刀を抜いて振り返り、
ねずみ小僧に刀を突き出した。
継「ととっとッ」両手を上げて「敵の手中だぜ?やんの?」
松殿「ふん」チン、刀を鞘に収めて「読みが、外れたか?」ちらりと、池田を見た。

九官伝令鳥 その名も九郎

2011-09-26 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
酒と肴に、偽芸妓。お囃子に合わせて舞を舞う。が…なんだ?その舞…ここは遊郭じゃないんですよ。さらに、とんでもない新米妓が二人現われ、酒を注ぎ、
ビシャッ、松殿「あ…ッ」酒をこぼした。
新米妓「すッ、すみませんッ」当然、すみかちゃんだ。
池田「…」おいおい、大丈夫か?場を和ませて口割らせる手筈が、逆に機嫌を損ね…、
松殿「まぁ、よいよい」新米妓のかわいい笑顔に機嫌を直し…、
池田「ホッ」と胸を撫で下ろした。本当に頼みますよ「チッ」と偽芸妓を睨み、新米妓から銚子を取り上げ「何せ新装開店なので…」場を取り繕い「どうぞ」松殿に注ごうとしたら、
松殿「す…」俺を避けて、お猪口を御方様に向けた。注げ、と。
能子「…」銚子を持ち、松殿に酒を注いだら、ちらりと、見えた。
松殿「その指は?」
能子「!?」(き゛ゃ゛ぁ゛~!)お銚子を御膳に置き、ササッと指を隠した。
池田「な…」何してたんですッ、その指ッ!真っ赤じゃないですかッ!
松殿「三人だけで…」パンパンッと手を打ち「話がしたい」お座敷から、
池田「ほ…」危なっかしいメンバーを下げた「ぐびッ」と酒を口に含み、口の渇きを潤し、
松殿「おい、服部(池田の偽名)…」箸で行儀悪いッ、上を指し示した。
池田「はッ」上を見上げて、
松殿「ねずみはいないか?」
池田「上…」には「いません」…が!?
松殿が座る上座の後ろ、掛軸が横にずれて、ひょこっとねずみ小僧「(つ、継さんッ)!?」
誰がここに忍び掛軸(裏通路の入口)作れって言ったんですッ!
松殿「そうか…」ふぅ…と顔がかげった。
池田「どうかなさいましたか?」と酒を注ごうとしたら、
松殿「いや…」また、遮られた。そして…「今朝方、九郎が戻ってきた」
池田「九郎…」というのは、上皇から賜った九官伝令鳥で、
松殿「息子から、」
池田「中納言様…」とやり取りをしている。(清盛)入道様の政権衰退後、松殿の長男 隆忠は中納言の官に就いていた…その息子様から「何か良からぬ知らせでも?」
松殿「上皇が、お倒れになったと」
池田「え…」、能子「!?」倒れた?あの、後白河上皇が?

因縁の幕開け

2011-09-25 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
本能寺の変から約400年前に遡り、1189年五月七日。
これから、松殿と掛け合うが、池田「いいですか?勝手な行動しない下さいよ」念をした。
能子「…」コックンと深く頷いたら、ズルッ、被衣がズレた。鼻先までズリ落ちて「ま、前が見えな…イッ」ガボッ、手で口を抑えられ、モガモガ…
池田「シッ」しゃべったら、被衣(かずい・身分素性を隠す頭巾)の意味がないじゃ…「ん!?」
弁慶と海尊が合図を出していた。サッと被衣を直し、
向こうから、松殿「お…」来た。
池田「珍しいですね。お一人ですか?」
松殿「あぁ。ちょっと、落し物を…な」
能子「…」(落し物?)
松殿「ん?」能子殿を見て「今日は、紫頭巾じゃないのか?」と被衣に伸ばし…、
能子「サッ」避けて、池田「あ…」後ろに隠れた。
松殿「随分と嫌われたもんだ」ふぅ…と手を引っ込め「義経の家紋…」笹竜胆の柄付頭巾を怪訝な顔で見ていた。だから、彼女から視線を逸らすため、
池田「紫頭巾は目立つので…。それより、お一人で、危ないのでは?」話を逸らした。
松殿「奴ら、戻ってなくてな」
能子「…」(奴ら…スパイ二人組…?)、池田「何か遭ったのでしょうか?」
松殿「長男追跡に、モタついてるんだろ」
能子「…」長男って…山寺に預けてる…息子で、
松殿「娘の行方も…」スッと目を伏せ…「気掛かりだ」
池田「そうですね…」チラッと後ろの御方様を見た。
能子「…」(娘…って、松殿伊子…つまり、松平の養女…葵、)
松殿「お前たち、これからどこへ行くんだ?」
池田「捕虜に、食事を、と思いまして…」スッ、チラシを松殿に見せ、
松殿「どうだ、家族ぐるみの付き合いだ。それに、お前にも話がある。付き合え」と言われ、
能子「…」(家族…?)
池田「は…」松殿の後ろに付き、御方様を気に掛けつつ、そのチラシの屋敷に入った。
松殿「松月花(しょうげつか)…なかなか、気の利いた名だな」と部屋の名を褒めたら、
仮女将「しょうでっか?」
池田「ッ…」面白くない。ここまでは計画通りだが、松殿の発言が気になる。俺に話…?

とある日の、小姓日記・岐阜

2011-09-24 | とある時代の小姓日記
奥方様の形見の黒髪だったのだ。
“たとえ天下を取ったとしても、妾は持たぬ”
明智様の愛妻家は有名だった。先妻 照子(てるこ)様は皆に優しく、配慮ある女性で、
蘭丸「…」今でも、愛していらっしゃる、と分かった。
ジーン、と鉄扇で打つ俺の手が鳴って、心まで響いて痛かった。
もちろん、これは、明智様のお心にも響いただろう。プライドの高い方でもある。
この事件がきっかけ…なのか、土岐氏族分家 明智光秀とその側近 斎藤利三(娘 斎藤 福は、後に春日局となり、家光の乳母になります)の策略で、
1582年 六月二一日、本能寺の変が起きた。起きるべきして、起きた事変で、
御屋形様の夢、天下布武(武により天下支配を終わらせ、泰平をもたらす)の道が、絶たれた。
本能寺を囲む、
蘭丸「明智の手のものです」
織田「是非に及ばず(仕方ない)」
蘭丸「…俺の、せいです」
織田「誰のせいでもない。逝くぞ」
蘭丸「はい」でも、俺は気付いて欲しかった。御屋形様の思いを…「無念です」
織田「お前が気付いた、それでいい」怪我をされた御屋形様は、本堂に向かわれ、俺は、
蘭丸「先に、逝きます」刀を抜いて「うぁぁ」走った。
泰平 平和のため、共に戦おうと約束したのに…悔しいです。
御屋形様が美濃を取り返されて、こう言われたんです。
織田「どうだ、蘭丸?」城の天守から城下町を眺め「これが、土岐さんの城で、」
土岐様が守護していた美濃の地…土岐(とき)様の故郷だからと、岐と阜(小郷)で、
「岐阜(ぎふ)城だ」御屋形様がそう名づけられた。
蘭丸「はい」城下町からの心地よい風を受けて「素晴らしい城からの眺めです」
岐阜…御屋形様が、明智様の先代御一族様を敬って付けた名…でも、御屋形様の思いは届かなかった。

ここから天下布武が始まったこと…気付いてもらえなかった。だから、
「御屋形様…先に逝って」ゴミ拾いして、きれいにして…「待ってます」

千歳の祈り空しく、白鶴の小姓 蘭丸「池…田様、気を、つけて…」ザッ、
俺は、弟二人と共に討ち取られた。
本名 森 成利(なりとし)享年17、ここで散る。

とある日の、小姓日記・故郷

2011-09-23 | とある時代の小姓日記
なんとしても、美濃奪還。それが、先代 斯波様の命であり、美濃の土岐さんの無念を晴らすためだった。酒を酌み交わしながら、その戦略を練ろう…、蘭丸「と!?」
「何のご相談ですの?」と顔を出された、
蘭丸「帰蝶(きちょう)様」マムシの道三こと斎藤道三の娘 濃姫。明智様の従姉妹殿で、
織田「おぉ、帰蝶」御屋形様のご正妻で「お前も入れ」と内通者(スパイ)を宴の席に入れる。
池田「美しい女性が傍に居られると、酒が進みます」にっこり笑って、
帰蝶「相変わらずね」とお酒を注ぐ…、両者ちゃらぁと平気な顔して、やり取りしているが、
蘭丸「…」織田スパイv.s斎藤スパイだ。彼女は、縁者と手紙のやり取りをしているんだ。
御屋形様は、それを逆手に取る算段で、これが所謂、心と気を働かせよという事なのだ。
どこにスパイが潜んでいるか、分からないからね。そういう環境下にいると、自然と人の心理を読む事に長けてくる。しかし、そんな中でも、家臣への配慮を決して忘れない。御屋形様が美濃奪還し、守護代となられてから、家臣の夫婦喧嘩の仲裁、また、
織田「珠(明智珠 後の細川ガラシャ)、お前に縁談だ」と、重臣同士 細川氏と明智氏の婚儀をとりまとめ、家臣、その縁者への心配りも細やかだった。
こういう細やかさは家臣・従臣にも求められる事で、それを欠くと、こういう事件が起こる。
俺の故郷 信濃が戦場となり、焼け野原になった。その戦に出ておられのは、
明智「我々も骨が折れました」この方、明智光秀様である。
俺にとっては…、蘭丸「く…」辛い。俺の故郷がメチャメチャになって、心が折れそう…、
バシンッ
「え!?」
そうなんだ。御屋形様は、こういう下の者たちの配慮を欠けた発言が一番お嫌いで、明智様を折檻された。それも…、
織田「蘭丸ッ」俺に鉄扇を渡し「これで、晴らせ」と明智様を打つように命じられた。
蘭丸「うぁぁ」御屋形様の家臣方々の前で、明智様を打った。
バシンッ
その時、ずる…
「あ…」
ボト…、明智様の付け髪(ヅラ)が落ちた。
織田「能無しガッ!光るのは禿げ頭だけか、光秀ッ!」→洒落のつもり言ったそうです。
酒宴では、ドッと笑いが起こったが、俺は笑えなかった。だって、あれは…、

とある日の、小姓日記・先代様

2011-09-22 | とある時代の小姓日記
織田「美しきを護らんとするが護美(ゴミ)よ。行く手(道)を阻む物を遠ざけ、潮の満ち干(ひき)を読め。それが、軍師の役目だ。わかったか?」よしよしと撫でられ、
蘭丸「はい」こうして御屋形様に可愛がられつつ…、
軍師としては、まだまだ、側近としても、程遠いが…小姓として、頑張る日々。
御屋形様は、俺みたいな小姓のみならず、家臣 重臣にも本気で怒る。配慮に厳しいのだ
さらに、少々所でなく、かなりスキンシップが激しくて、いきなり、羽交い絞めされて、
「イテェ」お手柔らかに…。
いつ、どこで、何をされるか?何が起こるか?
予測が付かないから、いつも気を配っていないといけない。
織田「出掛ける」と突然、外出命令が下る事も多々あり、
蘭丸「はい」待つのがお嫌いなので、いつでも出掛ける支度を整えてっと、
「どちらまで?」馬を用意、ドン、で、俺は走る。が、後れを取ると後ろに乗せられる…。
パッカパッカ、
織田「遅くなっちまったな。アイツ、怒るぞ」アイツというのは、
蘭丸「げッ」この方、池田信輝(のぶてる、または恒興)様。池田様のお母様は御屋形様の乳母でお二人は乳兄弟であり、織田様の家臣とは名ばかりで、その実、兄弟以上に仲良く…、
お二人が揃うと、
池田「迎えが遅いのでは?」きつッ。
蘭丸「す、すみません」昔からお二人はつるんで、何をなさるか皆目検討が付かない。だから、いつも肝を冷やす。ただ…池田様は厳格な方だけど、とてもお優しく、御屋形様と共に俺の故郷 信濃と、父(森 可成・よしなり)を守ってくれた。
それに、俺がこうして御屋形様にお仕えするのも、池田様のお力添えがあっての事で、
織田「例の件はどうなった?」例の…とは、鉄砲部隊の事で、
池田「娘にせがまれ…、高く付きました」その娘様は池田様のご長女 せん様…で、なんと!?女鉄砲隊長。そして、俺の兄 長可(ながよし)の正妻となられる方だ。(つまり、池田様は俺の義父にあたる)泉様は、美しいお顔で、かなりきつい。きっと、父譲りだ…。
織田「美濃を取り返したら、元とっておつりがくる」
池田「彼の無念を晴らしましょう」その彼というのは、森家、父の主君で美濃守護代の、
蘭丸「土岐様…」御屋形様の先代 越前守護代 斯波様と共に戦ってきた方だ。
父の信濃もそうだが、美濃も斎藤に奪われた。斎藤の支配が広がりつつある。