ひつじ草の挑戦状

色んな思いを綴ってます。

散華の如く~裏紋、水桔梗~

2013-06-23 | 散華の如く~天下出世の蝶~
三日三晩降り続けた雨は上がり、
キラキラと朝日に露珠が煌めき、
帰蝶「あ…桔梗…」
五弁で珠がユラユラ揺れていた。
方丈「晴れましたな…」
濡れた草履で外に出て、
どれにしようか生け花、
桔梗の首を選りすぐり、
床の間の一輪挿し用か、
茎の部分に刃物を入れ、
パキン、切り花にした。
水に活けられた桔梗は、
じ…と私を、見ていた。
気が付けば、
帰蝶「あ…」
庭に植えられた桔梗が、私を見ている。
咲き誇る我が一族の証しが睨んでいた。
母から受け継ぎ、私はこれを裏紋に使っている。
殿の木瓜紋の裏に咲く、私の印である桔梗の花。
花が一斉に私を取り囲み、私に刃を突きつける。
“全ては、この桔梗のため…”
かつて、我が氏族の祖、土岐様は、
兜に桔梗を飾り、戦い抜いたとか。
桔梗、散らさぬよう、
その首落とさぬよう、
我が氏族を守るよう、
家の印、家紋にした。
「私の…花…」
方丈「は?」
帰蝶「…泣いている」