ひつじ草の挑戦状

色んな思いを綴ってます。

男の口約束

2010-07-31 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
弁慶「讃岐って…」
佐伯「ほれ、お前の彼女、讃岐出身で一緒に行くんだろ?ついでじゃねぇか、なぁ?」
これで決まった決まったと一人で勝手に喜ぶ佐伯氏。さらに弁慶の意向を完全無視、口を挟ませず、一人で話を進めた。
佐伯「後から八十八の霊験所、教えるから山門(さんもん・お寺の正面門)作れ。いいなっ!」と命令した挙句「新婚旅行を兼ねた巡礼旅じゃねぇーか、えぇ?なんだその目は不満か?大丈夫だ!泊まりの宿なら気兼ねすんな。宿場のもんに気を使う?ように言っておくから、思う存分やれ!」
弁慶「…(誰がそんな心配したよ…)」と、しかめっ面したら鏡越しにその弁慶の面を見た
佐伯「んだぁ、その目は!?もしかしてイヤらしい事…考えておるなっ。いいのうぉ、若いのうぉ。このぉ幸せ者ぉっ!」と勘違いしていた。さらに暴走と妄想が止まらない、
佐伯「もっぱら評判の嫁じゃねぇか。大切にしろよ。わしがもう少し若ければ嫁に貰うがな。まぁ、磯乃さんとチィー(茶)で我慢するかぁ。あっはっはっはっ」と豪快に笑っていたが、磯乃さんが気を悪くする…、
弁慶「…(辛かったろうな、せっかく出産の手伝いで鎌倉まで来たのに…)」と、お義母さんの磯乃さんの心中察して目を伏せた。ら!?
佐伯「なんだ、その目は不安か?お前なら大丈夫だ!そのための弁慶の七つの大工道具じゃねぇか。宝の持ち腐れになっぞ。それに、その腕を買って八十八の山門作りを頼んでんだ!」と、あまり人に物を頼む態度じゃないと思ったが、弁慶は黙々と佐伯氏の背中を流していた。
弁慶「…(どっから彼女らの話を聞きつけた?)」と考えて、ハッとした。
磯乃さんは磯禅師という名で通っている有名な白拍子の先生で”佐伯氏と同じ讃岐出身”だ。しかし、鎌倉にいるはず…と思い、
弁慶「お義母さんとどこで…?」
佐伯「おぉ♪もう、お・か・あ・さんって呼んでるのかぁ!そっか、仲良くやれ」
弁慶「だから、どこで?」
佐伯氏「あん?御髪おろす「剃髪の儀」を鎌倉でやった。そん時なっちっと話した」
弁慶「剃髪の儀、佐伯さんがしたん?」と訊ねたが、
佐伯「さ、これで俺は上がる!裸で交わした男と男の約束で二言はないっ!いいなっ」と念を押し、きれいに洗い流された背中と口約束成立に大満足して風呂場から立ち去った。
全く強制的一方的としか言いようがない口約束であるが、逆らうと面倒だから従う事にした。

追放

2010-07-30 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
佐伯「おい、背中を流せ!」とくるりと背を向け、くいっと一回人差し指を曲げただけで、でっかい図体の弁慶を手玉に取った。そして、洗い場の空いている所にどっかっと座り、くいくいと二回人差し指を曲げて、自分の背中を指し示した。いい感じの立派な背中だろう?みたいな態度である。しかし、自慢するにはそれだけの勲章があった。どんな山奥で苦行荒行水行護摩行をしたら、こんな傷だらけの勲章が作れるんだろうと思っていたら、真相を教えてくれた。どうやら、佐伯氏の修行全盛期、薬草 薬湯などの原料 生薬の研究が進んでいなかった。従って、傷はツバをつけて地道に治していたらしいが、背中の傷まで手が届かず、ツバを付けられなかった…ので、背中の傷は勲章として残っただけだというのだ。
弁慶「…」そういう傷だらけの勲章なんていらないから苦行荒行をサボっていた弁慶だった。
弁慶のサボり癖は幼少期からであり、幼少名「鬼若」の異名通り、あまりにも乱暴横暴な素行の悪いガキ大将で近所の悪ガキどもを束ねて、器物損壊文化財破損破壊を繰り返した。
そんな悪ガキに手を焼いた弁慶の母は紀伊(和歌山)田辺の出身であることから、良い子になるように?はたまた見放して?高野山山岳修験部に無理やりにでも入部させようとしたが、
佐伯「残念だが…」手の掛かる奴は嫌いだ!ときっぱり断られた。
その手の奴は同僚の最澄さんに任せることにして無理やり比叡山岳部に入部させた。最澄さんは入部を断固拒否したが、佐伯氏の特権で勝手に入部届けに[印]が使われた。
修行をサボる弁慶に手を焼いた最澄さん「京に行って鞍馬(鬼一法眼)の弟子(義経)を打ち負かして来い!」とまんまと弁慶追放に成功したが、義経(当時 牛若丸)に打ち負かされた弁慶は義経の傘下に入った。その後、弁慶・義経 共々、鞍馬が追放したと聞いた。
※義経 皆鶴姫を通じて「兵法」窃盗実行犯と弁慶 皆鶴姫夜這い&懐妊疑惑の罪である。
どこへ行っても追放される奴で「やれやれ…」と思いきや、今度は弁慶の隠し子の疑いある海尊が最澄さんの弟子 円仁(えんにん)さんの山寺(立石寺)に勝手に預けられたので心配になって見に行ったら、海尊は自ら出て行った…と聞いた。
佐伯「ふぅ…」と一安心と思いきや、
お前ら8人こぞって円仁さんとの山寺に向っているっていうじゃねぇか!?伝説上の海尊率いる8人衆が山寺へってお前らのことか?と真相を探りに湯治部で待ち伏せしていたという。
弁慶「伝説?」
佐伯「ま、いい。それより、お前、うどん、好きか?」
弁慶「あん?好きだけど…?」
佐伯「よし、決まった!祭りが終わったら讃岐うどんを食いに回れ、な」

佐伯氏

2010-07-29 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
汚い荷物と臭い干物が散乱する部室の片隅で老大師に酔わされ潰れたフリをしている部員は「う゛っ」と嗚咽くフリをしてトイレに直行し、トイレで吐くフリして風呂場に向った。
こうして老大師から脱げる策を講じたのだった。
その知能犯かつ法螺吹き担当の弁慶は、念願の泥風呂に入ってゆったり寛いだ。
弁慶「やれやれ…」老大師から解放された…と思いきや、逃げれば追われる立場となる。
さて、部員が一人また一人と減ってしまった部室内で一人取り残されても酒盛りを続ける老大師が、いったいどんな権威のある健胃な酒豪の大師様なのか?と問われたら、かの有名な讃岐出身の紀伊山岳修験部理事長 兼 真言密教連合会会長の「佐伯氏」としか言いようがない。それ以上、筆者 松郷は知らない。その佐伯氏は各有名山岳修験道に入った者、及び、真言密教連合会員やそこらへんの登山愛好家かつ山岳部部員らは、全く逆えないほどの地位と名誉ある高僧だ。佐伯氏の寺には有名武将らがこぞって霊廟を建ててている。そういうド偉い方なので、これからは敬意を表して「佐伯氏」と表記することにした。その佐伯氏はとんでもなく勘が鋭く、逃亡した二名が逃亡の常習犯だとすでに知っていた。噂で。
佐伯「さて…」すくっと立ち上がり、軽やかな足取りで風呂場に向った。
佐伯氏は酒というアルコールを風呂で抜く術(すべ)を体得しているのだが、いくら呑んでも酔わない体質(たち)で意味のない術だった。その他にも数多くの術を体得しているが、それは若い頃の武者修行と荒行の成果だ。中国大陸に渡り、そこの色々な技と術を会得して帰国。その後、国内向けに改良とアレンジを加えオリジナリティ溢れる日本独自の技と術に変換して各地広めた人物である。しかし、一般ことわざでは「書道家」として知られる佐伯氏だ。
佐伯氏は筆を選ばす何でも筆にして墨をつけて書を認めるが、時おり、筆を誤る。誤りを書き直すのが面倒だからと!?誤った文字にピッピッと二本線を引いて訂正の文字を隣に書いて提出していた。そこから偉人もいっぱい文字の誤るんだからNot偉人らはもっといっぱい間違ってもいいんだ!と安心させるようなことわざが生まれた。この佐伯氏が誰だか判明した所で、鹿と一目散に逃亡を図った富樫はほっといて、ほっとけない同僚の弟子 弁慶を追った佐伯氏は風呂場の脱衣室に入った。しかし、全く気付かない弁慶は次にサウナに入り熱くなっていた。するとそこへ、ガラ…と戸が開き、静かにゆっくりヒタ ヒタ ヒタ、ヒタ ヒタ ヒタ…とサウナの弁慶に近づく足音…ピタッと止まって、
佐伯「わっ!!(みぃーつけた♪)」と暑かった弁慶は一気に急速冷凍、カッチンと固まった。心が凍り付いただけだ。実は弁慶…その手の怪談話が、超がつくほど苦手な超怖がりなのだ。

部活動

2010-07-28 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
さて、ここ数日間の部の実態と醜態は…、
真っ昼間から上半身は肌同然公然わいせつじじぃと言ったら、巷じじぃが「そんなじじぃと一緒にするな」と気分を害してクレーム出すだろうから、じじぃの域を越えたさらにじじぃの老大師にしておく。その老大師が、にょっと顔を覗かせた缶ビールを一本取り出し、ぷしゅっ…シュワシュワシュワッと泡が吹き出した所に口を近づけ、ずずずーと音を出して吸って、ゴクゴク呑んで、
老大師「ぷはぁー。で、どこの部?」と親睦を深めるため、隣の部に顔とビールを出す。
すると、老大師だから一応は敬おうと「どうぞ…」とつまみを奉納。もちろん、奉納されてないつまみの品々も己の特権でつまみ食いする老大師だった。
老大師「ほれ、こっちのつまみも活けるぞ」と他の山岳部から貰ったつまみを差し出す。
それは、パックから取り出し数日たったカッピカッピの干物で酒のつまみだった。多種多様なつまみを一つにまとめた皿をぬぉっと差し出し、それぞれの臭いでフュージョンといったら格好良く聞こえるが、臭いが混じって融合された悪臭の漂うつまみで、部員は鼻をつまんで食っていた。これを残飯整理というのかもしれないな。
こっちの部あっちの部どっちの部?か全く分からなくなったつまみに、
老大師「面倒だ!」とテーブル一つだけ残して片付けさせ、大量のつまみを一つのテーブルにまとめさせた。これも老大師の特権でパワハラだったが、もうそれに付き従うしかない部員らだった。実は、湯治部に入ったからには各地山岳部員でなくても吸収合併を余儀なくされる。互いに一つのテーブルを囲んで、つまみ食いと雑談で親睦を深め誰がどこの山岳部でどこ出身のどっから来た部のもんか分からなくなったしまったが、一応自己紹介して、
老大師「ほっほぉ~。そうか、君が、あの富樫くんかぁ。噂には聞いている」と噂を知りつつ顔と名が一致しないで、誰が誰だか分からない。何しろ部員が多すぎて顔が広すぎる。覚え切れん…というわけで、
老大師「そこのお前っ!ビール買ってこいっ」と自己紹介したばかりの富樫はお前呼ばわりされ、パシリ扱いされる。そのパシリの富樫は「北辰妙見流 占星術師」といえば聞こえが良いが、ただの北斗七星と北極星を中心とした星占いが得意なだけで良からぬ近未来は予感直感で当てる力があり、さらに、あの時の酒盛りがトラウマになっているから不満と不安が過ぎり、ビールを買いに走るフリして、この場から脱げられない山岳部員に、
富樫「先に男鹿(おが)に行ってる…」とこっそり告げて、その場からペットの鹿に乗って逃亡した。一人取り残された部員は、酔い潰れ寝ているフリをしながら逃げる術を考えた。

湯治部

2010-07-27 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
義隆に身長と目線を合わせるように、ちょいだけしゃがんでこっそっと「もう少し聞く方の身になり相手の気持ちを考え気分を害さないような物の言い方をしろよ」と注意した。ら!?
義隆「大丈夫っ!父上のようにはならないから」クルッと背を向け、親指を突き立て、皆の許に戻って行った。たたかたったたーと足早に。
あんだ!!その態度は!この俺様 父上様に背中を向けて早々に立ち去るんじゃねぇ!
義経「俺の背中を見て育てっ!!」と息子の背中に向って叫んだ。が!?返答はなかった。
いっぱしの父親として息子に認められるように頑張るよ…、郷(さと)。と正妻に誓った。
そんな小さい事でしょげてられないから皆の許に戻って荷物持ちの力持ち弁慶を探したが、
海尊「んん~(/O.O)?おっちゃん(弁慶)ら居らんぜ?」掌を眉の上に添えて、目を皿のようにして辺りを隈なく探索したが、地獄の一歩前に奴の姿はなかった。
義経「先に地獄に入ってんだろ、俺らも行くぞっ」と先頭切って地獄の底に向う階段を降りた。その底に入浴料を支払う事務所「湯治部 受付事務所」があった。
海尊「おぉっ!すげぇ入りてぇ!」と入部の意欲満々だった。
義経「そんなに入りたいか?湯治部…」その[求む、新入部員!大歓迎、新規会員!皆で『湯治部』に入部しよう!]…うんたらかんたら細かく入部得点を明記した勧誘チラシを見上げて言った。入部の意欲を見せた海尊は早速案内パンフレットを事務所で貰っていた。
そこで、義経はこっそりパンフレットを盗み見た。
義経「地獄の部活ってどんなんよ…」しごかれんのヤダぜっと。そこへ、
かちゃ…と、後ろの扉が開いた。「ん?」と二人で振り返ると三人の老女が誠にスッケスケ~した寝巻き姿で首にタオルを巻きつけ『湯治部』プレートの付いた部室らしき部屋からゆっくりのったり登場した。その部員らしき老女三人を見つめ、
海尊「…もうちっと年取ったら(入部を)考える…」と入部の意欲を激減させた。
腕を組み何か「んん…」と考え込むフリをした17歳 海尊は老女らとどんな会話で弾めは良いのか少々所でなく全くといって良いくらい分からないようだった。腕組を解いてパンフレットを「じ…」と見つめ直し、それをクルクル~と乱雑に巻いて懐に仕舞った。
ゴミ箱に行きだな。そして、入部はないなと思った。
どうやら、この部は各地方各部共同で使用する部室らしく、それぞれの部活名及び氏名が書かれたクーラーボックスが並び、持ち寄った食料品や地元産の野菜とそこらの採れた山菜が朝市のように並んでいた。自活自炊の部活らしい。さらに、どこかのコンビニかスーパーのレジ袋の中にお菓子やつまみがぎゅっぎゅっと詰め込まれ酒やビールが顔を覗かせていた。

占い

2010-07-26 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
違う、違う。そういうハイジなイメージじゃなく、軍旗の上に鳩が乗っているイメージだ。
「飛べ」という司令と「止まれ!」と指示を真に受けた鳩が、二本の軍旗の内どちらか一方の旗に乗る。その鳩が旗に乗っかった方の軍に軍配が上がるという古来「鳩占い」が由縁で[八幡]と漢字(縦書き)になった。が!?元祖は鷹だ。最近で似通った占いをあのタコの奴がやってた、な…パウル君だ。天賦の才!?というと聞こえはいいが、ただの動物的本能の野性から来る鋭い直感(勘?)と目視力で勝敗を決める占いだ。もちろん、所詮はただの占いで何が起こるか分からない戦である。外れる時も多々あるさ。こうして戦が起こると占いが流行し、各地戦地で戦勝祈願の武将系神社が建設ラッシュを迎え、ついでに負傷兵を癒す薬が全国に広がった。そんなところの瑠璃姫と義経の神さんの関係だ。って、こんないい加減な説明で納得してくれますかね?読者の皆さん…と、読者にここで訊ねた所で返答はない。一方通行コミュニケーションだな。よって、話を先に勝手に進めるが、
義経「まったくお前って、座って三つ指ついて男に付き従ってくれるような古風な俺好みのタイプの女じゃなねぇな。絶対に妾にしたくないタイプの奴だ」
海尊「じゃ、正妻か?」
義経「いらんっ!」即答だ。俺にも選ぶ権利があると思った。が!?
冷泉院「願い下げ…」と静かにそう答えてくれた。選ぶ権利はそうそう与えられないらしい。
義経の婚姻関係は、感性性格の相性と階級的身分血縁重視の御縁と深い遊女との因縁で成立した婚姻が多かった。狭い世間と世間体と遊郭で口約束した遊女との婚姻ばかりで、そういう深い因縁で結ばれた正妻妾らに対して何の不満があるのか?と問われれば、そう対して不満もない。皆それぞれ普通に特殊能力を持ち性格と気性の荒さが全く異なり、退屈してない。
毎日のようにハラハラドキドキの結婚生活で「もう妾はいっぱいいっぱいだ」とツラツラ思い出を回想しながら冷奴と言い合いし、くねんくねん道なき山道を歩いていたお陰か出立前に瑠璃姫から貰って飲んだ不味い薬の効きが良いのか分からないが酔わずに曲がりくねった山道を抜け、硫黄な臭いの出所 地獄谷温泉「後生掛温泉」に着いた。
義隆「うぁ!臭い!!」
義経「…(旅館の人が聞いていたら、目目つけられるぞ…(@_@;))」と危惧した。
最近、思ったことを一瞬のうちに判断せず、上下身分年齢を考えもせずパッと心無い言葉を口にするようになった義隆で、
義経「義隆、ちょっとこっちへ来い」と、人気のない場所へ誘い込んだ。
もちろん、女子らの前で注意勧告を促すのは、男子的にイヤかな…と配慮してのことだった。

金比羅さん

2010-07-25 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
義経「d(*O*)/!$+@#、&*&+!(=x= *)!!」
(顔に泥を塗たくって、その高いプライドと一緒に泥を洗い流して来いっ、冷泉院っ!!)と声に出さず口パクしたら、それを読唇術で読まれた。
冷泉院「義経…そのドロドロしたイヤらしい心を泥と一緒に流しておいで」と上から目線で頭を撫でられ、優しく諭された。よーし、よしと。
義経「ていっ!!!」俺はお前の忠実なる下僕か犬じゃねぇ!と長くて細いきれいな手を払い除け、身長差約30cmの冷泉院を見上げて、キッと睨んだ。が!?
義経「くそっ、首がいてぇ…」出来るなら視線を落として目を細めた半眼で見てやりたいが、身長差のためにそういう事が出来ないのが現実だから、今ただ目を閉じて己の心を内観する「瞑想」をした。そして、こんな美人を見上げなければならないという身長差とこのいい様にあしらわれナデナデされる屈辱を同時に味わっていた。
義経「あ゛~」瞑想にならないじゃないか!
こういう自分の心を理解してくれない冷泉院の優しい口調でズケズケと心に矢を突き刺してくる所が食えない所で、いくら一般偏差値よりかなり高い頭脳IQで色白美肌の長身でスタイル抜群のきれいなお顔立ちの遊女だからって絶対に口に入れたくない源氏名 冷奴だ。
こんな美人に無防備に見た目と先入観だけで突っ込んでいく男が見たいな。後から痛い目を見るのがオチだ。こんな長身美人と釣り合う男の身長を考えてみたら、巷にゴロゴロ点在するはずもなく、なんて狭い範囲かと思う。ほれ、だって身長差だって女を選ぶ選択肢の一つだろと思った。が!?違っていた。屈辱の身長差を越えて遊女 東っ子(瑠璃姫)を愛妾にしている自分がいる。しかし、手も足も出せない瑠璃姫だ。
命の恩人で尚且つ滅法気が強く、向こう大陸から伝来した気功の使い手で大の男をぽいと軽く投げ飛ばす。刀を使ってもおそらく太刀打ちできないほどの女で手を出すとかなりの確率で飛ばされる。飛ばされる理由は気孔だけじゃない。実は、薬師瑠璃光如来様って…
日本各地に点在する7800以上の源氏氏神の八幡神「宮毘羅(クベラ)」が守護する神さんで「飛べ…」と派遣された十二神将の一人で別名「金比羅さん」ともいうんだ。
日本各地から薬師を守るために「飛べ…」って、それ左遷じゃねぇ?と思った。
ここで確認するが…覚えているか?読み飛ばしてないか?意味が分からなかったら50ページほど戻ってそっちから読んでこっちを読んでくれ。“八幡”の神使 双鳩のこと。
「金比羅さん」は、平和のメッセンジャーである双鳩の足に糸を括り付けて、ハイジみたいに空中ブランコで海から渡って来た秦(はた)の神だ。って、アルプスの少女ハイジって…

2010-07-24 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
水芭蕉の群生地を抜けると、いかにも怪し…と感じる何か出そうな雰囲気の山道に出て、
義経「本当にこの道でいいのか、海尊?」
海尊「知らねぇよ。戻って松尾さんに聞けよ」と、松尾らが教えてくれた道を疑いながら、怪しい道を進んだ。
義隆「ん?なんだか臭うぞ!」と、近づくイオウな臭いで分かった。
この道が正しい、と。
地球の血脈に流れる血液といわれる温泉が湧く活火山地帯の地獄谷から吹き出す硫黄な臭さで表現が悪いが、鬼さんが「はぁ~」とまるで嫌がらせのように口からわざと臭い息を吐いたような感じだ。が!?それでは鬼さんが気を悪くし、心の病で引き篭もってしまう。
訂正しよう。
この臭さは地獄の谷底の蓋を鬼さんが開ける時の臭いで別に悪いのは鬼さんの口臭ではない。つまり、鬼さん手動開閉型の谷底蓋で地球の生命誕生からの大地の息吹の臭さだ?
義経「あまりにも臭いな…何か詰まってんじゃねぇ?」その地球に詰まっているものが長い年月かけて人間が詰め込んだストレスで、その大きさに危惧している所だ。
いつか爆発(噴火)するぞと思ったが、その地獄は活火山でいつ噴火してもおかしくないが、人間の中には地球の硫黄臭い息吹と熱い血潮のマグマで沸かされる温泉が好きな奴がいる。その一人が弁慶だ。先に入った地獄で毛穴に詰まった脂汚れを除去しデトックスして古傷の治療に専念して湯治しているはずだ。
顔に泥を塗るとプライドが傷つき、肌に泥を塗りこみミネラルたっぷりで体の傷は辛うじて癒され、元気を取り戻すという矛盾した考えで申し訳ないが、そういう泥温泉「後生掛温泉」だ!?その泥でプライドの高さと心傷生傷の深さをさ(差)を埋める泥の効果には個人差があり、時間的な誤差と傷跡が残る。なるべく時間をかけてゆっくり湯治してもらいたい心体だ。
人間は個人に「差」をつけると弱く、即効性にも弱い。その心の弱さから「即効性のあり」という魔法の泉を見つけたら、結構な人数が飛び込むだろうが、飛び込む前に準備運動してくれ、体がビックリする。ゆっくりそろーと滑らかで「でろぉん」とした泥湯に浸かり、肌に潤いを与え、たっぷりなミネラルで肌理細かい美白肌をゆっくり時間かけて作ってくれ。
しかし、時間を掛け過ぎると老化で肌の対応に遅れが生じる。こわいな…。そんな老化防止アンチエイジングに効果ある温泉水は、婦人らの生理前症候群やホルモンバランス急落落差の何たるかにじんわりゆっくり利くらしく、そんじょそこらの美女らに人気が高い。
そこで、くいっとあごを上げて、

竜胆

2010-07-23 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
冷泉院「おすてさん、幸せ者ね。こんなに愛されて…」
瑠璃姫「松尾さんの気持ちが分かったから、出家したんでしょ」
松尾「さぁーなぁ~。女の気持ちって分からんわっ」
冷泉院「こっちだって、男の気持ち一生理解出来ないわ」
義経「お前は男の気持ちを理解しようという努力が足りないんだよ!」
冷泉院「分かろうと努力しない人に言われたくないわっ」
義経「ムッ!」
松尾「まあぁ~まあぁ~。俺もおすてと別れてから女の気持ちを考え始めたんだ」
河合「義経も女で痛い目に合ったら分かるさ」それで分からんかったら天然物の鈍感だ…。
松尾「この湿地帯を抜けたら鹿角(かづ)だ。ほれ、これ持っとけ」紙に包まれた粉を渡した。
瑠璃姫「ん!?これ、リュータンね」と苦そうな臭いに顔をしかめた。
生薬 リュータン(竜胆)は、古来日本のすっごく苦い胃薬だある。ここ岩手八幡平の伝説上の竜神様の胆で「不味い!」って誰が食ってみたんだか知らないが、そういう伝説の竜ではなく、ここら一帯夏から秋にかけて花開く竜胆(りんどう)のことだ。去年咲いた竜胆の根を乾燥させ、すり潰して粉々して湯に溶かして「竜胆湯」を作るのだが、解毒解熱効果があり風邪の初期症状に効く薬湯だ。ここは竜胆(りんどう)の生産量日本一で、なんと薬草 生薬取り放題で霊水飲み放題だった。瑠璃姫はその薬湯の粉を受け取り、義経らはそれぞれの水筒に密かに流れる松尾の霊水をこっそりたっぷり満タンにして、
義隆「ありがとうございます!!」と松尾芭蕉と河合曾良と霊水にお辞儀して礼を述べた。
義経「じゃ、また後で、な」
芭蕉と曾良は、ここ南部藩の特産の南部鉄器の製造工程から鉄砲の鉄部分をここらのどこかで鋳造しているという密告があり、俳句会「芭蕉会」のメンバーたった二人で温泉旅行という名目でここら一帯を調査していた。その調査を終われば「後を追うよ」と約束したのだ。
松尾らは、義経ら一行を見送り、小さくなっていく最後尾 義経の背中を見つめながら、
河合「義経の奴、竜胆の意味、知ってるのか?」
松尾「知らんだろ、あいつの事だから…」と溜息を漏らした。
竜胆は幾星霜何世代も繁栄する多年草である。源氏がその竜胆の繁殖力と花の意味「正義」を家紋と掲げるのは、義経の死後である。竜胆の花を愛した兄 頼朝が子孫繁栄を願い、源氏旗「笹竜胆」を掲げたとされる。その後、頼朝の従兄弟 木曾源氏方子息も竜胆の軍旗を掲げている。この竜胆の花「正義」が”義経”を表す事を、本人全く気付いていなかった…。

大火の改心?

2010-07-22 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
そこら詳しくは井原西鶴「好色五人女」のうちの一人、お七16歳の話が載っているが、放火罪で火炙りの刑となった。実は15歳と自己申告すれば刑は免れたのだが、お七「16歳!」年齢をサバ読まず、正直に16歳と答えて刑は執行された。その後、意中の男はそっちのけで女の未練とか執念とか怨念とかが黒い塊となって江戸中の男女カップルを恐怖のどん底に陥れた、という怪談だ。そういう未練や執念深さが悲恋に終わる原因ではないか?と推測したが、そんな怪談より、焼け野原の江戸と消失した自宅と芭蕉庵を方を見て、凹んで落胆した。
松尾「諸行無常…」形あるものいつかなくなる定め…。この頃から詠む歌が変った。
しかし、火事で失った家と心で仮暮らしともぬけの殻で、しばらくぼーっとしていたが、いかんいかん!しっかりせねば!と殻っぽになった頭と心に魂を入れ直し、自宅再建を図った芭蕉39歳は、おすて30歳がいないことに今更のように気付いた。
松尾「おーい、おすてぇ~」と探して回って、弟子の密告で見つけた。
命辛々おすてを救ってくれた甥(姉の息子)の家でひどい火傷を負った甥の介護のついでに一緒に暮らしていた。
松尾「え!?マジ?」と甥の火傷をこの目で疑ったが、真相を調べる術も無く…。
無常なのは何も形あるものだけでなく、おすての心と人の心もそうなんだと悟った。
家を空けることが多く、寂しさが募っていた時期でもあった。そんな時、わが身を挺して命を救ってくれた甥だ。ちょっといいなって思っても一緒に暮らすようになったんだろうと思い込み、彼女と別れた。こっちもいい女を捜そう!と思ったが、いくら色女に色目使われても、きれいな遊女に招き入れられる遊郭でも、
松尾「はぁ…(溜息)やっぱ、おすてがいいなぁ」と思ってしまい、密かにおすてを生涯心の妻とした。思うだけ自由だろ、ほっとけ。しかし、運命とは皮肉なもんで、おすてと偶然?ばったり再会した。その時は気まずくて、挨拶交わしてすぐ別れたが、その後、彼女から出家して「寿貞尼(じゅていあま)」になったと文が届いた。
松尾「何でー!?」と、この知らせにはめっちゃ驚いた。
おすてが何を思い、何を決意して尼となったか聞いていないが、ただおすての気持ちをもっと考えてやればよかったと後悔した。愛した女の気持ちの想像力欠如が招いた結果だ。
松尾「俳句は詠めても、人の心は読めなかった」と空を仰いだ。
ここに咲く水芭蕉のように人に触れられず、ただひっそり仲睦まじく生きられたら…と思い、ここへ来てはつかめない水芭蕉を眺め、天を仰いでは生い茂る木に阻まれ見えるか見えないかの空を垣間見て、おすての事を思うんだ。と、そんな思い出話を聞かせてやったら、