酒田の料亭から、新しく芽生えた命の瞬きにそぉっと手を伸ばし、
巴「子供…かぁ」子宮の辺りに置いた。まだ、実感が湧かない。
そんな巴に「大丈夫ですか?」と声を掛け、白湯を持って、女性が部屋に入って来た。
彼女の見事な黒髪を見て「黒髪のマリア…」土岐が守っている勝利の女神だ、と分かった。
「私には、もったいない通り名です」と苦笑いして「土岐の妻、照(あき)と申します」とお辞儀した。その拍子に、さらり…と横髪が垂れた「巴様がここに居られます間、身の回りのお世話させて頂くことに成りました」スッと頭を上げ、黒い髪の間から白い肌を覗かせた。
白に揺れる黒髪が美しく、見惚れていたら…、ドタドタドタッ、ワァと奇声と共に、ガラッと戸が開き、巴「よしたか」と、女の子が入って来た。
照「コラッ、珠。向こうで遊んでなさいッ」と叱りつけた。その珠(タマ)と呼ばれた、年のころ6、7歳の可愛らしい女の子は、
珠「はい、ごめんなさい」と利発そうな顔を向け、私に謝った。
義隆「ごめんなさい」一緒になって頭を下げたが、ブスッとした顔で
巴「クスッ」照れくさそう。女の子に目を向けて「あなたの子?」とマリアに尋ねたら、
照「えぇ」ほんのり赤くなり「実は、ここに、」お腹に左手を当てて、パッと右掌を開いた。
巴「え…」五人目?彼女を見て「頑張るわね」耳まで真っ赤にした土岐の顔を思い浮かべた。
照「はぁ…」と頬を赤らめた。そういうとこ、夫婦似るのかしら。
巴「なるほど」彼女が、私の付き人に抜擢された理由が分かった。
義隆「伯母ちゃんッ」と呼んで「与一兄ちゃん、話あるって」と生意気そうな顔を、こちらに向けた。その顔が幼馴染みの、若い頃の義仲に似ていて、
巴「その伯母ちゃんって、やめてくんない?」こっちだけ年食って…ヤだ。
小さい義隆の向こう側に映った義仲の面影を、チッと睨んだ。永遠の31歳が妬ましかった。妬んでもどうにもならない。分かっている。彼を通り越して三つも年を取ってしまった…。
「私も彼と話がしたいわ。彼を“呼んで”もらえる?」と義隆に頼んだら、
義隆「うん。”連れて来る”、珠ちゃん、行こッ」と手を繋いで、廊下を走って行った。
ドタドタドタ…、
照「廊下、走っちゃ、」と注意しようとしたら、
巴「連れて…来る?」
照「…彼、目がお悪いそうです」と、そう付け加えて、部屋から下がってしまった。
巴「…え」閉まった戸を「目が…悪い?」睨んでいたら、いきなりと戸が開いた。
巴「子供…かぁ」子宮の辺りに置いた。まだ、実感が湧かない。
そんな巴に「大丈夫ですか?」と声を掛け、白湯を持って、女性が部屋に入って来た。
彼女の見事な黒髪を見て「黒髪のマリア…」土岐が守っている勝利の女神だ、と分かった。
「私には、もったいない通り名です」と苦笑いして「土岐の妻、照(あき)と申します」とお辞儀した。その拍子に、さらり…と横髪が垂れた「巴様がここに居られます間、身の回りのお世話させて頂くことに成りました」スッと頭を上げ、黒い髪の間から白い肌を覗かせた。
白に揺れる黒髪が美しく、見惚れていたら…、ドタドタドタッ、ワァと奇声と共に、ガラッと戸が開き、巴「よしたか」と、女の子が入って来た。
照「コラッ、珠。向こうで遊んでなさいッ」と叱りつけた。その珠(タマ)と呼ばれた、年のころ6、7歳の可愛らしい女の子は、
珠「はい、ごめんなさい」と利発そうな顔を向け、私に謝った。
義隆「ごめんなさい」一緒になって頭を下げたが、ブスッとした顔で
巴「クスッ」照れくさそう。女の子に目を向けて「あなたの子?」とマリアに尋ねたら、
照「えぇ」ほんのり赤くなり「実は、ここに、」お腹に左手を当てて、パッと右掌を開いた。
巴「え…」五人目?彼女を見て「頑張るわね」耳まで真っ赤にした土岐の顔を思い浮かべた。
照「はぁ…」と頬を赤らめた。そういうとこ、夫婦似るのかしら。
巴「なるほど」彼女が、私の付き人に抜擢された理由が分かった。
義隆「伯母ちゃんッ」と呼んで「与一兄ちゃん、話あるって」と生意気そうな顔を、こちらに向けた。その顔が幼馴染みの、若い頃の義仲に似ていて、
巴「その伯母ちゃんって、やめてくんない?」こっちだけ年食って…ヤだ。
小さい義隆の向こう側に映った義仲の面影を、チッと睨んだ。永遠の31歳が妬ましかった。妬んでもどうにもならない。分かっている。彼を通り越して三つも年を取ってしまった…。
「私も彼と話がしたいわ。彼を“呼んで”もらえる?」と義隆に頼んだら、
義隆「うん。”連れて来る”、珠ちゃん、行こッ」と手を繋いで、廊下を走って行った。
ドタドタドタ…、
照「廊下、走っちゃ、」と注意しようとしたら、
巴「連れて…来る?」
照「…彼、目がお悪いそうです」と、そう付け加えて、部屋から下がってしまった。
巴「…え」閉まった戸を「目が…悪い?」睨んでいたら、いきなりと戸が開いた。