ひつじ草の挑戦状

色んな思いを綴ってます。

散華の如く~猿に、タヌキにキツネ様~

2013-06-04 | 散華の如く~天下出世の蝶~
藤吉郎「どぇりゃぁ、めめめめめ滅相もございませんッ」
誰が猿の妻に成るかッ!
帰蝶「それより…そなた、」
あの痴話喧嘩の夜、
「小堀と何の話をしておった?」
藤吉郎「んにゃ~市様ぁ、美しゅうなれましたぁ、と」
浅井家に嫁ぐため躾、嗜みを身に着け、
最近特に美しさが際立つようになった。
猿の鼻の下さらに伸びるのも無理ない。
「市様ぁ、市様ぁ…あぁ、嫁いで行かれるのか、くぅ」
拳をわなわな震わせ、悔しがるフリをした。
帰蝶「大の男が見っとも無い。たかが女子一人…」
五兵衛「だどもあん姫様、ちっとばかり違うでよ」
最初はぶぅぶぅ文句を垂れていたが、
私の護衛と聞いて、渋々お供を了承。
帰蝶「ちと、違う?」
猿の戯言を聞き流していると思ったら、
珍しい、市の花婿問題に参戦してきた。
五兵衛「だちゃかんのう(駄目だのう)」
この時、私はただ市の容姿に惚れ込んで、
猿が勝手夢想妄想しとるだけと、思った。
しかし、それこそ誤り。彼は本気だった。
それに気付いたのは、随分後からである。
帰蝶「何を言うとるか分からん、どういう意味か?」
と、聞いたら、
こそと耳打ち。
五兵衛「あんとこ、きぃつけぇ」
それから五兵衛は、私の傍をピタリと離れなかった。
帰蝶「…」
殿が私の護衛に五兵衛を付けた意味がここにあった。