『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第8章  クレタ離脱   47

2019-06-18 04:14:41 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 オロンテスが木札を詰めた袋の山の前に立つ、テカリオンに声をかける。
 『テカリオン殿、決済いたします。木板の計算書き通り、木札を渡します、受領されたい。運び役をする者らがきます』
 『はい、ありがとうございます』
 セレストスが数人の運び役をする者らを連れて姿を見せる。テカリオン方の船頭が浜の荷積みする地点に立って木札を受け取る。
 オロンテスとセレストスが渡す木札の袋数を数える。イリオネスとテカリオンが事の進みを見守る。
 テカリオンが受領した旨を木板に記して、オロンテスに手渡す。小麦の仕入れ支払い業務が完了する。
 テカリオンがアエネアスとイリオネス、そして、オロンテスに丁寧に礼を述べる。
 『大変に世話をかけました。ありがとうございました』
 『おう、決済の業務が完了した。すがすがしい気がするな』
 手をさしのべる両人、握手を交わす。
 『テカリオン殿、今日の午後のことだが、昼をすまされたら、こちらへ来ていただきたい。統領があなたと歓談の時を過ごしたいと言っています。よろしいですかな?』
 『承知いたしました。では、のちほどこちらにうかがいます』
 テカリオンがアエネアスに向けて手をさしのべる、固く握るアエネアス。続いてイリオネス、オロンテス、セレストスと握手を交わす、小麦取引業務が木札をもって、支払い、受領で完結する。
 テカリオンと船頭が場を去っていく、受け取った木札の量が並々ならぬ量である、納入に及んだ小麦の量の4分の1以上の量である。
 テカリオンと船頭、二人が言葉を交わす。
 『なあ~、船頭、彼らがやった仕事の成果が、あの木札の量だ。彼らの力の底が知れない』
 『そうですな、計り知れない力を感じます』
 この小麦の決済業務の始終に携わっていたイリオネスは、感慨に胸を突かれる、熱くなる、切なる思いがこみあげる。
 ここ半年、6か月余りを思い起こし振り返る。
 オロンテスのパン工房、アレテスの漁業部が稼ぎ出した収益である。
 この二つの事業部が稼ぎ出した収益が並みの収益ではなかったのだ。
 イリオネスは、その事をアエネアスに話す。
 『統領、二つの事業部が稼ぎ出した収益ですが、我々の予想、期待以上の収益です。彼らに大いに感謝しなければなりませんな。こんなに木札が大量にあるとは思っていませんでした』
 『そうだな、無造作に山と積んで、ほい!いるだけ持っていけでは、彼らの働きに礼を失する。彼らの長期にわたる厳しい働きの成果なのだ。大いなる感謝の念を持たねばならない』
 二人が話し合う、業務の成果を為し得た彼らに感謝の念を胸に抱いた。