『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  726

2016-02-29 04:17:44 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『おう、パリヌルス、作業の進み具合はどうだ?』
 『おう、オロンテス、ご苦労。少し前に取り掛かったところだ!明日、午前中には、この作業を終える』
 『ほう、まだ、序の口といったところか。袋の具合はどうであった?』
 『丁度いい、俺の考えた枚数を入れるのにぴったりだ!』
 『袋の枚数だが、あれで足りそうか?』
 『今のところ過不足は解らん。見ての通り、この量だ不足が予想される』
 『不足するようであったら、いつでも取りに来てくれ!工房の者に伝えておく』
 『解った!よろしく頼む』
 『パリヌルス、少し打ち合わせしたいことがある。いいか?』
 『おう、いいっ!』
 『集散所との交渉のこともある。そして、この木札の量だ、ヘルメスには乗りきらん。輸送手段をどうするかだが』
 『そうだな、オロンテス。集散所との交渉は、お前に一任していることだ。当方の都合で押し切ってくれ。すべて、こちらの段取りで進めるようにしてくれ。ドラクマ銀貨の受け取りについては、集散所の都合もあるだろう。木札の受け取りの数の念査といった相手都合もあることだ』
 『その件は、俺に任せてくれ』
 『おう、それでいい。キドニアへの輸送手段だが、この量だ、軍船を使う。キドニアの船だまりから集散所へ運ぶことも考えねばならん。輸送は明後日、使用する船は軍船、運びの人員もそれで解決できる。それから調査の件だが、買い物のことだ。お前、売り場を巡って、判断材料になる好適品を買い求めてくれ。木札を渡しておく。以上だ』
 『解った。実行あるのみだ。軍団長には、この旨、俺が伝えようか』
 『おう、それがいい!オロンテス、お前から伝えてくれ。俺は、今、ここから手が離せない』と言って、木札20枚の入った小袋を手渡した。
 用件を終えたオロンテスが、パリヌルスの作業の場を去っていく、イリオネスの在室を確かめる、彼は、部屋の戸口を軽くノックする、振り向くイリオネス。
 『おう、どうした、オロンテス、何か用か?』
 『はい、今、パリヌルスの作業の場を見てきました』
 『ほう、そうか』
 『報告、そして、打ち合わせておきたい用件があります。集散所との折衝の件、木札輸送の件、その実行と段取りのことです』
 オロンテスは、それらの件についての打ち合わせ内容をイリオネスに伝えた。
 『了解した。今、聞いた計画通りに事を運んでくれ』
 『解りました』

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  725

2016-02-26 04:52:46 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 イリオネスは、会議を終え、パリヌルスら三人にも作業指示を終えた。全体の動きが順調に推移するように目配りしていけば、いいと心を落ち着けた。
 彼は、彼なりに木札とドラクマ銀貨の交換比率について考えた。『俺もあの交換比率には驚いた。集散所サイドがどのように考えて、パン1個を木札1枚としたのか?』その決定ののプロセスを考えた。その決定要素をいろいろと考えた。あらゆるものの値段と比べてみて、これくらいが適当と決めたことに間違いはないはずである。理不尽な点があるとすれば、それはなんだろうと思案した。
 考えられる適正なパンの価格は、木札1.5枚であったかもしれない。そこで担当者は考えた、0.5枚という木札はない、だが、四捨五入的に考えれば、木札2枚となる。パン1個には、木札2枚の価値があるか、それは肯定できない。木札0.5枚はこの際はずしてしまおう。客は価値のあるパンを安く手に入れることができる、その喜びの方が大きい、そうであってこそパンが売れる、集散所にとっても理がかなう。
 『そのようなわけだ。パン1個木札1枚、それでいい!』としたのかもしれない。担当者の頭中に七捨八入の考えが働いて、パンの価格を決定したのではなかろうかと推察した。
 そこで彼は、パン製造者のスタンスでパン1個木札1枚について深く考えた。彼は、交易人テカリオンに支払った小麦代金のことを考えた。パン100個分でパン500個分の小麦を買っている勘定になる。小麦を粉にする挽き手間、練り手間、焼き手間、運び手間、売り手間のことを考えなければ、充分にひきあう原価である。まあ~、これはこれでよしとしなければならないかもしれない。『諸手間を抜きにすれば、我々一族が食するパン代がほとんど『ただ』ではないか』彼は、これは、これでいいと結論した。オロンテスがこれで納得するか否かは不明だが、いざという場合の説得の理屈とした。
 
 パリヌルスが部下7名を連れて姿を見せた。
 『あっ!軍団長、おいででしたか。ただいまより、作業のかかります』
 『おう、そうか。その袋に木札を詰めるのか、ちょうど、いい大きさではないか、始めてくれ』
 『ではーーー』
 パリヌルス一行は、作業を始める、手際よく作業が進められていく、間違いの発生しにくい段取りで作業が進められていった。
 その現場にオロンテスが姿を見せた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  724

2016-02-25 11:30:00 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 イリオネスが一同の目を見る。
 『ないようだな。統領、一同に言っておくこと、何かありますか?』
 『これと言ってない!』
 『よしっ!会議を終了する!パリヌルス、調査費用の木札を取りに来てくれ』
 『判りました』
 『では、散会する。次回会議は、明後日の夕刻とする、オロンテスのキドニアからの帰りを待って開く!オキテス、原価計算の算出、パリヌルス、木札の勘定についてだが、今日を含めれば3日ある。この期間で完了するようにな』
 『その予定でやります』オキテスが答えた。
 『パリヌルス、調査の件もそれまでに完了すること、いいな』
 パリヌルスがイリオネスに話しかける。
 『軍団長、木札の勘定の件ですが、今日の午後からかかります』
 『そうか、それなら、木札の収納庫の方へ行こう』
 二人は連れ立って歩き始めた。
 木札の収納庫は、軍団長の宿舎の内部を仕切って作られている。彼はその量を見て驚いた。並みの量ではない、木札の詰まった袋が庫内に雑然とではあるがぎっしり詰めこまれていた。
 歩きながら思案してきた整理方法について説明した。
 『軍団長、一枚の袋に木札500枚詰めとします。処理にあたる人員は、7名とします。明日の午前中には作業を完了させます。なお、使用する袋はオロンテスに言って、麦の空き袋を使用する予定です』
 『おう、それはいい。そのようにしてくれ』
 『出来上がった袋は、こちらの部屋に積んでいきます。よろしいでしょうか?』
 『それでいい!』
 『昼めしを終えたらすぐに作業を開始します』
 『おう、解った。あ~、それから、オロンテスに手が空いたら、俺のところへ来るように伝えてくれ』
 『はい、判りました』と答え、調査に使用する木札20枚を受け取ってその場を後にした。
 パリヌルスら三人にとって多忙の三日間が始まった。
 オキテスは、新艇建造の場に立って、原価計算の要領について思案している。彼にとって思考未踏の領域であるだけに慎重であった。基礎数字の条件設定をどのようにすればいいかを思案している。正確算出を命題として取り組むにはと脳漿を絞った。
 こまごまとした用事を済ませたオロンテスがイリオネスの宿舎に姿を見せた。
 『おう、オロンテス、来てくれたのか、ご苦労。木札のことだが、パリヌルスの予定では、明日、午前中に作業が終わるといっている。明後日、ドラクマ銀貨と交換するために集散所へ届ける。交換のための都合も相手にあるだろうと思う。明日にでも集散所側と段取りを話し合ってくれ』
 『判りました。ドラクマ銀貨と交換、受領の件、間違うことなく行います』

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  723

2016-02-24 05:29:37 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『了解しました』
 答えを返す二人。
 『この件についての統括責任は私が担当する。木札の量は、並みの量ではない、向こう三日くらいで作業を終えたい、そのように心得て作業をやってくれ、以上だ』
 『解りました』
 『第二番目の議題が終わった。三番目の議題についてやろう。議事説明は誰がやる?』
 『はい、私がやります』と言ってパリヌルスが手を挙げた。姿勢を改めるパリヌルス、一同の目を見る、口を開く。
 『いま、新艇の価格の決定について、我々は集散所に信をおいて、ことを進めている。集散所に信を置けるか否かが、問題であり、彼らが決める物の価格が信頼できるか否やである。オロンテスが言うのでは、パンの価格を決めた時のことを思い起こし、適正な価格を決めたかどうかを考えてみると、パン1個の価格が安すぎるのではなかろうかというのである。スダヌスとの会談を終えて、パン1個の価格の正当性を考えたと言っている。その意見を、彼の想いを聞いて、通貨を介しての物の価値判断を確かめたい。それをもって集散所の価格設定の信頼度を測りたい。その調査をやりたいというのが、三番目の議題の主意である。調査をする、解析する、その結果をもって、パン価格の妥当性を検討し、パン事業の採算性を考える、また、それをもって、集散所の信頼度を探りたい。そのための調査行動の実行を認めてもらいたい、ことは急を要しています。調査には、オロンテスと私が当たります。議決よろしく願います。以上です』
 パリヌルスの言葉を受けてイリオネスが答える。
 『お前が言おうとしていることは解った。オキテス、お前の考えはどうだ?』
 『調査実行に賛成です』
 『統領の意向は、いかがですか?』
 『俺も調査実行はやるべきと考える』
 『パリヌルス、全員が調査実行に賛成である。調査を実行してくれ。必要とする日数は?』
 『はい!調査に一日、集計に半日、検討、話し合いに半日、明日、明後日で完了と考えています』
 『いいだろう。即、実行してくれ』
 『解りました。費用として集散所の木札20枚くらい、いただければと考えています』
 『了解!この会議が終わり次第、渡す。一同、どうだな、会議で話し合っておきたいことがあるか?』

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  722

2016-02-23 05:14:19 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『解りました』
 イリオネス、そして、パリヌルスら三人は、アヱネアスの言葉を聴いて、深くうなずき、異口同音にて答えを返した。
 アヱネアスがイリオネスに告げる。
 『軍団長、新艇の原価計算に関する機序の構想を簡単に説明してくれ』
 『解りました』
 イリオネスは、新艇の原価計算の要領を説明する。
 『おう、一同、今の説明で原価計算の要領を理解したか?質問はあるかな、そして、このようなことを計算要領に加えたらといった追加事項があるようであれば言ってくれ』
 三人は考え込む、首を横に振りながら考えている。パリヌルスが発言する。
 『軍団長、話されたことよく解りました。追加事項はありません。原価計算に必要とされる事項が充分に整っています。この計算によって提示される数字の単位は、当然、ドラクマですね』
 『そうだ、提示する数字の単位は、通貨単位のドラクマとしている』と言って、三人と目を合わせ、互いにうなずき合った。
 ここまでのやり取りを終えて、ひと息つくイリオネス。彼の目は、何かを見つめている、遠くを見つめている、おもむろに語り始めた。
 『なあ~、お前ら、どう考えている?物を売る!これをどう考えている。これは、剣、槍など、武器の類を手にせずに戦う争いだな。規模こそ極めて小さいがオロンテスは、毎日、その戦場に身をおいている、アレテスも戦っている。そして、戦利として集散所の木札を受け取っている。今度は新艇をもって、この戦に挑む!お前ら、負けるでないぞ!勝利するのだ!』
 強く言い切る。
 『解りました!心します!』
 三人も強く答える。
 『では、次の議題へといこう』
 アヱネアスとイリオネスが目を合わせ、うなずきかわす。三人と目を合わせ話し始めた。
 『我々が日々の活動を通じて、蓄えた集散所の木札が膨大な量となった。我々が現在行っている業務を始めて、今日までの期間に蓄積した集散所の木札である。これをドラクマ銀貨に交換する。新艇の建造用材の決済も控えている。そして、これをもって我々が保有している資産の総括をする。私が総責任を担当して、オロンテス、パリヌルスの両人が責任担当としてこれを行う、二人ともいいな!』

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  721

2016-02-22 05:14:21 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 アヱネアスがここまで言って、舌で唇を湿らせた。
 『前置きはここまでとして、第一議題のひとつである新艇の建造と販売に関する施業方針を述べる』
 アヱネアスは、一同と鋭い視線で目を合わせた。
 『スダヌスとの会談の場で述べた『世の中をつくる立ち位置に立つ!』は、建国の大義であり、物事について思考する俺自身のスタンスでもある。ということは俺の決断を下す原点でもある。この想いを源として思考が展開し、構想を描き、決定して断を下している。この想いをもって、このクレタを眺め、新手建造事業の構想を発したものと理解してくれ。我々が定住するか否かは決しかねているところがあるが、クレタの現状は、文明が開かれ、そこに暮らす原住の人々が現在の社会を築きあげて、秩序をもって住み暮らしている。スダヌスを囲んでの会談で推察した社会発展の現状を俺なりに理解した。『こうであろう』と推考の部分をも含めてである。はたせるかなではあるが、俺なりに、この造船事業をこの地における、我々の未来像を描いての施業方針である。一同、このことを充分に認識して事に当たってもらいたい。この方針をもって事業関連諸事の具体策を計画し実行していく。これが俺の施業方針である』
 アヱネアスは、力強く言い切った。この言葉が一同の心にしみこんでいった。
 『諸君!ここまでの話、君らは理解してくれたか。質問はあるかな?』とイリオネスは問いかけ、一同と目を合わせた。
 『理解いたしました。質問はありません。話を進めてください』
 アヱネアスが話しはじめる。
 『おう、そうか。解ってくれたか。次へ話を進める。新艇の価格決定の件だが、その価格決定までには、いかばかりの曲折が予想されるが、我々として確信の持てる価格をもって、これを為さねばならない。それに必要なのは、新艇の原価をできるだけ正確に、これを算出して把握しておかねばならない。オキテス、オロンテスの二人が担当して集散所の担当者と価格決めに当たっている。当方としての新艇価格はこうであると、原価計算に基づく価格を算出しなければいけない。これについて俺の考えを述べる。チームを構成してこれに当たる。軍団長をチーフとして、オキテス、オロンテスの両名がこれに当たる。最終には、俺もパリヌルスも加わって、検討してこれを決定する。将来において、このクレタにおける船舶の建造、この市場の頂点に立つことを目標とする。いいか、我々にその力がある。新艇5庭の同時完成には、その力量のあるなしに関する市場の評価も含んでいる。自己評価でもある。事業の存続は、この自己評価で決まる。未来への扉を開くか、開かないかの自己評価と心得てくれ!』

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  720

2016-02-20 05:08:38 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『おう、お前ら、よく聞いてくれ!議題の第一番は、新艇の件だ。この事業に関する統領の施業方針であり、価格決定意向および価格決定作業機序である。第二番目は、我々の現有資産の総括である。パン事業を行い、魚の事業を始めて、それなりの月日を得てきている、その間に、蓄積した集散所の木札が膨大な量になっている。これをドラクマ銀貨に交換する。ガリダ方への決済の対処についても考えねばならない。これらについて討議をしようと考えている。次に、これら以外のお前らが提起する議題について討議をしようと考えている。以上だ』
 パリヌルスが口を開く。
 『判りました。第三番目には、集散所の信頼度について考えたいことです。我々は、今、集散所に全幅の信頼を寄せて業務を進めています。それでいいのかということです。オロンテスの言うのでは、パン1個の販売価格を決めた時のことを思い起こしての懸念です。その状況を解析して、物の価値判断を我らなりに把握するための市場の調査をやりたいことです。その調査結果をもって多角的に集散所の信頼度を理解してことを処していかねばならない、そのように考えています』
 『そうか解った。パンの価格決定の成り行きを解析、推考して、集散所の信頼度を考えようということか。パンの価格が正当であるか、ないかの判断のための調査をやるということか。解った。それを三番目の議題とする。それでいいな』
 会議の議題が決定した。アヱネアスが姿を見せる。一同が立ちあがる。
 『おう、待たせたな。諸君、おはよう!』と声をかける、一同が挨拶を返す、アヱネアスは所定の席に座した。アヱネアスの右手の近い箇所にイリオネスが座をとり、向かい合う形で三人が腰を下ろした。
 イリオネスが口を開く。
 『おう、諸君!日々、ご苦労。これより会議を開く、議題は、先ほど話し合った通りだ』
 オロンテスが木板に書き留めていた。
 イリオネスがその木板を引き寄せ、一読してアヱネアスに渡す、アヱネアスが目を通す、言葉を発する。
 『おう、これが会議の議題、順序か』
 一同がアヱネアスに注目している、アヱネアスがイリオネスと目を合わせる。彼は、継ぐべき言葉を述べる。
 『軍団長、解った』
 パリヌルスら三人と目を合わせる、口を開く。
 『昨日のスダヌスとの話し合いは、得るところが多々あった。オキテス、あのような機会を作ってくれたことに礼を言うぞ。交わした会談の内容に無駄な話がない、雑談もない、充実した話し合いであった。得るところも多く、この俺が聞きたいと考えていたことも、あの場において聞くことができた。何としても必要な機会であり、有意義な会談であった』

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  719

2016-02-19 05:23:28 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 朝めしを終えた彼らがイリオネスの宿舎の前に顔をそろえた。
 パリヌルスが戸口に立つ、イリオネスに声をかける、すかさず、姿を見せるイリオネス。
 『おう、お前らもう来たのか、早いじゃないか。朝めしを済ませたのか?俺はもう終わる、少々待ってくれ。今日の会議は、統領の宿舎の前庭でやることになっている。木板四、五枚と木炭を準備しておいてくれ』
 『判りました』
 パリヌルスがその旨を二人に告げる。オロンテスがパン工房へと走った。
 イリオネスが宿舎から出てくる、木板を小脇にしたオロンテスが戻ってくる、四人がそろった。
 『おう、オロンテス、世話をかけたな。この頃合いだ、統領の宿舎へ行くぞ!』
 イリオネスが三人に声をかけ歩き出した。四人は常の状態とはやや違い、緊張した雰囲気を漂わせている。イリオネスが再び声をかける。
 『お前ら、そんなに固くならずともよい!発想の自由度を損なう。肩から力を抜け!』
 四人はゆったりした歩調に変えて歩み始めた。
 アヱネアスが前庭において、木剣を握り、緩急よろしく体を動かしている、身の回りの空気を律する気迫を四人に感じさせる。
 イリオネスが声をかける。
 『統領、おはようございます。やっていますね!撃剣のシャドウ体動といったところですね』
 『おはよう、そうだ。解るか?』
 『気迫を感じます。今日の会議、一同がそろいました』
 『おう、そうか。そこにいつものように掛けろ。俺もシャキッとしてくる、少々待機!だ。今日の会議には一同真剣勝負で臨むようにと伝えてくれ』
 オキテスが口を開く。
 『今日の統領、在戦場の気合ですね。お前ら覚悟が出来ているか?と問いかけている、そのような雰囲気ですね』
 『ほう、お前、そのように感じるか』
 パリヌルスも言葉をかけてくる。
 『軍団長、議題の順序を整えての進行を考えなくてはいけませんな』
 うなずくイリオネス。会議を統御する自分のありようが問われる、身構えざるを得ないと悟った。
 議題の順序を組み立てることにした。アヱネアスに言われるままに席について三人と目を合わせて口を開いた。
 『おう、お前ら、今日の議題について考えているか?統領と俺の考えているメインの議題はーーー』と言って、一同と鋭い目線で、再度、目を合わせた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  718

2016-02-17 07:20:34 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 今日の投稿で補足訂正いたします。最終行です。

 パリヌルスは、オキテスに、この旨を伝えた。

 申し訳ありませんでした。お詫びいたします。
 
            山田 秀雄

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  718

2016-02-17 06:11:02 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『そうか。お前の気持ちを理解できるような気がする。オロンテス、お前が言おうとしていることが解る』
 『そうか、解るか』
 『パンの価格を決めた主役は誰だったのだ?その者の思惑はなんであったのか?であると思われるが、そこに人間の本姓がどのように働いたかが問題であると考えられる。パンの価格の正当性を市場の物の値段をもって推し量り、比較検討して探ろうと考えている。物の値段を調査しようと考えている。通貨制度を知って、その通貨単位も知った。木札1枚の持っている価値判断をしなければならないと考えてもいる。魚の取引きについても、そのあたりを探ろうと考えている』
 『そうか、昨日、あの場でスダヌスの話を聞いていて、俺たちの焼いているパン1個が木札1枚であると集散所のハニタスが決めたのだが、思い返したら、大変なショックだったな、その時は、『はい、そうですか』と承認した。俺もよく考えなかったのかもしれん、抜かりがあったのではないかと考えもした。そこで言えることは、俺たちが、これらのことについて何も知らなかったということにも気が付いた。俺たちは、お人よしなのかとも考えた。お前の言うものの値段の調査をやろう。それでもって自分自身も知ろう。そして、彼らをも知ろう。出ないと新艇の価格もいい加減にされる。今の俺は、人間のやることに不信感を抱いている。と同時に、集散所の担当の者たちにも不信感を抱いている。この不信感を払拭しない限り、目標達成に向かう仕事に一体感をもって携わっていけない』
 『そうだな、お前の言うとおりだ。その件についても計画の具体策を立ててやろう、ちょっとだが急を要するな。今日の会議で決定して、早速、行動をする。それから価値判断を全員総がかりで評価し、相手方の信頼度について意見交換する。それでどうだ、オロンテス!』
 『解った。大変だが、相手と手を組む、それに必要なのは、信頼できる、信用できる相手でなければいけない。それがないと一体感をもって、この新艇の販売業務の遂行ができない』
 『ヨッシャ!朝めしを終えたら、軍団長の宿舎に集合しよう』
 二人の心が燃えた。パリヌルスは、この旨を伝えた。