『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1360

2018-08-31 08:37:49 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 イリオネスの話が終わらない。
 『これらの改良点が売りの焦点となることを願ってやまない。営業を担当しているオキテスの意見を聞きたい』
 『はい!軍団長、言われる通りです。新艇と比較して、長所を具備した新々艇ができるわけです。引き合いしてくれる客が『おう、この船を使おう』との客の購入意欲をかきたててくれる売りの焦点になるであろうと考えられます』
 ここまで一気に話したオキテスは息をつく、一同と目を合わせる、話を続ける。
 『展示試乗会において、試乗してくれる客の評価を聞いてみなければ解りませんが、なんとなくいい評価をもらえるのではないかと感じています』
 『オキテス、ここで必要なのは、これを完成させたという自信だ。これがなければ客を押せないぞ!お前の口ぶりは、自信に満ちているとは言えんな』
 『軍団長、いま言われたこと充分に承知しています。あと考えられることは、客への引き渡し価格です。客が引き渡し価格を聞いて、買おうかと考え、かけていた手を離すのではなく、迷いながらひっこめている手を伸ばしてくれるような魅力的な価格で売っていきたいと考えています』
 『おう、オキテス、お前の言う通りだ。その件は明後日の会議でよく検討して、ひっこめようとする手を伸ばしてくるような引き渡し価格を決める。それでどうだ。新々艇販売作戦会議だ』
 この言葉を耳にする一同、顔を合わせ、目を合わせ、気を引き締める、そして、うなずき合う。
 アエネアスは、物事を決行するにはとふと考える。
 一元論的二項を考えるとサクセスか、アンサクセスである。
 物事は、何事も報われるとは考えられない、であるが、報われることを願う。
 アンサクセスをできるだけ回避しようとする。その手法はと考える、それにはと考える。
 物事の決行に取りかかる時、会議をやり、物事について話し合い、多様な意向を集約する、多数の意思を一つにする、そして、事にあたる、アンサクセスを避ける。
 多数の人間を統率して、事を為していく場合には、これが策であることを強く認識する。
 彼は、説いて聞かせるではなく、俺が行い、それを示していくことだと強く深く体全体にしみこませる。
 アエネアスは、心を落ちつかせる、目からウロコをはがす、話し合っている場を見まわす。
 イリオネスが一同に告げている。
 『改造ヘルメス艇の試走評価について、これは言っておきたいがあれば言ってくれ。ないのであれば評価の話し合いをこれで終える。明後日の会議に向けて、新々艇の客への引き渡し価格を考えておいてくれ』
 『統領からは何かありますか』
 『今はない』
 一同がアエネアスとイリオネスの顔と交互に顔を合わせる。
 『解りました。では、会議の席で』と言って一同は話し合いの場を解いた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1359

2018-08-30 08:23:01 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 ギアスは、オキテスの隣に腰を下ろす。
 パリヌルスが一同と顔を合わせる、口を開く。
 『今日は、ご苦労でした。では、改造ヘルメス艇の試走評価に際して改造点について述べます』
 パリヌルスは、間をとって場を見まわす。
 『第一の改造点は、艇体の改造をすることによって、先に完成している戦闘艇の走行安定性を新艇にもとの目論見からです。これについての試走した改造ヘルメス艇の走行感を評価してください』
 そのように述べたパリヌルスは、アエネアス、イリオネス、オキテスと順を追って目を合わせる。
 アエネアスが口を開く。
 『おう、ヘルメスの走行の安定性か。改造した分の効果が出ている。改造ヘルメス艇の走行感が戦闘艇に似てきている。確かにそれを感じた。それが俺の感じた第一印象だ。ヘルメスの走行安定性が戦闘艇に近似していると結論付けていい!』
 このアエネアスの評価にイリオネス、オキテスがうなずく、パリヌルスがうなずき肯定する。
 パリヌルスが次の設問に移る。
 『戦闘艇の構造に採用している衝角構造体構造をやや縮小してヘルメスの艇体構造とすることにより、艇重が少々重くなります。それに基づいて艇体構造仕様を少々変えました。それによって姿形をカッコよくしたいという志向が働き、カッコ付けをして改造しました』
 『どんな風にだ?』
 『艇体前部の甲板下の容量を大きくして船荷の収納を多くするように改造しています。ヘルメス艇の艇重増加を考えて、艇体の舷構造を少々高くしました。また、艇体前部と艇尾部の舷も高くして、波をかぶりにくくするように配慮した艇の姿形にしました』
 アエネアスが相づちを打つ。
 『それで船としての深さ構造が深くなったなと感じたわけか』
 『そうです。艇体の深さ構造も深くなり、喫水も少しですが深くなりました』
 『やっぱりな。改造ヘルメス艇に乗った時に感じたな。なんとなくだが『お~、船に乗ったな』と感じた。この改造ヘルメス艇に比べたら、これまでのヘルメスは大き目の短艇だな』
 話し手がオキテスに代わる。
 『統領の言葉にあるように乗船感、走行の安定性が、これまでのヘルメスとは大変わりだ』
 イリオネスも声を大にして言う。
 『走行感に感じる走行安定性、艇体構造の変革、艇の姿形、乗船感覚等、確実に進化していることを感じた』
 イリオネスは、一同と目を合わせ話し続ける。
 『ヘルメス艇の全体構造が『お~お、いい船になった』この感覚がある。これをこのようにしたから、こうこれだけ変わりましたと詳細分析を数値で表すような評価はできないが、改造が改良の結果となっていることを認める。これを新々艇の構造仕様にして、いい船造りやる』
 言葉じりを強く言い切って、イリオネスは一同と目を合わせた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1358

2018-08-29 09:02:43 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 自分の欲の深さを悔やむパリヌルスは、改造ヘルメス艇の走行感をこれでよしとする。
 いずれにしてもこの時代の中型船として、長所を具現した船に出来あがっている、これで満足することにする。
 新々艇については、これ以上をのぞまない水準にまでに出来あがったとする、製造原価のことも考えねばならないとした。
 パリヌルスは、艇上の一同に問いかける。
 『いかがですか、もう少し航走しますか?』
 『そうだな、もう少し東進して、それで帰ろう』
 アエネアスから返事が返る。
 パリヌルスは、その件をギアスに伝える、操舵席に向かう、操舵棒を握る、彼は操舵感を試すことにする。
 ギアスが操舵席に来る、パリヌルスに声をかける。
 『隊長!操舵の具合はどんな感じです?浜への転進のタイミングですが』
 『おう、そうか。このあたりで帰途に就くか』
 パリヌルスが操舵する、ヘルメス艇が南進する、彼はこれまでのヘルメス艇の操舵感覚とは、少しばかり異なる感覚を体感する。
 どこが違う?感覚の違いを充分に察しきれない、首をかしげる。
 艇の方向転換対応がこれまでと違う。方向転換時の舳先方向指向のスベリ感覚的な方向指向性が変化している。
 頭をかしげるパリヌルス、このことについて、ギアスとともに再度試行すると心に決める。
 改造ヘルメス艇の試走を終えて、帰途に就く、パリヌルスは、操舵棒の取り手部分をつよく握る、体感した操舵感覚について深く考える。
 ヘルメス艇を建造の浜に着ける、イリオネスが一同に声をかける。
 『おう、一同聞いてくれ。場の会所で試走の結果を話し合う。パリヌルス、艇の整備を終えたらギアスにも来るように言ってくれ』
 『解りました』
 パリヌルスがギアスに声をかける。
 『ギアス、ヘルメスの整備、陸揚げを終えたら場の会所のほうへ来てくれ』
 『了解しました』
 一同が会所に顔をそろえる、イリオネスが一同に話しかける。
 『おう、一同、ごくろう!改造ヘルメス艇の試走を終えた。その試走の件について話し合う。いいな』
 イリオネスがパリヌルスに声をかける。
 『パリヌルス、従来のヘルメス艇の改造について説明してくれ。ここをこのように改造した目的はこうであると話してくれ。その目的が達成されているかについて一同から意見を聞く。いいな』
 『解りました』
 試走したヘルメス艇を整備、陸揚げ作業を終えたギアスが会所に姿を見せる。
 『おう、ギアス、ごくろう。どっかそこいらに腰を下ろせ』
 パリヌルスが声をかけた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1357

2018-08-28 08:14:27 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 風そよぐ波打ち際に立つ、パリヌルス、ヘルメス艇上で出航準備を整えるギアス。
 アエネアスら三人が建造の浜に姿を見せる。
 『待っていました。早速、乗艇ください。いつもの試乗コースで試走を行います』
 パリヌルスがヘルメス艇の艇上を見る、出航体制の整いを確かめる、ギアスに声をかける。
 『ギアス、出ようか。いつものコース取りでやってくれ、風の状態は?』
 『はい、風は西からいい状態で吹いています。試走に好条件です』
 『漕ぎかた、はじめ!』
 櫂が海を泡だてる、ヘルメスが波を割り始める。
 走り始めるヘルメス艇、走行感に神経をとがらせるパリヌルス、漕ぎかたに声をかける。
 『櫂の操作感はどんな具合だ?』
 『水面からの櫂の支点の高さに変化を感じていません』
 『そうか!よしっ!』
 ギアスは、櫂操作のピッチと船速をチエックする。
 いい具合に走っている、波割りを注視する。
 小島の南端を通過する、3スタジオン(約600メートル弱)の地点でヘルメス艇を北方向へ転進させる。
 操舵担当に向けてギアスの指示が飛ぶ。
 『風による吹き寄せに注意して操舵せよ!』
 程なく小島の北端を過ぎる、北進15スタジオン(約3キロメートル弱)の地点でヘルメス艇を東進させる。
 『操舵担当!東へ転進!』
 『漕ぎかたやめ!全帆、帆張り!』
 ヘルメス艇が帆張り航走をする。
 ギアスが驚く、進路を変更して、帆張り走行状態の安定性の向上を感覚にとらえる、体に如実に感じ取っている。
 艇として、波濤状態に対する対応が戦闘艇に近似して来ている。
 このことをパリヌルスに小声で伝える。
 これを聴きとるパリヌルス、二人はうなずき合う。
 パリヌルスは比較評価を耳にして、波濤状態に対応する走行安定性を体に感じて、安心できると評価する。
 パリヌルスはギアスに声をかける。
 『ギアス、走行の波割りはどうだ、これまでとは少々変わっているか?』
 『解りました。よく観察して報告します』
 二人は、風具合と艇の走行速度に神経を集中させる、これまでの経験を思い起こし、船速のスピードを感じ取ろうと努める。
 二人は、風力度に対する微速のプラスを感じ取る。顕著に感じたのは戦闘艇に酷似した走行安定感である。
 パリヌルスは、自省する。
 『欲のかき過ぎはよくない。この程度の進化向上で満足としよう。謙虚第一だ』
 そにように思いながらも驚くような結果に到らなかったことを心の底で悔やんだ。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1356

2018-08-27 08:27:25 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『オ~、アチッ!』
 二人の気がスパークする、躍如するハート、ハイタッチ!
 『オー、ド―イット!オーッ!』
 叫ぶ、起ちあがる、二人の気合である。
 オキテスのモチベ―トマインドに火を点けたパリヌルスは、手にとって見る者に買いたい気持ちを惹起させる新々艇の姿形図の原画の素描にに取りかかる。
 販促ツールの作成作業を同時進行させる。作成に7人を起用し、これにあたらせる、資料未整備の新々艇の販促ツールをあとにして、戦闘艇の販促ツールの作成を先行させる。
 一連の手配を終えたパリヌルスは、船台の場に足を向ける。
 ドックスがヘルメス艇の改造の最終仕上げに注力している。
 ギアス以下漕ぎかた連がヘルメス艇の仕上がりを待機している。
 『ドックス、うまくいったか?』
 『はい、この箇所のクギ止めが終われば、作業完了です』
 パリヌルスがギアスに声をかける。
 『ギアス、ヘルメス艇の改造作業がまもなく終わる。ドックス棟梁からヘルメス艇を受け取り、海へ出してくれ。午後イチに試走する』
 『解りました。いつものようにヘルメスの親水状態をチエックしておきます』
 『おう、ヘルメスの喫水状態、海面からの船べりの高さ、艇構造の深さ等チエックしておいてくれ』
 指示を終えたパリヌルスは、船台の場をあとにする。
 オキテスは、営業活動計画をチエックして行動計画を具体的にする、キドニア集散所との打ち合わせ日を決める。
 『行動か、計画は計画であって行動ではない。行動を決めたら霧が晴れた。奴の言うことに一理がある』
 独りごちてうなずいた。
 場の会所に姿を見せるパリヌルス。アエネアス、イリオネスの姿もある、行動の段取りを決めたオキテスも姿を見せる。
 パリヌルスが一同に声をかける。
 『今日、午後イチに改造を終えたヘルメス艇の試走をやります。統領に軍団長、ヘルメスに乗られますか?オキテスはどうする?』
 『おう、乗る乗る!』
 『俺も乗るぞ!』
 三人が同時にこたえてくる。
 『解りました。ヘルメスは、建造の浜から出ます。私は向こうで待っています』
 彼らは思い思いの場所で昼を過ごす、パリヌルスは、ギアスと漕ぎかた連と一緒に昼を過ごす、彼らと交わす話題は改造を終えたヘルメス艇のことである。
 『パリヌルス隊長、ヘルメスのことですが、こうだとはっきり言えませんが、なぜか、少々変わったと感じます。走り始めたらどのような波割りをするかとても気になります』
 『艇構造の深さはどうだ?』
 『そうですね、船べりが少々高くなった感じを受けます。おう、船に乗っているという落ち着いた感じがします。櫂の保持支点は従来のままです』
 『喫水が少々深くなっているはずだが、船べりの海面からの高さをチエックしたかな?』
 『はい、ギアス艇長がチエックしています』
 『おう、了解した。試走後に君らから、感想を聞く』
 パリヌルスは、改造ヘルメス艇の試走に期待を抱いた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1355

2018-08-24 07:36:12 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 パリヌルスが答える、イリオネスが続けて二人に声をかける。
 『ではな、パリヌルス、よろしく頼む!オキテス、ほかに何かあるかな?』
 『はい、ほかに考えていることは、新々艇の売り渡し価格の決定と事業継続に関して、これからあとやっていくことについて考えをまとめています』
 『おう、解った。新々艇の価格の件および今後の事業展開、方針については、三日後、オロンテスのキドニアからの帰りを待って、会議をこの会所において行う。一同、いいな』
 『了解しました』
 『それでだが、オキテス、新々艇の価格に関する条件および想定原価の資料を整えること。また、事業継続に関しては、統領と俺も考えるが三人とも考えをまとめておくこと。申し渡しておく』
 『統領のほうから、何かありますか?』
 『そうだな、この機会にひと言語っておく。人間が構成しているこの世間といおうか、人間一人が心を決めて動くより、複数の人間が話し合って意思を決めて行動する。リーダーが統率を誤らない限り、成功する確かさがある』
 アエネアスが場を見まわす、話し続ける。
 『言ってみれば、ひとりの考えより、多数参加、話し合い、その思考をまとめてやれば、失敗が少ないと考えている。打ち合わせ、報告、連絡、相談、多くの意向を集約して事にあたっていく。そのようでありたいと考えている』
 『解りました』
 一同が唱和して答える。
 『そういうことだ!一同、納得したな。では、打ち合わせ会を終える。いい朝を迎えよう!』
 イリオネスが打ち合わせ会の終了を告げる、一同が場を引きあげる。

 アエネアス暦9月4日が明ける。
 船舶建造の意思を鮮明にした彼らの緊張が続く、オキテスは、営業活動計画の実行スケジュールを考える、販促ツールの件をパリヌルスと打ち合わせる。
 『なあ~、パリヌルス、事業を起こす、そのカタチを作る、発展と継続を考える。今日は何をする、そして、明日はと考える。今月の成果は?翌月は?と考えると、息をするのも大変に感じる』
 『お前、なかなか繊細だな。気遣い、心遣いか。オキテス、いいことを教える』
 オキテスがパリヌルスの目を見る、この俺に何を語るのかを怪訝な目つきで見つめる。
 『オキテス、考えが終着点に近づく、息をするのを忘れたいくらいに考えに集中する。これの解決には、行動することだ。行動しながら考えて結論に到達する手もある』
 パリヌルスが話しに間をとって、オキテスと目を合わせる。
 『何事もだな、案ずるよりも生むがやすしである。動け!停まっていると自滅の道を歩むぞ』
 パリヌルスは、オキテスのモチベ―トマインドに燃えあがる松明の炎を近づけた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1354

2018-08-23 08:39:06 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 イリオネスがオキテスと目を合わせる、口を開く。
 『オキテス、に聞く!この営業活動計画に目標とする達成成果の記入がない。成果達成目標について話してくれ』
 『はい、営業活動を行う、その達成成果目標は、10月、11月の2か月間に建造する戦闘艇および新々艇の8艇を受注したいと考えています。達成成果として、この艇数の8割がたにあたる6艇を2回にわたる展示試乗会において期待受注成果としています』
 『そうか、一同、これについて意見があれば言ってくれ』
 パリヌルスが手をあげる。
 『このオキテスが立案した営業活動計画と意図としている目標達成成果の見通しに賛成です。結果の見えない領域の業務です。これだけやれば、これだけの成果であるといえる質の業務ではありません。安易に目標達成成果を答えられる業務ではないと考えられます』
 『おう、パリヌルス、なかなかの言い分だな。一同の考えやいかに?』
 アエネアスが話し始める。
 『オキテスの担当する、この営業活動においてだな、俺の立場で言えば、営業活動によって目標が達成されることを願っている。目標達成成果は自ずから結果となることを信じて、営業活動を成し遂げることだ。それの達成される、達成されないは考えずに営業活動に集中してこれをやることだ。これをやっていくうえで慮外の原因もつきまとう、その時はその時でそれについて問い、対処する。成果達成目標および営業活動計画は、オキテスの立案したこの計画で充分である。統領として承認する』
 イリオネスが応える。
 『解りました。次に考えることは、営業活動の実施についてだ。例えば、弓を使って攻撃するには矢を放ってやるわけだ。営業活動をやっていくうえで必要とするものについてオキテスの考えを聞く』
 『はい、今、軍団長の言われたことについて私の考えを言います』
 オキテスは、一同と目を合わせる。
 『販促ツールが営業活動の成否を決定すると考えています。パリヌルスが作成してくれた船の姿形図、船の詳細図、そして、仕様書きのこの3枚組の船の説明書きが営業活動に絶対必要と考えています』
 『そうだな。新艇の引き合いが戦闘艇2艇の受注になった事例のことを考えると、うなずける』
 『この事前訪問活動で、この日程書きとともに訪問先で相手方に渡したいと考えています。これの準備をパリヌルスに頼んでやってもらいたいと考えています』
 『おう、オキテス、了解した。パリヌルス、三枚組の説明書きの作成を頼む。オキテス、その販促ツールの作成は、パリヌルスと打ち合わせてやってくれ。パリヌルス、いいな!』
 『了解しました。販促ツールの効果は、前回の営業で有効なものであることを理解しています。数量、その他をオキテスと打ち合わせて作成します』
 

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1353

2018-08-22 05:48:09 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 アエネアスとイリオネス、オキテスの三人の話し合いは続く。
 『船舶の一艇、一艇が部材の集合体だからな、それをこのように合理的に建造作業を進めることを我々が最初から気が付いただろうかと考えると鳥肌が立つ』
 『私も時折りツラツラと考えますが、この作業の流れがゴクゴク自然体で出来あがったことに驚いています』
 『作業に携わっている者らがはぐくみ育てた技術があればこそ、出来たと考えられるな』
 『軍団長の言われる通りです』
 アエネアスが口を開いて言う。
 『そうだな、考えれば、互いに尊重することこそ、和を産み育て、カタチを整えて、いいカタチになる。俺はそのように考えている。これは建国で忘れてはならない一事であると考えている』
 これを聞いたイリオネスとオキテスの二人は、この言葉に心を打たれる、感銘を受ける、改めてアエネアスの顔を見る、この人こそとうやうやしく見つめる。
 アエネアスがこのような心情の持ち主であり、今も民族を率いている統領であり、未来において一国の領主であることを二人に印象づけた。
 三人は、場の会所で昼食の時を一緒に過ごす、昼食を終える、業務に、作業につく、時はまたたくまに過ぎていく、まさに弓の弦を放れた矢のごとく過ぎていく、諸事が終わり、打ち合わせの時となる。
 一同の顔が場の会所にそろう。
 イリオネスが打ち合わせ会の進行役を務める、彼は告げる。
 『おう、一同!今日はごくろうであった。打ち合わせ会を開く』
 彼は一同と目を合わせる。
 『建造の場が稼働開始して今日が二日目である。我々が次にやるべきことは何であるか。その打ち合わせをやる。いいな、心せよである』
 イリオネスが話の間を持つ。
 『それは、営業体制のスタンバイとそのスタートである。営業の責任担当であるオキテスが営業活動計画を立案してくれている。これを一同に計り、実行する。オキテス、立案した計画案を一同に提示してくれ』
 『はい、解りました』
 オキテスは、営業活動の具体的計画を書き記した木板を一同に一枚づつ手渡す、一同が木板をじい~っと見つめる。

           『戦闘艇および新々艇完成記念大売り出し展示試乗会』
 
 *売り出し事前活動日程
 9/11 キドニア集散所 9/12 レテムノン 9/14 マリア集散所 9/14 イラクリオン
 
 *展示試乗会催行日程
                  ①            ②
      キドニア集散所 10/1~10/3    11/8~11/10
      マリア集散所  10/1~10/3    11/5~11/6
      イラクリオン  10/4~10/6    11/3~11/4
      レテムノン   10/7~10/9    11/1~11/2

 *売り出しの事前活動においてこの日程表と販促ツールを配布する。

 一同は、オキテスが作成した営業活動計画にオキテスの並々ならぬ意気込みを見て取った。


 *昨日の投稿で誤字と変換ミスをやりました。深くお詫び申し上げます。
  26行目の  頭領  を  統領  と訂正します。
  28行目の かけpくる を かけてくる と訂正します。

                           山田秀雄

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1352

2018-08-21 07:20:42 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 一陣の風が吹きすぎていく、いずこからかオキテスに声が届く、周りを見廻す、人影はない、首をかしげる。
 『結構な営業計画ではあるが、オキテス、お前に聞く。出来るのか?』
 『おう、出来る!』
 『確かにやれるのか?』
 『おう、やれる!』
 耳中に、心中に、体中に言葉のやり取りがこだまする、声がしつこく呼びかけてくる。
 オキテスがこのやり取りに忍耐の緒が切れる。
 『やれるといったら、これをやる!』
 大声で咆える!彼は大声で咆えることで、この言葉のやり取りに終止符を打つ、またもや風である、オキテスの頬をなでて吹き去っていく。
 彼は、このやり取りで業務遂行、結果達成責任の自信を心中に、そして、身体に育んだ気分を感じ身が震える、成果達成を確信する。
 オキテスは、冷静にかえる、今日の打ち合わせに提示する木板の作成に取りかかる。
 彼は、木板作成時に用命しているアシスタントの部下を呼ぶ、木板の作成を下命する。
 見本となる作成した木板を示す、本日の打ち合わせ用に5枚、各集散所用及び展示試乗会の催行予定地への配布分に8枚、合わせて木板13枚作成を用命する。
 『木板の作成は、夕刻までに5枚を仕上げてくれ。あとの8枚は、ここ三日くらいの間にしあげてくれればいい。解ったな』
 『解りました』
 アシスタントの部下への下命を終え、打ち合わせ会に提示する営業活動計画に付随する諸事をまとめあげる。
 彼は、『おう、これでよし!』と独りごちて起ちあがる、日常業務である建造の場の巡視に歩を向ける。
 建造の場の各セクションの作業状態をチエックする、少々だが、いい具合に進行している。歩を進める。
 船台の場に到る、作業状況を注視しているドックスの傍らに立つ、声をかける。
 『おう、ドックス、作業状況はどんな具合だ?順調にいっているか』
 『はい、昨日より順調といえます。部材製作が順調になってきていますから。明日はさらに良くなると考えています』
 『それは重畳!この上なしだ』
 『統領と軍団長が部材製作の場にいられます』
 『おっ!そうか』
 オキテスは、部材製作の場に歩を向ける、船台の場をあとにする。
 『あっ!棟梁と軍団長、こちらでしたか』
 『おう、オキテス、部材製作の作業風景に見入っている。作業する彼らの手際よさに感心している』
 イリオネスが言葉をかけÞくる。
 『なあ~、オキテス、船舶建造というが、船1隻、この大きさの船を製作するのには、二、三か月の時日を要するのにだな、その建造を一か月余りの短時日で造りあげる。その製作現場を目の前にして感動している』
 『そうですか。建造の場に、これだけの人員を動員して仕事をしています。当然といえば、当然であるといえます』
 オキテスは、建造の場のそのスケールを頭中に描きながらイリオネスの言葉に返事を返した。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1351

2018-08-20 07:54:04 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 イリオネス宛に今日の結果報告を終えたオロンテスは、オキテスの隣に腰を下ろす。
 二人は、互いの責任担当分野の営業活動について話し合う、活動に伴う日程、担当業務を打ち合わせる。
 オキテスは、計画構想のラフプランをまとめあげる。
 日輪の底が水平線に接する時となりつつある、ニューキドニアの浜に終業の時がおとずれる、今日を真剣に勤めあげた彼らが身を休める時となる。
 浜は静かに暮れていく、ひたすらに生きる彼らの今日が終わる。

 建造の本格的稼働二日目の朝が明ける、彼らの日常が始まる。
 古代であるこの時代、この民族は、日々において、民族としての目標に向けて真剣に生きていたと考えられる。
 彼らは、託される業務に日々まじめに取り組んでいる。
 オキテスは、営業活動計画の日時と展示試乗会の催行を具体的に決めて木板に書き記す。
 彼は、デモンストレーションとクロージングの意を含んだ展示試乗会の催行を今と比べれば稚拙だなと思われる思考で組み立てる。
 この業務をやるからには、これだけの成果を獲得したいと志す、希望の目標受注艇数を決める。
 これだけやれば、この成果が結果となると期待し希望の成果艇数を決める。
 彼は幾度となくその艇数を声にはせず、身体全体で読み返し繰り返す。
 これだけやれば、成果艇数の受注が労することなく自ずからなると考えた艇数を木板に書き入れた。
 考えを脅かす思考は、1プラス1が2とはならず、1プラス1が1、そのままであるのではなかろうかとの心配、懸念である。
 彼は、営業活動に関する行動計画以外に考えを移す、営業販促ツールについて考える。
 ツールの構成と配布数、これを懸命に考えて、その数量を配布宛先と配布数を成果艇数の獲得期待を考えながら木板に書き込む。
 まだ未決の新々艇の販売価格を使用者に対応した戦略的価格で決定することを打ち合わせ会で訴えるとする。
 また、展示試乗会以外の日の試乗要請にも適時対応を意見具申すると心中に決める。
 それに加えて、売り出し以降において、各所において月に一度の定例展示試乗会の催行の意見具申をも考える。
 オキテスは、今後における営業活動計画を含めて、計画作成作業を完了した。
 彼は、改めて造り上げた営業活動計画に目を通す、このミッションに心身命を賭している自分に気づく。
 『『やればできる』この言葉を合言葉にして、一同に呼びかけ、この仕事に心身命を賭す』
 オキテスは、ゆるぎない決心に昇華するのを心中に覚えた。