『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  70

2013-07-31 07:54:48 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『おうっ!おうっ!』 隊がわきつつある。
 『おうっ!諸君っ!我々は、明日の全体移動に先駆けて、浜を離れる。出航して築砦の予定地に向かう。いいな!』
 『うおっ!』『うおっ!』『うおっ!』喊声である。
 『予定地への上陸の前に、海賊の一群を大掃除する。いいな!』
 『おうっ!おうっ!』『おうっ!おうっ!』『おうっ!おうっ!』喊声が沸きあがった。
 統領がパリヌルスと入れ替わった。どよめいた。全員を見渡すアヱネアス、彼は口を開いた。
 『諸君っ!君たちは我々全員の先駆者として、新しい築砦の地におもむく。君たちは選ばれし者として、新しい築砦の地に第一歩を踏み入れてくれ!成功を祈る!』
 一同は沸きあがった、大喊声である。パリヌルスの思った通りに士気が上がってきた。この頃には、浜にいる者たち全員が彼らを囲んでいた。その者たちも大喊声をあげた。彼らの大喊声が壮途に就く者たちの耳をつんざいた。喊声のるつぼの中で興奮が頂点に達した。
 アヱネアスに代わって、パリヌルスが再び彼らの前に立った。
 彼は静かな口調で話し始めた。
 『我々が向かう築砦の地には集落があり、心優しき者たちが住んでいた。ある日、この者たちが海賊の一団に皆殺しにされた』
 彼は、ここで言葉をきって一同と目を合わせた。パリヌルスの鋭い目線が真剣な彼らの目線と交差した。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  69

2013-07-30 09:07:56 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 彼らの話といえば、干戈を交えて闘う者たちの話であった。攻めて攻めて、攻めまくり、力で相手を圧倒して、これを倒す。また、斬りこんでくる相手の攻撃をかわし、相手に仕掛け倒す。まさに、力で相手を征する原始時代の撃剣の有様を語っていた。
 パリヌルスは、三人のほうに向いた。
 『おう、アレテス、カイクス、ギアス、もういいな。全員召集をかけてくれ。場所は、ここでいい』
 彼は静かに声をかけた。意識は冴えて澄んでいた。 
 続々と集まってくる、彼は彼らの精気を推し量った。『申し分ない。お前らを燃え上がらせてやる』
 隊長連は掛け声をかけて、隊列を整えていく、彼らの目配りは、各兵の軍装、装備をチエックしていた。
 『おうっ!よっしゃ!』と声をかけ、『おうっ!』と返ってくる返事の調子で互いの意識、士気を確認していく。微妙な負の感覚を感じれば、正しい方向に導びいていく。『いざという時のために』意志の疎通を確かめあった。個と個の結びつきを確かめながら隊列を整えた。同時に何となくではあるが集団としての意志も整えていった。彼らから報告が来た。
 『隊長。隊列が整いました』
 『おういいぞ。よしッ!アレテス、カイクス、リナウス、ギアス、全員の士気は?』
 『申し分ありません』
 『いいな、アレテス。統領と軍団長に出航の途に就くと連絡してくれ』
 アレテスは走った。その風景を見て、集団が緊張する、またもや士気があがった。
 オキテスがパリヌルスの横に立った。一言ささやく、うなづくパリヌルス。一帯の空間の気が高まっていく、パリヌルスが隊列の前に立った。
 士気がカッと高まった。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  68

2013-07-29 08:05:28 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 先駆ける者たちは、夕めしを済ませた。剣をとり、敵と刃を交える、その興奮と緊張に身を震わせながら戦仕度にとりかかっていた。
 パリヌルスは、身仕度を整えて、月の照り輝く浜辺に立って、集結、乗船、出航、その時の訪れるのを待っていた。彼はすっかり落ち着いていた。緊張はなく、力みは両肩から抜け落ちて、気勢いはなかった。彼の許へ三人の隊長たちが集まってきた。
 『おう!君たちご苦労。隊編成うまくいったか?』
 『え~え、うまくいきました』三人が答えを返す。
 『もう少し間がある。打ち合わせた俺の指示について、質問があったら聞いてくれ』
 『いえ、ありません』アレテスが返事を返した。
 『上陸、戦闘配置、そして、戦闘開始の合図を待つ、それを考えるとドキドキする。鳥肌の立つ思いだ』ギアスが言う。
 『そうだな、久しぶりの戦闘だ。ドキドキして当たり前だ。この俺にしてもそうだ。作戦計画を仕上げるまでドキドキのしっぱなしであった。俺は、戦なれしていないのだなと感じたよ』
 パリヌルスは話し続けた。
 『これを機に、戦争感覚を身につけねばならん。発生する非常事態に、即、対処するためにだ。それが俺の役務だからな』
 『まったく、隊長の言われる通りだ。敵と対峙する、剣を斬り結ぶ、忘れていた感覚を思い出す、無意識に突き出した剣が相手の腹をえぐっている。まさに動物的な勘働きが相手を倒し、命脈を絶つ。相手にやられたくはない』
 『それはだな、ギアス。行動決断とスピードだよ。すざまじいまでの勘働きで身を守り、己の一突き、一薙ぎで相手を倒す。先の先、後の先、遅れをとってはだめだ』
 『お~、剣豪のアレテス殿のお言葉ですな。ありがたく頂戴いたします』

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  67

2013-07-26 10:38:36 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 パリヌルスは、打ち合わせ、手配を済ませ、イリオネスのところへと歩を運んだ。
 『軍団長、ちょっとよろしいですか。いま、打ち合わせを終えました。海賊せん滅の作戦計画の概略を説明しておきたいたいと思っています』
 『おう、そうか。統領もいま、手すきだ、ちょうどいい』
 パリヌルスは、統領と軍団長に作戦計画の概略を説明した。
 『お前、計画を綿密に立てたな。いいだろう。お前の考えている通りに実行しろ。俺としては、お前の気持ちがいやほどわかっている。我々が一命をも失わないように祈る。成功を祈る。出発の時には、統領も俺も、お前たちを送る』
 『ありがとうございます。一同を励ましてください』
 『判った』
 『私たちは、皆さんより、一足先に築砦予定地に行っています。お待ちしています』
 説明を終えたパリヌルスは、兵士たちが胸に抱いている闘志という可燃物に火をつける、そして、燃え上がらせる。いま、そのことに意識を集中した。
 陽が西の海に身を沈める一歩手前で戸惑っているように目に映った。
 彼は、1番船のところへ戻る。夕めしの準備が整っていた。
 宵の進みが早い、彼らが見上げる空には、星が二つ、三つとまたたき始めていた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  66

2013-07-25 06:53:44 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 彼らは、『おうっ!』『おうっ!』の喊声を残して打ち合わせの場を去って行った。パリヌルスは、場を去らずにいるアレテス、カイクス、ギアスの三人に声をかけた。
 『君たち、相談事でもあるのか』
 『え~え、小島の闇の中で敵と闘う、味方同士が斬り合うことを避けたい。それにはどうする?そのことについて相談しているのですが』
 『おう、そうだな。それは大事なことだ。俺の思考から抜け落ちていたな。済まん、詫びる。闘う者たち全員の命大事を思いながら、そのことに配慮していなかったこと深く詫びを言う。いま、ここで対策を考えよう。お前ら、いい考えでもあるか』
 『え~え、リナウスの提案がいいのではないかと思いますが』
 『リナウス、言ってみろ』
 『兵士全員が味方であるしるしに両手首に白い布を巻いておくというのはどうだろうかと言っています』
 『う~~ん、それはいい考えだ。それをやろう。ところでその白い布を今から調達できるかだが』
 『何とかできるのではないかと思います。隊長の力も借ります、宜しくお願いします』
 『判った。オキテスにも言って、協力方を頼む。何とか間に合わせる』
 『お願いします。もう一つは、闘いの場における味方同士の合言葉になる気合い言葉です。アレテス隊長の言うのでは『ビィッ!バァッ!』では、どうかと言っています』
 『おうっ!なかなかいい!仲間同士の確認に『ビィッ!』と言って『バァッ!』。『ビバァッ!』で相手をたたっ切る。いい。それでいけ。とにかく急いでとりかかろう。これらの要点を全員に徹底しておくのだ。実行が伴わないと何にもならん。頼むぞ!それから、伝えておく。夕めしを終えたら、君たち三人は、俺のところへ来ていてくれないか』
 『判りました。白い布の件、手配かた宜しく願います』
 『おう、判った』
 パリヌルスは、即刻、オキテスのところへと向かった。事の次第を述べ白布の手配方を頼んだ。
 この時代、大掛かりな夜間の戦闘は、味方同士の斬り合いになることを恐れ、行われることは皆無といってよかったのである。大軍同士の激突といえば、そのほとんどが昼間における戦闘であった。夜戦といえば、大半が火を使った戦闘であったのである。
 

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  65

2013-07-24 07:53:33 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 パリヌルスは、念を押すような目つきで一同と目を合わせた。
 『次は、船がたどる航路について説明する。一同、木板を見てくれ。ここが、いま俺たちがいる浜だ。船は真東に向かって進路をとる、この地点に来たところで進路を変えて南下する。帆は張らない、漕走で向かう。船を狭いが遠浅の海岸につける。全員が上陸して、それぞれの配置の場所に向かう、いいな。この目標地点に到着するのに半刻と半刻半くらいの時間だ。この時点まで気づかれないように隠密行動で行くことである。判ったな。シカッと念を押しておく』
 彼は一同を見まわした。
 『おれは、この地点で偵察隊からの連絡を待っている。攻撃開始の合図は。松明を二本、空に向けて放り投げる。この合図で一斉に攻撃を開始する、判ったな。攻撃開始は、各小隊が敵の船に火をかけることで戦端を開く。そのころには敵が武器をとって向かってくる、これを倒せ!いいな。それから出航の事だ。夕めしを終えて少々の間をおいて、全員召集する。以上だ、打ち合わせを終わる』
 パリヌルスは、鋭い目つきで一同を見た。
 『それからだ。夕めし前に小隊の編成を終えること。敵一人に二人で打ち掛かる、これを忘れずに皆に徹底しておくこと。あ~あ、ギアス。お前のところは、いま、総員は何名だ。お前を入れて30名で編成しろ。不足の要員は1番船から補充する。お前には西側の浜を担当してもらう。いいな』
 『判りました。不足の要員は13名です』
 『アレテス、リナウス、1番船の兵員を2隊に分ける。東側の浜担当に50人、西側の浜担当に40人、それと舟艇のほうへ13人を配分してくれ』
 『判りました』
 集まっていた者たちはそれぞれの持ち場に散った。
 

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  64

2013-07-23 07:20:57 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『次は、出航の時と地の利について説明する。出航は、夕めしのあと少々の間をおいて出航する。今宵は月夜である。だが、夜半には月が空から姿を消す。そのころには、海賊全員が島に帰っている。奴らは、このクレタ島では寄る辺のない海賊だそうだ。そこがキクラデス諸島海域の海賊との違うところだと思っていい。次に地の利である。この島で極めて遠浅といわれる海岸は、このあたりの浜の一帯だけといわれている』
 パリヌルスは、逆さ三角形でクレタ島に面している島の狭い南端の浜を指でさし示した。
 『この海賊との闘いは、奇襲攻撃で行う。我が方は、一命をも失はずに海賊をせん滅したい。月が空から消えて漆黒の真っ暗闇になるころに、島の南端のこの地点から上陸して戦闘配置ににつく。攻撃は、偵察隊の松明信号を受けて、俺の合図で戦闘を開始する。いいな。東側の浜の戦闘配置は、海賊船1隻当たり23人、西側の浜の戦闘配置は、海賊船1隻当たり14人とする。この打ち合わせが終わり次第、各自が船に戻り小隊を編成せよ。判ったな。次に戦闘の概略を説明する』
 パリヌルスは、一同を見まわした。彼の言葉に真剣に耳を傾けている風景がそこにあった。
 『戦闘では、そのかかりが大事だ。戦闘開始の合図で、まず最初にやることは、敵の船に火をかける。周りは真っ暗闇だ。火を燃え上がらせることで明るくすることだ。次に、今日、撃剣トレーニングでやったように、二人一組となって敵と対峙して剣を交え、これを倒す。これを戦士たちに徹底しておいてくれ』

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  63

2013-07-22 13:47:59 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『隊長、場の条件は向こうのほうがいいように思いますが』
 『そうか、よし!そちらでやろう』
 彼は陽の射してくる方向を仰ぎ見た。船尾のほうが、いい陽陰を作っていた。
 『おう、皆、腰を下ろせ、これより打ち合わせをやる。夕めし前には終わる、即、要件に入る。我々、1番船、2番船、舟艇の総員は、明日、実行予定のクレタ島の築砦予定地に向けて移動する一同に先駆けて出航をする。築砦の予定地はさほどに遠くはない。我々には、重要な要件がある。一同、この木板を見てくれ』
 彼は、築砦予定地及び小島が描きこまれた木板を一同に見えやすいようにかかげた。
 『我々に課せられている重要な要件は、この小島を根城にしている海賊のせん滅である。海賊の総勢は、この東海岸に60人余り、この裏の西海岸に30人余り、合わせて総勢100人足らずといったところである。この海賊を一人残らず始末する。浜に出入りしている海賊の船数は、東の浜が7隻、西の浜が5隻である。東の浜の海岸線の距離が7スタジオン(約1,4キロ)西の浜の海岸線が5スタジオン(約1キロ)である。北側の浜には海賊がいるという情報は聞いてはいない。ここまでの説明で質問はあるか』
 パリヌルスは、話を区切った。
 『まあ~いい、話を続ける。質問は最後にまわそう』
 彼は話を続けた。

『トロイからの落人』 FUGITIVES FROM TROY *暑中、豪雨お見舞い申し上げます。

2013-07-20 09:34:03 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
    猛暑お見舞い申し上げます。
    豪雨被害にお遭いになった皆々様 謹んでお見舞い申し上げます。

    それにしても、暑熱の日々が続きます。また、一方では局地的ではありますが、
    豪雨が甚大な被害を皆様にあたえています。とても 心が痛みます。
    復旧を心から願ってやみません。一日も早い復旧をお祈りいたします。

    日頃、私のブログにアクセスいただき誠にありがとうございます。
    深く御礼申し上げます。

            『トロイからの落人』筆者    山田 秀雄

    *閑話休題*
    絵画に一幅とか、タブローといったサイズがあるように、文章にもそれがあります。
    『トロイからの落人』は、紀元前1000年ころの物語です。私のずうずうしいところかもしれませんが、
    お読みいただいている皆様の豊かな想像力にたより甘えています。
    辞書を見て知ったことですが、英語の<シンボル>という言葉は、ギリシア語の<シンボロン>という言葉からきているそうです。
    私たちの言葉でいうと<割符>ということらしいです。
    ブログは、その<割符>だと思って、真摯に筆を進めています。
    今後とも何卒宜しくお願いします。
    

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  62

2013-07-19 07:59:29 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 パリヌルスは、1番船、2番船の船長と副長に向けて伝令を走らせた。作戦要務遂行の小隊長の役務を務めてくれる者たちを含めての打合せである。
 彼は、『ところでギアスはどうしている』と思った。
 以心伝心である。そこへ舟艇での用件を終えたギアスが副長格のサクテスを連れて姿を現した。
 『隊長、統領と軍団長の用件をキドニアで終え、無事帰着しました。舟艇も浜へあげて、ただいま整備させております。報告は以上です』
 『そうか、ご苦労であった。今、これから、今夜、実行の重要案件の打合せをやる。ギアス、3人くらい腕の立つ奴を選んで連れてくるのだ、いいな。打ち合わせを夕めし前に終えておきたい。以上だ』
 『判りました』
 パリヌルスは、力みを拭い去ったことで立案した作戦計画の杜撰な部分に気がついた。いろいろと思考錯誤して構築した作戦計画であった。だが、立案の肝腎な部分に抜けのあることに気がついたのである。島を巡る海域の水深について、よく考えていなかったことであった。
 彼は『ドキッ、ハット!』した。『こんな大事なことを抜かしていたとは、、、』木板に島の概略図を描いていて気がついたのである。ソリタンから詳しく聞き取っていたにもかかわらず,小島の事情の重要部分が作戦思考から抜け落ちていたのである。彼は、一同が集まるまでに修正作戦計画をまとめあげた。
 『これでこそ、万全である』とぬかりのない作戦計画とした。
 予定していた召集メンバーがそろった。総勢25名である。
 『おう、アレテス。打ち合わせの場だが、ここでいいか。船尾の辺りがいいか。見てきてくれないか』
 アレテスは、1番船の船尾に向かって歩を運んだ。